DASACON6レポート

   2002年10月19日(土)〜20日(日)にかけて、東京は水道橋の朝陽館本家にて、DASACON6(読書系ネット者のオフ会)が開催されました。開演は18時。仕事が終わってから参加したため、19時着。てっきり始まってると思ったら、玄関先にu-ki総統が。開始がちょっと遅れたとかで、間に合ってしまった。ラッキー。おおたさんのヘアスタイルが素敵だった。いつのまにそんなに伸びたの。着物姿もお似合い。

 大広間に行って、えんどさんBANANAさんの脇に座らせていただく。ダイジマンやπRさんも発見。ビールをいただいていると、u-ki総統が壇上(というか前)に出て、19時過ぎにオープニング。諸注意のあと、あいうえお順の逆に(青木みやさんが気の毒なので^^)自己紹介。自分の最近読んだ本・読んでる本を言っていくところが、さすが読書系の集まり。なのに自分はすっかり言い忘れてる大馬鹿者(笑)。「『ムジカ・マキーナ』を昨夜読み終わりました〜、感動しました!」というつもりだったのに〜。『夢の果て』1巻(北原文野)の告知をするので頭がいっぱいだったのであった>メモリ少なすぎ。皆様の紹介本は、web日記のライブ版みたいで、聞いててとても面白かったです。あちこちで、「ほー」という声があがったり。出たばかりの『イリーガル・エイリアン』を読んでる方がわりといたような。おおっ、佐藤亜紀さんもいらしてる!かっちょいい!!


 20:10、ゲスト企画。Jコレクション出版記念ということで、佐藤哲也さん&高野史緒さんのおふたりがゲストとして登場。舞台左手から、u-ki総統、佐藤さん高野さんジョニィたかはしさん。おふたりへの質問掲示板での書き込みをもとに、いろいろとお話をうかがいました。(以下、敬称略)

u-ki:「佐藤さんは、ファンタジーノベル大賞でデビューする前には、なにか創作活動をしてらしたのですか?」

佐藤:「映画の「トラ・トラ・トラ!」を観て、空中戦の小説を書いたのが小学4年のときです。あと、マイクル・クライトンの映画「ウエストワールド」を観て、ロボットSFを書いたのも中学1年のときです。その後、星新一の影響を受けてショート・ショートを書いたりしましたね。そのあとは大学で8ミリ映画をやってました。就職してから、1989年前後ですか、『ぬかるんでから』の半分くらいはその時期に書きました。そのあとで『イラハイ』を書きました。」

高野:「バブル時代に、青山円形劇場で脚本コンクールをやっていて、それに応募したら佳作に選ばれました。「すごくいいんだけど、でもこれは上演はできないから」と言われて(笑)。お芝居あまり観たことないでしょ、と言われました(笑)。高校時代は文芸部に所属していて、学園祭のたびにガリ版の雑誌みたいなのを発行して。それに短編を書いたりしてました。10枚くらいの短いのを3篇とか。内容は、やっぱり音楽ネタでSFっぽいのを。」

u-ki:「佐藤さんは、映像以外で影響を受けた本などはありますか?」

佐藤:「ギリシャ古典ですね。岩波文庫の上中下で出てる、ヘロドトスの『歴史』とか。ホメロスのオデッセイアなんかにも、叙述の形式の影響を受けてますね。話が脱線を繰り返しても、また戻ってくるあたりとか。」

u-ki:「佐藤さんは、言葉のたぐり方がこう断定的というか(笑)。「○○は××だ!」と言い切るみたいな記述がありますよね。」

佐藤:「あ、そうですか。なるほど。でも断定してても全部嘘だから。」(会場笑)「『イラハイ』は、意志の力ってのは入ってないです。『妻の帝国』は入ってる。」

ジョニィ:「高野さんの、音楽についてのお話を」

高野:「昔、スターウォーズのサントラの、オーケストラサウンドに魅せられて。そのあたりからクラシックに興味を持つようになりました」

ジョニィ:「声楽もやってらっしゃるんですよね」

高野:「中3のころ、第九をアマチュア合唱団が歌うのが流行りまして。土浦第九を歌う会、という、そのまんまの名前の合唱団に入って、ところがその先生がけっこう有名な方だったんです。そのうち個人レッスンなどにも行くようになって。音大受けるのも考えたんだけど、努力だけじゃダメだと思い知らされて、断念しました。今でも趣味で多少歌ってます」

