ファーラー位
 半座位ともいい、上半身を約45度起こした体位である。ファーラー位を保つには、背部にバックレストを用いたり、ギャッチベッドを使う。さらに頭部や体側、腕の下などに枕を入れて安楽を保つ。ふだん仰臥位、側臥位などで寝ている人であっても、食事や面会時などはファーラー位をとることが多い。心臓や肺の障害をもった人の中には、仰臥位では呼吸困難が生じるため、ファーラー位で睡眠をとる人もいる。

フィランソロピー[philanthropy]
 博愛主義。慈善行為。企業や民間人が行う社会貢献活動又は民間が行う公益活動をいう。

福祉[welfare]
 広くは福利、幸福を表す言葉。宗教的意味では危急からの救い、生命の繁栄を意味する。また、社会福祉と同義に使われたり、社会福祉、公衆衛生、社会保障を包括した概念として使われるなど、必ずしも定義は定まっていないが、社会福祉の目的概念として健康で文化的な最低限度の生活を積極的に表すものとして、現代社会で定着をみている。

福祉活動専門員
 市区町村社会福祉協議会に設置される職員で、市区町村の区域における民間社会福祉活動の推進方策について調査、企画及び連絡調整を行うとともに広報、指導その他の実践活動の推進に従事することとされている。   

福祉機器
 国際標準化機構(InternationalOrganizationforStandardiza− tion;ISO)によれば、「障害者のための福祉機器」(technicalaid fordisabled person)として「障害者が使用する用具・器具または技術的なシステムで、特に身体の損傷・能力の障害・社会的不利などを予防・補償・軽減または解消するために作られたものか、あるいは既成のもの」と定義されているが、わが国では必ずしも厳密には定義されていない。一般には、身体機能に損傷を受けた障害者や、機能に衰えがみえる高齢者が、その障害や衰えた機能を補ったり、活動範囲を広げ自立した生活を可能にすることや介護の省力化等を目的として製作されたか、または既成の物でそのように使用される用具・機器等を意味する。なお、法的には「福祉用具」という言葉が使用される。

福祉教育
 国、地方公共団体、民間団体、ボランティア等が主に住民を対象として、福祉についての知識や理解、住民参加を促すために、講習、広報等の手段により行う教育。近年においては家族機能の低下、地域の連帯の喪失等の社会状況の変化に伴い、福祉教育の割合は大きくなりつつある。なお、学校においても、児童・生徒に対して福祉教育がなされている。

福祉サービスの基本的理念
 社会福祉法第3条において「福祉サービスは、個人の尊厳の保持を旨とし、その内容は、福祉サービスの利用者が心身ともに健やかに育成され、又はその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように支援するものとして、良質かつ適切なものでなければならない」とされている。   

福祉資金
 生活福祉資金貸付制度に基づく貸付資金の一種。低所得世帯、障害者世帯又は高齢者世帯に対して、@結婚、出産及び葬祭に際し必要な経費、A機能回復訓練器具及び日常生活の便宜を図るための用具の購入等に必要な経費、B住居の移転等に際し必要な経費及び給排水設備、電気設備若しくは暖房設備を設けるのに必要な経費、C障害者又は高齢者が日常生活の便宜を図るための高額な福祉用具等の購入等に必要な経費(障害者等福祉資金)、D身体障害者が自ら運転する自動車または障害者と生計を同一にする者が専ら障害者の日常生活の便宜または社会参加の促進を図るために自動車を購入するのに必要な経費(障害者自動車購入資金)等として貸し付けられる資金。

福祉事務所
 社会福祉法に基づき設置される社会福祉行政の現業機関。都道府県及び市(特別区を含む)は福祉事務所を設置しなければならないとされ、町村は福祉事務所を設置できるとされている。福祉事務所には所長と少なくとも@指導監督を行う所員(査察指導員、スーパーバイザー)、A現業を行う所員(現業員)、B事務を行う所員を置かなければならない旨が規定されており、このうち査察指導員及び現業員については社会福祉主事でなければならないとされている。都道府県福祉事務所は生活保護法、児童福祉法、母子及び寡婦福祉法、知的障害者福祉法に定める援護、育成または更生に関する事務のうち都道府県が処理する事務を行い、市町村福祉事務所は上記四法に老人福祉法及び身体障害者福祉法を加えたいわゆる福祉六法に定める援護、育成又は更 生に関する事務のうち市町村が処理する事務を行う。

