日記の中にぽつぽつと書き散らした本の感想を、まとめてみました。
まだまだ工事中。これから少しずつ、昔にさかのぼってまとめる予定。
05.12月
12.30 『クリスマスに少女は還る』 ☆☆☆☆1/2 キャロル・オコンネル 創元推理文庫
このエピローグなしなら普通のミステリなのね。で、このエピローグによってがらりと色が変わるんだ。これ、クリスマスの奇蹟の物語だったんだ!非常に優れた誘拐ミステリでありながら、同時に感動のサプライズ。長かった苦しみは、クリスマスに浄化される。本当によかった。そして亡くなった子供たち、どうぞ安らかに。☆4つ半。
12.21 『子どもたちは夜と遊ぶ(上、下)』 ☆☆☆☆1/2 辻村深月 講談社ノベルス
はああ…ものすごくよかったわ……(ため息)。何度もだまされた。謎のかけ方、その解決、何もかも見事でした。しかも謎がいっぱいあるんだよね、これ。パズルが最後にかちかちっと全部合う、というのでなく、だんだんひとつずつはまっていく。そのたびにびっくりざんすよ。とても精巧に作られたパズルだと思いました。
しかし、なんとも痛ましい話でしたよ…。大学を舞台に、愛と友情の糸がこんがらがって起こった悲劇。このひとは青春ミステリがお得意なのね。私の中では、辻村さんはくじらがベストだが、2番目はこれだな。冷たい校舎が3番。さて、次回作が楽しみだな。
☆4つ半。これ、巷の評価はどうだったんだろう?けっこう評判になったのかしら??12.19 『死後結婚』 ☆☆☆1/2 岩井志麻子 徳間書店
ちょっとぱらぱら、のつもりが、いつのまにかすうっと吸い込まれて気がついたら読み終わってました。なんか妙な吸引力があるのね、彼女の文章。さすが「ぼっけえ、きょうてえ」の著者、語り口がうまいんだなあ。
20代のヒロインが、ダメ男と別れて素敵な男性と婚約した直後に出会った、韓国人の30代の美女。以来、ヒロインは徐々に死と性に彩られた、なんともいえぬ妖しげな世界に引き込まれていく…。
全編から、死と妖しさとエロスが匂い立つ。現実と夢の境界もあやふやで、ぼうっとしていて。彼女の描き出す暗い幻想に、ついついひきこまれてしまう。ちょっとミステリ風味もあって。このひとにしか書けないものを持ってる作家さんですね。私の好みとはちょっと違うけれど、でも非常にうまいと思いました。 ☆3つ半。12.18 『恋愛について、話しました』 ☆☆☆1/2 岡本敏子×よしもとばなな イースト・プレス
最後に書かれてる、岡本太郎さんの言葉に非常に感動した。このひとのモノって全く読んだことないんだけど、読んでみたいと思った。敏子さんって、ものすごく自由な魂を持った人なのね。世俗の常識に縛られてない、いい意味で。人間が生きるのに何が一番大事で、何がいらないかがよくわかってる。いろいろと勉強になりました。小説じゃないけど、☆3つ半。
あと、『恋愛について』というタイトルのわりに、恋愛についてはあまり話してなくて、むしろ男の生き方とか女の生き方についての本になってますよ。そこがいいんだけど。12.14 『セリヌンティウスの舟』 ☆☆☆☆ 石持浅海、光文社カッパノベルス
『扉は閉ざされたまま』とすごく似たタイプの話。皆であれこれ推理を出し合うところなんか。最初はイマイチぴんとこなかったんですが、最終章でやっとセリネンティウス(走れメロスの比喩)を使った意味がわかりました。面白かったですよ。こういう結末とはね!凡人には理解しがたい動機だ(笑)森博嗣みたいな。ホントにロジカルなのね。理論で攻めていくという。右脳(感覚)だけで生きてる私のような人間には、ひたすら脱帽です。私としては『扉〜』とほぼ同じ評価。えと、☆いくつにしたんだったかな?4?
12.13 『ハルカ・エイティ』 ☆☆☆☆ 姫野カオルコ 文藝春秋
『ツ、イ、ラ、ク』あたりを想像してると、全然違うのでびっくりするかも。なんだかノンフィクションのようでした。淡々としてて。でもしんみりとよかったです。火鉢のような、じんわりとくるカンジ。地味な話ですが。ハルカおばあちゃんの、女の一代記。そこここに入る、姫野さんの分析におおいにうなずいたり。そうねえ、あの時代の女性はいろいろ大変だったんだろうなあ。生理ひとつにしても。性についての知識なんて得られないし。こういうふうに、お見合いして次に会ったときは祝言、なんていう女性はいっぱいいたんだろう。まさに娘→母、ってカンジで、女である時代がまったくないという。
そうだなあ、☆3つ半〜4つかな。意外に話が詰まっているので、けっこう読むのに時間がかかりました。12.11 『ハートブレイク・レストラン』 ☆☆☆1/2 松尾由美 光文社
ファミレスにいついてるおばあちゃん幽霊による、安楽椅子探偵もの。なかなか楽しめました。軽く楽しく読める一品かな。ああ、ちょっと東京創元社で出しそうな雰囲気の本だわ、と思った(笑)。ほのかに恋愛風味も。おばあちゃんがいい味。あまりにさらっと読めちゃうのがアレだけど。☆3つ半。
いやあ、よかったわ!正直、「え〜短篇集なの〜」と、ちょっとどうかなあという不安があったんだけど、最初からすぐにそんな心配はふっとびました。どれもこれも、甲乙つけがたい味わい。これの1つを選べって、集英社さん、できないよう!みんないいじゃん!『となり町戦争』がすごくよかったから、この2冊目が勝負だなと思ってたけど、うん、このひとはいい!大丈夫だ!
