マルチアンプについて

はじめに
田舎では、マルチアンプ方式で、全く間違った認識を持った方が多すぎて困る。マルチアンプ駆動を実際に試したこともないのに、どこかのお宅や、あるいは店で言うマルチの音を聴いて、マルチは泥沼(抜けだせない沼)と言われる方が多すぎる。その多くの原因は似非マルチにある。似非チャンデバも少なくはない。球で測定器も使わず10%誤差の部品でチャンデバを組んで100万なんていう例もある。大体スピーカーのネットワークでも12dB オクターブなのに、なんでマルチアンプの際はチャンデバと称するものが6dBでいいんだ?。いまだに1960年代の山○式といった呪縛から抜けだせない人さえいる。もっと急峻なカーブで切るべきなのに切らない。私は、多くの方にマルチアンプを薦めてきた。それは、くだらない高額アクセサリーを買うよりずっと安く試せるし、新たにマルチに対する認識を持ってもらいたいからである。馬鹿みたいに、日本中のマルチアンプに興味のある人にチャンデバを貸し出して、聴いてもらった上で、基本的に自作してもらってきた。そのままお譲りすることも、たまにはある。それなのに、今でも時々否定する方が出てくる。オーディオ歴が永かろうと、お金持ちだろうと関係ない。再生される音楽がどう聞えるかが大切である。また半導体否定がその根底にあるのも確かだ。アンチマルチアンプの球派に多いのが球は高電圧で動くと主張する。そしてOPアンプ嫌いである。たった15Vと貶す。その多くがCDプレーヤーでOPアンプの世話になっている。もっとはっきり言えば、あなたの大切なガラスパネルのプリアンプ、中身は5534でフォノイコもOPアンプなんですが、自分で自分を貶すのですか?そんなことさえある。オーディオは良い仲間が本当に大切な時代になったものだ。フルレンジスピーカーの音を再現できるのがマルチアンプ方式である。ネットワークがアンプの後ろに付くと余計なLCR負荷となり良いことはない。最近のスピーカーシステムが低インピーダンスになる帯域があることからも分かるはずだ。安物アンプを使ってもマルチアンプ効果は実感できる。

重要なのはチャンネルデバイダー

デジタル方式アナログ方式問わず、チャンネルデバイダーと呼べるのは、正しく周波数分割出来るフィルターを使用したものである。目的は単純にスピーカーに送り込む帯域を制限するためにある。特に一般家庭で使う場合、しっかり分割出来ないと、音質を細部まで追い込めない。大音量で鳴れば良いのとは目的が違う。アナログ方式の古いPA用チャンデバを使うのは避けたいものでる。その理由にレベルが+4dB基準であり、現場での対応重視でクロス周波数が決まったものだけで差し替えか、連続可変でまさに大体の調整となっている。最近ではデジタル方式で超安価なものも出ているがその値段で質の高い音が得られるのであれば使用しても良いだろうが、結局音質的に使えない。すぐ故障するなど問題も多い。真に使えるデジタル方式のマニア向けチャンネルデバイダーは非常に高価であるが確かに実力はある。そのクラスになると普通のオーディオマニアは買えない。そこで比較的安価で高性能なアナログ方式を探しても現在は作っているメーカーがない。そこに目を付けたのかは知らないが、困ったものが、プロぶった人が製作した真空管式似非デバイダーである。測定器も使わず、コンデンサーも誤差10%から5%、それもうねりの多いCR型-6dB、12dB に至ってはCR2段。球で音が決まると思っているらしい。2ウェイならまだしもバンドパス構成の必要な3ウェイ以上になるとさらに厄介になる。チャンデバは色付けしてはならない。周波数を分割するものである。この周波数分割という役割を知らないから、低音が足りないので低音を多めに、今度は中域が前に出ないなどと中域を上げバランスの取れない音にするから泥沼に嵌るのである。あくまでもチャンネルデバイダーの役目は、超低域から高域まで同じレベルに音質を変えずに分割するのが役目である。

スロープとクロスポイント

普通にマルチアンプをやりたいのならスロープカーブや減衰量を極端に気にしなくとも大丈夫。
アナログ方式で欲張りすぎると非常に複雑になり音質劣化に結びつきやすい。私の場合-18dBオクターブ、バタワース特性で十分と考えている。スピーカーネットワークでそんなに難しい特性を求めないのに、チャンデバでは、やたらと突っ込みを入れる人が多い。特に位相が合わないなどと言われる方ほど位相が合っていない。マルチアンプの場合ユニットを重ねて使うことが多いので、各ユニットの位相は、配置位置を前後して調整すればOKである。それこそ優秀な耳で決められ、オーナーの耳の本領発揮といったところだ。私の家のマルチシステムは、各ユニットばらばらに置いてある。中間に小型のモニタスピーカーがありきっちり定位するので、それが鳴っているように思われることがしばしばである。各ユニットが好き勝手に鳴っている人ほど、位相、位相とうるさいし、大音量でごまかす。

プリアンプ

霧の摩周湖のようなベールに包まれた音質のプリアンプはマルチには全く向かない。チャンデバに入る前に音が濁っては、良いマルチアンプのサッと出て、サッと退く余韻が霧に包まれてしまう。昔は超高額でも今では通用しないものも多い。良いプリアンプは、霧が晴れた時のさわやかな音でいつまでも聴いていたいと誰もが感じる音である。マニアが好む音は違うと逃げ口上を言う人もいるが、マニアだから音をわかると言う思い込みである。誰が聴いても良い音とは、疲れない自然な音である。

パワーアンプ

マルチアンプ方式では、あり合わせのパワーアンプでも十分な効果が発揮できる。
ただし注意しなくないのが、ウーハーの駆動能力である。大口径のウーハーを力強く駆動出来なくてはならない。ウーハーは大きな瞬間的大電流を流さないと駆動出来ない。このため十分大きな電流を出力できるアンプが必要である。ここには大型のアンプが必要なので、使っているアンプの中から一番大きなものを選べばよい。ワンチップのデジアンでは無理がある。バスドラのキックのたびにウーハーが調子よく動くのが目で見てわかる。いくら大きなアンプが良いと言っても一人で運べないくらい大きなもので、これまた霧のかかったような音のアンプは反応が悪く使い物にならない。こういう物を使っている方は、50Hz以下の空気の動くような感覚を知らない。100Hz程度を低音と思い込んでいる。だからマルチの低音部はトランスを背負っていない半導体アンプに軍配が上がる。ミッドバス以上は、あり合わせで間に合うことが多いが、あまりに貧弱なものは、マルチアンプ方式でも貧弱になるので適度に良いものを選べばよい