第21号 1999年6月
書店員はスリップの夢を見るか?このところ、Web版「銀河通信」の掲示板が非常な盛り上がりを見せていた。お題は「子供にどうやって本を読ませるか?」転じて「自分が子供の頃、どんな本を読んでいたか?」である。 本の売れ行きが年々落ちて行っている現在、前者の問題は非常に重大である。出版界の明日をになう子供達に、なんとかしてもっと本を読んでもらいたいと切実に思う。 同時に、もっと純粋に本の楽しさを子供達に教えてあげたい。文字を追うことによって、頭の中にわあっと広がる世界。ここはなんでもありのパラダイスだ。それぞれの本の中に、まさにひとつの宇宙が存在する。この快感は、一度知ってしまったらもう病みつきである。 その最初の一歩の手助けをするのはやはり周りの大人の誘導であろう。押しつけがましくならずに、そっと本の世界へいざなう、そんな上手い工夫を考えたいものだ。 |
今月の乱読めった斬り!『スプートニクの恋人』☆☆☆☆(村上春樹、講談社) 村上春樹、待望の最新刊。最初、「女性同士の恋愛もの」と聞いていたのだが、想像していたのと全然違っていた。これはあくまでこの物語の要素のひとつであって、テーマではなかったのだ。 主人公は、小学校の教師をしている「ぼく」。彼は大学在学中に、2つ年下のすみれと知り合った。すみれは、小説家になるために大学すら辞めてひたすら本を読み、文を書いて暮している、かなりエキセントリックな女性である。本をよく読む彼はそんなすみれと妙にウマがあい、親しくなる。 彼はすみれに恋をしてるのだが、彼女は彼を友人としか思っていない。そんなすみれがある日、激しい恋に落ちる。相手は「ミュウ」と呼ばれる39歳の美しく知的な女性であった。たまたま恋した相手が女性だっただけとすみれは言う。 物語はこの3人の関係を軸に展開する。ぼくとすみれ、すみれとミュウ、ぼくとミュウ。それは、どうにもならない袋小路の行き止まりである。皆、どうやっても欲しいものが得られない。読み進むうち、心の中に彼らの孤独がひたひた押し寄せてくる。後半の展開は、まさに春樹ワールド。 恋愛ものではあるが、これはあくまで彼の小説に一貫して書かれている「孤独」がテーマの小説であると思う。心にぽっかり空いた空洞や、果てしない荒野にたったひとりで立っている、そんな絶望的な淋しさを感じる。彼の小説を読んでいると、結局人間はひとりなんだろうか、といつも考えてしまう。すみれのように、誰かに夜中の3時に電話をかけたくなってしまう、そんなやるせない哀しみに満ちた小説であった。 『ハードボイルド/ハードラック』☆☆☆1/2(吉本ばなな、ロッキング・オン) 吉本ばなな、2年ぶりの書き下ろし。中篇が2作入っている。 そして彼女の小説にもうひとつ共通するのは、主人公の生きる姿勢がいつも前向きということだ。どんな苦しみにあっても、そこから逃げない。が、無理をしているわけでもない。食べて眠ってという日常の中で、少しずつ少しずつ、悲しみという心の傷を治しながら、また再び歩いてゆこうとするのだ。その静かなひたむきさには、いつも励まされる。自分も、つらいことがあっても明日も生きていこう!という気にさせられるのだ。 切なく、悲しく、静かな愛に満ちた一冊。 『チグリスとユーフラテス』☆☆☆1/2(新井素子、集英社) 新井素子、超久々のSF新刊。これは良くも悪くも実に彼女らしい小説だといえるだろう。作風が、昔と全く変わってない。いつもの、甘ったるいしゃべり口調のモトちゃん文体。内容も、実に彼女らしいストーリーであった。 人類が移住した惑星ナイン。理由は不明だが、徐々に子供が産まれなくなってしまう。とうとう「最後の子供」ルナが生まれる。 この70歳の老婆ルナがついにこの星でひとりになった時、彼女はコールドスリープについている女性たちをひとりずつ起こしてゆく。 