どの話も、少し不思議。SFといってもいいけど、どちらかというと不条理小説かな。奇想系といいますか。超短い「しあわせの光」や「雨降る夜に」もすごく好きだし、「動物園」の発想には仰天だし、それでいて驚きだけじゃなくて味わい深いんだよね。「送りの夏」なんて、すごくじいいいんとさせられた。「二階扉をつけてください」は『となり町〜』くさかったので、もしかしたらこの手しか書けないのでは?と思ったけど、このひとの引き出しはまだまだ多そうだ。にしても「二階扉〜」はブラックだなあ。この味わいは本当にSFっぽい。普通の小説読みにも、SFファンにもオススメしたい。☆4つ。え〜〜〜真ん中まではすごく面白かったのに〜〜。でも途中から、4つの切り札とか出しちゃうあたりでがっくり。 これは○○○○だってのはわかってたんだけど、でもミステリであろうとするなら、そこで切り札を出しちゃあかんでしょう!なんでもありにしちゃったら、ミステリにならないじゃん。その世界でのお約束、ルールというもんがあってこそのミステリでしょ。でなきゃただのたわごとでしかない。や、章タイトル見てそれはわかってたんだけどさあ。最後まで読んで、表紙裏の意味がわかったなりよ。それにしてもキモイ話だった…。☆3つかな。世間ではどういう評価なんでしょ、これ。
長かったけど、この超饒舌文体に酔いしれました。くほほ。☆4つ。
12.4 『冷たい校舎の時は止まる(上、中、下)』 ☆☆☆☆ 辻村深月 講談社ノベルス
これのおかげで、もう睡眠不足で死にそう。非常に面白かった。☆4つ。あー、イッキに3冊読めてよかった。これ、月刊だったんだよね。もし刊行当時読んでたら、続きが待ちきれなくて悶絶したわ!
しかし突拍子もない設定だねえ!まさかこういう形でミステリが書けるとは夢にも思わなかった。すげえユニーク。独創的。少し不思議(SF)なミステリですね。解答用紙にはウケた(笑)。なるほど、綾辻リスペクトの意味がこれでわかりました。ただなあ、この謎解きはちょっとアンフェアだと思ったなあ。こういう場合は、このクエスチョンの前にフェアにヒントを全部書いとくべきなんじゃないでしょうか?当然私も全然わかんなくてだまされましたよ!
というアンフェアな部分はひっかかるけど(誰もわからんだろうこんなの!わかった人いるんだろうか?)、あとは大変満足です。解答にも満足だし、ああなるほどここでこれがそうつながって、そういうことだったんか!!と超納得。よくできてたわ。
高校生、いやそれに限らず、キャラの心理描写が大変うまい。それぞれのキャラの立場、そしてそれぞれの悩み、苦しみ。学園ものとしては非常に優れてると思う。この年代特有のピュアなところ、繊細なところをとても丁寧に書いている。そのへんは『凍りのくじら』とも通じるところがある。
著者とキャラの名前が同じってあたりがいかにもミステリ好きっていうかマニアな匂いがしますね(笑)。
ホラーの部分も確かに怖かったけど、私にはなんたって恩田陸がいるから。あれにかなう人はなかなか、ね。『六番目の小夜子』の怖さは本当に忘れられない。あのクライマックスの体育館のあたりを読んでたときの背中のぞくぞく感と、次に何が起こるか不安で心臓バクバクだった、あの気持ちが今でも忘れられないのよ。12.1 『王国 その3』 ☆☆☆1/2 よしもとばなな 新潮社
うーん、☆3つ半。まだ続きがあるとばかり思っていたら、これで終わりだったのね。なんか今回は雫石の周りがぐるっと動いて行って、はあそうなんですか、と傍観者的に読んでいた気がする。私は2巻目が一番よかったなあ。あのレベルの高さはなにごと!?と思ったくらい。3巻目はなんか雫石が達観しすぎてて、もう全部心の中で解決方法が決まっちゃってて、みたいなカンジでした。ちょっと著者のひとりよがりが強くて、どうも読者が入り込めないといった印象を受けました。「ひみつの花園」にしたって、そうすごいすごいと言われても、はあそうですか、みたいな。そうか、これで終わりか…ちょっと残念だなあ。
雫石と楓の関係は非常にいいなあ、と思う。お互い好きだけど、恋愛感情とまたちょっと違って、でもずっと一緒にいたい、というところが。恋愛だと生臭くなるというか執着心が出るからねえ。
05.11月
これってあの楽曲の「魔王」のことだったんだ。小学校か中学校の時に1度、授業でレコード聞いた記憶が。ものすごく強烈に印象に残ってます。1度しか聞いてないのに、歌覚えたもん。怖い曲だよね。トラウマになりそうな。で、これはエスパー対決の話なのかしら?(笑)SF?後半が楽しみ。
え…マジでここで終わりなんですか?続きないの?まだ全然話が終わってないと思うんですけど?起承転結の「転」までしか来てないじゃん!このあとどうなったんだよう〜〜〜!あの大金でどうするかとか!で、犬養がどうなったかとか!納得いかんですよ、食い足りないですよ。腹5分目で「はい、今日のフルコースはおしまいです」って言われたカンジですよ。ホントにここで終わりなら、☆3つ半だ!超残念だよ!ここまではすごくいいカンジなのに〜!!(泣)
今回の話、政治についてというかファシズムについて書いてるわけですが、これって読者に「今の日本でいいの?考えろ考えろマクガイバー」って問題を正面から突きつけているように見えるけど、実は伊坂さんはそんなこと考えてはいないような気がする。あくまでも小説のネタとして書いてるっていうか、あくまで「物語」として書いてるような気がするんだよね。デスノート風味で、ものすごく面白かったのになあ、前半は…あのテンションで最後まで行って欲しかったのになあ…。
11.25 『アンダンテ・モッツァレラ・チーズ』 ☆☆☆1/2 藤谷治、小学館
書いてるストーリー自体はわりと普通なんだけど、なんだこのハイテンションは!(笑)とにかく文体がめちゃめちゃアップテンポで面白い。陽気でおかしくて、リオのカーニバルみたい。☆3つ半。
11.22 『ミッキーマウスの憂鬱』 ☆☆☆ 松岡圭祐 新潮社
う〜ん、この方の文章、私は苦手…。小説というよりはこう、あらすじといいますか、ドラマの脚本といいますか…ストーリー的にも安っぽい2時間ドラマみたいな…。 ディズニーランドの裏側ネタは面白かったけど。ミッキーの着ぐるみの値段とかはびっくりしたね!
