東城駅で行き違いするJR芸備線列車
JR芸備線で小さな旅

 JR芸備線は岡山県側から東城町に入ると、東城の中心街から東城川に沿って東城町を北へ縦断します。
 瀬戸内海に注ぐ高梁川の源流である東城川の清流と中国山地の深い樹木の間を縫うように走るJR芸備線は、豊かな自然を求めて備後東城の里を訪れる方々には、ぜひ一度乗車していただきたい列車です。
 このページでは、JR芸備線の東城−備後落合間を各駅停車でたどります。


【 東城駅 】
東城駅舎  東城の表玄関、JR東城駅から小さな旅を始めましょう。
 東城駅にはJR職員が常駐しておりませんので、運賃を持ってそのまま列車に乗り込んで下さい。
 なお、JR芸備線の車両にはトイレ設備がありませんので、乗車前に駅のトイレで済ませておいて下さい。
東城駅ホーム  備後落合行きの列車は、改札口側のホームに入ってきます。芸備線は1両だけのワンマン運行ですので、後ろ側のドアから乗車して下さい。
 乗車の際、乗車口の機械から出てくる整理券を必ず取って下さい。整理券には乗車駅が印字されており乗車駅の証明となりますので、下車駅到着前に運転席横の運賃表の電光掲示板に表示される金額を見て運賃を確認の上、下車駅に到着したら運賃箱にお金を入れて前側のドアから下車することになります。
 ドアが閉まると、列車はゆっくりと東城駅のホームを離れます。


【 備後八幡駅 】
備後八幡駅ホーム  東城駅を離れた列車は、左手に東城の街並みと東城川を見ながら川上方向へと走ります。東城の街並みが途切れると、東城川にかかる鉄橋を何度か渡りながら田んぼや畑の間を走り、国道314号線の東城第一大橋の高架を見ながらトンネルをくぐると、まもなく備後八幡駅に到着します。
備後八幡駅舎  備後八幡駅の川を挟んだ向こう側には、大正から昭和30年代後半まで当地の砂鉄や輸入鉄鋼石を原料とし当地の木炭を火力とした製鉄所がありました。製鉄所には備後八幡駅からの貨車引き込み線があり、原料の鉄鉱石や鉄製品の輸送と従業員の通勤で駅がにぎわっていた時代があったそうです。
 今では、製鉄所跡地には金属加工工場があり、駅周辺にも小さな集落が残るだけとなっておりますので、駅舎も待合室のみの小さな無人駅となっています。


【 内名駅 】
内名駅ホーム  備後八幡駅を離れた列車は、東城川を右下に見ながら川の両岸から山が迫る峡谷を進み、5分あまりで内名駅に到着します。
 内名駅は線路の直線区間にホームを造り、ホームに小さな待合室があるだけの小さな小さな駅です。駅というより停車場といった方が良いかもしれません。
内名駅  内名駅の付近は、線路と川に沿って両方から山が迫り、川と山の間のわずかな耕地に数えるほどの民家が点在しているだけです。駅周辺だけでは利用者がいないように見えますが、内名駅の川上側で東城川に合流する支流の奥にはいくつかの集落がありますので、利用者は奥の集落から徒歩や自転車で内名駅まで出てきて、JR芸備線の列車を利用するようです。
 乗客の乗り降りが終わると、列車は静かに内名駅を離れます。


【 小奴可駅 】
小奴可駅ホーム  内名駅を出発した列車は、山と山の間を流れる東城川を右に左にと渡りながら遡り、田んぼの広がる盆地を走るようになると、まもなく小奴可駅に到着します。
 小奴可駅も無人駅ながら、駅前には商店があったりタクシーがあり、駅周辺には民家や農協のライスセンター、観光バス会社などが集まり、今までの駅周辺とはちょっと違った賑やかさです。
小奴可駅舎  小奴可は、平安時代から戦国時代までこの付近一帯を支配していた豪族や武将たちの本拠地となった場所です。それらの居城であった亀山城跡のふもとには、県の天然記念物である「要害桜」という桜の巨木があり、桜の開花時期には東城町内外から見物人が訪れます。
観世音菩薩像  また、小奴可にはいくつもの観光リンゴ園がありますので、実りの秋の9月後半から11月に渡って様々な種類のリンゴ狩りが楽しめます。
 そして、小奴可の見性寺の門前には大きな観世音菩薩像があります。これは、観光娯楽事業に成功された歌手西城秀樹さんの祖父にあたる方が、生まれ育った小奴可の地に建立されたものです。


