私の勤務する会社の鉱山は帝釈峡の近くに位置し、良質な結晶質石灰石を大量に埋蔵しておりますので、重質炭酸カルシウムの原料として製品の品質と供給の安定に役立っています。
重質炭酸カルシウムの原料となる石灰石について、以下に説明します。
炭酸カルシウムは、理論的には酸化カルシウム(化学式:CaO)56%と二酸化炭素(化学式:CO2)44%から成りますが、石灰石は天然のものですので、マグネシウム・アルミナ・珪酸・鉄など多少の不純物を含んでいます。
帝釈台などの日本列島の石灰石鉱床は、次のような過程により生成されたと言われています。
今から約3億年前、現在の太平洋中央部の赤道付近の生物の遺骸の堆積が、地殻の移動により徐々に北西方向に動いていき、大陸の地殻との衝突により隆起して、現在の日本列島の位置に現れたと考えられています。
隆起の際、遺骸の堆積層が火山などから吹き出た高温のマグマなどの熱源との接触により急激に熱せられたため、熱変成作用により不純物が取り除かれ、純度の高い石灰石の地層となりました。
熱源との接触面に近い石灰石の地層は、高温の熱変成作用を受けたため純度が高くなり、結晶質石灰石になりました。それに対し、熱源との接触面から離れていたり熱源の温度が高くなかった石灰石の地層は、純度の低い非晶質石灰石となりました。
重質炭酸カルシウムの原料には、結晶質石灰石が使用されています。
石灰石と人類との関わりは古く、古代エジプトのピラミッドや古代ギリシャ・ローマ時代の神殿などの建造物には、巨大な石灰石の石材が使われていました。
また、石灰石の一種である大理石で創られた石像や彫刻も数多く残っており、大理石は建物の内装や外装にも古くから利用されてきました。
石灰石が大量に使われるようになったのは産業革命以後で、石灰石を原料とするセメント工業や鉄鉱石の不純物を除去するために石灰石を加える鉄鋼業の発展とともに、その使用量が増大しました。
そして、第二次世界大戦後の石油化学工業の発展に伴い、石灰石から造られる炭酸カルシウムは、プラスチックの充填剤、ゴム製品の増量剤および加工助剤、塗料原料、製紙用内添剤、カルシウム剤、農薬などへと用途が拡大して、現在に至っています。