ジョニィ:「歴史の方は?」

高野:「昔、カール・セーガンの「コスモス」というテレビ番組がありまして。その、天文学の「歴史」の記述がとても面白かったんですね。そこから興味がわいて、文系に進学しました。自分はずっと理系だと思ってたんですが、数学や物理もやっぱり努力だけじゃダメだ、という部分があって。歴史をもっと勉強したいと思うようになったんです」

u-ki:「佐藤さんはコンピュータの仕事をしてるけど、法学部出身なんですよね?」

佐藤:「85年に就職したんですが、その頃は就職難で。でもSEならいくらでも職があったんです。法学部なのに、卒論で小説書いて出して。(会場、笑)でも優をもらいましたよ」

佐藤:「どっちかっていうと文系の人間だったんですが、成城大はSF研がなく、ミステリクラブしかなくて。この頃はSFも読んでなくて、8ミリ映画ばかり作ってました。本は普通の状態として読んでましたけど、メインは映画でした」

u-ki:「モンティ・パイソンに影響を受けました?」

佐藤:「作品に直接は反映されてないです。8ミリで脚本をやってるうちに少しその影響を受け、+ホメロスなどで今の私がある、という感じですね。『怪人髑髏仮面』というのをネットにアップしてるんですが、これは映像にできなくて悔しかった。あれは『沢蟹〜』に近いスタイルですね。これのあとで、『沢蟹』ができた」

u-ki:「ナンセンス小説ですよね。『沢蟹』はユーモアを目指していたのですか?」

佐藤:「内容より、テクノロジーに関心があって。『髑髏〜』は8ミリの脚本をイメージして書きました。小説のフレームを、8ミリにしているんですよ。画面のここは今映ってるけど、その横の人物は、いても映ってない、という」

佐藤:「ネットにアップしてる、『沢蟹〜』の番外編は、本当は作品の一部だったんです。途中に入ってたんですが、版元から「たるい」と言われて(笑)、削りました」

ジョニィ:「高野さんは、初めて応募したのがハヤカワの賞だったんですよね」

高野:「はい、タイムスリップしてコンスタンチノープルの陥落に巻き込まれる、という。書いたのは、大学卒業したくらいですか。学部生の頃、中世史を専攻してたんですが、南仏に異端思想があったりすると「これが異端じゃなくて、逆にメインの思想だったら?」とかあれこれ考えるのが面白くて。論文より、小説書くほうが面白かったですね(笑)。論文書きながら、「こうなったら面白いのに〜」って考えてばかりいました」

u-ki:「高野さんは、影響を受けた小説などは?」

高野:「コクトー全集がすごく好きでした。コクトーにしかありえない感性や味がとても好きで。憧れを持ってました。このひとにしかない感性というのがあるなら、逆に自分にしかない感性というものが、あたしにもあるかな、って思って」

u-ki:「好きな漫画とかはありますか?」

高野:「好きな漫画家は、青池保子とか。友人に教えてもらったんですが、『イブの息子たち』とか好きでしたね。『エロイカ〜』とか。影響受けてると思います」

佐藤:「漫画はジャンプの『ワンピース』とか、『ハンター×ハンター』とか読んでます(会場、どよめき)。音楽はあまり聴かないですね。映画音楽がメインです」

高野:「好きな映画は「スター・ウォーズ」です。人生に大きな影響を受けました。あとは、単館上映のものなんかに興味を持つことが多いかな」

u-ki:「おふたりのパソコン暦は?」

佐藤:「ネットをはじめたのが94年か95年ですから遅いですね。(会場から「遅い〜!?」の声^^)マックでした」

u-ki:「それ早いですよ(笑)マックなら早いです」

高野:「私は2年前。2000年の7月にサイトを立ち上げまして。それまではワープロ専用機でした」

u-ki:「そういえば、『妻の帝国』でのワープロ専用機の描写はリアルでしたね(笑)。実体験ですか?」

佐藤:「はい、ワープロの文豪を使ってました」

u-ki:「想定してる読者層ってありますか?」

高野:「読者を想定して、小説って書けるもんだろうか…?私はないです。読まない人は読まないし、読む人は読むし。自分も読者のひとりとして、面白いものを書きたいとは思いますけど。私の場合、デンパな言い方ですけど、作品が空中から降りてくるというか(笑)」

