第一回「みぞこん」レポート(SFオフ会)

 しのつく雨の中、98年9月26日(土)午後1:00より、下目黒住区センター会議室において、第一回「みぞこん」が開催されました。いわゆる、「SFオフ会」です。(「どういう名称にしようか」とさんざん皆で悩みまくりましたが、結局これに落ちついた…と私は思ったのですが、良かったでしょうか?)

 昼の部の参加者、なんと26名!(正確には若干誤差あり)これだけ集まるとは、溝口さんの人徳ですね。恥ずかしながら、ワタクシ安田ママとダイジマンも末席に加えてていただき、濃く熱いSF談義を聞いて参りました。

 広い和室にぐるっと円陣に座布団を敷き詰めて、まずは、主催者である溝口@書物の帝国さんと、u-ki@私立東鳩学園のご挨拶から始まりました。
 u-kiさんが司会をつとめ、まず今回どういった趣旨で集まることになったのか、ということから紹介。要するに、「Web上だけでSFの愚痴を言ってないで、皆で顔を付きあわせて、今のSFに関して思ってることを言い合おうよ!」ということで、溝口さんがメンバーを集めて下さったようです。
 まずはざっと自己紹介から。森太郎さんがノートパソコンで、口上を述べてる方のホームページを皆に見せてくれました。「ああ、あの人がこの人ね」と皆で顔とページを確認。

 今回集まるにあたり、あまりに人数が多いので、自己紹介だけで時間が終わってはもったいない、ということでu-kiさんがあらかじめメールで全員からアンケートを取り、資料として配布してくださいました。これは賢かったと思います。各人の読書傾向など大変わかりやすいし、読んでるだけでも楽しいのだ!なんせ20項目もあり、厚さもけっこうあるんで読みでがあります。これ、記念に大事にとっときます。u-kiさん、ご苦労様でした。

 で、このアンケートの項目15番目の「いま、SF弱ってると思いますか?」という質問についてさまざまな面白い結果が出たそうで、主にこれについての討論になりました。実際に話が始まったのが2時くらいでしたから、2時間まるまる、このネタ1本で皆で盛り上がりまくり!!す、すごいぞSFものたち!

 熱く激しい叫びでした。まず、「読みたいSF本が手に入らない!!」というのが、全員の一致する意見でした。昔の良いSFが、ほとんど絶版&品切未定状態。今あるものだけでは、チョイスの幅が狭すぎる!この中でだけしか選べないのかオレ達は!今残ってるのは、柔らかいSF(SFっぽいもの)が多く、強いSF(ハードSF)はほとんどない!(by u-kiさん)←これ、名言ですね。

 …確かにおっしゃる通りですね。ちょっと書店側の立場から言わせていただきますと、ハードカバーの新刊だと、ミステリとSFは内容と読者がリンクしてるので、だいたいの書店が並べて展示してます。で、今の時流は断然ミステリが元気がいい。となると、限られた書店の棚のキャパでは、どんどん出てくる新刊に、既刊本は押されて返品されてしまいます。ましてやSFの新刊は大変少ないです、現在。ゆえに、出版点数の多いミステリに押されてSFの棚が小さくなってゆくのは仕方がないことなのです。申し訳ないのですが。午前中に見てきた、八重洲ブックセンターでも、驚くべき少なさでした。ビジネスマン向け品揃えだからか?まだ、神田のほうが量があるかもしれない。
 文庫はちゃんと毎月の新刊は積まれますし、売れれば次の月の新刊が来ても、返品されずにそのまま積んであったりします。でも、これでうかうかしててはいけない。現在、文庫の寿命はもんのすごく短いです。発売1ヶ月後に客注出したら品切重版未定!あの新潮、角川が平気でこういうことを言うのですよ。
 皆様、なんでも見つけたら買い!ですよ。間違っても「今度にしよう」と思ってはいけません。次にその本を発見できる確率はすごく低いとくれぐれも肝に銘じておいて下さい。(もし手持ちのお金がないという緊急時は、1週間程度ならお取り置きしといてくれる書店もあります)悲しいことですが、ほんとにもう対応しきれないみたいです、書店も出版社も。
 森山さんは「出版社だって商売だから、出ないのはやはり買ってくれないからだろう。購買層が少なければ、利益が望めないから、出版されないのは仕方ない。」とおっしゃってました。確かにその通りです。

