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熊哲・由理恵が舞う「スーパーワールドオーケストラ」   (2003.1.5改)

「スーパーワールドオーケストラ」は世界各地のオーケストラで活躍する団員たちによる臨時編成のオーケストラ。ベルリン・フィル、コンセルトヘボウ管、シュターツカペレ・ドレスデン、パリ管、バイエルン放送響、ロンドン響といった欧州の名門から、ボストン響、フィラデルフィア管、ロス・フィルといったアメリカ勢、さらに日本をはじめとするアジアからも楽員が参加するという、まさにワールドワイドな無国籍集団。世界のトップメンバーによるこのオーケストラを、2001年9月に巨匠ロリン・マゼールが指揮しました。
BSディジタル放送の「BS Japan」が今年(2003年)1月5日に再放送をしてくれました。前半はマゼールによるウィンナワルツやポルカ、最後に熊川哲也さんと下村由理恵さんがバレエ「ドン・キホーテ」より「グラン・パ・ド・ドゥ」を披露しました。
世界中の名手たちを選りすぐって編成された「スーパーワールドオーケストラ」の圧倒的な迫力、それを統率するマゼールの指揮。でも、私のお目当ては、「熊哲・由理恵のグラン・パ・ド・ドゥ」。
 
「パ・ド・ドゥ」では華麗なリフトや、2人のフェッテやピルエット、そして熊川さんのジャンプなど、みな、見事に決まって、わずか20分程度でも十分に熊川さんと下村さんの魅力を堪能できました。また、K-Balletメンバーの他の二人、榊原有佳子さんと長田佳世さんも、とても美しく上手でした。
やはり熊川さんはすごいと思います。普通なら拍手が入らないところで拍手が入るし、昔よりはジャンプ力は落ちたかもしれないけれど、舞台は狭くて踊りにくそうなのに、とてもうまく踊っていたと思います。体も前より引き締まった感じがしました。
加えて、下村由理恵さんはやっぱり素敵。険しい表情に心なしか緊張が感じられたし、さすがにグランフェッテは、以前よりきつそうに感じましたが、懸命に頑張って回転し、最後バッチリと決めたのは凄い。にっこりと微笑んだ表情が美しかった。
ただ熊川さん、ソロは大変素晴らしいのですが、パドドゥのアダージョでの女性への思いやりという点では、チョットと感じないわけではありません。下村さんは、とても上手に熊川さんに合わせていましたけれど、本来、アダージョは女性の踊り。女性が合わすのではなくて、男性が女性を引き立ててあげなくてはね。女性を丁寧に優しくサポートしてこそ、女性が伸び伸びと自分の持つ最高の美しさを表現できるのだと思います。つい先日、熊川さんは、「眠りの森の美女」でヴィヴィアナ・デュランテと組みましたが、昔よりかなり良くなってきたようですが、まだ、なんとなくしっとりいかないような気がしました。技に秀でたダンサーは必ずしも優れたサポーターではないということでしょう。マラーホフや故ヌレエフが、どんな女性と組んでも、微笑ましいばかりの素晴らしいサポートをするのと対照的です
 
でも、下村由理恵さんは、そんな熊川さんのサポートにも、嫌な顔ひとつせず、しっかり合わせて踊っていたののはさすがだと思います。それにしても、由理恵さんの「決め」のポーズの美しさと腕のしなやかさは素晴らしいの一語につきます。おそらく腕の使い方の美しさでは、現在、日本で右に出る人はいないのではないでしょうか。ただ、今回はやや不調だったのか、「ドンキ・・・」のアダージョでは、お目当ての難しい二度のアチチュード・バランスのうち、一度目はバッチリと美しく決まりましたが、二度目は手を離したとたんぐらついてしまったのはちょっと惜しかった。必死に体勢を立て直そうと頑張ってくれましたが、いつもの由理恵さんのたっぷりと時間の止まったようなバランスが見られませんでした。ファンとしてはチョット残念(でもこれは贅沢というものかもしれませんね)。尤も、アナニア・シビリが来日公演の「ドンキ・・」で、10秒間を超えるような超人的バランスを披露して喝さいを受けましたが、これはアクロバットもどきでチョッとやりすぎのような気もします。
下村由理恵さんは特定のバレエ団に所属しないフリーのダンサー。フリーという立場の日本での社会的弱さにも拘わらず、一匹狼で頑張っているのは大変なことだと思います。彼女の言葉「バレリーナは商品。魅力がないといけない。その為に楽をしてはダメ」に凄まじいまでのプロ意識を感じます。私は、こんな彼女が大好きです!!。
 
実は、私はこの「スーパーワールドオーケストラ」、入場料があまりに高かったし、都合も付かなかったこともあって、生のステージを観に行けませんでした。
昨年、「テレビ東京」やBSディジタル放送の「BS Japan」が放送し、映像を見ることができたのですが、再度、今年「BS Japan」が放送してくれて、改めて、この「ドンキ・・・」のパドドゥの素晴らしさを実感した次第です。
 
ところで昨年(2002年)のスーパーワールドオーケストラの演奏には、指揮ディルク・ブロッセ で、西島千博さんと福島昌美さんがシンデレラのパドドゥとウエストサイドストーリーを踊りました。私も観に行きましたが、東京フォーラムの客席の最後部近くで、二人は米粒のようにしか見えませんでした。特にウエストサイドストーリーがよかったと思います。そんなわけでテレビの放映を待っていたのですが、昨年12月のはじめに「テレビ東京」が放送しましたが見落としてしまいました。ぜひ「テレビ東京」か同系列の「BS Japan」が再放送をしてくれることを期待しています。

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