ジョニィ:「ネットとかの、読者の反応に影響されたりしますか?」

高野:「ないです、やっぱり。私は作品の下僕というか、マネージャーというか、ステージママみたいな感じなんですよ。作品があたしに書きたいものを書かせてる、というか」

佐藤:「最初の読者は、奥さんです。だから売れないんですけど(笑)。途中まで書いてるところで読んで、「これはちょっとね」とか言うんですよ。その箇所が100枚〜150枚だったり(笑)。それを全部捨てて書き直したりしますから、これも時間かかる理由のひとつですね(笑)。でも第三者にチェックしてもらえるのは有難いですね。ひとりで書いてると破綻しちゃうので」

u-ki:「会話にしても文章にしても、ぽんぽんとノリで進んでいく感じがするんですけど、勢いでだーっと書いてるんですか?」

佐藤:「長編は一日3枚進めばいいほうですね。10枚書いて、寝て、起きて翌朝5枚捨てるという感じ。仕事でプログラム書いててもそう。同じことやってますね。つじつまあわせしかしてないかも」

高野:「私も、書いて捨てて、書いて捨てて。1日5枚書いて、削って削って残るのは2,3枚。一冊本を書くと、その2倍以上は書いてますね」

u-ki:「今回、JコレクションとしてSFというレーベルで出すにあたってのいきさつは?」

佐藤:「もともとこの原稿はハヤカワに見てもらってたんです。で、Jコレクションに入れますと言われて、本になった」

高野:「これはSFマガジンの連載だったんですけど、その当時はJコレクションはなくて。まとまったら「Jに入れましょう」と言われました」

u-ki:「SFとして出ることに、特に抵抗は?(会場、笑)」

高野:「SF意識の高い、ここにいるような方々にSFと呼ばれるのはうれしいですが、世の中にはSF意識の低いひともいるんですよ。SFを低くみてるひとには、SFレーベルだと軽んじてみられる。だから、相手によってメリットとデメリットがある感じですね。SFのお好きな方には、このシリーズに入ってるから、高野史緒って知らないけど読んでみようかな、という風に思ってくださればメリットがありますね」

佐藤:「あまり考えたことないです。僕のは、もともとSFと思ってない人のほうが多いし。でもSFレーベルで読者は増えたかも。実は今、スペースオペラの企画もあって(会場、どよめき)」

u-ki:「『イラハイ』のとき、ファンタジーという意識は?」

佐藤:「どうなんでしょうか?たぶん違いますね。応募する賞がこれしかなくて(笑)」

u-ki:「異形コレクションの依頼はどのように?」

高野:「あれは最初にお題がいくつかあって、その中から自分で好きなのを書いて送るんですよ。でも、採用されるかどうかはわからない。井上雅彦さんと、編集の方々が選ぶので。私は持ちネタがあって、「これならこのテーマにあう」というのを選んで送りました」

佐藤:「僕は飯野さんと友達で、どっかのパーティかなんかで「書いてくれよ〜」とか言われて、こっちも酔っ払ってるから「うんうん」って返事しちゃって(笑)」

u-ki:「ところで、この会場にいる誰もが聞きたがってると思うんですが(ここですでに会場から笑)、『妻の帝国』の妻のモデルは、やはり奥様ですか?(笑)」

佐藤:「違います(きっぱり)。あれは違います。僕には「妻もの」ってジャンルがあるらしくて(会場、笑)、よく出てくるんですけど、でも佐藤亜紀ではないです。モデルにしてるのは、『ぬかるんでから』の中の一編だけです。どれかは教えません」

u-ki:「表題作なんかは、妻への愛があふれてると思うんですけど」

佐藤:「あれは違います。『ぬかるんでから』は結婚してから書いてますが、そうでないのもあります」

u-ki:「以前、「妻もカバも一緒です」みたいにSFマガジンに書いてありましたが」

佐藤:「展開に困ったら妻を出すんですよ。便利ですよ。なんでみんな使わないのかな(会場、爆笑)」

u-ki:「前の2つの長編と『妻〜』では視点が違うのですか?」

佐藤:「前の2つは、高いところから書いてます。妻は等身大、映画でいうとバストショットの雰囲気で」

ジョニィ:「高野さんの『架空の王国』に出てくる、歴史を勉強する女の子は、ご自分がモデルですか?」

高野:「自分の理想ですかね。こんなふうになりたかったな、という憧れを書きながら追体験するというか」

u-ki:「高野さんの『ムジカ・マキーナ』は歴史改変小説だと思うんですが、サイバーパンクに入れられるような、でもちょっと違うような感じがするんですけど、あれは意識して?」

