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歌劇「ツィーデ」は「後宮からの逃走」より3年前に書かれた未完のジングシュピールです。マンハイム・パリ旅行の経験は、モーツァルトを人間的にも芸術的にも大きく成長させたようです。その時期に作曲されたのがこの「ツァイーデ」なのです。
す。
構成や内容は「後宮からの逃走」によく似ています。「後宮・・」のように派手なアリアはありませんが、各所に美しいメロディのアリアが散りばめられた逸品です。
この作品の自筆楽譜は、コンツタンツェとM.シュタードラーによって、モーツァルトの遺品の中から発見されたそうですが、モーツァルトの妻コンツタンツェは手紙の中でつぎのように書いているそうです。
「私の宝の中にどんなんに素晴らしいものをみつけたか、おわかりにならないでしょう。私も全く知らなかった作品がひとつあります。シュタードラーは、極めてすぐれたものと見なし、個々の曲を公にするよう、私に勧めました。オペラとメロドラマが一体となったようなもので、台本も素敵です。」
結局、後に、欠けた部分を補ってその楽譜は出版され、今日に引き継がれているということです
(あらすじ)捕虜ゴーマッツとソリマン皇帝の侍女ツァイーデは愛し合っています。これをやはり皇帝の捕虜の皇帝の部下アラチムが助けだし、二人は逃亡しようとしますが、捕らえられてしまいます。皇帝は激怒し、死を宣告します。最後の四重唱でソリマンは「どんな涙も役に立たぬ。二人の死は免れない」と歌います。
この中で、第一幕、トルコ皇帝ソリマンに囚われているゴーマッツのまどろむ姿に惹かれて、皇帝の侍女ツァイーデ(S)が恋する想いを歌うアリア「安らかにお休みください、あなた Ruhe sanft, mein holdes Leben」は、ヴィオラがギターを思わせるピッチカートを奏で、オーボエとファゴットのソロが味わいを添える、優雅なメヌエット風の美しい曲でです。
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私のコレクションは、LPとCDですが、いずれも未完部分を補って録音し、一通り完結したジングシュピールとなっています。
○ブレゲン/ホルヴェーク/レオポルト・ハーガー指揮ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団(LP)
○マティス/シュライアー/ベルンハルト・クレー指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団(CD)
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ジングシュピール「ツァイーデ」(Zaide) K.336b (344) 2幕15曲(未完)
登場人物 :皇帝の侍女ツァイーデ (ソプラノ)、捕虜ゴーマッツ(テノール)
皇帝の部下アラチム(バス)、皇帝ソリマン(テノール)、オスミン(バス)
第1幕
(1) 合唱「さあ、陽気にやろう。誰にも悩みがある。苦情を言っても始まらない」
(2) ゴーマッツのメロローゴ
(3) ツァイーデのアリア 「おやすみ、いとしい人よ、安らかに」
(4) ゴーマッツのアリア 「運命がどんなに荒れても、この絵姿を盾にして防ごう」
(5) ツァイーデとゴーマッツの二重唱
(6) ゴーマッツのアリア 「友よ、ありがとう。あなたを抱きしめ、別れを急ぐ」
(7) アラチムのアリア 「大胆に試せ幸運を。諦めず勇気を出せ」
(8) ツァイーデ、ゴーマッツ、アラチムの三重唱
第2幕
(9) ソリマンのメロローゴとアリア 「ライオンも馴らせば、やさしい主人につながれる」
(10) オスミンのアリア 「空腹で食卓についたのに」
(11) ソリマンのアリア 「腹がたつ。充分償って思い知らせてやろう」
(12) ツァイーデのアリア 「悲しい鳥は篭の中で、不自由な絶望にむせび泣く」
(13) ツァイーデのアリア 「虎よ、そのまがった爪で捕らえた獲物を早く殺せ」
(14) アラチムのアリア 「権力者は無情に奴隷を見下すのみ」
(15) 四重唱
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