4章からなるこの小説は、ルナの起こした女性4人で構成されている。彼女等ひとりひとりの人生の意味を、ルナは問う。起こされた女性たちは、この星の現状と、ルナとの関わりを通して、自分の人生をふりかえるのだ。 3章までは、けっこうつらい展開である。著者が提示する問題は、あまりに重い。女性にとっての出産、仕事、芸術。が、4章で物語が一気に広がる。レイディ・アカリというキャラクターに、新井素子の、最も彼女らしい部分が味わえる。 ちょっとくど過ぎるのではと思う著者の説明や若干のひとりよがりな展開に多少辟易させられたが、ワタクシ的には、最後の章がとてもよかったので許す。ひとりの人間の人生の意味、生命の意味、種の意味、そんなものを大きく包み込むようなラストであった。まるで、著者が大きな腕で地球を、すべての生命を抱きしめているような、そんな暖かさを感じた。 『冷たい密室と博士たち』☆☆☆☆(森博嗣、講談社文庫) 森博嗣、文庫化2作目。ご存知、犀川助教授と、女子大生西之園萌絵コンビのシリーズである。1作目の『すべてがFになる』は、ワタクシ的にはイマイチだったのだが、今回のトリックは文句のつけようがなかった。やはり、ミステリはこうでなくっちゃ! 題名からもわかるとおり、これは密室殺人の話である。ある晩ふたりは、犀川の同僚である喜多の冷凍実験室に、とある実験を見学に行く。この実験直後、二人の学生がいなくなっていることに皆は気付く。あちこち探してみると、なんとこの実験室で、二人は死体となって発見されたのだ。衆人環視、しかも密室状態の実験室で、いったい誰が、どうやって?萌絵、犀川、喜多はそれぞれこの謎に挑む。 状況設定が読者の前に続々と提示される。著者はこのテスト用紙をポンと投げ出し、「さあ、これを解いてみなさい」とでも言ってるかのようだ。無駄のない、端的な歯切れのよい文章も、慣れてくると心地よい。そして、最後に、この試験のきっちりした解答が明かされる。 コンビふたりの微妙な関係も興味深いところ。今回は、ひとつ進展があったので満足(笑)。シリーズものは、これだからやめられなくて困る。今後の展開が楽しみである。 |
このコミックがいい!まるいち的風景@〜A(柳原望、白泉社) 「まるいち」は、美月という女性によって開発された家庭用ロボットである。これは、主人の動きを見て覚え、全く同じ形でトレースするという仕組みである。つまりロボットでありながら、その持ち主の人間の行動そのままが出てしまうのだ。同時に、その行動に隠された想いも。 主人公の大学生有里くんは、ここ数年音信不通だった父の死により、父がモニターしていた「まるいち」を引き取ることになる。それにインプットされている父の行動に、彼は冷たいと思っていた父の、自分への想いを知る…。 本心を出すのが苦手な父、ゆえにすれ違ってしまった親子。亡くなった父の想いがこめられた「まるいち」は、ロボットなのに人間の心と心をつないだのだ。ロボットはあくまで機械でしかないのだが、それを人と人の架け橋にするところに、作者の暖かさを感じる。 どの話もハートフルな短篇で、じんとさせられる。イチオシ! |
特集 '99SFセミナーレポート去年のSF大会、今年3月のださこんに続き、またしてもSFイベントに足をつっこんでしまいました(笑)。5月2日(日)、水道橋にある全逓会館において開催された「SFセミナー」がそれ。 私には、セミナーは本当にコアなSFもののいくところ、という感覚があり、少々敷居が高かったのですが、思いきって参加しました。 やはりメンバーもプログラムも濃かったので(笑)、SF若葉マークの私には難解な部分もありましたが、それなりに楽しめました。 会場は200人ほど入れる大きな会議室のような雰囲気で、前の壇上で、ゲストがトークをするという形式。