しかし一番の驚きは、これが出版されたことだ。よくディ○ニーランドもしくはオリエンタ○ランドからから許可が下りたなあ!!ミッキーマウスとかそのまんま名称使ってるもんねえ。 ☆3つかな。11.18 『BG、あるいは死せるカイニス』 ☆☆☆☆ 石持浅海 東京創元社
学園SFミステリなんですね。西澤保彦みたいな。「全人類生まれたときはすべて女性、のちに一部が男性に転換するという特異な世界を舞台に繰り広げられる奇想の推理」。この設定を生かした推理が非常に面白い。まさに知的遊戯。ミステリゲーム。すごく面白かったです。ジェンダー的な面白さも。ていうかよしながふみの大奥?(笑)女だらけの世界ですもんね。これはSFファンも必読でしょう。オススメ。ミステリとしても非常に優れてて、申し分ないですね。☆4つか4つ半。
ああ、この地下ホテルの設定はすごくいいのに、ちょっと生かしきれてないかな。もっといろいろ面白いエピソードが書けそうなのに。妹の話はよかっただけに惜しい。☆3つ。
11.14 『凍りのくじら』 ☆☆☆☆1/2 辻村深月 講談社ノベルス
ちょっとちょっと、これすごいですよ!!!☆4つ半!これ、ノベルス読者だけに読ませるのはもったいなさすぎ。単行本で、もっと一般の人にも手にとって欲しい本です。目黒さんとか。こういう言い方あまりしたくないんだけど、泣けます。あまりミステリとか思わないほうがいいかも。実際、いつミステリになるんだろうこれ、と思いながら読んでました、私(笑)。
書店で章タイトルだけ見てほしいんですけど、これが全部、ドラえもんの道具なの。主人公は女子高生。失踪したお父さんが大のドラえもんファンで、その影響で彼女もドラえもん大好きなわけ(ってあたりで、ああ、この著者はあたしよりずっと若いわと思った。うちの父は、マンガなんてアホの読むものだ、っていつもバカにしていたクチだから)。藤子氏が「SF」を「少し不思議」と解釈したのをもじって、彼女が知人を「スコシ・ナントカ」って表現するあたりとか、うまいな!と思った。とにかくドラえもんファンの心をくすぐる話なわけですよ。
でもファンでなくても、この話の醍醐味は存分に味わえると思う。10代の、周囲の人間とうまく交われないことに悩む繊細な気持ちがよく描かれているのですよ。乙一とはまた違って、ああいうふうにひきこもるんでなく、周囲に本音を出さず、相手によってその場にあわせたつくりもののお面かぶって他人と交わるという。他にも多々、切ない要素があってですね…もう、グサグサと読み手の感情を揺さぶるのですよ…。ラストなんて涙、涙ですよ…。
まさに「少し不思議」な物語。帯にある瀬名秀明さんの言葉どおり、私も「これは、傑作だと思います」。ホントいいです。オススメです。誰か声の大きい人、この本どっかで紹介してくれー!!頼む!!
うーん、いつもの絲山さんお得意のダメ男オンパレードの話なんだけど(中篇集)、今回はなんだか男に共感できないなあ。あまりにダメすぎて、魅力が感じられない、ていうか不愉快で腹が立ってくるんですけど。今までの作品には、まだダメ男ながらも可愛げというか魅力があったんだけど、ここに出てくる男は私の許容範囲を越えてるな。こんなヤツ、甘やかしちゃダメだよう。働かない男なんてあたしゃキライよ(女もだけど)。☆3つ。
11.1 『沼地のある森を抜けて』 ☆☆☆☆1/2 梨木香歩 新潮社
これは傑作。ぬか床から○○が出現するという設定にも仰天したけど、後半がまたすごかったわ。想像を絶する展開。すっかり魅せられてしまいました。なるほどねえ、既成概念を覆されるという点において、これは確かにSFかも。生物SF?とにかくこんな妙な話は読んだことがないですよ。何気ない普通の文芸作品みたいな顔してるけど、実はトンデモない話。めちゃめちゃ不思議(というかヘンチクリンというかファンタジーというか)で、それでいて男性・女性の現代における社会的立場というものについて真面目に考えさせられて(だいぶ梨木さんの考えが入ってるとみた)、最後には人類とか地球上の生物の話にまで行っちゃうんだから、いやあまいった。☆4つ半。
05.10月
10.28 『容疑者Xの献身』 ☆☆☆☆1/2 東野圭吾 文芸春秋
うわー、やられたー。そういうことだったのか。そこまでやったのか、石神…。彼女のためにそこまで…。ラストは涙、涙ですよ。石神の気持ちを思うと。湯川さんもすごいと思った。あれだけで石神が惚れてることを見抜くとは。私はここが謎だったの。いつ、どこで気がついたのか。ああ、こういっちゃなんだけど、湯川さんさえいなければバレなかったのに。クリスティの『アクロイド殺し』を思い出した。この隣人さえ引っ越してこなければ、というラスト。湯川さんのバカバカ〜。
お見事でした、東野さん。☆4つ半。非常に満足のミステリですが、確かに恋愛小説としても読めるかな?隠し味というか。石神の、人間としての純粋さに打たれました。このシリーズはなかなか気に入ったので、既刊もいずれ読みますわ。10.24 『I LOVE YOU』 ☆☆☆ 伊坂幸太郎ほか 祥伝社
男性作家の恋愛アンソロジー。うーん、なんだか読んでてちょっとこそばゆく、気恥ずかしいような。女性の書いたほうは平気だったのに。中田永一は、読んでたらすぐわかった。人間レベル2とか言うのは(笑)
10.23 『未来のおもいで』 ☆☆☆☆ 梶尾真治 光文社文庫
クロノス・ジョウンター風味の、時を越えたラブストーリー。山に入って霧が出て、タイムスリップ、みたいな。確かに山の中とかって、こういう気持ちになるよな。誰も人がいなくて自分だけだと、今がいつの時代でもおかしくないという気になる。とても読後感のよいお話でした。☆4つ。
女性作家の恋愛アンソロジーですが、やっぱり自分の好みがモロに出てしまうな。ばななちゃんが一番よかったです。ほかのもどれもレベルの高い出来。☆4つかな。
10.10 『楽しみは創りだせるものよーターシャ・テューダーの言葉2』 ☆☆☆☆ ターシャ・テューダー メディアファクトリー
10.7 『女彫刻家』 ☆☆☆☆1/2 ミネット・ウォルターズ 東京創元社
すっごく面白かった!世にも残虐な母・妹殺人を犯した女性に隠された真実を追っていくジャーナリスト。読んでいくうちに、どんどん思いがけない真実が浮かび上がってきて、それもやっぱり物的証拠じゃなくて、あの人が実はこういう人だった!という展開。本当は、ガーッと一気読みしたかったなあ。☆4つ半。あ、あと、このひとのロマンスはちょっとハーレクインっぽくて、読んでるとなぜか私は気恥ずかしくなってしまうのだった(笑)。ここまで書かずに、もう少し、さりげない感じでとどめておいてくれたほうが私の好み。
10.1 『ななつのこものがたり』 ☆☆☆☆ 加納朋子 東京創元社
原画展で見た絵がいっぱい載ってて(当たり前です)、ものすごくキレイですよ!!!