 でもこれだけ欲しがってるなら、SFをもっと復刊してくれてもいいんじゃない?と思いましたね。もちろん、東京創元社などはずいぶん頑張ってくださってるようですが。
 なんかこう、もっと読者のこういうナマの声を出版社が聞く機会があればなあ、と歯がゆい思いでありました。「アンケートはがきは効果ある」と野田さんもおっしゃってましたが、実際、出版社は読者がなにを求めてるのか、という情報をのどから手が出るほど欲しがってるんですよ。
 要望はガンガンハヤカワなどに手紙でもなんでも書いて送ってみてはいかがでしょう。愚痴るばかりでなく、こちらからも動いてみては?私も、読者と出版社の架け橋的立場にありますから、できるだけのことはしてみようかな、と思っております。たいしたことはできませんが、店に来る出版社の営業の方に話をするとか。書店員の血が燃えるぜ。

 「こうSFに元気がないのは、読者が少ないからだ!」という意見も出まして、確かにSF大会の参加世代から見ても、後継者が少なそうですよね。これはなぜか?
 「子供のためのSF入門書がない!」という意見もありました。これはまた書店員からのレスですが、現在子供の数は減ってる。つまり、子供の本は売れない。うちなんか、児童書よりゲーム攻略本のほうがはるかにたくさん売れるのですよ。売れない本に場所を割くことはできませんから、限られた棚に置くとなると、SFまではとても在庫しておけないのです。(ホームズ、ルパン、江戸川乱歩がありゃまだいい方。)でも、まだ子供向けSFは発行はされてますので、お子様は図書館を利用していただくしかないかもしれないです。

 では、「購買層を広げるために、どうやって読者を開拓するか?」「京極にSFを書かせる(笑)」「今、SFぽいもの(「パラサイト・イヴ」など)は売れるのだから、この周辺の読者を引き込む」「周りの知人の読書傾向を調査して、その人の好きそうな傾向のSFをすすめる」などの意見が出ました。あ、あと、作家でなく訳者で選ぶとハズレがないそうで、これは私には目からウロコでした。浅倉久志さんの訳書はどれもよいそうで、いいこと聞きました。

 だいたい、今回集まった皆様は、本格SF(って言うんですか?)系の方のようでしたが、SFっぽいものと、本格SFの間になるようなものが、今まったくないという意見もありました。ヤングアダルトものの文庫は今、とても売れている。子供がアニメから入って、富士見ファンタジア文庫方面に行く。このあたりの読者を、どうやったらハヤカワ文庫の水色の背表紙まで持ってくるか?うーむ、むずかしそうですな。私もこれはわからない。

 「想像力の欠如」ということも出ました。アニメやマンガばかり見てるから、文字から絵を想像できない。書く方も、マンガを書こうと思って挫折して、文字方面に来た人なんかは、ディテールが書けない。これじゃ、面白いものはない。SFでないものに走っても無理ない。

 「日本人の作家で、筆力ある人がいない」。上の問題と続いてますが、今、日本人で書けるとしたら、ヤングアダルト系か「パラサイト・イヴ」みたいな、SFっぽいものしかない。本格は書けない。日本という、島国根性がいけないのか?視野が狭いのか?などの意見が出されました。