会場の左右では、ファンジンを販売していました。 ☆プログラム1「文庫SF出版あれやこれや」 出演者:込山博実氏(ハヤカワ文庫編集)、小浜徹也氏(東京創元社SF文庫担当)、村松剛氏(ハルキ文庫担当)。司会:高橋良平氏。 各出版社の紹介の後、絶版・復刊についての話題になりました。 創元の弁。今回の4月の復刊フェアはとても好評だったそうです。これからもいいものを掘り起こして復刊していきたいとのこと。コストを無視して復刊や重版のたびにカバーを変えたりして、なんとか売ろうとしてる前向きな姿勢に好感が持てました。 ハルキは昔角川が出していて今読めないものをフォローしたらどうだろうと考えて始めたら反響がよかったので、SFにシフトしたとのこと。昔からのファンも、新しい若いファンも獲得できたらしい。 印象的だったのは小浜氏の名言。「みんな、SFが冬だって言うけど、出版界そのものが冬!とくに小説は冬!さらに翻訳界は冬!!」出版社も危機感を抱いているというのがよく分かるお言葉でした。 これからは、ベスト10の帯を付けてみるとか、影響力の強い書評家のようなオピニオン・リーダーに期待したい、などの熱い抱負が語られました。 ☆プログラム2「スペース・オペラ・ルネッサンス」 ゲスト:大宮信光氏(SF評論家)、森岡浩之氏(『星界の紋章』の著者)。司会:堺三保氏。 実は私『星界の紋章』を読んでおりませんので、あまり理解できませんでしたが、おそらく『星界』ファンには垂涎の一幕だったことでしょう。スペース・オペラの中の帝国主義と民主主義、スペース・オペラによって宇宙への憧れをかき立てたい、などのトークに花が咲きました。 ☆プログラム3「『雪風』また未知なる領域へ」 ゲスト:神林長平氏(SFファンには神様的存在のSF作家。新刊『グッドラック 戦闘妖精・雪風』をひっさげて登場!)聞き手:牧眞司氏。 実は私は、これの前作『戦闘妖精・雪風』も未読状態。が、そんな参加者でもじゅうぶん楽しめる内容のトークでした。神林氏には初めてお目にかかりましたが、言葉をゆっくり選びながらの穏やかな話し方がとても素敵でした。 まずは牧氏による前作と新作のあらすじ紹介と、15年後の今になって続編を書くことになったいきさつの説明。「ずっと前から自分の中にあったラストシーンに向かって書いた」とのこと。 新作まで15年というブランクがあったのだが、現実のテクノロジーの変化はあまり意識しなかったそう。「前作でメカ的趣味は書き尽くした。現代の戦闘機は姑息!カッコ悪い!」という神林氏の答えに場内爆笑。 「いい機械を見た時、それを作った人間、作り手に対する畏怖を感じる。別に機械を擬人化しているわけではなく、あくまで機械は人間が作ったものという意識がある。」と、彼独特の機械への愛情を披露。 最近は京極夏彦にハマっておられるとのこと。あの分厚さを、「こんなに沢山読めると思うと嬉しくて」と語るところがいかにも本好きらしくてよかったです。 あとは敵である「ジャム」の正体についてなど。「この本のテーマは全く未知の相手とのコミュニケーションは可能か?≠ネので、正体がわかっては意味がない。でも人間には未知のものを解釈するという力があり、それを書きたかった」と語っておられました。 最後に出版予定をいくつか発表。書下ろし長編や『敵は海賊』続編など、これからもバリバリSFを書かれるようで、実に楽しみ! お話のあとは新作のサイン会。私もしっかりサインをいただきました。ありがとうございました。 ☆プログラム4「篠田節子インタビュウ」 おっとりした上品な方、と思いきや、話していくうち、実は意外な素顔が判明。聞き手:山岸真氏。 篠田氏、黒板を持ち出して会場にいきなりクイズを出題。「10年前のアスファルトの下に、3ヶ月前の死体が発見されました。なぜだと思いますか?」