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映画「ホワイトナイツ」 (2004.5.1)
映画「ホワイトナイツ」は、不出生の天才バレエダンサー、ミハイル・バリシニコフ主演の映画ですが、単なるバレエ映画というだけでは済まされない、実に見応えのあるものです。
ミハイル・バリシニコフは、旧ソ連時代の1974年に、米国へ亡命しました。ニューヨーク・シティ・バレエで活躍、アメリカン・バレエ・シアターの芸術監督をつとめました。
この映画ホワイトナイツの主人公主人公ニコライも、ソ連から米国に亡命して、バレエダンサーとして世界中を駆けめぐっていました。ところが、彼の乗った旅客機がロンドンから東京へ向かう途中、エンジントラブルによりソ連の空軍基地に緊急着陸してしまいます。自分の身元が分かってしまうことを恐れたニコライはパスポートを破いて飛行機のトイレに流します。しかし、結局KGBにばれてしまい、軟禁され、米国を捨てた黒人のタップダンサー、レイモンドを監視役につけられます。当初二人は、立場の違いから互いに反発しあっていましたが、二人の間にはしだいに友情が芽生えていきます。やがて各々自由に対する想いから、綿密な計画を立て、脱出を試みます。
それぞれが実際のプロ・ダンサーである、ミハイル・バリシニコフのバレエ、グレゴリー・ハインズのタップダンスシーンは絶品です。ミハイル・バリシニコフのニコライは、作中繰り返し登場するダンスシーンで、言葉よりも雄弁に演技をしています。無言なればこその圧倒的な表現力です。それは言葉で主張することを禁じられた旧ソビエトに育ったからなのでしょうか。一方、グレゴリー・ハインズのレイモンドは、かつてベトナム戦争で悲惨な経験をして、アメリカに失望し、脱走してソ連に亡命したという設定ですが、背中を丸め、憂鬱そうにタップを踏み続けます。
二人は、監視される者とする者、という立場ながら、それぞれの芸術を主張し続けていきます。ニコライは己の感情を最も的確に表現することの出来るダンスで自己を主張し、レイモンドもまたそれにタップで答えます。
芸術の自由を求めて祖国を捨てたソ連の青年と、自由圏を離脱したアメリカ青年の心の交流を描いたドラマで、卓越した心理描写、脱走のスリリングな展開など、実に見事な出来映えの優れた映画だと思います。
映画「ホワイトナイツ」
1985年制作、アメリカ映画
監督:テイラー・ハックフォード
出演:ミハイル・バリシニコフ、グレゴリー・ハインズ
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