05.9月
9.25 『氷の家』 ☆☆☆☆ ミネット・ウォルターズ 創元推理文庫
いやあ、ご馳走様!お腹いっぱいです!豪勢なフルコースを味わった気分。読み応えありました。読んでいくうちに、登場人物の印象がどんどん変わっていくのがとても不思議だった。たいてい、キャラのカラーって最初に決まってるでしょ。でもこれは違う。読めば読むほど、どんどん色が変化していく。
もちろん謎解きも文句なしに面白いんだけど、それを形づくるのが例えばナイフとかアリバイ崩しとかそういう小道具や小細工でないんだよね。誰がいつ何をしたのか?どういう動機で?そこにこの謎を解く鍵があるわけですよ。そのへんがすごく新鮮だと思った。話さなかったのではなく、話せなかったのだ。その理由もいちいちうなずけるし。もっともだよ。このへんの考え方も女性ならではだと思った。子供のことを一番に考えてしまうあたり。
数々の謎があって、それが徐々に暴かれるわけだけれど、真相のひとつには、ガーンとさせられた。なんてやりきれない話なんだ。
非常に満足しました。☆4つか4つ半。9.21 『下妻物語 完』 ☆☆☆☆1/2 嶽本野ばら 小学館
ラスト、こう来るとは!不覚にも涙してしまったわ。前作同様、いやさらにいい話でした。素晴らしい。座席表がついてるともっとミステリぽくてよかったかも。そう、これは殺人事件の話なんです。ミステリなんです。とはいえ、本格ミステリとは思わないでください…なにしろ「ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件」ですから(笑)
今回は、二人がそれぞれ自分の道を見つけて、運命が分かれていく話。深キョン、じゃない、桃子のひねくれぶりに笑い、土屋アンナ、じゃなくてイチゴのバカさと素直さに笑い、やがて読者は気がつくと深い感動に包まれている。この二人、どっちもむちゃくちゃな人生哲学なんだけど、それなりに筋が通っているんだよな。嘘偽りがなくて、自分の道を貫くという。自分をごまかさない。それがなんと潔くまぶしく見えることか。
二人の未来に幸あれ!☆4つ半。9.15 『ターシャ・テューダーの世界ーニューイングランドの四季ー』 ☆☆☆☆1/2 文藝春秋
いやこれ見てびっくりしたんだけど、このひと、アンティークの洋服のコレクションなんてしてたんだねえ!しかもアナタ、1770年代〜1870年代のあらゆるスタイルの服がひととおりそろってます、とか言ってるよ!そこまでアンティークおたくだったとは!(笑)あの、昔の絵画にあるような、ほっそりしてるけどお尻のあたりだけがぷくっとふくれたレースのロングドレスみたいなのをお孫さん(?)に着せてる写真とか載ってる。
これは文章はご自分で書いてるみたい。まだ全部読んでないんだけど、ひとつガーンとした文章が。
「昔の女性は6〜8人の子供がいるのがふつうだったので、いつでもおなかが大きいか、さもなければ授乳中でした。糸をつむぎ、編み物に裁縫、料理をして、まきを集めることがどんなに大変だったか。しかも休みなくそれをするのです。」
正直ショック。いつもおなかが大きいか、授乳中ですよ!(泣)それがどんなにどんなにキツイことか、経験者の私には痛いほどわかるよ!(泣)
そりゃあ、「いつも疲れていた」だろうよ。そしてうちの母も言ってたけど、「それ以外の生活を知らなかったので、それをつらいとも思いませんでした。」という文。ううう。なんてえらいんだろう、昔の女性たちよ。9.15 『ターシャ・テューダーのガーデン』 ☆☆☆☆ 文藝春秋
これもいい本だなあ。わりと字も多い。第三者がターシャの生活を解説している。ターシャ自身の言葉も時々入ってる。
9.11 『夢のような幸福』 ☆☆☆☆ 三浦しをん 大和書房
私は彼女の『妄想炸裂』が大好きなんですよ!死ぬほど笑った!これはそれに続くエッセイなんだけど、最初のインパクトが強すぎたので、これが普通に思えるほどだった。でももちろん、非常に面白かったですよ。男オタクの日記で最高に面白いのはu-ki総統の日記だとつねづね思っているが、三浦しをんはその女オタク版といえるでしょう。考えてみれば、総統みたいな爆笑オタク日記を書く女性って、案外いないような。単に私が井の中の蛙だから見つけてないだけで、世の中にはいっぱいあるような気もするが。
たとえば彼女の会話には普通に「ナウシカの〜」とか「波動砲」とかが出てくるわけですよ。で、弟くんに「オタクくさいからやめろ」とすごく嫌がられてる(笑)。または暇になると『ガラスの仮面』や『サイボーグ009』一気読みとか始める。いかに彼女がオタッキーかがよくわかりますね。うーん、でもやっぱりこういうひと、私の周りにはけっこういそうだな(笑)。 ☆4つかな。うん、面白かった。うおお!と叫ぶほどではないんだけど、じゅうぶんだまされたし(笑)、満足です。文句なし。ラストのオチも素晴らしい。そうだなあ、☆4つかな。
9.9 『クドリャフカの順番』 ☆☆☆☆1/2 米澤穂信 角川書店
やあ、素晴らしい!!面白かった!!やっぱこの人は学園ものが俄然いい。まさしく本領発揮。筆が生き生きしてる。細部までとってもよく書かれてる。臨場感があるというか。いいよね、高校の文化祭。あのわくわくした気持ちを思い出させてくれた。懐かしいなあ。
この氷菓シリーズ3部作は実にいいよ、どれも。こんなに見事に大団円にまとめてくれて、本当にうれしい。このシリーズの取り得ってのは、学園ミステリでありながら、青春時代に感じるちくっとした痛み、みたいなものを描いているんだよね。それが動機であるというか。そういう心の機敏を入れるのがとてもうまいんだなあ。だから単なる謎解きじゃなくて、その謎が解けたときに、読者の心にちりちりっとした切ない痛みを残す。そこがたまんなくいい。今回は登場人物たちの痛みを、それぞれの性格にあわせて実にうまく表現していた。ミステリとしての構成も文句なし。米澤さん、また学園もの書いてくださーい!☆4つ半。
