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白鳥の湖:下村由理恵、イーゴリ・ゼレンスキー、日本バレエ協会公演   (2001.2.10)

下村由理恵さんは、しっとりしなやかで、本当に可愛らしく美しいオデットを演じてくれました。由理恵さんは、手足はあまり長い方ではなく、どちらかというとバレリーナとして見栄えのする体型ではないと思うのですが、静かに香るように踊る姿は純日本的というか、なんとも言えない女らしい美しさがありました。また、一つ一つの仕草や豊かな表情、間の取り方といい、絶妙でした。指先からつま先まで、全身が語るオデットの悲運とジークフリードへの信頼の表現。非凡な才能の持ち主だと思います。
一方、オディールでは、凛とした美しさ溢れる踊りでした。王子とのアダージョ、ソロとも、要所要所でバランスを決めて、お見事、うっとりでした。緩急自在のテクニックも素晴らしい!。 ただ、曲芸的な32回のグランフェッテアントゥ−ルナンでは、終わり近くわずかに軸足が流れて、かなりきつかったように感じました。でも、必死に体力を振り絞って頑張っている姿は感動的でした。
王子役のイーゴリ・ゼレンスキーは、リフトやサポートは力強く、回転も軽々とこなしていました。ゆっくりとリフトし、そ〜っとおろして。何気ない動作でしたが、すごいと思いました。 ただ、由理恵さんとは初めてだったせいか、チョットしっくりいっていないようなところもあったような気がしました。ご主人の篠原聖一さんとのデュエットようにはいかなかってようです。
 
それから、道化を踊った小出顕太郎さんがコミカルないい味を出していました。細かいところでミスもありましたがご愛敬。とてもチャーミングで良かったと思います。 
  
今回の公演、コールドバレエが不揃いなのが気になりました。日本バレエ協会は、全国のダンサーが個人会員になって組織している団体です。このような公演は、大きなバレエ団に属していないダンサーが大舞台に立つ貴重な機会なのですが、やはり、大きなバレエ団の公演と違い、一堂に会しての練習時間が少ないのが、このようなコールドバレエの不揃いに繋がるのでしょうか。課題ですね。
 
それにオーケストラが音を外していたのが目立ちました。これではダンサーが気の毒。しっかり演奏して欲しいですね。
 
そんなわけで、この公演、「由理恵さんの白鳥」というところが強く印象に残りました。
それにしても下村由理恵さん、いつもながら、観客への「誠意」を感じさせてくれる素敵なバレリーナだと思います。必死に観客の期待を裏切るまいと頑張る誠実さが肌で伝わってくるのです。自然ににじみ出る性格の良さなのでしょうか。
いくつか小さな不満はありましたが、下村由理恵さんの名演にひたることができて、大変満足しています。
    白鳥の湖
    日本バレエ協会公演
    オデット/オディル:下村由理恵
    王子:イーゴリ・ゼレンスキー
    2001.2.10 東京文化会館
パンフレット

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