バレエ「海賊」のパ・ド・ドゥは、かつてはロシア以外ではあまり知られていませんでしたが、ヌレエフが西側に亡命し、1964年頃マーゴ・フォンティーンと踊ったことから、爆発的に西側に広まったと言われています。
現在では、バレエコンサートで度々取り上げられる人気作品の一つで、優雅なアダージョやコーダの32回のグランフェッテなど見所が多くて楽しめます。
とても素敵な海賊の映像がYouTubeに載っていました。踊っているのは、 (Zhan Xinlu)とMa Xiaodongという中国人のダンサーです。 アダージョでの二人の踊りは、しっとりとした情感がこもって見ごたえがありました。 このアダージョ、アチチュードやアラベスクのバランスといったポーズや高く挙げられたリフトなど難しい場面が多いため、 不安で表情が強張っている女性ダンサーをよく見かけますが、Zhan Xinluもアダージョの最初はかなり緊張しているようでした。 |
始まって間もなくのプロムナードの最初、パートナーの手を握ってアチチュードのポーズをとったとたんグラリ、一瞬表情が険しくなりました。
でも即座に立て直してプロムナードの回転を無事に終えて、見せ場のアラベスク・パンシェへと続けました。
アラベスク・パンシェでは、Ma Xiaodongに支えられたZhan Xinluの右腕がギクギクしてやや不安定だったけれど、左脚をほどよく挙げて、美しいポーズを決めました。
スリムなウェスト、スッキリ伸びた長い脚、伸びやかな爪先・・・、Zhan Xinluのアラベスク・パンシェは本当に美しい。
180度超まで脚を挙げて技術を誇示する人もいますが、海賊のメドーラでは脚の挙げ過ぎは上品さを損なってよくない。これ位が丁度よいと思います。
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アラベスク・パンシェを無事終えてZhan Xinluは大分落ち着いてきたようで、かすかに笑みが浮かんできました。
腰を高々と頭上に挙げられて背中を反らす独特の場面でも、90度ほど腰を曲げた優雅なポーズでした。
腰が折れるのではないかと思われるほど極端に曲げて柔軟さを誇示する人もいますが、下品に見えてしまい、私は好きではありません。
アラベスク・パンシェにせよ、このポーズにせよ、Zhan Xinluは節度をわきまえていて、曲芸的にならず、気品に溢れています。
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終盤のリフトは重さを感じない位軽やか。リフトから真っ逆さまに落ちるフィッシュダイブも美しかった。
Zhan Xinluはバランスやリフトのポーズが美しいけれど、回転もとても軽やか。
パートナーにウェストを支えてもらって廻るピルエットで、回転が止まりそうになった女性の腰を、男性が一生懸命に回しているのは見苦しくて見るに耐えないけれど、Zhan Xinluの回転は全く止まらずスムーズで美しい。
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女性のヴァリエーションには、たくさんの種類の音楽が使われていて、どの踊りが踊られるか楽しみですが、
Zhan Xinluはトゥール(回転)が多くて難しいメドーラのヴァリエーションに挑戦しています。華やかなヴァリエーションでコンクールや発表会で定番になっている踊りです。
Zhan Xinluのしっとりした女らしさにうっとり。片足のつま先を軸足の膝に付けてバランスを取るルティレがこのうえなく美しい。
このポーズをこんなに繊細で正確にできる人は珍しい。最後に高速のシェネで舞台を一回りして、両足のトゥで立ってのフィニッシュ。
歯を食いしばって必死にトゥの先の乱れを食い止めたのは偉い。 背中にはうっすらと汗がにじんで、ほっとした表情がこの上なく美しかった。
そしてコーダ。難関のグランフェッテ・アントゥールナン。表情は真剣で、笑顔を忘れて必死に回っている感じでした。 軸足が左右にずれて、かなり辛そうで今にも崩れそうでハラハラしたけれど、懸命に頑張って回る姿が可愛らしい。 前半にも後半にもダブルを入れて必死に回る姿が、何とも健気で可愛らしい。停止は危うかったけれどグッと堪えて懸命に持ちこたえたのが感動的でした。 フィニッシュ近くのシェネは軽快で、何とも美しいのは最後の腰を支えられたピルエット。パートナーの助けを一切借りず、自分でスムーズに回っていました。流石です。 無事終了。大きく波打っていた胸が美しい。さすがにホッとしたようで、観客の拍手に笑みがこぼれました。 |
海賊のパ・ド・ドゥのメドーラのコスチュームは、薄いレースドレスの場合と真横に張り出した丈の短いスカートのクラシックチュチュの場合があり、全幕の上演ではレースドレスの方が多いようです。
ただ、バレエコンサートではクラシックチュチュの方が良い。
レースドレスは脚が見えにくいのでミスを誤魔化せるけれど、グランフェッテなどの回転では、裾がまつわりついていかにも踊りにくそう。
一方、クラシックチュチュは脚が丸見えでミスの誤魔化しがきかないので、踊るほうは大変だけど、見る方は美しい脚の動きを堪能できて楽しい。
今回のZhan Xinluの衣装は、クラシックチュチュ。長身でスリムなZhan Xinluにとてもよく似合っています。
清楚なたたずまい、溢れる気品、スッキリ伸びた長い脚が美しい優れたプロポーション、伸びやかな爪先・・・、バレリーナの資質をあまねく備えた魅惑の舞姫。
ひたむきに踊る姿から、とても一生懸命で真面目な子という印象が残った。これからも一層踊りに磨きをかけて、第一線で活躍するバレリーナに成長して欲しいものです。
Zhan Xinlu(Gold Medal winner)/Ma Xiaodong(Grand Prix winner) (China) Le Corsaire Pas de deux , Final of The 1st IBCC(Ballet)(2014/12) → |
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