備後東城のことば
日本中どこに行ってもその土地その地域でしか通じない言葉があるもので、もちろん備後東城の里にも独特の言い回しや方言があります。
このページでは、そんな東城独特の言葉とその意味・使い方をいくつかご紹介します。
- いたしい=身体の調子が悪い・苦しい
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「今日はいたしいけぇ、会社を休むけぇなぁ」
(今日は身体の調子が悪いので、会社を休むからね)
- いちいき=いつも・常に
- 「あの人はパチンコが好きじゃけぇ、いちいきいきょうってじゃ」
(あの人はパチンコが好きだから、いつもパチンコに行っている)
- いなげな=よくない・つまらない・怪しい
- 「そぉないなげなもん、買いんさんなぁ」
(そのようなつまらない物を買いなさるな)
- うずないい=窮屈な・難しい
- 「こぉてきてくれた服は、ちょっとちいそうてうずないいでぇ」
(買ってきたもらった服は、ちょっと小さいので窮屈ですよ)
- えっと=たくさん
- 「お正月にはお年玉をえっともろうたよぉ。」
(お正月にはお年玉をたくさんもらったよ。)
- かやれる=倒れる
- 「この前の台風で庭の木がかやれた。」
(この前の台風で庭の木が倒れた。)
- きょうてぇ=おそろしい
- 「あの人はすぐ怒鳴るけぇ、きょうてぇ人じゃなぁ。」
(あの人はすぐに怒鳴るから、おそろしい人ですね。)
- くべる=火の中へ投げ込む
- 「風呂の火が消えそうじゃけぇ、薪をくべてぇ。」
(風呂の火が消えそうなので、薪を投げ込んでください。)
- じなくそ=でたらめ
- 「そぉなじなくそをゆうても、だれも信じりゃぁせんでぇ。」
(そんなでたらめなことを言っても、誰も信じないですよ。)
- さげる=持ち上げる
- 「重いもんをさげるんなら、ぎっくり腰に気をつけんせぇ。」
(重い物を持ち上げるのなら、ぎっくり腰に気をつけなさい。)
※下へおろす場合の「さげる」はさ→げ↑る↓と発音し、持ち上げる場合の「さげる」はさ→げ→る↑と語尾が上がる感じになります。
- そそくろうな=そそっかしい
- 「お隣の奥さんはそそくろうな人じゃなぁ。」
(お隣の奥さんはそそっかしい人ですね。)
- にがる=痛む
- 「きのぉ酒を飲み過ぎたけぇ、今朝は胃がにがる。」
(昨日は酒を飲み過ぎたから、今朝は胃が痛む。)
- はしる=ひりひりと痛む
- 「かき氷食べたけぇ、虫歯がはしるわぁ。」
(かき氷を食べたから、虫歯がひりひり痛むわ。)
- はぐいい=じれったい
- 「彼氏がなかなかプロポーズしてくれんけぇ、うちははぐいい。」
(彼氏がなかなかプロポーズしてくれないので、私はじれったい。)
- はぶてる=不機嫌になる・へそを曲げる
- 「わしの女房は気にいらんことがあると、すぐはぶてる。」
(私の女房は気に入らないことがあると、すぐに不機嫌になる。)
- みやしい=簡単な・たやすい
- 「今度のテストは、みやしいらしいでぇ。」
(今度のテストは、簡単なようですよ。)
- めげる=壊れる
- 「乱暴に使よぉったら、めげるでぇ。」
(乱暴に使っていたら、壊れますよ。)
※この場合の「めげる」はめ→げ→る↑と語尾が上がります。
- たんびに=たびたび
- 「たんびに世話になるけぇ、すまんなぁ。」
(たびたび世話になるので、申し訳ありません。)
- よばれる=ご馳走になる
- 「今日は帰りによばれるけぇ、晩飯はいらんけぇなぁ。」
(今日は帰りにご馳走になるので、私の夕食の用意は要りませんよ。)
- ようまつ=冗談・つまらないこと
- 「そがぁなようまつゆうたら、本気にするがぁ。」
(そんな冗談を言ったら、本気にするじゃないの。)
- わやくそ=むちゃくちゃ
- 「自分で直しょぉったら、わやくそにしてしもぉたぁ。」
(自分で修理していたら、むちゃくちゃにしてしまった。)
備後東城の言葉の特徴の一つは、関西方言の影響を受けた言葉が多いということです。
これは、関ヶ原の戦いの後東城の地を治めた長尾隼人一勝と家臣が家来・使用人を大阪から連れてきたことと、たたら製鉄に関係して取引先の瀬戸内海沿岸や関西から当地に移り住んだ人が多かったということが関係しているようです。
もう一つの特徴としては、東城の人々の言い方は「なーなーことば」と呼ばれ、会話の最後を「〜なぁ」と伸ばすことが多く、穏やかで柔らかい感じを与えるものとなっています。
一方同じ地方の言葉でも、東城に隣接する西城・庄原から西の三次・広島までは、会話の最後が「〜のぉ」をなっており、明らかに東城の言い方とは異なっています。
これは、東城と西城や庄原の間を行き来するのに険しい山道や峠を越えなければならなかったため、昔は隣接していながら比較的往来が少なく、会話の特徴が異なったまま今日に至ったものと考えられます。
以上のことばを使いこなせるようになれば、あなたも立派な備後東城人になれるかも?
参考資料:東城小学校創立百周年記念誌『五品嶽』(昭和58年発行)
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