福祉人材センター
 社会福祉事業従事者の確保を図ることを目的として設立された社会福祉法人であって、社会福祉法に基づき指定されたものをいう。社会福祉事業に関する啓発、社会福祉事業従事者の確保に関する調査研究、社会福祉事業の経営者に対する相談・援助、社会福祉事業従事者に対する研修等を行う都道府県福祉人材センターと、その事業を支援する中央福祉人材センターがある。都道府県福祉人材センターは都道府県知事により各都道府県に1か所に限り指定され、中央福祉人材センターは厚生労働大臣により全国を通じて1か所に限り指定される。

福祉人材バンク
 地域住民に対し、福祉サービスに対する理解と関心を高め、社会福祉を目的とする事業への就労を促進するための啓発・広報事業をはじめ講習会の開催、就労斡旋事業を行う。都道府県福祉人材センターの支所として位置づけられ、市町村社会福祉協議会等に設置されている。

福祉専門職
 社会生活上、困難な問題を抱える人々を対象に、社会福祉の専門的知識・技術をもって援助に当たる専門職のこと。わが国の福祉専門職資格としては、社会福祉士、介護福祉士、保育土、社会福祉主事(任用資格)等がある。

福祉年金
 国民年金法による年金の一種。拠出制の年金の受給要件を満たせない者や拠出制の国民年金が発足した昭和36年4月当時すでに老齢、障害、母子又は準母子の状態にあった者を対象として支給されるもので、老齢福祉年金、障害福祉年金、母子福祉年金及び準母子福祉年金の4種があった。その後、昭和61年4月の年金制度の改革により、これらの年金は廃止された。現在では昭和61年4月前に老齢福祉年金の受給権を有していた者に対してのみ老齢福祉年金が支給されており、障害福祉年金の受給権を有していた者、母子福祉年金及び準母子福祉年金の受給権を有していた者については、それぞれ障害基礎年金、遺族基礎年金に裁定替えをし、障害基礎年金又は遺族基礎年金が支給されている。

福祉のまちづくり
 障害者の生活圏を拡大する運動は、昭和40年代半ばに障害者運動として始まった。その後、国の事業として身体障害者福祉モデル都市事業、障害者福祉都市推進事業、障害者の住みよいまちづくり事業、住みよい福祉のまちづくり事業等が実施された。平成6年度からは「障害者や高齢者にやさしいまちづくり推進事業」が実施されている。福祉のまちづくりは障害者や高齢者のみならず、子ども、大人、すべての人々にとって幸せをもたらし、ノーマライゼーションを可能とするまちづくりでなければならない。

福祉マンパワー
 社会福祉援助活動を支える人的資源をいう。社会福祉関係法令に基づく専門職貞(社会福祉主事、児童福祉司、保育士、寮母(父)等)、法令に基づくが無給である非専門的マンパワー(民生委員、身体障害者相談員等)、任意活動で無給のボランティア、シルバービジネス等有償福祉サービスの従事者の4種に大別できる。

福祉用具
 一般的には介護用晶、介護用具といわれてきたものとほぼ同義。日常生活用具等給付事業(老人福祉法、身体障害者福祉法等)で給付・貸与される。平成5年の「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」の制定以来、「福祉用具」という言い方が多くなり、介護保険法では福祉用具貸与が介護保険給付事業となっている。身体障害者手帳や医療法、年金法に基づく、機能回復等のための補助具、補装具とは分けて使用される。一般的に福祉用具には自助具(自らの機能を補う)の側面と、介助具(介助する側の機能を補う)の側面とがある。また、住宅改修と併せて検討することも大切である。

福祉用具貸与
 介護保険の給付対象となる居宅サービスの一つ。要介護者または要支援者であって居宅において介護を受けるものについて行われる日常生活の自立を助けるための福祉用具の貸与。貸与する福祉用具としては、車いす(付属品を含む)、特殊寝台(付属品を含む)、裾瘡予防用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、痴呆性老人俳御感知機器、移動用リフト(つり具の部分を除く)が定められている。なお、入浴又は排せつの用に供する福祉用異など衛生的配慮から貸与に馴染まないものについては、特定福祉用具として購入費の支給による給付が行われる。

福祉用具賃貸(販売)サービスガイドライン
 福祉用具の賃貸又は販売サービスを行う民間事業者に対する行政指導上の基準。民間事業者が行う福祉用具賃貸・販売サービスは、@高齢者等の身体状況、介護環境等に応じて福祉用具が適切に使用されるよう相談、助言等を行い、福祉用具を賃貸又は販売することにより高齢者等の自立を援助するものであること、A安全及び衛生の管理に留意すること、B業務上知り得たプライバシーを漏らしてはならないこととされている。ガイドラインではその他に、職員の配置・研修・衛生管理、設備、サービスの実施体制・実施方法、契約内容、料金等について、高齢者等の福祉という観点から示されている。