あ、あと、このひとの学園ものって、今の現役の学生よりは、むしろちょっと前の学生さん(あたしとか>ちょっとじゃないだろ!)のほうがウケるかもと思った。現代的ではなくて、ちょっと懐かしい匂いがするのよね。…こわ!ひとごとじゃないわ、これ。って言ってもなんのことか全然わからないよね。ネタばれしないように書くのは難しいなあ、この話。何がこわかったか書くと超ネタバレになってしまうので。
なんだか何か細かいところで「んん?」ってひっかかるところがある気はするんだけど、古文書と失踪人という、導入部から見ると全然関係ない話がうまくつながっていくところは大変見事だった。宮部みゆきの『火車』を連想した。ラストのところは評価が分かれるかも。コナンくんなら逮捕するところ(笑)アガサ・クリスティーならこれでよしとするでしょう。私は、うーん、これはこれで、かな。でも他人はどうあれ、当事者は死ぬまで十字架を背負うことになるよ。ネットの評判は、わりといいみたい。ブラックさがよい、と。確かに新境地だな。
そうだなあ、☆3つ半かなあ。なんか違和感のある細部をもう少し詰めていたら、もっとよくなったのかも。話の骨はとてもよかったと思うので。あとちょっと女をナメてるところがあったな。女っつーとそういう方向にしか持っていけないの?と。リディアが読んだら火を噴くぞ。そういやあのひと(S・J・ローザン)のミステリにはこういう描写は全くないな。しかしここまで想像力で膨らませるとはさすが。だって、1/5くらい読んだ時点で、ゲームでいうとまだオープニングムービーのとこなんだよ!イコが霧の城に連れてこられたところ。たった数分のムービーでこれだけストーリーを作っちゃうんだから、作家ってすごいやまったく!
ああ、ここはあの風車のシーン!とか、ああここで剣拾ってそうそう!とか画像を思い出しつつ読みました。ここで飛び移るシーンで水に落っこちて何度も死んだわ(涙)とか。イメージも壊してなかったし、思ったより悪くなかったですよ。☆4つかな。9.3 『春を待つ谷間で』 ☆☆☆☆ S・J・ローザン 創元推理文庫
ああ…これで今出てる彼女の本は全部読み終わってしまった…。悲しい。
早く続きを出してください、創元さん!!お願いします!!次回はリディア主役で舞台は香港だそうなので、超楽しみ。あとどのくらい待てばいいのかしら…(涙)。
今回も素晴らしかった。ビルが主役。アメリカについて詳しく知らないからアレなんだけど、ニューヨークからちょっと離れた過疎地みたいな村(ビルの別荘がある)での事件。晩冬のうら寂しい風景の描写が実にいい。このひとは本当に描写がうまい。人においても、風景においても。ビルとリディアの口説き口説かれの会話もセンスいいし、ストーリーも最初は小さな事件だったのがいつのまにかとんでもないおおごとに!というハラハラの展開だし(そしていつも怪我するんだよ!痛そう!)、そして何より読後に読者の心になんともいえぬ苦味を残すのですよ。人間の心(良きにつけ悪しきにつけ)ゆえに起きてしまう、哀しい事件。どこかアンハッピーエンドなさみしさが漂う。そこがまたたまらなくいいのですよ。
ああ、若竹七海を読んだあともこんな気持ちになるな。これがハードボイルドというものなのか。ハードボイルドってのがよくわかってないんだけど。
☆4つか4つ半。とにかくこのシリーズは全部傑作。大好き。
05.8月
8.28 『ターシャの庭』 ☆☆☆☆ ターシャ・テューダー メディア・ファクトリー
図書館で借りたんだけど、私これ買うわ!やっぱり!素晴らしいの一言に尽きる。何もかもが。30万坪ですってよ!その庭の敷地!でもちゃんと手入れしてるんですよ。その広大な土地をひとりで。で、自分で何でも作る。パイでも薪でも肥料でも。動物も飼う。冬の庭に出るときはランプ。あと服のセンス。こういう細かい柄のワンピースにエプロン、いいなあ。紺色がとてもお似合い。自分で何でもできる人は、言葉ひとつとっても静かな自信にあふれている。荒野にすっくとひとりで立っている姿が目に浮かぶ。私はこんなふうにはとてもなれないけれど、ひとつのお手本というか遠い心の目標として、星のように見あげていたいと思う。永遠の憧れの人。文句なしの☆5つ。
8.28 『本当はちがうんだ日記』 ☆☆☆☆ 穂村弘 集英社
珠玉のダメエッセイ(笑)。誰もがひそかに思ってる(と思うけど、どう?)「自分のダメダメさ」を露呈している。しかもそれがさすが歌人、宝石のような美しさ。宝石といっても、夜店のオモチャの指輪のようなきらめき。ガラクタっぽいけど、惹かれる何か。☆4つ。あ、ただひとつ。「妻」という言葉が後半入るのが気になってしまって…。たぶん、かすかな嫉妬だと思う。いいなあとひそかに憧れてた彼には、もう奥さんができちゃったんだ、という嫉妬。ちぇっ。
正直言って、前半は読むのつらかったわ…。あまりに何事もなくて。そんなに淡々と女子大生の生活を描写されても…。後半に入って、小野君とつきあうようになってから、やっと物語が動いてきたのでほっとしましたよ。
でも、私の評価は☆3つ。ええと、シチュエーションはどれもいいのよ。髪を切るシーンや、ラストシーンや。なのになんだろう?文章に魅力がないというか、惹かれるところがないのよ。あくまでも私の感じ方なんですが。行間から立ちのぼるような、この人独特の匂いや色が見えない。お綺麗にまとまりすぎているのかなあ。文章が、味も素っ気もなくて読んでてつまらない。でも、他の方の感想を見ると、評価が高い方もいっぱいいらっしゃるのですよね。なんで自分がこうも楽しめなかったのかが逆に不思議。ひとつひとつの文章に深みがある翻訳物を読んだ直後だったせいかなあ?
