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映画「東京オリンピック」のDVD  (2004.7.1)

映画「東京オリンピック」のDVDが出ています。この映画は、1964年に市川崑監督が東京で開かれたオリンピックを記録したものですが、当時、この映画が封切られたとき、賛否両論でマスコミを賑わせたものです。「日本の映画なのに日の丸が揚がる場面が少ない」、「これが記録映画と言えるのか」、「いや、これこそ芸術だ」・・・・等々、それほど、この映画は、当時の「記録映画」とは違っていました。
冒頭に写される、ビルを打ち砕く鉄球、「破壊される東京」のシーン。度肝を抜かれます。このシーンにオーバーラップして、1964年当時の「現代の東京」の姿に移っていきます。ギリシャで点火された聖火が、「ひめゆりの塔」が建つ沖縄から、原爆ドームのある広島を通過し、富士山の裾野を走り抜けていきます。
 
また、一人の選手をしつこく追いかけたり、「人間」をシリアスに描いていきます。投球の前に緊張のあまり、おかしな行動をする砲丸投げの選手、雨の中の競歩の優勝者が、苛立たし気にゴールのテープを引きちぎる様子、小さな国から単身来日し、孤独な練習と競技を終えて、すぐに帰っていく選手。柔道で、オランダのヘ−シングに押しつぶされる神永の姿。女子バレー、東洋の魔女が「ソ連のオーバーネット」で勝利するシーン。哲人のような、ヴィキラ・アベベの勇姿。
 
単なるオリンピックの記録ではなく、「人間のドラマ」であり、観終わった後、圧倒的な感動が沸き起こってきます。市川監督は私たちに、「人間とは何なのだろう?」「オリンピックで競争する事は何なのだろう?」という問いかけをしているように思えます。競技を単になる「記録する」だけではなく、「人間のドキュメント」を描こうとしていると思います。この映画以降、テレビでも、本格的なドキュメンタリー番組が出てきたように思います。
この映画、故市川崑監督の代表作の一本であるだけではなく、日本が世界に誇れる代表的な映画のひとつだと思います。

  総監督:市川 崑
  音楽監督:黛 敏郎
  企画・監修:オリンピック東京大会組織委員会



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