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2つのモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集 (2001.4.15)
モーツァルトは、少年の頃からセレナードやディヴェルティメントの中にソロ・ヴァイオリンの為の楽章を組み入れていました。
ところが19歳になった1775年に急にヴァイオリン協奏曲の作曲に没頭し、9か月の間に5曲もの曲を作り上げてしまいました。
第1番K.207、第2番K.211、第3番K.216、第4番K.218番そして第5番K.219です。
ヴァイオリン協奏曲というと通常この5曲の協奏曲を指しますが、その後1779〜1780年に書かれた、第6番K.260および第7番K.271iを加えて、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲は合計7曲とされています。
私は2つのヴァイオリン協奏曲全集を持っています。
一つは、藤川真弓のヴァイオリン、ヴァルター・ヴェラー指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏、もう一つは、ヘンリク・シェリングのヴァイオリン、ネヴィル・マリナー指揮アカデミーオブセントマーチンインザフィールズの演奏です。
藤川盤には、第1番〜第5番、マリナー盤には、第1〜7番すべてが収録されています。
いずれもCD。1970後半から80年にかけての録音で、アナログのマスターテープからディジタル化したもののようです。
シェリング、マリナーの演奏はモーツァルト演奏の名手同士によるもので、さすがに見事な演奏です。マリナー/アカデミーのクリアーな中にも暖かみにある伴奏に、シェリングの堂々たる、でもはったりのない美しいヴァイオリンが浮き上がります。
一方、藤川真弓/ヴァルター・ヴェラーの方ですが、こちらもなかなか楽しめます。
藤川真弓さんの演奏は一口で言うと、丁寧でとても美しい。モーツァルトの音楽にはぴったりの演奏のように思います。でも、あまり丁寧すぎるかなと思うところもあります。
嫌味にならない程度に、もう少し自己主張があってもよいかなと思います。
私は、もう一枚、藤川真弓さんがデビューしたての頃に録音したヴァイオリン協奏曲第3番K.216と第5番K.219のレコードを持っています。パーヴォ・ベルグルンド指揮、日本フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、埼玉県民会館で録音されたアナログのLPレコードです。
実は私はこちらの方が好きです。藤川さんが1970年にベルギー国際コンクールで優勝、チャイコフスキーコンクールで2位の栄冠を得た直後の1971年の録音です。
モーツァルトの青年時代の2曲に対して、彼女は、何て率直にぶつかっていることでしょう。ベルグルンド/日本フィルのどちらかというと控えめな渋い伴奏に対して、若い藤川さんのヴァイオリンの音が踊っています。知らず知らずに引き込まれていくのです。
日本フィルは小編成のようですが、これがかえって、ベルグルンドの意図が隅々まで行き渡っていて、藤川さんとも、しっくり息があっていて、微笑ましささえ感じる、とても聞き応えのあるレコードになっています。
何度もかけたため、LPレコード特有のスクラッチノイズが増えましたが、今でも大切な宝物の一枚です。