高野:「意識はしてません。ファンタジーという意識もなくて。枚数も締め切りのタイミングがよくて、という感じでファンタジーノベル賞に出しました」

(会場から、山之口氏)「あれって駆け込み寺ですよね(笑)」

高野:「デビューしたら、ああ、そういや、サイバーパンクなんてものがあったか、みたいな」

u-ki:「計算じゃなくて?」

高野:「またデンパなこと言いますけど、宇宙からの通信が(笑)。素材集めて、とかって考えないです」

u-ki:「19世紀の話なのに、20世紀のテクノロジーだけがすっと違和感なく入ってるところがすごいですよね」

高野:「さっきの自己紹介でもそうでしたけど、こんな本とあんな本をいっぺんに読むひとがいるんだー、みたいなのってあるでしょ。自分にとっては違和感ないんですけど。自分で好きなもの持ってたら、発酵して(作品に)出てくるんじゃないでしょうか」

u-ki:「佐藤さんは、旧ソ連SF的な破滅SFっぽいジャンルがお好きなんでしょうか?」

佐藤:「気がついたらそうなってるんですよね」

u-ki:「気がついたら山が崩れてるとか?(笑)」

佐藤:「そうです(笑)」

u-ki:「共産主義批判という意味合いは?」

佐藤:「ないです。『妻の〜』では、特定のイデオロギーに対しての批判はないです。視点は後ろを向いてます。私的な20世紀の再確認なんですよ。共和国や、テクノロジーが20世紀にどう作用したか、という」

ジョニィ:「高野さんの『ウィーン薔薇の騎士物語』シリーズのきっかけは?」

高野:「やりたいことがいっぱいあって、アイデアだけはいろいろあるんですよ。中公の人と話してたら、「そのネタはノベルスで」と言われて。書きたい内容がノベルス向きだったんです。他にもノベルス企画はあるんですが、いつ書けばいいんだろう…」

ジョニィ:「『架空の王国』は歴史小説ですが、殺人の謎を解くミステリ部分もあるんですけど、ミステリは意識してないんですか?」

高野:「ないですね。何度も同じこと言っちゃいますけど、作品に作者の責任はないというか。どれ書いても意識は同じです。SFもミステリも」

u-ki:「今後の出版予定を」

高野:「『ペテルスブルクの悪魔』というのを書いてますが、いつどこから出るかは不明です。80年代の自分の頃の話も書いてみたいです。ノベルス方面も」

佐藤:「『妻〜』の反動で書いた、メチャクチャな話があって。東京を舞台にしたソフトウェア開発の話で、10年たっても終わらないという話(会場、爆笑)。あと、「あ」から「を」までの45の短編を書いてます」

☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 ここで、会場からの質問コーナー。覚えてるだけ書いておきます。抜けてる方、ごめんなさい。

浅暮:「佐藤さんのは実験小説ですよね?」

佐藤:「ゆきあたりばったりですね。今回はテリングから、ショーリングに切り替えてみました」

鈴木力:「長編と短編では、書き方が違うように思えますが。前者は抽象的、後者は視覚的、というように」

佐藤:「そのとおりです」

山之口:「普通のひとからみると、小説にちょっとSFを入れるのは「逃げ」ととられることがありますが、そういう後ろめたさってありますか?」

高野:「ぜんぜんないです〜。自分の意志でやってるとは言いがたいので。19世紀っぽいものを書こうとは思ってないんですよ。20世紀も一緒に入っちゃってる」

らじ:「『妻の〜』はユートピア小説として読んだのですが、岩波文庫のザミャーチン『われら』の影響を受けてますか?」

佐藤:「ああ、それ持ってるけど読んでないんです。影響としては、あとがきにも書いた『収容所群島』が意識としてはありますね。あとはオーウェルの『1984年』とか」

ヒラマド:「昔の週刊新潮の記事がここにあるんですが、「結婚」という記事で(会場、どよめき)。で、ここに、奥様の留学中に、佐藤さんが手紙に連載小説を書いていたという記述があるんですが、それはどんな小説なんでしょう?発表の予定は?」

