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映画「シェルーブールの雨傘」の新鮮さ       (2003.31.25)

東京オリンピックの翌年に公開された、映画「シェルブールの雨傘」は、当時まだ大学生だった私を夢中にさせました。ジャックドミー監督、ミシェル・ルグラン音楽によるフランス映画で、全編唄で綴られ一切台詞がなく、オペラともミュージカルとも違い、とても新鮮に感じました。
 
最近レーザーディスクで再度見直して、改めてそのすばらしさに感動しました。
戦争によって心ならずも引き裂かれてしまった男女(ニーノ・カステルヌオーボとカトリーヌ・ドヌーブ)が、それぞれ他の相手と家庭を持ち、6年後偶然に出会う。二人は「元気?」と尋ねるだけで別れていく。「幸福?」と聞かないところが、それぞれへの思いやりなのでしょう。 他愛ないストーリーですが、石畳を行き交う色とりどりの雨傘で始まり、優しく暖かい色調のシェルブール街を舞台に、ミシェルルグランの美しい旋律で綴られていきます。
それにしても、この映画に登場する人物はなんといい人ばかりなのでしょう。そうした心の持ち主の脇役たちが、主役の二人を囲んで、ちょっと残酷な恋の物語でありながら、見終わった後でとても暖かい気持ちにさせてくれます。
 
これこそミュージカルの最高傑作と言ったら、ブロードウェイミュージカルのファンに叱られるかもしれませんが、この映画、いわゆるミュージカルとはまったく違います。せりふすべてが歌になっているのです。通りすがりの人の言葉すら歌なのです。踊りや歌のショーであるミュージカルとはぜんぜん違い、ふつうの演技が自然に歌になっています。音を消して画面だけ見ていたら、歌を歌っているとわからないくらいです。
ですから、40年も前に作られたにもかかわらず、少しも色あせない、時代を越えた新鮮さ持った素敵な映画です。
 
  シェルブールの雨傘(Les Parapluies de Cherbourg)
   (1964年フランス映画)
  監督:ジャック・ドゥミー、 音楽:ミシェル・ルグラン
  キャスト:カトリーヌ・ドヌーヴ、 ニーノ・カステルヌオーヴォ他
 
レーザーディスクのジャケット


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