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白鳥の湖:ルテステュ、マルティネズ、パリ・オペラ座バレエ   (2009.2.1)

パリ・オペラ座バレエのエトワール、アニエス・ルテステュとジョゼ・マルティネズが踊ったヌレエフ版「白鳥の湖」の舞台を収録した映像があります。ヌレエフ版の特徴は、王子が夢の中で見た出来事が現実となるという、王子の潜在意識に焦点を当てた点で、通常主役はオデットとオディールですが、これに王子と家庭教師ヴォルフガングに変身したロットバルトが加わった構図で展開されています。ロットバルトを演ずるカール・パケットの存在感と、第一幕の乾杯の踊りを男性のコール・ド・バレエに踊らせるなどの工夫が、どちらかと言うと退屈な第1幕を引き締まったものにしているように思いました。もちろん、第2幕以降の長身のルテステュ、マルティネズという美女美男のカップルの優雅で美しい踊りも素晴らしいのですが・・・。
 
第2幕、ルテステュの白鳥は、登場した瞬間から、場を完全に支配するような神々しいオーラが感じられ、まさに鳥肌物の素晴らしさです。ただ、ルテステュは、現在オペラ座の第一人者であり、堂々と自信にあふれており、それが鼻につき、私は、あまり好きになれませんでした。オデットはもう少し、かってのポントワやプラテルのような、上品さと奥ゆかしさが欲しい。一方、パートナーのマルティネズは、突き進んでくるルテステュの勢いにやや押され気味で、女性上位・・・?という感じはぬぐえませんでしたが、長身ですらりとして、品格あるノーブルの典型を見せてくれていて、好感を持ちました。マルティネスは私生活でも、ルテステュとパートナーということですが、これではルテステュの尻に敷かれているのでは??と少し心配になりました。
 
一方、第3幕のオディールは、この強気が功を奏して最高です。徹底したクールな邪悪な感じと、シャープな踊りにゾクゾクしました。時折浮かべる、氷のように冷たい微笑が、悪魔の娘オデフィールの微笑みにふさわしい。最後の、のけぞりながらグッと堪えた独り立ちのバランスは余裕たっぷり、もうコワイぐらいカッコよいのです。グラン・フェッテもダブルを入れてしっかり手堅く決めていました。
ステージの上から撮影するなどカメラワークによって、白鳥たちのコールドもよく分かるし、映像もとてもきれいです。
[キャスト]オデット&オディール:アニエス・ルテステュ
ジークフリート王子: ジョゼ・マルティネズ、
ロットバルト、家庭教師:カール・パケット
パリ・オペラ座バレエ
[収録] 2005年12月 パリ・オペラ座(バスティーユ)

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