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井上バレエ「シンデレラ」 (2001.7.21)
井上バレエ団公演の「シンデレラ」を見てきました。(7月20日:メルパルクホール)
主役のシンデレラは藤井直子さん、王子はウィーン国立歌劇場バレエ団のソリスト、クリスチャン・ムジル。藤井直子さんの踊りは映像では度々見ていましたが、生の舞台は初めてです。どんなシンデレラを演じてくれるか、とても楽しみでしたが、期待に違わぬとても素敵なシンデレラでした。
第一幕シンデレラの登場。とにかく可愛らしい。小柄で華奢で、お人形のよう。バレエのプリンセスそのものという感じ。大きな瞳の輝き、やわらかな腕、手の表情、力の入れ加減、抜き加減・・・、テクニックを誇示するような派手さはみじんもなく、とても品の良い感じのバレリーナです。憧れの象徴であるバレリーナにとって、可愛らしいイメージは大切なことだと思います。可愛らしさも技術のうちですよね。この可愛らしさと品の良さは、直子さんの財産でしょう。大切な財産をいつまでも失わないようしてもらいたいと思います。
第二幕、お目当てのパ・ド・ドゥ。直子さん、始めのうち、緊張していたのか、時折険しい表情が感じられました。でも、可愛いバレリーナがプレッシャーに押しつぶされまいと懸命に頑張っている姿は、本当に美しく思いました。肉体だけで全てを表現するバレエ。コンディションが、すぐ踊りに表れてしまう。バレエが「一瞬の芸術」と言われる所以です。だからこそ、「一瞬の輝き」を求めて懸命に踊るバレリーナの姿は、感動を呼ぶのだと思います。
直子さん、次第に落ち着いて調子を上げてきたようで、アダージョ中盤になるとクリスチャン・ムジルの好リードに支えられて、のびのびと踊っておられたようでした。
クリスチャン・ムジルもアダージョのサポートはとても上手だと思いました。直子さんをデリケートに、しかも力強くリードしていました。微笑ましさを感じるパ・ド・ドゥでした
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でも、ムジルのバリアシオンは、ジャンプも低く、かなりセーブしているように感じました。物足りなく思ったのは私だけでしょうか。
堤俊作指揮ロイヤルメトロポリタン管弦楽団は、出だしの序曲で音をはずしたのでどうなることかと思ったのですが、尻上がりに良くなっていきました。堤さんはダンサーをよく見て指揮をしていたようで、ダンサーの方々、踊りやすかったと思います。
ただ、メルパルクホールはあまり音響効果が良くないようです。潤いが無くとても固い音に聞こえてしまうのです。プロコフィエフのオーケストレーションの素晴らしさを堪能できなかったのは残念でした。
それにしても、藤井直子さんは素敵でした。カーテンコールでの鳴りやまぬ拍手。満面の笑顔の直子さん、ダンサーとしてこの上ない喜びを感じた一時でしょう、
藤井直子さんの、全身から滲み出る愛らしさは、おとぎ話のヒロインのイメージそのもので、「シンデレラ」はまさにはまり役だと思いました。
私は「眠りの森の美女」が大好きなのですが、将来、彼女がオーロラ姫を踊ってくれたら、と願っています。難しい「ローズアダージョ」のバランスを決めてにっこり微笑む直子さん・・、想像するだけでわくわくしますね。でも3幕のグランパドドゥでは妻となった姫には可愛らしすぎるのでは?・・余計な心配かもしれませんね。
井上バレエ団の公演は「生」で初めて見たのですが、とてもエレガントな雰囲気のバレエ団と思います。出演者は皆、いかにも両家の「お嬢さん」と言った感じで、奥ゆかしさ、品のよさが自然に滲み出てくるようなのです。
井上バレエ団の舞台は、ダンサーの方々が皆小柄なこともあってか、東京バレエ団や松山バレエ団等と比べるとのスケールは小さいのですが、身近な親しみやすさのようなものを感じました。小ホールでモーツァルトの室内楽を聴いているような感じです。「井上博文によるバレエ劇場」として始まり、現在に至ったというバレエ団の生い立ちによるのか、小劇場なりの良さが感じられます。
一生懸命練習に励んでこられたダンサーの方々そしてスタッフの方々。「夢をありがとう。お疲れさまでした!!」と、心から労を労ってさし上げたい気持ちです。
本当に有り難うございました。
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