福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律(平成5年法律38号)
 福祉用具法と略される。心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある高齢者や心身障害者の自立の促進及びこれらの者の介護を行う者の負担の軽減を図るため、介護ベッドや車いす、移動用リフトなどの福祉用具の研究開発・普及を促進することを目的とした法律。厚生労働大臣及び経済産業大臣は、福祉用具の研究開発・普及促進のための基本方針を策定すると規定し、そのうえで、@国は研究開発・普及促進のために必要な財政・金融上の措置等を講ずること、A地方公共団体は福祉用具の展示、相談等の援助その他の研究開発・普及促進のため必要な措置を講ずること、B製造業者は福祉用具の品質の向上、苦情の適切な処理等に努めること、など、国や自治体、民間事業者等の責務を明確にしている。

福祉倫理
 社会福祉援助活動に当たり、援助の基盤となる道徳的規範のこと。社会福祉は個人や社会の幸福の追求を目標とするが、そのためには被援助者の基本的人権が尊重されなければならない。援助者は援助過程において、被援助者の生活上の秘密を知り得るが、業務上知り得た秘密を守る義務が課せられる。福祉倫理は社会福祉援助活動を展開する上での重要な要件の一つである。

福祉レクリエーション
 社会福祉領域におけるレクリエーション・サービス。職場レクリエーションや地域レクリエーションと対比して用いられる。社会福祉サービスの利用者はその身体的・社会的条件から、レクリエーションを十分に享受することができにくかった。レクリエーションはすべての人の重要な生活課題であることを基盤として、レクリエーション環境の整備とさまざまなプログラムの開発を行い、高齢者や障害者のレクリエーション生活を充実させることが福祉レクリエーションの課題である。その担い手として、日本レクリエーション協会が養成する「福祉レクリエーションワーカー」が活動している。

福祉六法
 生活保護法(昭和25年法律144号)、児童福祉法(昭和22年法律164号)、身体障害者福祉法(昭和24年法律283号)、知的障害者福祉法(昭和35年法律37号)、老人福祉法(昭和38年法律133号)、母子及び寡婦福祉法(昭和39年法律129号)、の六つの法律をいう。昭和20年代に成立した生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法を福祉三法と呼んでいたが、昭和30年代に三つの福祉法が公布され、福祉六法となった。

福利厚生センター
 社会福祉事業従事者の福利厚生の増進を図ることを目的として設立された社会福祉法人であって、社会福祉法に基づき指定されたものをいう。福利厚生に関する啓発活動、調査研究、福利厚生契約に基づく福利厚生事業の実施、社会福祉事業に関する連絡及び助成等を行う。厚生労働大臣により全国を通じて1個に限り指定される。

婦人保護施設
 売春防止法第4章において、都道府県に婦人相談員を配置し、婦人相談所と婦人保護施設を設置することを規定している。婦人保護施設は、性行又は環境に照らして売春を行うおそれのある女子を収容保護し、その転落の未然防止と保護更生を図るため、生活指導、職業指導等を行う。公立と民間によるものがあり、平成11年現在、全国で52か所に設置されている。

不随意運動
 意志によらない運動。自律神経系に支配された平滑筋や心筋等は不随意筋と呼ばれ、意志によらず自律的に調節し機能を果たす。また、骨格筋が運動制御系の障害により意志と無関係に動くことも不随意運動という。

物価スライド制(年金額の自動改定)
 国民年金法、厚生年金保険法及び各種共済組合法の年金の給付額は、少なくとも5年に1度行われる財政再計算において、給付水準と負担の見直しを行うこととされている。この間に、物価上昇による年金額の実質価値の低下を防ぐため、全国消費者物価指数が前年と比較して変動した場合に、翌年の4月からその変動率を基準として年金額が改定される。これを物価スライド制という。児童扶養手当及び特別児童扶養手当にも同趣旨による手当額の自動改定が行われる。

物理療法
 理学療法の一分野で、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、電気、温熱、圧力などの物理的なエネルギーを生体に加えることにより、生体・器官がもともと持っている正常化作用、平衡維持作用等の機能の働きを高める治療法をいう。運動療法の補助的手段として実施され、一般には運動療法の前後に補助的治療として用いられる。

不服申立て
 行政庁の処分を不当とする者、または行政庁が為すべき処分や行為を怠った(不作為)とする者が、処分の取消しまたは変更を求めること。不服申立てには、審査請求、異議申立て、再審査請求の3種類がある。

プラン・ドゥ・シー[Plan-Do-See]
 計画・実施・評価のことで、高齢者や障害者の生活支援は、支援計画の作成と実施だけではなく、頻繁なモニタリング(観察)による評価が大切であることを意味する。