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ジゼル熱演!!。下村由理恵さんに感激 (2002.7.27)
ジゼルでこれほど感動したのは珍しいことです。それは、下村由理恵さんの踊り。一幕後半の狂乱のシーンから、二幕終わりまで、私は下村さんから一時も目を離せませんでした。
今年創立30周年を迎えた小林紀子バレエシアターによる新演出の「ジゼル」、それはそれは、すばらしい舞台でした。
今回は、演出・振付にイギリスよりデレク・ディーン氏を招聘し、よりドラマ性を追求したということですが、それに見事に応えた下村さんの演技力、これに尽きます。
最近、バレエ雑誌等で「下村由理恵さんの舞台は見逃せない」という言葉が目に付きます。彼女は、今、油が乗り切っているというか、心身共に、本当に充実しているようことなのでしょう。私も、下村由理恵さんのジゼルと聞いて、居てもたっても居られず、また観にいったのです。
いつもながら、彼女の舞台からは毎回新鮮な驚きを覚えます。何度も観ているジゼルなのに、今回もまた違った新鮮さを感じました。
しかも今回、下村さんの踊りからは、並々ならぬ熱意が感じられました。30年記念公演、下村さんは最高の舞台にするんだという執念があったように思います。二幕後半から、下村さんの背中も胸元も、白い肌は、汗で輝いていました。これほど汗にまみれたジゼルは見たことはありません。それほど彼女は必死に力の限り踊っていたのでしょう。私は、彼女の熱意に、ジーンときました。そして感謝と感激に胸がいっぱいになりました。
小林紀子バレエシアターは、クラシック一筋に歩んでいるバレエ団。コンテンポラリーは一切手がけない、この頑固ともいえる姿勢こそが、他のバレエ団にない、この上ない品の良さを醸し出していると思います。このバレエ団の生き方、私は好きです。
今回その創立30周年記念公演に下村さんが選ばれたのです。
下村さんは、フリーになる前、このバレエ団で学んでいました。そんな古巣での公演。飛び出した古巣へは、なかなか戻れないものなのに、でも、そこが下村さんの違うところ。彼女がこの記念すべき公演に招かれたのは、彼女の実力もさることながら、この熱意、そして人望の厚さもあると思います。
何度も何度も続くカーテンコール。吹き出した汗にまみれて、深々と頭を下げる下村さん。成功裏に踊り終えたことへの安堵感と満足感、そして恩師、小林功・紀子夫妻への感謝の気持ちが溢れていたように思います。人事を尽くしたダンサーの笑顔、これにまさる美しさは何物もない。
バレエダンサーは、自らの沸きあがる感情を体で表現することによって、観るものに感動をあたえてくれるのだと言われています。下村さんの踊りからは、ことのほか、これを感じます。
そして、下村さんの舞台から私がいつも感じるのは、観客への誠意です。見に来てくれた観客に最高の自分を見せようと必死に頑張っている誠実さが、肌で伝わってくるのです。
生身の人間、調子の波があるでしょう。とくに体が資本のクラシックバレエではコンディションの維持が厳しく求められることでしょう。でも下村さんは絶対に私たちの期待を裏切らない。厳しい自己規制、不断の努力・・・・・・精進の賜だと思います。
「ダンサーは商品。だから魅力的でなければならない。このために楽をしてはダメ」(バレリーナのアルバム(新書館))という下村さんの言葉、 彼女はそれを身をもって証明してみせているのだから偉いと思います。
下村由理恵さん!!。夢をありがとう!!。あなたは、今日もまた、「情熱」と「勇気」の大切さを教えてくれました。本当に本当に、すばらしかった。お疲れ様でした!!、ゆっくり疲れをお癒しください。
ところで、私は20年以上も前、小林紀子さんのジゼルを見たことがあります。
このジゼルは、小林紀子さんが小林紀子バレエシアターを組織して間もなく踊られたものです。確かこの頃、紀子さんは、芸術祭大賞を受賞されたと記憶しております。
紀子さんの踊りは一言で言って、とても優雅でした。第一幕の村娘は素朴な優しさが漂います。そして第二幕のウィリもあくまで透明な中に気品を感じます。どちらかと言うとおっとりとした清楚な感じの女性像を演じておられたと記憶しております。
この辺は、彼女の教え子でもある下村由理恵さんのジゼルが、少女のような可愛らしさ中にも凛とした強さを持った現代的な女性を感じさせるのと対照的です。 とは言うものの、狂乱の場での迫力は凄いもので、身の毛が立つようなリアリズムを感じたのを記憶しております。
今回のジゼルのプロデュース、小林紀子さんのバレエ生活の集大成とも言うべき、素晴らしいものだったと思います。こんな素晴らしいジゼルを観ることができて、バレエファンとして、私は本当に幸せ者だと思います。
振付・演出 デレク・ディーン
作曲 アドルフ・アダン
指揮 佐藤功太郎(東京フィルハーモニー管弦楽団)
ジゼル 下村由理恵
アルブレヒト パトリック・アルモン
2002年7月27日 新国立劇場 中劇場
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