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新国立劇場「ラ・シルフィード」「パキータ」 (2003.7.1)
新国立劇場「ラ・シルフィード」と「パキータ」を見てきました。
「ラ・シルフィード」は、マリー・タリオーニが初めて爪先で立って踊った作品として有名です。主役を踊ったマリー・タリオーニは透明な白い衣裳を身にまとい、華奢な爪先で軽やかに宙を舞い、この世のものとも思われぬ夢の世界に観客を引き込んだそうですが、今回の主役の志賀三佐枝も、このタリオーニを思わせるように、とても繊細で美しい踊りでした。軽やかで妖精そのもの。着地で靴音がまったくとしないのも驚きです。そして細やかなブーレが正確で美しいこと。
見事にコントロールされた踊りは絶品でした。そして、第二幕終盤のクライマックス、彼女の胸も背中も吹き出た汗できらきらと輝いていました。これほどまでに汗びっしょりのバレリーナは見たことがありません。
それほど彼女は、懸命に精魂込めて踊っていたのでしょう。彼女の熱演に胸が熱くなりました。
それから、とても印象に残ったのが、ジェームス役の小嶋直也の踊りです。日本に数少ないダンスール・ノーブルとの評価の高い彼ですが、この舞台を見てそれをさらに強く感じました。豪快さはないのですが、パの一つ一つが正確で、心を込めて踊っているという感じが伝わってきます。志賀三佐枝との絶妙なパートナーシップも微笑ましささえ感じるくらい見事です。
ただ、この「ラ・シルフィード」、同じ妖精ものの「ジゼル」と比べると、古さを感じます。今回はデンマークからソレラ・エングルド女史を招いて、ブルノンヴィル版「ラ・シルフィード」を忠実に再現し香り高いものにしたとのことなので、かなり期待したのですが、やはり何となく、もの足りなさを拭えきれませんでした。
第2部の「パキータ」では、さすがヴィシニョーワ。出てきただけで、その華が他のダンサーと全然違います。長い腕の表現が本当に美しい。
コルプのサポートもしっかりしてとてもよかった。見せ場の32回のグランフェッテは、軸足がずれたもののバランスを崩さず、最後のシェネも、凄いスピードにも拘わらず、全く乱れず見事。観客の大きな拍手を受けました。
また、コルプのヴァリエーションはスピード感溢れてすばらしかった。主役以外では、パドトロワの第1ヴァリエーションを踊った遠藤暁子は美しかったけれど、このヴァはもう少し軽やかさと可愛らしさが欲しい。
第2ヴァリエーションの西山祐子の踊りは美しく魅力的。軽快で華やかで、笑顔が素敵だった。
目当ての第1のヴァリエーションを踊った湯川麻美子は精彩がなかった。出だしのエカルテ・ドゥヴァンでは脚が上がらずバランスの静止も中途半端。
このヴァリエーションでは、脚は上がるだけ上げ、バランスはためるだけためて・・・と華麗さと粘りが求められるのにいずれも不十分。
終盤のイタリアンフェッテに至っては軸足が崩れてボロボロになって破綻。プロなんだからこれでは困る。もっとしっかり稽古してきて欲しかった。スタイルが良いだけに残念。
第2、3、4のヴァリエーションの大森結城、前田新奈、西川貴子はミスなく踊りきったけれど、無難な踊りという感じであまり印象に残らなかった。
コールダバレエなど、一緒に踊ったその他のダンサー達は、安定感を欠き、バランスの乱れなど、いくつかミスが目立った。湯川麻美子を初め、新国のダンサーはこの程度か?・・・とがっかりした。
こんなわけで、「パキータ」の盛り上がりが欠けたために、第1部「ラ・シルフィード」、第2部「パキータ」という順序は、疑問に感じた。短編の「パキータ」、本命の「ラ・シルフィード」という順序にしたほうが良かったように思います。
それにしても、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏はいただけません。軽快なテンポの曲が多い「パキータ」では、それほど気にはならなかったのですが、「ラ・シルフィード」では、管楽器のミスが目立ちました。序曲の出だしから音をはずしたのには参りました。もう少ししっかり演奏して欲しいものです。
「ラ・シルフィード」
シルフィード 志賀三佐枝
ジェームス 小嶋直也
「パキータ」より
パキータ ディアナ・.ヴィシニョーワ
士 官 イーゴリ・.コルプ
2003年6月28日新国立劇場オペラ劇場
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