と、突然彼女、「大森!出て来い!答えろ!」と暴言。登場した大森望氏の「えーこれはですね、地球にはマントル対流というものがありましてー」という解答に、会場爆笑の渦!が、篠田氏の答えは「地層の逆転があった」または「地底王国というものがあった」で、ミステリものから大顰蹙をかったとか。 「ミステリは収束型の思考である。緻密に組み立てられた、合理的に納得のいく考え方をする。が、SFは拡張型の思考である。常識をはずれた発想がどんどん出てきて妄想が止まらなくなる。で、私はどうも後者の発想である。」と解説。彼女はSF思考型作家のよう。 現在小説家に至るまでを述べた後、「やっぱり読者がいてこそ小説!読者の為に、読者をゆさぶりながら自分の表現したいものを書いていきたい」とおっしゃってました。 ★ ★ ★ ★ ★ お次は夜の部。会場は旅館ふたき。 夜企画は4コマあり、しかも同じ時間に4つの企画が同時進行。とりあえず参加したものだけ、ご紹介します。 ☆「スター・ウォーズの部屋」 渡辺麻紀さん、大森望氏、添野知生氏、柳下毅一郎氏などが、夏の新作「エピソード1」の予告編を見せてくれて、いろいろと熱いファン話で盛り上がっておりました。公開が待ち遠しいです! ☆「老いたる霊長類のためのフェミニズムSF」 牧眞司氏と柏崎玲央奈氏が、フェミニズムについて、ティプトリーなどを例に出してしっとりじっくりと語っておりました。私は基礎知識がないので静かに拝聴。 ☆「真夏の前のホラーの部屋」 出演は倉阪鬼一郎氏、東雅夫氏、大森望氏ほか。「今、ホラーとSFの領土問題をはっきりさせよう」という趣旨で進行。「『パラサイト・イヴ』は果たしてSFかホラーか?『黒い家』や『リング』は?」などの議論が白熱しました。 面白かったのは、ホラーの人が読むと、その本のここがホラーだ、SFの人が読むとここがSFだ、というのがちゃんとわかる、ということ(笑)。同じものを読んでもその人がSF読みかホラー読みかで皆意見が全然違って、興味深かったです。 ホラーが怪奇小説と恐怖小説と幻想小説などなど、あれほど細分化されてるとは知りませんでした。しかも、ホラー読みの方にはきちんとすべて分類できるそうで驚き。 ☆「ネットワークのSF者たち」 司会は森太郎氏と田中香織嬢。ネットとSFに関する議題がとりとめなく出ていました。 また、ネットの書評を見て本を買ったことがあるか、買うときの参考にするか否か、他の人の書評が気になるか、などの質問に挙手で解答。だいたい皆、人の書評はよく読んで参考にしてるようでした。 「ネットで十分コミュニケーションできるのに、どうしてオフ会をやるのか?」という問いに、ださこんなどのことを絡めていろいろ意見が出ました。 星雲賞で、野尻抱介氏の『沈黙のフライバイ』組織票はいいのか否か?という議論も出ました。これは何かと難しい問題のようです。 東京創元社のホームページについての質問も。ネットは、今後こういった出版社と読者の大きな架け橋になってゆくことでしょう。 ☆「古本オークション」 実にディープなオークションでした。「そんな本がこの世にあったのか!」という超貴重本がいっぱい!見てるだけで勉強に(?)なりました。口上も面白かったです。 オークションが終った時点でなんと朝4時!部屋に戻って爆睡。 8時半、エンディング。スタッフの挨拶で閉幕。皆様、本当にお疲れ様でした。今回は大盛況だったそうで何よりでした。また来年を楽しみにしております! |
