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映画「沈まぬ太陽」        (2009.11.3)

映画「沈まぬ太陽」を見てきました。「国民航空」の労組委員長・恩地(渡辺謙)は、副委員長の行天(三浦友和)とともに 労使交渉の末、労働者の待遇改善を勝ち取りました。その後、行天は組合を抜けるとエリートコースを歩んでいきますが、 妥協を許さない恩地への懲罰人事は、長きにわたる僻地勤務と御巣鷹山に墜落したジャンボ機被害者遺族の世話係という 過酷なものだったのです・・・・。上映時間3時間半近くの長編です。
 
内容的には、痛烈な航空会社批判で貫かれていますが、この映画の中で、私が最も印象に残り、共感した言葉が二つあります。 いずれも遺族の方の台詞ですが、ひとつは、「しりもちをついたオンボロ飛行機を、なぜ飛ばしていたのか」、 もうひとつは「ホテルの買収の金があったら、なぜもっと遺族への心配りを考えてくれないのか」です。 航空史上最悪の墜落事故。航空会社の最高に重大な責務は「安全」。なのに「安全」を疎かにして、金のためにむちゃくちゃの限りを尽くし、 誰も責任をとろうとしない会社の姿が、この言葉に如実に表れているように感じました。
 
主役の渡辺謙は長文の手紙を原作者・山崎豊子に送り主演を懇願したそうですし、若松節朗監督もこの山崎さんの作品を撮ることを切望したそうです。 この作品、山崎さんの小説の中でも、「映像化されていなかった最後の傑作」だそうで、フィクションとは言え、ナショナルフラッグキャリア「国民航空」は、 JALをモデルにしていることは明白ですから、製作にあたりJALや政府から様々な妨害があったと聞きました。 それにもくじけず、素晴らしい映画を作って下さったスタッフや俳優の皆さんに、深く敬意を表したいと思います。
 
にもかかわらず、「『沈まぬ太陽』、社内報で批判=客離れ誘発に危機感−日航」という記事がインターネットに載っていました (時事ドットコム2009/11/3)。 「JALは『しかるべき措置を講じることも検討している』と法的手段も辞さない姿勢を見せている」と書かれていますが、 この記事の通りであるとすれば、何て、おとな気ないというか、呆れてしまいます。全く反省していると思えない。 企業としてのモラルを疑ってしまいます。 再建問題が連日報じられる中、JALはついに企業再生支援を依頼し、国の管理下に置かれる事になりました。 1兆6000億円という多額の税金を使って、こんな人達の集団で本当に再建できるのでしょうか?
 
「今の日本に必要なのは、恩地のように、たった一人になっても筋を通し、信念と良心を持ち続ける人」という 山崎豊子さんの言葉に、なるほどその通りと、大いに頷けるものがありました。良い映画でした。
    映画「沈まぬ太陽」
     原作 山崎豊子、監督 若松節朗
     キャスト 渡辺 謙 三浦友和 松雪泰子 鈴木京香 石坂浩二 ほか
     スタッフ 脚本:西岡琢也、音楽:住友紀人
     製作プロダクション:角川映画

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