教師と生徒の恋愛、というシチュエーションにおいて、『ツ、イ、ラ、ク』(姫野カオルコ、角川書店)と非常に対照的。でも私は断然『ツ、イ、ラ、ク』派だな。
8.24 『苦い祝宴』 ☆☆☆☆ S・J・ローザン 創元推理文庫
チャイナタウンの裏側がわかって、興味深かったです。中国人の考え方や、移民の事情とか。若き中国人女探偵リディアが主役の回だったのですが、今回もまた元気に活躍してくれました。ホントに彼女ったら負けず嫌いで、そんなこと言ったり無鉄砲なことやったりして大丈夫なのかとハラハラドキドキしどおしでしたが、そこがまたとても楽しかったです。会話がまたしゃれてていいのよね。相棒である中年白人探偵、ビルとの会話なんて実に含みがあって面白い。ミステリとしての仕掛けを楽しむというよりは、彼らの活躍や、ニューヨークの空気や雰囲気を楽しむといったカンジ。そして結末は確かに「苦い祝宴」でした。☆4つ。
8.18 『どこよりも冷たいところ』 ☆☆☆☆ S・J・ローザン 創元推理文庫
ひさびさの海外ミステリ。よかった!それにしてもミステリは「あとちょっとだけ〜」と思ってどんどん読んでしまうんで、翌日が地獄ですな>睡眠不足 (笑)。ここんとこ、1時に寝て6時起きとかなんでへろへろでした。
で、本書ですが。ニューヨークを舞台に、若くて好奇心旺盛な頑張り屋の中国人女探偵と、中年白人の男性探偵のコンビによるハードボイルド探偵小説。このふたり、お互い好感は持っているんだけど、彼女が仕事に恋愛を持ち込みたくないうんぬんで、くっつきそうでくっつかないのよ。この設定は萌えですよ!しかも1作ごとに、主人公というか語り手が代わる。奇数作は女性のほうのリディアが主役、偶数作は男性のビルが主役。本作はビルが主役でした。わけあって、レンガ工のふりをしてビル工事現場に乗り込んでの極秘操作。
相変わらずのきめ細かな筆致で、大変面白うございました。手触りが好みなんだよね。でもやっぱり、リディアが主役の回のほうが好きかな。彼女が小さい体で頑張ってるところが好きなので。今回もラストですごくナイスな活躍を見せてくれましたが。☆4つ。ああもう、ほむほむ、おかしすぎ!!(笑)すぐ妄想世界に入っちゃうところが五代裕作なみ。メーテルとか言ってるし。何度も「ぶはははっ」とか吹き出しつつ読んだよ。ほむほむも、24時間心電図取ってたのね。親近感。
でもあの、最後が…ちょっとよくわかんない…。つまりは彼、この取材に一緒に行ってた彼女とケッコンしちゃったんですか?それともフィクションなの??でも確か最近結婚したのよね。ちょっとそのへんが現実かそうでないのかぼやかしてあるのが、気分的にもやもやが残る。ぐぐってみたら、歌人と結婚って書かれてたので、この編集さんではないようだが。
まあそれはともかく、大変楽しく読めました。☆4つ。すごくすごくよかった!『ツ、イ、ラ、ク』の登場人物(主役も脇役も)たちのサイドストーリー6編。 どの短編も、どきどきして切なくて、胸がぎゅうっとなった。かつて少年だった人の、かつて少女だった人の、心象風景。共通するのは、『ツ、イ、ラ、ク』の話の核である「田舎町ゴシップ」。
「性欲。恋に墜ちた者にあるのは、これだけだ。(中略)恋する者は、性欲に焦がされながら、同時に、氷のようにさびしいのである。」
どの話も、恋や性欲がありのままに描かれている。しかしどうしてそれがこんなにも切なく感じられるのだろう。☆4つ半。いやなんというか、すでにこの方の文章には、文豪の風格すら漂っている気がする。志賀直哉、夏目漱石、芥川龍之介。なんていったら大げさすぎるだろうか。もはや、うまいとか職人芸とかいうレベルをはるかに超えてしまっている。学校の教科書に載っててもおかしくない。ってもう使われてるかもしれないけど、この方の作品。この端正ですっきりとした文章の、なんという凛々しさ。一切の無駄がない。
「40過ぎたら落ち着いて、まともな大人になってるんだと思ってた。でも、相変わらず馬鹿のままだ。(中略)でも、きっと、じいさんになっても同じこと思うような気がするよ。」っていう文章に激しくうなずいたり。
ただ、この方、素晴らしくうまいのだけど、好きかどうかと言われると、私の好みではないのね。全くもって趣味の問題なんだけど。たとえば今、姫野カオルコの『桃』読んでるんだけど、完成度ではぜんぜん劣るけれども、姫野のほうが100倍くらい好きなんだなあ。ぐっとくるのよ。強く惹かれるのよ。
だから完成度でいうとこれは☆5だけど、自分がこの小説を好きかどうかで言うなら☆3つ半。8.10 『4時のオヤツ』 ☆☆☆1/2 杉浦日向子 新潮社
これまたいろんな東京の老舗のお菓子がいっぱい出てきて、もう食べたくてたまらなくなる。
今回はおいしいものがいろいろ出てくる話で、よだれ出まくりでした。キャラメルソースのガレットってどんなの〜!?超食べたい!ぶたぶたさんは相変わらずいつものぶたぶたさんでした。☆4つ。
うーん、「ファウスト」っぽい>なんだよその感想は!(笑)。これを「新潮」で書いてたのかー。ほおー。全編、子供がひどい目にあいまくるというすさまじい短篇集。ひたすら暴力と怒りだけがあって、救いはゼロ。子供らがどれほど求めても、ここに愛はない。
舞城っぽいけど、実は全然舞城と違うんだなあ。舞城を読んでると、汗が出てくるのね。私は。熱い汗。でも佐藤友哉は、なんか嫌悪感ばかりが出てしまうなあ。ひいちゃうっていうか。表題作が特に。冷えてくるというか。舞城は残酷な描写もあるんだけど、何か読んでて楽しいんだよ。なんじゃそりゃ、わははと笑っちゃうようなバカさがある。でもこれはなあ。笑えない。