【 道後山駅 】
道後山駅ホーム  小奴可駅を出発した列車は東城川に別れを告げ、しばらくの間小奴可盆地の田園地帯を走りますが、だんだんと樹木の間を走るようになると、間もなく道後山駅に到着します。ここから隣町の庄原市西城町となります。
 道後山駅は今はホーム1本だけの無人駅ですが、向かい側には昔あった反対側のホームの跡が雑草に埋もれて残っています。また、駅のすぐ裏手には初心者・中級者向けの高尾原スキー場があります。
道後山駅舎  有名な道後山スキー場は道後山駅から5km離れた場所にあり、道後山駅からは狭く曲がりくねった山道を行かなければなりません。私の高校生時代の春の遠足では、道後山駅から道後山スキー場まで徒歩で往復した思い出があります。
 昔は冬の間広島や岡山からのスキー列車が運行し、道後山駅から道後山スキー場への連絡バスがあったのですが、スキー客が自家用車やスキーバスで来ることが多くなり、次の備後落合駅の横を通って道後山スキー場を結ぶ国道183号線が整備されたことから、道後山スキー場への連絡バスは備後落合駅発となり、道後山駅からの連絡バスは廃止されてしまいました。


【 備後落合駅 】
小鳥原鉄橋  道後山駅を出発した列車は、しばらく深い森の中を走ります。中国山地の険しい地域であるこのあたりの線路は勾配がきつく、列車のエンジン音もひときわ高くなります。
 急な勾配を登り切りトンネルを抜けると、眼下に川が見えてきます。これは東城川ではなく、日本海に注ぐ江の川の源流となる西城川です。列車は、西城川を背の高い鉄橋で渡りながら樹木の茂る山の中腹を走り、列車の終着駅である備後落合駅にすべり込みます。東城駅からの芸備線の列車はここ備後落合駅で折り返し運転となり、庄原・三次方面に向かう場合は、ここで別の列車に乗り換えしなければなりません。
備後落合駅入口  備後落合駅はJR芸備線と宍道方面に向かうJR木次線との分岐点です。駅の周りにはいくつかの民家とタクシーの車庫、古い小さな宿などがあるだけの静かな場所ですが、冬のスキーシーズンには道後山スキー場への連絡バスの発着駅として賑わいます。
備後落合駅ホーム  かつての備後落合駅は、山陰と山陽を結ぶ鉄道の要として頻繁に列車の出入りがありました。広島と松江・米子を結ぶ急行列車があったときには、広島から到着した列車が備後落合駅で木次線に向かって逆方向に走り出すと、事情を知らない乗客がびっくりしていたのを覚えています。また、かつて駅のホームにそばの売店があり、行き違い列車の待ち合わせの間に、そばを買って乗り込み車内で食べた思い出があります。
 今では広島−松江・米子を結ぶ旅客の主流は高速バスとなり、直通の急行列車は廃止されてしまいましたが、JR木次線の木次−備後落合間には春から秋にかけての週末・祝日・ゴールデンウイーク・夏休みにトロッコ列車が一往復運行されています。途中奥出雲おろちループを高所から眺められるのをはじめ、急勾配を前進後退を繰り返して昇っていくスイッチバックなどがあり、神話の舞台となった奥出雲の風を感じながら走るこのトロッコ列車は、好評を博しているそうです。なお、このトロッコ列車は、全席指定席となっております。


小奴可駅停車中の列車
JR芸備線のちいさな列車で小さな旅をどうぞ

もどる
もどる