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眠りの森の美女:ラウフェル、ボゴフ、マリボール歌劇場  (2007.8.13)

マリボール歌劇場の「眠りの森の美女」の映像があります。CSシアターテレビが放送したものです。マリボール歌劇場は、東欧スロヴェニア(旧ユーゴスラヴィア連邦国のから独立)の第二の都市マリボールにあり、日本では馴染みが薄いのですが、これはなかなか興味深い映像でした。
この「眠りの森の美女」は、最初から王子役の男性、アントン・ボゴフが登場します。ジーンズの男性と女性のパ・ド・ドゥで幕が開き、二人を嵐が襲い女性を見失った男性は、お伽の国に迷む。この男性が、王子になるという想定ですが、私はこの演出は好きになれません。チュチュとトゥシューズに象徴される19世紀の古典バレエは、「夢」を求めたもの。下手に現実を組み込まず、素直にメルヘンの世界に浸る方が良いと思います。また、カラボスは魔女として、リラの精のライバルとして踊りますが、これもなんとなく、しっくりしませんでした。
ダンサーは、ソリストもコールド・バレエも綺麗で背が高い人が多く、見栄がします。但し踊りは荒削りのような感じがして、あまり美しいとは思いませんでした。コールド・バレエも不揃いなところが気になりました。主役の二人は、他のダンサーとは格が違うといった感じなのですが、技術的にも、表現の面でも、まだまだといった感じで、やはり、マリンスキー劇場やボリショイ劇場の主役級に比べると見劣りがしたのは否めません。
オーロラ姫はアレンカ・ラウフェル、美しいダンサーですが、やや大人びた感じで、16歳のオーロラには???という感じで、私の好みではありません。まずローズ・アダージョ。前半のバランスでは、王子から離した腕をしっかりアンオーまで挙げていました。でも終盤のプロムナードに続くバランスは殆んど手を上げられず、かろうじて横滑りといった感じで興ざめでした。頑張ってアンオーまでしっかり手を挙げて欲しかった。フラフラしても必死にバランスに挑む姿こそ、感動を呼ぶものです。グラン・パド・ドゥも頑張っていましたが、王子のボゴフとの息が今ひとつ。特に目当てのフィッシュ・ダイブはぎこちなく、飛び込むときに足がもつれ気味。蹴り上げた足もほとんどあがらなかくて中途半端で、王子が何とか支えて持ちこたえたといった感じでした。思い切って体を反らして、足を高く挙げて欲しかった。
そんなわけで、このバレエ団、ダンサーは技術的には、まだまだこれからという感じですし、舞台も発表会と言わないまでも公演というにはちょっと???、という感じでしたが、出演者の一生懸命に踊っている気持ちは伝わってきて、見終わったとき、さわやかさな気分になりました。今後が楽しみなバレエ団です。
 
  バレエ:「眠りの森の美女」
  出演:アレンカ・ラウフェル、アントン・ボゴフ、
  クラヴィディーヤ・チェリマギッチ、ヴァレンティーナ・トゥルク他、
  マリボール歌劇場バレエ団
  振付:ディンコ・ボグダニッチ
  指揮:アレクセイ・バクラン
  2004年、マリボール歌劇場

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