ダイジマンのSF出たトコ勝負!時は98年8月、第37回日本SF大会in名古屋「CAPRICON1」に遡る…。未だ興奮冷めやらぬ人々でゴッタ返す閉会後のロビーにて、ぼくは牧眞司氏にご挨拶。と、そこに、雑踏の中から牧さんに声を掛け、打ち合わせの日程を確認して立ち去るSFセミナースタッフ(浜田さん)がひとり。 ぼく「へえ〜、こんな早くから準備するんですか。」 偶然というものは、恐ろしくも素晴らしい。フタを開けてみれば、昼の本会企画&合宿企画、それぞれの担当を持つという、なんかビックリな状態になったのであった。とは言え、企画は多くの助力の賜物であるし、そもそも打ち合わせを、ぼくが休みの平日夜に変更して頂いたお陰で実現出来たこと。こりゃ頑張らにゃイカンのう。 そんなこんなで、SFセミナーがやってきた! 某所放出のSF古本を車に積込み、さわやかに晴れ渡った青空の下、いざ出陣! 舞台設営その他。参加者集まり早し。アッという間に開場10時。こりゃあ、大入り満員御礼だ。 あ、そうそう、会場に入った瞬間、あれっ?と思ったこと。「こんなに舞台近かったっけか?」これが仰ぎ観ていた一般参加者とスタッフの違いなのか(笑)。 今年のセミナーは、いきなりぼくの担当した「文庫SF出版あれやこれや」からスタート。実は二転三転した企画だというのは内緒だよ(笑)。作家系企画が極度の充実振りを示す本会中唯一の出版系プログラムとして、楽しみになさっていた方がきっと多かったに違いない。かどうかは分からないが、とにかく会場はギッシリ! パネリストには、込山博実@ハヤカワ文庫、小浜徹也@創元SF文庫、村松剛@ハルキ文庫の3氏をゲストにお迎えし、SF研究家の高橋良平氏に司会をお願いしました。この豪華布陣をもってすれば、いやがおうでも期待は高まるというもの。でも驚きましたよ。ホントに打ち合わせしないのね、この人たち(笑)。プログラム・ブックにぼくが景気付けで書いた一文(どんな展開になるか分からなかったんだもん)にチラリと目を通しただけで、「打ち合わせ? イイんじゃない、別に。」(高橋さん)ですからね(笑)。それが、いざ舞台に上がれば、ツボを心得たやりとりを繰り広げる役者振り。さすが! おおむね復刊の話を中心に進み、発掘するに値する作品とは? それらを読者へアピールするプレゼンテーションは?というような、どのように長いスパンで売っていく(読んでもらう)かの戦略的な話題が興味深かったです。欲を言えば、注目のハルキ文庫の話をもう少し聞きたかったかな、ということ。村松さんはSFイベント初登場だそうで、事実、依頼に際して「SFセミナーとは何ぞや?」という所からご説明した位なので、今回は他のタレントたちの出方拝見、という感じでしょうか。って言うか、アノ小浜さんのマシンガン・トークの前ではチト無茶な注文なのかも(笑)。 その小浜さんと共に、込山さんもファンいじり(?)の巧みな方で、大いに盛り上げて下さいました。最近のイベントに顔を出すことは稀なようですが、さすがはベテランSF担当者、ファン心理をよく解っていらっしゃる。聞けば、早川書房の近年のヒット作をほとんど担当しているのでは?と思う程。また、(H・K)というイニシャルの文庫SF解説は、氏が手掛けられたものだそうです。 盛況のうちにパネルは終了し、お昼休みに。すかさず柴野拓美&幸子ご夫妻にご挨拶に伺い、〈宇宙塵〉入会手続きをして会員に加えて頂く。実は、柴野さん(小隅黎)の訳された『造物主の選択』(ジェイムズ・P・ホーガン著 創元SF文庫99年)が、発売数日前に突然送られてきてビックリしたのですが、セミナーの直前にも〈宇宙塵〉最新号(195号)まで届いてしまい、大変恐縮していたのです。97年11月22日の「宇宙塵40周年パーティー」での名簿から送って頂いたようですが、さすがに「あ、こりゃマズイ!」と思ってすぐ入会。その場にいた牧さんには、「ナンダ、まだ入ってなかったのカイ。」と冷やかされましたけど、いや〜、実はそうなんです(笑)。ぼくはSF研出身じゃないので、特定のファングループに所属することにためらいというか、う〜ん、ちょっと敷居が高かったんですね。 