佐藤:「よくそんな記事を…(笑)。『烏』という、山賊小説です。未完です。完成させようという気持ちはあります(会場、どよめき)」

☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 おふたりの小説に対する姿勢といったものがよくわかる、いいインタビューでした。ゲストのお二方、ありがとうございました。このあと、塩澤編集長のご好意で先行販売された『アイオーン』(高野史緒、ハヤカワSFシリーズJコレクション)を含むサイン会に突入。私もおふたりから、サインをいただきました。


 22:15、SFファン交流を考える会企画。牧紀子さんと鈴木力氏vsおおたさんという陣形。前者が「SFファン交流を考える会」ってこういうもんだよ、と説明し、それにおおたさんがあれこれ疑問を述べる、といった形。

 紀子さんは、SFファンのサイクロペディア(辞書)をナマで作っていく、といったことをやりたくて、この会を発足したそう。だいたい常時15〜20人くらい集まるそうで、そのメンツは古いSFのひとも、初めてのひとも、とさまざまだそう。1次会ではSF有名人の話を拝聴して、2次会で居酒屋であれこれしゃべる、といった形式のようです。告知はSFマガジンだけで、SFに興味のある方はおいでください、といった感じ。とにかく顔をつきあわせて集まってSFの話がしたい、というのが紀子さんのコンセプトなのかな。「ついてこれるヤツはついてこい!」みたいな、体育会系の印象を受けました。SF大会やSFセミナーのこともちょろっと出ました。

 40代のSFファンと、それ以下の世代のSFファンとが今断絶しているので、そこをつなぎたいという意味もあるとか。教える場、というのを作りたい、と。ここに辞書があるよ、とポンと場を提供するから、覚えたいひとは勝手に覚えてください、と。昔はこういうこと(昔話とか、○○を読め!など)は大学SF研で教わったんだけど、最近は大学卒業後にSFに入るひともいるので、そういうひとたちのためもあるとか。「とにかく、SFは楽しいものだ、ってことを伝えたい!」とおっしゃってました。

 おおたさんは、ファン交流会の会合に対して「昔のひとの自分語りでは、文芸社のノンフィクションと同じじゃん!」と発言。SF有名人の話を聞くだけだったら、ネットでじゅうぶんなんじゃないのか、と。わざわざ会場まで時間を作って行くのは大変だし、いつでも誰でもアクセスできるようにしてくれればそれでいいのではないか、と。

 鈴木力氏は、自分がSFファンダムに入るまでの経緯をお話。紀子さんがここで「人生とSF活動は分けられない!」という名言を(笑)。会場おおウケ。これにはおおたさんも、まいった!という感じでした。「そうですか、SFは人生ですかー!(笑)」と。

 ネットのない、まさに人と人がナマで集まることによってSFファンダムが作られていた(しかもそういう熱い時代を肌で知っている)40代SFファンと、ネットから入った新しい世代のSFファンとの考えの違いが浮き彫りにされて、とても興味深い企画だったと思います。

 私個人の考えでは、どっちもアリだと思いますねえ。ナマの長所と、ネットの長所、という。

 やっぱり、ナマでひとの話を聞くのはとても楽しい(SFセミナーしかり、SF大会しかり)。たとえば、私個人のでいうと、誰かがweb日記で奥泉光のインタビューにリンクしてたとしても、読むかどうか。でもセミナーに自分で足を運んであれだけ面白いご本人のキャラに接すれば(笑)、彼の小説に対する興味の沸き方はぜんぜん違いますし。ファン交流の会、という「場」があるのはいいことだと思います。

 おおたさんのおっしゃることもすごくよくわかる。実際、私なんてそうそうファン交流の会に行くための時間は作れないし。ネットにアップしてくれたらうれしいのにな、と思うのも事実。確かに、「僕たちはこういう活動をしています」みたいな内容紹介はもうちょっと外にアピールしてもいいような気もしますよ。行ったひとしかわかんない、ではちょっともったいない気も。別にインタビューのすべてをアップしなくても、告知と事後報告だけでもいいから。

