思い付きは、なるべくならやってみるものである。時にはそれが、なかなか楽しかったりする事もあるし。というワケで、当コラム1998年11〜12月号にて取り上げた、『アメージング・ストーリーズ 日本語版』の収録作一覧である。
まあ、書式については改良の余地が大きいと思われるし、今後新たに別のリストを追加していく可能性も考えられなくはない。その際は叢書ごとの一覧だけではなく、リアルタイム読者の追体験ができるような、出版された順という配列にも大いに興味があったりする。どうやるかはともかくとして…。
原題、原著者名は各作品の扉ページに付されているし、特に芸の無い思い付きリストなのだが、一点だけ付言しておく必要があるでしょう。「○○枚」というのは、実際の紙面におけるタテ×ヨコ(桁数×行数)とページ数から割り出した、400字詰め換算でのおおよその値である。ページの余白や挿絵部分の処理は、臨機応変で厳密には行っていない。ともあれイメージする際の一助とな…なるのか!?
ちなみにこの叢書は、巻によって微妙に桁数が異なったりするから要注意だ(笑)。
1950年4月
怪奇小説叢書
『アメージング・ストーリーズ 日本語版 第1集』
誠文堂新光社/1950年4月5日印刷、4月10日発行/新書/カバー、帯(後帯※未見)/100円/256ページ
収録作品
「焔の女王」(The Flame Queen)
ガストン・ドルー(Gaston Derreaux)
著/乾
信一郎 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉(Amazing Stories)1949年5月号(通巻238号)/170枚
「征服の立方根」(The Cube Root Of Conquest)
ロッグ・フィリップス(Rog Phillips)
著/黒沼
健 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1948年10月号(通巻231号)/47枚
「幽霊屋敷」(Twisted House)
ガイ・アーチェット(Guy Archette)
著/磯部
佑一郎 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1949年6月号(通巻239号)/75枚
※Chester S.Geierの別名義。
「異顔―同脚」(New Face〜Same Heel)
サミュエル・レーカ(Samuel Roeca)
著/胡桃
正樹 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1948年9月号(通巻230号)/88枚
「火星人の降霊術‐一千年後のお話‐」(Once Upon A Planet)
J・J・アラートン(J.J.Allerton)
著/中根
不覊雄 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1948年12月号(通巻233号)/45枚
怪奇小説叢書
『アメージング・ストーリーズ 日本語版 第2集』
誠文堂新光社/1950年4月5日印刷、4月10日発行/新書/カバー、帯(後帯)/100円/248ページ
収録作品
「恐怖城」(Castle Of Terror)
E・J・リストン(E.J.Liston) 著/黒沼
健 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1948年11月号(通巻232号)/54枚
「ジョーンズ氏の永久カメラ」(Mr.Jones’ Eternal Camera)※扉では「Jone’s」と表記
バークレイ・リヴィングストン(Berkley Livingston)
著/磯部
佑一郎 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1949年11月号(通巻244号)/89枚
「殺人光線」(The Murder Ray)
E・K・ジャーヴィス(E.K.Jarvis) 著※扉では「Jervis」と表記/坂本
登 訳/〈ファンタスティック・アドヴェンチャーズ〉(Fantastic Adventures)1949年4月(通巻82号)/163枚
※「E・K・ジャーヴィス」はハウスネーム(共同筆名)。作者不詳。
「ティリー物語」(Tillie)
クライグ・ブラウニング(Craig Browning)
著/田口
統吾 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1948年12月号(通巻233号)45枚
※ロッグ・フィリップスの別名義。
「死の二重奏」(Death’s Double)※扉では「Deaths」と表記
グローヴァー・ケント(Grover Kent)
著/磯部
佑一郎 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1949年6月号(通巻239号)/59枚
怪奇小説叢書
『アメージング・ストーリーズ 日本語版 第3集』
誠文堂新光社/1950年4月5日印刷、4月10日発行/新書/カバー、帯(後帯)/100円/283ページ
収録作品
「古代人の挑戦」(I Paint From Death)※原題は「“」「”」で括るのが正しい?
