・写真集 色 景 

荒木経惟(あらき のぶよし)
マガジンハウス 91-12-19
6000円
風景 カラー ヌード




荒木経惟は、いまさら、私がどうこう書くこともなく、超有名人である。
97年の夏のニュ−スでは、「愛しのヨ−コ」とゆう映画もできるそうだ。彼が、監督をする映画でなく、主人公の映画である。
俳優は、あのNHK大河ドラマ「秀吉」にもでた竹中直人(荒木経惟 役)、そして
奥さんの「ヨ−コ」さん役が、なんと、アイドルで歌手の中山美保である。
写真家にもいろいろあるが、アイドルを巻き込んだ映画のモデル・主人公となった人は、あまり聞いたことがない。
荒木さんの面目躍如たるものがある。

(そういえば、NHKの連続朝ドラマで「なっちゃんの写真館」ってのがあって、写真家の立木氏のお母さんが、主人公だったなあ・・・。
でも、今回は恋愛物、純愛物、愛情物語だもんなあ・・・・。しかも、本人がまんま主人公・・・・。)

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わたしが、荒木経惟を知ったのは、いつ頃かはっきりしないが、初めて買った本は良く憶えている。
「わが愛、陽子;ソノラマ写真選書:’78年出版」か「写真への旅;現代カメラ選書13:’76年出版」のどちらかである。
ことに、’76年の「写真への旅」以前の単行本は、’70年のゼロックス写真帳や71年のセンチメンタルな旅(自費出版)など5〜6種類しかないことからすると、かなり初期から知っていたようである。

まだ、あまり有名でなく、(もちろん、今のようにワイドショ−の司会者や女性アシスタントがしたり顔で、荒木氏の写真集やひととなりについて、話すことなど、おもいもよらず・・・)しかし、一部で、大変熱い注目を浴びつつある時だった。
私は、「写真への旅」を、読んで、たいそう感心した覚えがある。そこには、荒木さん独特の文章とともに、写真への愛情がにじみ出ていたからだ。
この原稿は’75年に朝日カメラ誌上で「荒木経惟の実践写真教室」として、連載した物を、単行本化したものであるが、アッジェ、ベレニス・アボットからダイアン・ア−バスそして広島8/6、東松照明から篠山紀信、中平卓馬まで、縦横無尽に切ってゆく文章と写真への造詣の深さと荒木さんの写真を武器として、世界を切り開いてゆく意志、そして毒、その姿勢に深く共感した記憶がある。
(当時は今のようには、荒木氏の写真が、一般に認められてはおらず、きわもの的な扱いもされていたような記憶がある。)


私はその時から、荒木経惟とゆう写真家を、はっきりと認めたように思う。

1980年頃までは、ぽつぽつと出ていた本が、81年くらいから、どんどこ出版されるようになる。偽ルポジュタ−ジュ、偽日記、私が写真だ、物語ソウル、東京は秋、私小説、東京日記・・・・・・・。
これだけ、出てくると痛快だが、買う身になると財政的についてゆけない。
いまでは、「荒木経惟写真全集」まで、でる始末である。
これだけ、出版されていて、しかもどれもが、買おうかなと思わせるところが、なかなかである。
その魅力の本質は最初から変わってはいないと思う。写真を撮る視線が、写真をする視線が、すっきりとてらいがないように思える。

こうした荒木さんの写真集の流れの仲で、やはり転換点は、「センチメンタルな旅 冬の旅」(1991/2出版)だろうと思う。
これは、奥さんでもある陽子さんの死に絡んで、まとめられて写真集である。
新婚旅行を中心とした、(センチメンタルな旅)と、病になってからの(冬の旅)がセットとなっている。

この後、荒木さんの写真は、前にも増して精力的に本が出版されているが、その中で、『色』が立ち現れ始めたことが、くっきりと際だつ。
その写真集の一つとして、「色景」がある。
その色は、荒木さんのモノクロ写真から想像できない彩度の高いカラ−で、「色」を強烈に意識させる写真であった。
その色の透明度と彩度の高さは、確かに、この世の物ではなく、色(色景)に集中した意識、色を見ることに昇華した、物を見る眼、意識が消し飛んで原初的な見る眼になった写真家のまなざしを感じた。

荒木経惟のリリカルな素質がよく現れた写真集だと思う。


この前後の写真集は、さすがに私も、買いあつめた。
(・ 写真集 冬へ Tokyo:a City Heading for Death 1990-11-20 ;・ 写真集 平成元年 1990-04-29
;・ 写真集 センチメンタルな旅 冬の旅 1991-02-25;・写真集 色景 91-12-19)
あと「いとしのチロ」を買っとこうかな・・・。

ともかくも、鮮やかな写真群は、晴れ渡った空を映す深い透明な湖のように、心の湖底深く、癒されることのない感情を秘めて、
この世から色を抜き出して、見せてくれている。
写真を、色を、写し取ることが、唯一の救いであるかのように・・・。


その他 荒木 経惟 の本

 写真エッセー 男と女の間には写真機がある 荒木 経惟 あらき のぶよし 太田出版 H3-9-1 2500円 女 ヌード
写真集 わが愛、陽子 Yoko My Love 荒木 経惟 あらきのぶよし 朝日ソノラマ s-54-03-101800円 センチメンタ 他 写真エッセー 愛情旅行 荒木 経惟 あらきのぶよし マガジン ハウス 1989-03-08 旅行 陽子 写真集 平成元年 荒木 経惟 あらきのぶよし IPC 1990-04-292400円 日記 ヌード 写真集 冬へ Tokyo:a City Heading for Death荒木 経惟 あらきのぶよし マガジン ハウス 1990-11-20 風景 写真集 センチメンタルな旅 冬の旅 荒木 経惟 あらき のぶよし 新潮社 1991-02-252700円 他


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