【トップページへ戻る】
バレエ・ゆうづる:中島綾子、ABC・FACTORY公演 (2005.12.28)
中島綾子さんの熱演に感動
素敵なバレリーナに出会いました。「ゆうづる」のヒロインの中島綾子さんです。
彼女は、バレエを中島・卯埜バレエ研究所で学び、その後、香港バレエ団に入団し多くの公演で踊って帰国。現在
ABC・FACTORYの主演ダンサーとして活躍しておられるとのこと。彼女の踊りを観たのは初めてですが、役に真摯にかつ健気に取り組む姿に感動し、一時たりとも目を離せませんでした。彼女はこの役に、どんなに真剣に取り組んでいたことか。一幕中盤から彼女の胸や背中は汗が吹き出していました。こんなに汗にまみれたバレリーナは初めてです。それだけ彼女は、この役に全身全霊をつぎ込んで、体当たりで踊っていたのです。
胸がジーンと熱くなるとともに、思わず随所で「頑張れ!!」と叫びたくなりました。
技術的にも非の打ち所が無く、可憐な踊りの中に、高度なパやポーズを加え、これを危なげなくこなし、何より表情が豊かです。
伸ばした手足が全くぶれないアラベスクのバランス、軸足の下に回転台があるのかと思うほどなめらかなアラベスクの回転、まっさかさまに飛び込むフィッシュダイブ、高く飛び上がったリフトなど、振付の安藤雅孝氏の厳しい要求に応え、振付を完全に自分のものとして昇華する・・・、懸命な努力を感じました。
踊り進むにつれて、彼女自身も役にのめりこんできたようで、独自の「つう」の世界を作ってくれました。全幕出ずっぱりで、相当な重労働でしょうが、良く耐えて踊り抜いたのも、あっぱれです。
踊り終わってのレヴェランス。鳴り止まぬ拍手と喝采。
ホットして嬉しそうに、深々と頭を下げる中島さん。
ダンサーとして、このうえない喜びを感じたことでしょう。
観ているほうも、心から「お疲れ様」と労ってあげたくなる一瞬でした。日本にも、こんな素敵なダンサーが居るんだと改めて驚いた次第です。
また、牧阿佐美バレエ団の菊池研氏が参加。中島さんの可憐な踊りと対照的なダイナミックな踊りで、大きな拍手を受けていました。
ところで、「ゆうづる」ですが、目を離せない中島綾子さんの好演のうちに、2時間が
あっという間に過ぎてしまいました。「鶴の恩返し」で知られる「ゆうづる」をもとにしたもので、サッカー青年・陽輔が美しい鶴を助けようとして、自分の足が不自由になってしまいます。そこへ、美しく梅の花のような女性「つう」が現れ・・・・。という物語です。チーフプロデューサー卯埜賀寿江さんは、バレエの表現を基礎にしながらも、その枠にとらわれず、舞台芸術の可能性を探って、楽しい作品に仕上げています。
会場の東京芸術劇場小ホールは、客席数300の多目的ホール。あらかじめ固定されたステージはなく、床に組み込まれた上下可動式の床パネルを組み合わせることで、ステージの大きさ、高さ、形が自在に変わり、舞台と客席が一体となった演出が可能です。伝統的な舞台様式にとらわれない演劇、パフォーマンス、ミニコンサートなどに適し、プロからアマチュアまで、新鮮なアイデアをもつ団体が幅広く利用しているとのことです。
今回は、中央のステージを囲むようにして観客席を配置し、出演者は、観客席の中の通路を通ってステージに向かいます。出演者と観客の交流をより密接にしたいという心配りでしょう。
この「ゆうづる」は、バレエとは称していませんが、ほとんどのダンサーはトゥシューズを履いて踊りました。主役はもちろんのこと、コールドバレエの踊りも技術的には、厳格な古典バレエの様式に則った本格的なもので、爪先の使い方も正確で美しく、むしろ「古典バレエ『ゆうづる』」と言っても良いくらいです。
ただ、ステージは、上下可動式の床パネルを組み合わせているため、トゥシューズのダンサーがつまづくのではないかとチョッと心配でした。また、床パネルが響くのか、ダンサーたちの着地音も大きく感じられました。ダンサーの大切な足を痛めない為にも、リノリウム等の緩衝材を敷くなどの工夫が必要に感じました。
音楽も、「白鳥の湖」をはじめ、バレエ曲、モーツァルト、ドビュシーの曲などのクラシックを上手に使って、一時も退屈にならないステージ運びはさすがでした。
妻が風邪で寝込んでしまったので、見に行くのを辞めようかと迷っていたのですが、妻から「行ってきていいよ」と言われ、思い切って来てよかった。素晴らしい作品と、素敵なダンサーに出会えました。
ダンサーの方々、裏方の皆さん、素敵なクリスマス・プレゼントを有難う。
お疲れ様でした。
バレエ:ゆうづる
プロデューサー:卯埜賀寿江、演出・振付:安藤雅孝
キャスト つう:中島綾子、陽輔:船原孝路、ケンエモン:菊池研
ほか、ABC・FACTORY
2005年12月25日 東京芸術劇場小ホール
この舞台に出演された、JUNさんこと渡邉順子さんから、コメントを頂きました。掲載させて頂きます。
中島綾子さんは本当にびっくりするほど亡くなった中島久先生によく顔立ちがにている方なんです。
舞台の袖幕に故中島久先生のお写真がおかれ、なんとなく私は目頭が熱くなるものを感じました。
綾さんはリハーサル中からよく汗をかいていらっしゃる方でした。
舞台中日の最後の舞台挨拶の時には綾さんが涙ぐんでいて。(辛らそうだった)
私たちですら、22日からのリハーサル・本番と過酷な運動をしたような思いでいるなか、綾さんは私たち以上に過酷な
運動に耐えたダンサーでした。私は右足を捻挫していましたが絶対に足が痛いなんて言えず頑張れたのは綾さんがすごく頑張っていたからだったかもしれません。
綾さんとはもうこれから先もずっとお友達でいたいダンサーです。
お母様の卯埜賀寿江 先生も素敵な先生で24日クリスマスイブにはダンサー・スタッフ全員にケーキの差し入れを配ってくださったり、
心配りの上手な方で本番中もリラックスして舞台に立つことができました。
リハーサル中にヤエ姫の代役で少し踊ってくださった時はアンサンブル一同喜びの声を上げながらのレッスンでした。
私は今回、アンサンブルで出演させていただきましたが。
「ゆうづる」のアンサンブルは世界最高のアンサンブルだったと自信を持っていえます。
5回も「ゆうづる」の舞台に立てたことは「ゆうづる」の舞台に立ったすべての出演者の誇りになったのではないでしょうか。
沢山の拍手を頂いて。
ダンサー全員が自分の限界まで踊り抜いた舞台だったと思います。
こんな舞台に出演できて本当に嬉しかったです。
渡邉順子
【トップページへ戻る】