「大洪水の小さな家」と「死体と、」はわりとよかった。そうだなあ、☆3つかな。
05.7月
7.31 『美人画報』 ☆☆☆☆ 安野モヨコ 講談社文庫
「これを読めばあなたも私のような美人に!」っていう本だと思ってたら全然違った。すまんかった。自慢話なのかと誤解してたよ、モヨコさん。一緒に美人めざして頑張ろう!って話だったんだね。でももちろん、彼女のほうがあたしより100倍オシャレさん。
7.27 『古道具 中野商店』 ☆☆☆☆ 川上弘美 新潮社
なんだ、恋愛小説だったのか!知らなかった!というほど前面に出てるわけではないのだけど。妙なおじさんのやってる古道具屋さんでバイトしてる女の子と男の子、おじさんの姉などの登場人物が繰り広げる、淡々とした春夏秋冬。動かないようでいて、だんだんと人は移り変わっていく。
ああ、と思ったところ。この人たちといるこの場所は、ずっとこのままのように見えて実はほんの一瞬のきらめきなんだ。自分もさんざんそういう思いをしたな、とちょっと懐かしく切なくなった。 ヒトミさんのタケオに対する恋心は、うんうんよくわかる、と思った。反応のない相手がじれったくてついイジワル言ったら本気で怒られてすれ違っちゃったりする不器用なふたり。あるある、そういうこと。
ところで川上弘美の書く話って、実はけっこうエロいなあとも思った(笑)。江國香織のレディコミと違って、純文学的なエロさ。
☆4つ。中野さんのお姉さんの、マサヨさんがいい味。
7.25 『花まんま』 ☆☆☆☆ 朱川湊人 文藝春秋
こりゃ30〜40代の大阪出身の方にはたまんないかも。ノスタルジーあふれる不思議短篇集。ファンタジーとホラーの中間あたり?ホラー風味の浅田次郎というか。ちょっと『鉄道員』(浅田次郎、集英社文庫)を思い出したり。でも彼ほどの高みには達してない気がする。ノスタルジーといっても甘ったるくはなく、むしろ苦みや重みがある。生きるということの苦さ。
。☆3つ半〜4つ。これはこれで非常にうまいと思うけど、比べたらベルカのほうが…素人目から見たってさあ…。あー、直木賞の選評が楽しみだなあ!>イジワル
7.19 『トンデモ本?違う、SFだ!』 ☆☆☆☆ 山本弘 洋泉社
著者のスタンスがはっきりした、優れたSF紹介本だと思いました。いろんなSFを片っ端から読みまくりたくなりました。☆4つか4つ半。
というわけで、SF欲を触発されたので、紹介されてる本を自分&ダンナの本棚から発掘。『不思議のひと触れ』(シオドア・スタージョン、河出書房新社)収録の、「孤独の円盤」と、『冷たい方程式』(ハヤカワ文庫SF)の表題作を読了。どっちも短編。前者は文学の香り高い、美しく切ない話。なるほどねえ、円盤が手紙を詰めたガラス瓶なんですね。後者は読む前からオチも何も全て知っていたけど、それでも泣けた。女の子とお兄ちゃんの通話なんてもう!(涙)今は『時の門』(ハインライン、ハヤカワ文庫SF)の表題作を読み中。
7.13 『切れない糸』 ☆☆☆1/2 坂木司 東京創元社
クリーニング屋さんが個人情報の固まり、ってとこがまず目ウロコだった。なるほどねー。なんかこれから、洗濯物出すのがちょっと怖くなるね。あれこれ洗濯物触って詮索するのが、ちょっとイヤンなカンジはした。まあこれは小説だからアレだけど。
それはさておき、坂木さんの特徴である、「登場人物たちが主人公と知り合って幸せになって、その幸せの輪がだんだん周囲に広がっていく」という話の進み方はすごくいいと思いました。あと商店街のよさも見直した。確かにプロ集団だよね。ずっと同じ仕事してるわけだから。読み心地のよい話でありました。でもやっぱりほんのちょっとだけやおってるよ!(笑)んー、☆3つ半か4つ。7.12 『恋するたなだ君』 ☆☆☆1/2 藤谷治 小学館
ちょっといしいしんじの『トリツカレ男』みたい。ファンタジー入った恋愛もの。にしても、こんなにストレートな恋愛小説ってちょっとないかも。不器用だけど直球。デタラメだけどスジが通ってる。繊細だけどパワフル。著者のお人柄がよく出てるなあと思いました。おそらく、たなだ君って、藤谷さんそのものだと思う。んー、☆3つ半か4つ。
7.11 『空の中』 ☆☆☆☆1/2 有川浩 メディアワークス
まさに感動作。SFとしてもいいと思うし(ファーストコンタクトものですよね?)、何より青春ものとしてすごくよかった。登場人物がみな魅力的。宮じいが特にいい。ちょっと宮部みゆきの『模倣犯』の豆腐屋のおじいちゃんを思い出したり。あの真帆ちゃんすら、悪人ではなく弱い女の子として描いたところなんかもよかった。泣けた。☆4つ半。
7.8 『赤い長靴』 ☆☆☆ 江國香織 文藝春秋
10年くらいたった夫婦(子供なし)の話なんだけど、こんなにムカつく夫の出る話を読んだのは初めてだ!!もう怒り炸裂!アンビリーバボーにもほどがある!すぐ別れなさい、こんなダメ男!「お風呂かご飯どっち?」と聞かれて「うん」、ってバカですか?答えになってませんよ?とにかく全然妻の話を聞いてない、会話がかみ合ってない、「○○はやめて」と言っても「うん」っていいつつ無視。妻とのコミュニケーションもできないなんて、っていうかなんでそれでくすくす笑ってんだ、この妻?理解不能。まあ彼女もうすうす、この現実に気がついてはいるんだけど、わかってて見ないようにしてるんだよね。とにかく全然共感できない話だった。☆3つ。
7.4 『死神の精度』 ☆☆☆☆1/2 伊坂幸太郎 文藝春秋