 蛇足ですが、「なぜたいして厚くなさそうなのに、上下2冊分冊にするのだ?」という質問へのお答え。これは某所からの返事なのですが、信憑性はあると思います。
 その1.たとえ2冊で1000円になってるとしても、上巻600円、下巻400円なら、1冊1000円よりは安値感がある。「ま、上だけ試しに読んでみるか」というお客さんに、手にとって買ってもらいやすい。つまり、出版社さんの戦略ですね。2冊にして、1冊で売るより値段を高くするというのもあります。
 その2.上下巻だと、ハクがつく。(^^;)
 その3.これは、書店の方ならうなずいてもらえると思うこと。上下巻にすると、平積みにするとき、ゼッタイに2点積みしなきゃいけないですね。すると、視覚的インパクトがある!「サイバー戦争」上下巻を思い出してください。あのグロイ脳みそが2つ、平台に並んでるのって、異様に目につきませんか?これもつまり、出版社の平台獲得の為の策略です。

 などと話題は尽きることがなかったのですが、4時になったので、時間切れということで、机を出してきて、お待ちかねのダブり本オークションが始まりました。いろんな方の持ちよりで、あっと驚くイイ本が、泣けるような安値で次々に落とされていきました。この辺り、詳細は森太郎さんがレポートしてくださると思いますので、そちらをお読みください。ノートパソコン持ちこみで、その場で書名と落札値をガンガン入れてましたから。(す、すごかった)途中で、「ダブ(エ)ストン街道」でメフィスト賞を受賞なさった、浅暮三文さんが乱入。

 で閉場の5時になり、昼の部はお開き。会場を渋谷の天狗に移して、6時から夜の部開催。こちらはなんと、大森望氏も参加!!夜からの参加の方も多いので、もいちどざっと自己紹介。こちらは30名以上いたと思います。
 もうそれぞれ飲んでしゃべっての大騒ぎ。あっという間の2時間でした。浅暮氏からのサインも頂きました。ありがとうございました。

 8時でここを追い出されてしまったので、これだけの人数の3次会、どうしようということになり、苦肉の策がなんと「ルノアール」。しかも、地下の会議室貸切!これは笑いました。だって、3人がけのテーブルがずらっと並んでて、前には黒板と机。これは一発、講義してもらうしかない!ということになり、急遽椅子をふたつ壇上に運んで、大森望氏と浅暮三文氏の特別セッション開催。これは思いがけないラッキーでした。記念すべき第1回「みぞこん」の、のちのちの、語り草になることでしょう。

 お題は、「私はいかにしてメフィスト賞を受賞したか」。受賞にどれだけの年月を要したか、どの賞に応募したか、これからどうやって食っていくか(^^)。
 文体からもうかがえるとおりの、非常にユーモアのある方で、笑いの渦の中、いろんな話を惜しげなく公表してくださいました。サービス精神旺盛な方だなあ、と感心いたしました。
 自分の本のプロモーション活動もなさってるそうです。テレビなんか出たら、人気出るかも、と思いました。ちょっとアレだけど、「徹子の部屋」なんていかが?この番組、ものすごく本の売上に影響出るんですよ。うちの店では、反響度ナンバー1です。(ちょっと恥ずかしいんだけど)
 大森氏の、賞のウラ話、浅暮氏の一日のスケジュール話、広告界ウラ話も面白かったです。あとは、次回作の構想など。「幻想ミステリサスペンス」ってジャンル全部やん!というツッコミはおいといて、楽しみにしております、浅暮様。

 10時でまたまたここはお開き。次回もまた、ゼッタイに集まろうと固く誓い合い、次回は冬あたりに合宿形式で、という幹事の構想に皆で期待を膨らませ、会場を出ました。

 4次会は、カラオケに流れた模様。私はここで後ろ髪ひかれつつも帰宅致しました。
 本当に幹事のお二人、皆様、ご苦労様でした。楽しかったです。またお会いするのを楽しみにしております。ありがとうございました。
 追記:このレポートの表記に間違いがあるとか、この意見は曲解している、私はこんなこと言っとらん!などのご意見がございましたら、ぜひメールを下さいませ。謹んで訂正致します。(安田ママ)


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