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ソヴィエト映画「眠りの森の美女」の楽しさ     (2002.11.2)


旧ソヴィエトの時代、素晴らしいバレエ映画がたくさん作られました。 その中のひとつ、1964年に作られた「眠りの森の美女」は逸品です。日本でのロードショー公開は、1965年末、日比谷・有楽座でした。東京オリンピックの翌年です。当時私は学生でしたが、大金??を払って見に行きました。


当時の映画のプログラム

配役には、オーロラ姫にアラ・シジョーワ、デジレ王子にユーリー・ユーリ・ソロビエフという当時まだ駆け出しの新人を起用しています。
ユーリ・ソロビエフは、紳士的な風貌からは想像つかないダイナミックな跳躍とびくともしない強固なサポート力で、デジレ王子にふさわしい素晴らしいダンサーだと思いました。 丁度そのころ、ルドルフ・ヌレエフが西側へ亡命、マーゴ・フォンティーンのパートナーとなったのですが、「ソロビエフに比べたら、ヌレエフは、甘やかされた才能」という当時の評を読んだことがあります。しかし残念なことに、ソロビエフは、その後まもなく癌で亡くなってしまいました。
アラ・シゾーワも1970頃一度来日して、オーロラ姫を踊りましたが、その後は来日していませんし、どうなったかわかりません。

その意味で、この映画は、アラ・シゾーワとユーリ・ソロビエフの踊りを同時に見ることができる貴重な映像です。
有り難いことにこの映画は20年ほど前にビデオで発売されました。私は早速ビデオカセットを買ったのですが、まだVHSホームビデオが出たばかりでビデオソフトはとても高く、約30000円でした。今ではビデオソフトは5000円以下ですから、20数年の間に6分の1になったわけです。

さてこの「眠りの森の美女」の映画は、合計で3時間位のバレエを1時間半程にまとめたものですが、物語を進める上で必要な主要なシーンはほとんど収録されています。逆に第3幕の結婚式の出し物としてのディベルティスマンはほとんど削除され、わずかに青い鳥のパ・ド・ドゥのみが残されています。

シゾーワの踊りは見事です。ローズアダジオではういういしい16才のオーロラをとても可愛く演じています。古典バレエの中で最も難しいと言われる 4人の王子とのアチチュードのバランスは、手を離しても全く不安がなく、ゆったりとして優雅ですし、これに続くバリアシオンもとても素敵ですv。ただ可愛らしさが災いしてか、第3幕の結婚式でのグラン・パ・ド・ドゥはもう少し妻となるおとなの女性を表現できたらと思います。

なお、青い鳥のパドドゥのフロリナ王女は、ナタリア・マカロワが演じています。米国へ亡命前の初々しい踊りは実に素敵で、一見の価値があります。

カメラのアングルが全体に低く、踊り手の見事なテクニックを十分に見ることが出きるのでバレエの練習用の教材としても最適でしょう。
画質はお世辞にも良いとはいえませんが、内容はとても充実しています。 キーロフ・バレエのダンサー達の見事な踊りを堪能できる貴重な映画なのです。

最近、多くの古い映画がビデオやDVDで再発売されていますが、この映画もぜひDVDの美しい映像で再現されることを願っています。


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