とても素敵な、白鳥の湖〜黒鳥のグラン・パ・ドゥドゥの映像が、YouTubeに載っていました。
踊っているのは、韓国国立バレエのパク・スルギ
(Seul-ki Park)
とキム・キワン
(Ki-wan Kim)
。
2012年5月、芸術の殿堂野外舞台でのバレエコンサートのようです。
このパ・ドゥドゥは、悪魔の娘が王子を誘惑する踊りなので、全幕の舞台ではオディールはもっと妖艶な感じなのでしょうが、
パク・スルギは明かるく軽快に踊っていました。バレエコンサートなので、観客を楽しませる上で、これはこれで良かったと思います。
それでも、アダージョは、しっとりとした情感をこめた踊りで見ごたえがありました。
このアダージョ、アチチュードやアラベスクのバランスといったポーズや高く挙げられたリフトなど難しい場面が多く、
緊張してコチコチになったダンサーも見かけますが、パク・スルギはそんな感じが全くなく、のびのびと踊っていました。
冒頭の横に手脚を広げ、王子にリフトされて横に移動して、オディールのカリスマ性を表現する独特の踊りも、
アダージョ最後の、座った体勢から右手で王子につかまりアチチュードで立ち、
バットマン・デヴェロッペで右足を高く上げ、手を離してバランスという難しい技の連続も、皆、難なくクリアしていました。
この後再び王子の手につかまりアチチュードしてからのアラベスク・パンシェ。支えの腕がギクギク揺れて危うかったものの必死に堪えて、
左足を180度近くまで高く挙げて決めたのには感動。
ついで、腰を支えられピルエットでクルクル回り、最後のアチチュードをピタッと決めました。
ヴァリエーションでは、パートナーのキム・キワンは、そつなく纏めたという感じで、やや元気がないようでした。
一方、パク・スルギは終始笑顔を絶やさず余裕綽々、自信に満ちて、踊るのが楽しくてたまらないという感じで、
ピルエット、フェッテの繰返し、アティテュード・クロワゼでのプリエ、続くエカルテ・ドゥヴァンでのバランスといった技を皆美しく見せました。
続く、オデットに見せかけたシソンヌ・フェルメを決め、脚は上がるだけ上げるのが良いと言われるグラン・バットマンでは、楽々と脚を180度近く高く跳ね上げたのはお見事。
最後は、ピケトゥールで軽快に舞台を一周、フィニッシュをピタッと止めてニッコリ。大きな拍手を受けました。
そしてコーダ。さすがのパク・スルギも、難関のグランフェッテ・アントゥールナンでは笑顔が消えて真剣そのものでした。
前半は観客の手拍子に気を良くしてかダブルを入れて軽快に回っていましたが、後半軸足が少しずれてトゥが崩れそうでいかにも辛そう。
それでも歯を食いしばってフェッテを続ける健気な姿に感動。
最後の停止で、僅かにトゥの先が乱れて危うかったけれど必死に堪えて大きな破綻なくフィニッシュ。
観客のブラボーの叫びに「無事終わって良かった!!」と安堵の笑み。思わず「お疲れ様!!」と声をかけたくなった。
パートナーのキム・キワンは、快調なパク・スルギにおされ気味でしたが、頭上に高々と上げるリフトでは、渾身の力を振り絞ってパク・スルギを持ち上げました。
腰をかがめて、パク・スルギの腰と腿を掴んでグイッと上げ、必死にふらつく足元をふんばり、その後ゆっくりと降ろして、無事フィニッシュ。
パク・スルギと顔を見合わせてホッとした表情でした。
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パク・スルギは、韓国国立バレエ団では、キム・ジヨン(Ji-young Kim)に次ぐプリンシパルとのこと。キム・ジヨンほどキャリアもないし背も低いけれど、
溌剌としてキビキビとした身のこなしと可愛らしい表情。それでいて、アダージョのゆっくりして柔らかな動きもきちんとこなすテクニックの持ち主。
このパ・ドゥドゥでは、小悪魔的なカリスマ性を感じさせ、まさにオディールに適役という感じ。
ダンサーにしては小柄ながら、小さな頭に、長い脚という均整の取れたプロポーションに、黒いシックなチュチュが良く似合う。
病的なまでに華奢で弱々しさを感じさせる舞姫もみかける中、
ふっくら豊かな胸、ピチピチとした肢体・・・、
クラシックバレエには色気はご法度と言われるけれど、パク・スルギの魅力的な容姿を見ているとそんなことどうでも良いと思ってしまう。
あらわな太ももは、はちきれんばかり健康的でセクシー。
パク・スルギは、心も健康的で度胸がすわっているのでしょう、堂々とした踊りでした。
グラン・パ・ドゥドゥはもともと女性が主役の踊りだけに、女性は観客の視線をまともに受け、
プレッシャーのあまりコチコチになった女性は、パートナーの男性のリードに助けられて踊る・・・、というのが普通ですが、
パク・スルギは全然そんな感じがしない。
堂々として、笑みを浮かべる余裕もあって、むしろパートナーのキム・キワンをリードしている感じでした。
レヴェランスを終えて、意気揚々と引き上げるパク・スルギに対して、首から胸まで汗が噴出し息を弾ませ「ヤレヤレ!」といった感じのキム・キワン。
バレエ団では女性のパク・スルギがプリンシパルで男性のキム・キワンがソリストで、パク・スルギの方が地位が上なので、
キム・キワンは踊りにくかったのかもしれません。女性ダンサーの引き立て役としての男性ダンサーは辛いと、男性ダンサーを可愛そうに思いました。
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YouTubeには、このパク・スルギの3年前の映像も載っています。
2009年のThe 10th Seoul International Dance Competistonに出演して踊った「白鳥の湖〜黒鳥のグラン・パ・ドゥドゥ」です。
この時はグランフェッテの15回目で軸足の踵が落ちたものの必死に持ちこたえて32回を回りきり見事に優勝しました。
でも私は、この頃より今のパク・スルギの方が好きです。この時は、技術はあっても、体はガリガリに痩せていて、踊りが美しいとは思わなかった。
3年間で、体はふくよかになり、踊りの表現も豊かになって、心身ともに一回り大きく成長したように感じます。
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