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小林バレエシアター「ソリテイル」「二羽の鳩」      (2002.10.20)

小林紀子バレエシアターが、創立30周年記念イベントの一つとして、珍しい作品を上演してくれました。ケネス・マクミラン振り付けの「ソリテイル」とフレデリック・アシュトン振付の「二羽の鳩」です。
小林紀子さんは「確かなメソッドの総本山」として「ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンシング」の教育メソッドを貫いてこられました。 マクミラン、アシュトンという、ロイヤルバレエを担った二人の大御所の作品の上演は、創立30周年記念にふさわしい企画と言えると思います。
 
現在考えられる最高のキャスティングに紀子さんの意気込みが感じられます。「ソリテイル」の新鋭、島添亮子さん、「二羽の鳩」には、吉田都さん、下村由理恵さんという、いずれも、英国での豊富な経験と実績を持つ二人のトップダンサーをダブルキャストで配していること。
テクニックもさりながらコミカルな演技力が要求される「二羽の鳩」、女優のような豊富な演技力の下村さん、清楚で可憐なプリンセスのイメージの吉田都さん、お二人とも、とても興味がありましたが、下村さん出演の日は出勤で涙をのみました。従って、吉田都さん出演の日の感想です。
 
まず、「ソリテイル」。
「ソリテイル」は「ひとり遊び」との副題がついています。一人での孤独な芝居とでも言うところでしょうか。ケネス・マクミランが1956年に振付けたもので、昨年小林紀子バレエシアターが日本初演しており、この時も島添亮子さんが踊ったそうです。
マクミランの振り付けというと、私は、どろどろした感じの作品という印象を持っていたのですが、感じがチョッと違いました。島添さんの良さを自然に出しているというような、感じの豊かな詩情に満ちた振り付けという感じした。
それにしても。島添さん、なんと可愛らしいバレリーナなのでしょう。島添さんの体は、しなやかで柔らかで、しかも軽やか。素敵でした。
 
休憩を挟んで、「二羽の鳩」。
この作品「二羽の鳩」はアンドル・ムサージャー作曲、フレデリック・アシュトン振付のバレエで、1961年初演。このときの主演はリン・シーモアでしたが、この時の女優のような濃密な表現力に注目したのがケネス・マクミランだったそうです。
日本では、数年前に小林紀子バレエシアターが上演したのが日本では初演だそうです。さりげなく詩的に情感を掘り下げることが得意なフレデリック・アシュトンですが、吉田都さんは、このアシュトンの意図を汲んで、この上なく清楚で可愛らしく表現していました。この役を踊るためにはるばる英国から来た都さんですが、ゲストダンサーに見られがちな「気負い」や「力み」が全くなく、そのままの自分を出して踊っているようなシンプルさが、好感を持てました。
吉田都さんはロイヤルで長く踊っていながら、この「二羽の鳩」は今まで踊っていないとのこと。このためか、カーテンコールで「うまくいって良かった。」と、 ホッとしたようで、晴れ晴れとした笑顔が印象的でした。そして、何度も何度も、深々と頭を下げるレヴェランス。「見て下さってありがとう!!」と観客に感謝の気持ちを体一杯に表現しているようでした。 自然に現れ出た、彼女の人柄の良さなのでしょう。
また、ジプシー女を踊った大和雅美さんというダンサーも、吉田さんに負けじと猛ハッスルという感じで、とても素晴らしい踊りでした。懸命に役にぶつかっていく姿、感動しました。
 
「二羽の鳩」の音楽は、アンドレ・メサジュ作曲。ドリーブとそっくりと言われても良いような作風ですが、バレエ音楽のツボのようなところはしっかり押さえている佳品です。 指揮者のスティーブン・レイド氏は、バレエの指揮やピアニストとしてのフリーので演奏活動をしているそうですが、 「二羽の鳩」も「ソリテイル」も、オーケストラの演奏はとても素晴らしものでした。

ところで、「2羽の鳩」のスタッフの最大の関心事は、1幕の途中と2幕の最後に飛んだ、本当の鳩が、オケピットや客席に飛び込んだりしないかどうかだったそうです。 新国立劇場で、鳩が客席にでもとびこんでしまったら、スキャンダルになってしまうでしょうし・・。それに、鳩のギャラがいちばん高い・・・ほんと?



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