 あまりの盛り上がりっぷりに、みかねたヒラマドさんが30分延長してくださいました。感謝。


 23:30、賞の話企画。先日、DASACONサイトでアンケートをとり、その結果を元にして話がすすめられました。司会はジョニィたかはしさん。

 ネットの方々は、賞をとったからといって読む方は少ないという結果が。なぜなら、興味ある本なら、すでに読んじゃってる本が多いので、という回答。

 星雲賞、SFオンライン賞、直木賞、芥川賞などなどまあ巷に「賞」の名のつくものはあふれてますが、実際に賞の販売効果はあるのか、という質問が。私が、書店からの実情として、「それはもちろんあります」と発言。たとえば『ふわふわの泉』が星雲賞を取ったとき、あのレーベルは当店ではいつもヤングアダルト文庫コーナーにしか置いてないんですけど、星雲賞帯がついてからは、ハヤカワ・創元のコーナーにも積みました。ハードカバーのSFコーナーにも。それによって、売上は確実に上がったと思います。(具体的な数字が出せなくてすみません、みらい子さん。わかってれば事前に調べておけたんですけど)

 でももちろん、賞の知名度によってその効果は大きく違います。直木賞・芥川賞なんかだと3ケタ注文だったりしますが、それ以外だと通常より50%多く発注、などですか。店の客層によっても売れがぜんぜん違うので、そのへんも考慮しますが。ドゥ・マゴ賞なんかは、うちでは積んでもほとんど動かないしね。でもたとえば賞をとる前には積んでなかった本なども多々あるんで、そういう本をもう一度受賞帯つきでポップ立てて積んで、日の目を当てるという効果はあります。これは塩澤編集長のおっしゃるとおり。

 「でもそれなら星雲賞でも、たとえば銀河通信オンライン賞とか、安田ママ賞とかでも、お客さんの目にとまらせるという点では同じなんじゃないの?」という一歩さん(でしたよね?)からのご指摘。う〜〜ん、でも知名度ってのがあるからなあ。星雲賞、ってのは、SFファンなら耳にしたことはある言葉でしょう。SFファンには当然効き目がある賞だと思いますが。

 それと今回の星雲賞における、『プラネテス』問題などにも議論が飛びました。みらい子さんや牧紀子さんから、いろいろと説明がなされました。これについてはネットで出尽くしたような気がするので、今回は書きません。

 あれこれ議論が飛び交ってとても面白かったんですが、企画じたいの方向性がちょっとよくわかんなかったかな。ジョニィさんがどこに向かいたかったのか、が。あれこれ賞の話ができればそれでよかった、のならいいんですけど。

 ええと、これが終わったのが0:30くらいだったかな?このあたりからすでに時間の感覚がなくなっている(笑)。


 1:00、オークション開始。掲示板に書かれた最新順から。結果はこちら。私もいろいろ買ったので、帰りは重くなったよ〜。『ディファレンス・エンジン(上・下)』をゲットできたのがなによりの収穫。かつきさん、ありがとうございました。途中、ちょこちょこひとと話すために抜けたりしたので全部は聞いてなかったんだけど、今回一番面白かったのは、『ハローサマー、グッドバイ』の高値に転げまわって悶えるみかげさんでしょう!(笑)いやあ、いい戦いでした。ぜひ読んでねっ、ハロサマ。内田善美もいいっすよ〜。あと、おおたさんの売り方もすごかった(笑)。全部100円かい!みたいな。落語家はやはり違う。でもこの場にMZTさんがいないのが、やっぱりちょっとだけさみしかったな。

 オークションが終わったのは、なんと朝4時!意外と長くかかりましたな。そのあとはだらだらとだべり。みかげさんとネタバレ論争とか、サイト運営についてとか。お初にお目にかかれて、うれしゅうございました。あと誰と何しゃべったかなあ。気がついたら、林さん福井健太さんとかつきさんとダイジマンと私で、タイトル古今東西をやってたような(笑)。異形コレクションとか、星新一とか、森博嗣とか。ああ、『有限と微小のパン』を思い出せなかったのが一生の不覚だよ!ていうか誰かすでに言ったか?それすら覚えてないほど寝ぼけてたらしい(笑)。そうだ、佐藤哲也さんが指を切って救急車で運ばれたのにはびっくりしたよ!しかもぜんぜん気がつかなかったし、私。

 結局完徹。9:00、エンディング。皆様、お疲れ様でした。なんかいつもながら、今回は実に実にあっという間のひと晩でした。オークションが終わった時点ですでに朝だったからなあ。もっともっといろんな方とお話したかったです。企画も豊富で、本当に楽しかった!ゲストの皆様、参加者の皆様、スタッフの皆様、ありがとうざいました。またお会いしましょう!

2002.10.23 安田ママ