ではなぜ40周年パーティーに?と謎に思う方もいようが、こんな歴史的イベントには“当然”行かなければいけないものだと考え、参加したのでした。そんくらい〈宇宙塵〉は別格ってこと。でも〈SFマガジン〉でパーティーの告知を見て来た、という全くのフリの客は、ぼくだけだったみたいです。 閑話休題。プログラムは「スペース・オペラ・ルネサンス」(出演/森岡浩之・大宮信光・堺三保)、「「雪風」また未知なる戦域へ」(出演/神林長平、聞き手/牧眞司)と進み、神林氏の最新作『グッドラック 戦闘妖精・雪風』(早川書房)の先行販売&サイン会へ。ぼくは売り子をしていた成り行きで、サイン会は神林さんの付き人としてお手伝いさせて頂きました。ずらり並んだファンの方のお名前を入れながら、丁寧にサインをなさる姿が印象的でした。 何かと話題の多かった「篠田節子インタビュウ」(聞き手/山岸真)を観ることなく、合宿準備に直行する。大広間でのオープニングも、ギッシリ埋め尽くされました。 合宿は企画が同時進行の分科会方式で見所はたくさんあるんだけど、ぼくは『グッドラック』を売りつつ(百部完売達成!)、そのまま大広間でダベリモードに突入。なんと3コマ目まで費やしてしまったのだった。えらくモッタイナイ事を…と自分を叱る反面、楽しかったからいいもんね。いや本当言うと、こういうのやってみたかったんだよ。大会ゴロみたいで(笑)。一緒に楽しい時間を過ごした沢山の皆さん、またヨロシク! そして最後の4コマ目。セミナーに結集した“ださこにすと”はもちろん、多くのファンの関心を集めた「ネットワークのSF者たち」(森太郎@森太郎のサイト、田中香織@東洋大学SF研究会)に後ろ髪を引かれつつ、勇躍ぼくが向かうは「ほんとひみつ‐「つねならぬ本」編‐」(案内役/三村美衣)なのである。 96年以来4回を数える、歴史はあるけど権威の無い(笑)、珍本・稀本乱れ飛ぶ、丁々発止の名物企画。で、ぶっちゃけた話、古本自慢なワケですな。だが、まんまと担当を仰せつかり三村美衣さんに電話するぼくには、開口一番「あんたも出なさい!」との有無を言わさぬ指令が下ることなど知る由もなかったのであった(笑)。 今回の出演者は、SFのみならず「古本で買う絶版ミステリー」特集(〈アミューズ〉98年8/12号)をエスコートした博覧強記、日下三蔵氏を筆頭に、〈本の雑誌〉で古本コラム「神田番外地」を長期連載中の北原尚彦氏、《トーキングヘッズ叢書》に「新・古本あるけおろじい」を連載していた牧眞司氏(SF書誌研究の〈SFビブリオファイル〉主宰の方が分かり易いかも)という、錚々たる豪華レギュラー陣。で、〈銀河通信〉に「SF出たトコ勝負!」を連載中のぼく。いやはや(笑)。 結果としては、ネタはともかく語りの部分がへろへろで要反省!って感じ。芸の道は厳しいっス。 最も注目を集めたブツは、北原さんが当日入手したという隠し玉、“学年誌のふろく”でした。この小冊子は大抵が世界名作や推理小説なのだが、ナントSFばかり50冊! これだけ集まりゃヨダレもの! 引き続き行われたオークションでは、いろんな人の探求書が続々登場するという偶然はさておき、充実の品揃えで白熱。ぼくもSF特集号の雑誌などを落札しました。 個人的にいつもお世話になっている桐山芳男さん(青心社『ピーナツバター作戦』編者)の名言。「君もどんどん深みにハマッていくね(笑)。」なんかホントそんな感じ。ああ、堕ちていく(笑)。 さ〜てと、次回もガンバルぞ。皆さん、またお会いしましょう! |
あとがき今回の銀河通信は、非常に更新が遅くなり、まことに申し訳ありませんでした。ひとえに、発行人とコラムニストの怠慢のせいです。しかも、コラムニストはついに原稿を落とすという不始末!こら、ダイジマン、キミもお詫びせよ!ほんっとにのんびり屋なんだから! |