ロバート・F・フイッツパトリック(Robert F.Fitzpatrick)
著※「F.」は「Fleming」/坂本
登 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1949年8月号(通巻241号)/139枚
「蚤のサーカス」(The Flea Circus)
オーガスト・マイスナー(August Meissner)
著/胡桃
正樹 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1949年1月号(通巻234号)/58枚
「世界計画」(Project)
ジャック・ヘス(Jack Hess) 著/磯部
佑一郎 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1949年10月号(通巻243号)/46枚
「緑の血」(The Green Splotches)
T・S・ストリブリング(T.S.Stribling)
著/黒沼
健 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1927年3月号(通巻12号)※〈アドヴェンチャー〉(Adventure)1920年1月3日号初出/225枚
1950年5月
怪奇小説叢書
『アメージング・ストーリーズ 日本語版 第4集』
誠文堂新光社/1950年5月20日印刷、5月31日発行/新書/裸本(カバー無し)、帯(後帯?)/100円/248ページ
収録作品
「怪物」(The Monster)
S・M・テンネショウ(S.M.Tenneshaw)
著/雨貝
正直 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1949年4月号(通巻237号)/132枚
※「S・M・テンネショウ」はハウスネーム。作者不詳。
「最後の男性」(The Last Man)
ウオーレス・G・ウエスト(Wallace G.West)
著/黒沼
健 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1929年2月号(通巻35号)/84枚
「マウントミード事件」(Midgets And Mighty Men)
リー・フランシス(Lee Francis)
著/坂本
登 訳/〈ファンタスティック・アドヴェンチャーズ〉1949年5月号(通巻83号)/128枚
「人間塔」(The Column Of Life)
レスター・バークレイ(Lester Barclay)
著/千葉
浦一 訳/〈ファンタスティック・アドヴェンチャーズ〉1949年12月号(通巻90号)/74枚
1950年6月
怪奇小説叢書
『アメージング・ストーリーズ 日本語版 第5集』
誠文堂新光社/1950年5月30日印刷、6月5日発行/新書/裸本(カバー無し)、帯(後帯?)/100円/259ページ
収録作品
「ウィルバー・ムークの眼」(The Eye Of Wilbur Mook)
H・B・ヒッキー(H.B.Hickey) 著/黒沼
健 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1948年11月号(通巻232号)/84枚
「ビン」(The Bottle)
ガイ・アーチェット 著/磯部
佑一郎 訳/〈ファンタスティック・アドヴェンチャーズ〉1949年12月号(通巻90号)/52枚
※Chester S.Geierの別名義。
「森の英雄」(Pattern For Destiny)
チェスター・スミス(Chester Smith)
著/田口
統吾 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1949年1月号(234号)/54枚
「光なきランプ‐アラディンの洋燈後日譚‐」(Lamp With No Light)
アレキサンダー・ブレイド(Alexander Blade)
著/坂本
登 訳/〈ファンタスティック・アドヴェンチャーズ〉1949年5月号(通巻83号)/51枚
※「アレキサンダー・ブレイド」はハウスネーム。作者不詳。
「雷鳴の彼方」(Beyond The Thunder)
H・B・ヒッキー 著/田口 統吾 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1948年12月号(通巻233号)/89枚
「氷原の女王」(Queen Of The Ice Men)
S・M・テンネショウ 著/緒方
周三 訳/〈ファンタスティック・アドヴェンチャーズ〉1949年11月号(通巻89号)/96枚
※「S・M・テンネショウ」はハウスネーム。作者不詳。
怪奇小説叢書
『アメージング・ストーリーズ 日本語版 第6集』
誠文堂新光社/1950年6月10日印刷、6月15日発行/新書/裸本(カバー無し)、帯(後帯?)/100円/257ページ
収録作品
「エジプトの妖魔」(The Avenger)
ノーマ・エル・イーストン(Norma Lazell Easton)
著/磯部
佑一郎 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1949年11月号(通巻244号)/127枚
