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眠りの森の美女:セミゾロワ、ボリショイバレエ   (2006.5.7)

この映像は、20年近く前に買ったレーザーディスク(LD)ですが、その当時はあまり興味がわかず、キャビネットの中に眠っていました。最近取り出して見たのですが、結構良かったので紹介します。なお、これはDVDも出ているようです。
主要なダンサーは、比較的年齢層が高いようで、「眠り」にしては、全体に若々しさが足りないかなと感じました。主役のセミゾロワは、比較的若そうですが、第一幕で16歳の王女には見えなかった。でも、彼女は、体が柔らかで、足が細く甲がとても綺麗です。衣裳もロシア独自のワイアー入りの綺麗な短めのチュチュで手足の長さが強調されています。
第一幕、オーロラの出、顔がこわばっていて、かなりの緊張が見られましたが、ローズアダージョが始まる前には落ち着いてきたようです。ローズアダージョのバランスでは、後方に伸びたアチュードの左足を水平以上に挙げていました。この場面、足を高く挙げると不安定になりやすいので、あまり足を挙げない人が多いのですが、セミゾロワは比較的高くあげ、とても見栄えがするのですが、その分バランスがとりにくいようで、なかなか支えの王子の手を離せません。やっとの事で手を離し、何とかアンオーまで挙げますが、すぐ下ろして次の王子の手に掴まってしまいます。しかも倒れかけてガシッと握るという感じでなんとも危なっかしいのです。 終盤近くのプロムナードの時は、ほとんど手を挙げず、横滑りという感じでした。これでは物足りない限りです。思わずハッとする時間が止まったような瞬間を期待するわけで、しっかりアンオーまで手を挙げてバランスをとって欲しいものです。
この場面、森下洋子さん、吉岡美佳さん、下村由理恵さんなど日本のダンサーは見事でした。 下村由理恵さんは、引きつった表情ながらも懸命に頑張って、長〜い、長〜いバランスをキープ、観客のブラボーを誘いました。 グラグラ揺れる上体を必死に堪える姿にハラハラしましたが、「決めるんだ!!」という彼女の意気込みが伝わってきました。 バレエは芸術でテクニックではないと分かっていても、手に汗握るバランスの妙技に快感を覚えました。
セミゾロワは、全体的に表情が硬いのが気になりました。第三幕のディベルティスマンでもほとんど笑顔を見せません。 ここは妻となる喜びの場面、笑顔が欲しかった。また全体にすこし荒削りのようで、もう少しお姫様の気品が欲しい気がしました。
王子のフェジェーチェフは熊川哲也のようなダイナミックさはないのですが、女性のサポートはとても丁寧で正確で好感を持ちました。 青い鳥のパ・ド・ドゥの衣裳はエメラルド色でとても綺麗で、フロリナ王女のマリヤ・ブイローワは、セミゾロワより、むしろ若いように感じられ、丁寧な美しい踊りでした。 20年近く古い録画にしては映像も比較的綺麗で、キーロフとは一味違う、ボリショイの「眠り・・」を楽しめます。

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