「埃になつた新妻」(All Else Is Dust)
E・K・ジャーヴィ 著/五島
十三雄 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1950年3月号(通巻248号)/108枚
※「E・K・ジャーヴィス」はハウスネーム。実作者はロバート・ブロック。
「アガーチの黄金仮面」(The Golden Mask Of Agharti)
ジョーン・アンド・ドロシー・デカーシー(John&Dorothy De Courcy)
著/千葉
浦一 訳/〈ファンタスティック・アドヴェンチャーズ〉1950年1月号(通巻91号)/155枚
「火星から來た女」(Girl From Mars)
ロバート・ブロック(Robert Block)
著/田口
統吾 訳/〈ファンタスティック・アドヴェンチャーズ〉1950年3月号(通巻93号)/26枚
※後にブロックの短篇集に収録された際、「The Girl From Mars」と原題に「The」が付くようになるが、雑誌掲載時は付かない。
「二度だけ生きる」(You Only Live Twice)
H・B・ヒッキー 著/五島
十三雄 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1950年3月号(通巻248号)/46枚
1950年7月
怪奇小説叢書
『アメージング・ストーリーズ 日本語版 第7集』
誠文堂新光社/1950年7月20日印刷、7月30日発行/新書/裸本(カバー無し)、帯(後帯?)/100円/261ページ
収録作品
「リス人」(The Squirrel People)
ジョン・C・ロス(John C.Ross)
著/胡桃
正樹 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1948年9月号(通巻230号)/142枚
「夢マリー」(The Exteroceptor Deceptor)※扉では「Exterocepter」と表記
クレイグ・ブラウニング 著※第2集「ティリー物語」と表記違い/緒方
周三 訳/〈ファンタスティック・アドヴェンチャーズ〉1950年1月号(通巻91号)/50枚
※ロッグ・フィリップスの別名義
※解説「クレイグ・ブラウニングのこと」(緒方 周三)併録
「星團の侵入者」(The Galaxy Raiders)
W・P・マッギヴァン(William P.McGivern)
著/砧
一郎 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1950年2月号(通巻247号)/163枚
「未來よりの抜道」(Detour From Tomorrow)
ロッグ・フィリップス 著/田口
統吾 訳/〈ファンタスティック・アドヴェンチャーズ〉1950年3月号(通巻93号)/46枚
※「解説 ロッグ・フィリップスのこと」(H
N S)併録
「アービュタスから來た男」(The Man From Arbutus)
H・B・ヒッキー 著/五島
十三雄 訳/〈アメージング・ストーリーズ〉1950年3月号(通巻248号)/63枚
※第6集「二度だけ生きる」と同時掲載
#収録作全てが〈アメージング・ストーリーズ〉掲載作品ではない。但し〈ファンタスティック・アドヴェンチャーズ〉は、〈アメージング〉と同じジフ・デイヴィス(Ziff Davis)発行の姉妹誌である。誠文堂新光社がジフ・デイヴィスと契約を交わし、その刊行雑誌の翻訳権をまとめて獲得したことに由来すると思われる。
#収録作品は1948年9月号から1950年3月号の、短い期間に集中している。1950年4月10日付で刊行開始したことを考えると、「日本語版」の名の通り「傑作選アンソロジー」ではなく、リアルタイムで翻訳紹介した「書籍形態の雑誌」にむしろ近いと認識するのが正しいだろう。
#第3集「緑の血」と第4集「最後の男性」のみが、1920年代〈アメージング〉最初期作と異例である。たとえ掲載誌を入手できたとしても、わざわざこの作品を選出したことに疑問が残る。ドナルド・A・ウォルハイム編『The Pocket Book Of Science‐Fiction』(1943年)に上記両篇が共に収められていることから、このアンソロジーより引っ張ってきたとも考えられる。しかし、「最後の男性」の〈アメージング〉掲載時は「Wallace G.West」名義だったが、このアンソロジーでは「Wallace West」という、ミドルネームの「G.」が付かない筆名になっている。1920年代〈アメージング〉本誌から選定収録した、という可能性も否定できない。
#第7集のクレイグ・ブラウニング「夢マリー」、ロッグ・フィリップス「未來よりの抜道」の2篇のみ、1ページの解説が併録されている。しかし皮肉にも、著者は別名義の同一人物である。紹介される経歴は全く異なり、クレイグ・ブラウニングが「当年二十七才という若手作家」とあるのに対し、ロッグ・フィリップスは「本年四十才になる」とのことである。クレイグ・ブラウニングに対し「ロッグ・フィリップスなどと肩を並べて…」とも記述しているのが、予期せぬ事とは言え微笑ましい。
#各作品の初出に関して、調べの至らなかった部分を牧眞司氏よりご教示頂きました。ここに記し、感謝申し上げます。