☆4つ半。すごくよかった!6つの話が入った連作集。伊坂さんならではのクールでニヒルで洒脱な雰囲気の、くすっと笑えるユーモアも入った、センスのよい物語。人間社会の常識がない、死神の設定&造形がとにかく見事。もうこれだけで勝ったも同然でしょう。彼のセリフがことごとくいいんだよなあ。「ミュージック」という言葉を使う著者のセンス!ほんのりとあたたかでいて、でも都会っぽいどこかひんやりと冷めた空気が心地よい。人が死んでも、全然陰惨なカンジがしないんだよね。特に好きな話は「死神と藤田」、「恋愛で死神」、「旅路を死神」。「恋愛で〜」なんて、もうね、ここで終わらすか!というその余韻がたまりませんよ。ああ、最後の話もいいんだよなあ。
7.3 『川のむこう つれづれノート 14』 ☆☆☆☆ 銀色夏生 角川文庫
彼女にしては珍しく、死についての考察なんかが多い巻でした。これで終わりとは残念。二人のお子さんたちの成長を、まるで姪っ子や甥っ子のように楽しみに読んでおりましたよ。銀色さんの日々考えてることがよくわかる、いい日記エッセイでした。今までどうもありがとう。教えられたこと、共感したこと、自分とは違うなと思うこと、などなど本当にいろいろ考えさせられました。どうぞこれからもお元気で、幸せにお過ごしください。私も頑張ります。
05.6月
6.29 『月読』 ☆☆☆1/2 太田忠司 文藝春秋
えっと、設定はすごく面白いと思う。死んだ人の思い(念)が、その死んだ場所に形として残る。そこからその思いを読み取る能力がある人間のことを「月読」という。ここのようでいて、ちょっとだけこの世界と違うパラレルワールド。パソコンがない世界だし。ストーリーも特に問題なく、及第点。…なんだけど、何かこう、キャラ萌えな匂いがすると思うのは私だけ?黒ずくめの一心さんとか。この挿絵を見てしまったせいだろうか。この本に入れる必要ないと思うが。これが講談社ノベルスとか、ラノベ文庫なんかで出てるなら別だが。
設定はいいし、ストーリー運びも悪くないんだけど、なにかこう、本の中に漂う空気が私の好みではないのだよなあ。ミステリ部分にしても、伏線を張っておいて、読者に「そうか!」って思わせるわけでなく、著者のひとりよがりな印象。きちんと解決して終わってるのに、なんだかこちらの気持ちがすっきりしないなあ。単に好みの問題なんだけどね。☆3つ半。設定がいい分、惜しい。6.27 『スラムオンライン』 ☆☆☆1/2 桜坂洋 ハヤカワ文庫JA
オンラインゲームはやったことないんだけど、ゲームをやるときの感覚がよく文章化されてて、非常によかったですよ。楽しかった。あまりに近くて意識できないほど、ほんの数ミリだけ自分の横にある非現実。☆3つ半か4つ。
6.24 『思うとおりに歩めばいいのよーターシャ・テューダーの言葉』 ☆☆☆☆ メディアファクトリー
彼女の名文句(?)と、田園生活の写真がまとめられたエッセイ。この方、すごく頑固なんだろうなあ、いい意味で。芯があるっていうか。自分の心に素直で、そのおもむくままに行動する。何より自分の生活を愛してる。ここが素晴らしいと思ったな。日々の暮らしを楽しむ、って本当に大切。ていうかそうでなきゃ生きててもつまんないよね。何時間もぶっ続けで会議、とかいうダンナの話を聞いてると、どうして誰も「おかしいですよ」って言わないのか不思議でしょうがない。ちょっと皆で休憩して、お茶くらい飲んだってバチは当たらないだろうに。
とてもいい本でした。写真も素敵だし。☆4つ。5つでも。あと2冊、続編があるのでそれも読むつもり。6.22 『ウェルカム・ホーム!』 ☆☆☆☆☆ 鷺沢萠 新潮社
『読むのが怖い!』で北上さんも大森さんも誉めていたという珍しい作品(笑)。ちなみにこのお二人の意見が一致するのはかなり少ない。ので興味を持って読んでみた。……ちょっとおかしいだろう自分!というくらい泣いた。別に泣いたから傑作、というわけではない。たぶん、私以外の人は別に泣いたりしないと思う。でも私にはたまらなかった。まさにツボ。
2つの中篇が入っており、前者は男性が主人公、後者は女性が主人公。ふたつの擬似家族を通して、家族というものを考えさせる話。というと単純だけど、どっちも子供を持つ女性が外で働くということが重要なキーポイントになってる。前者は女性ですらない。片方の男性は外で働き、もう片方の男性が主夫をしてる話だから(注・ゲイではない、純粋な親友)。主夫は小6の男の子の子育てもしてて、で、男の沽券とかちょっと気にしたりしてるわけですよ。彼女もいるので。で、「フツー」ってなんだろうとか思うわけですよ。それは後者の話にもある。自分の思う「フツー」の感覚が、周囲とズレがあるという。
とにかく私は『対岸の彼女』より素晴らしいと思ったね。『対岸〜』は高校時代の部分は高く評価してるんだけど、あの働く女と主婦のあたりはちょっとイマイチだなあと思ってたのね。でも、『ウェルカム・ホーム』は心から共感できる。そのとおりだ!鷺沢さん!ごく単純なことなんですよ、役割に男も女もないってこと。この人の考えはすごくフラットで、自然なの。つまるところ、家族に必要なのは血じゃなくて、本当の愛情ってことなんだなあ。どちらの話にも、親から子への、そして子から親への愛情がこめられていて、泣けて泣けてたまらなかった。特に2話目のラスト。
どうしてこんな傑作が、全然日の目を見なかったのか!とmixiで憤っていたら、「けっこう話題になって、書評もバンバン出て、本の雑誌の2004年上半期ベスト第2位だった」と皆様おっしゃるではありませんか。オーマイガッ!全然知りませんでしたっ!これ、去年の3月に出てるのね。話題になったのがちょうど息子を産んだ頃だったので、気がつかなかったのかも(汗)。いやあ、でも手にとって本当によかった!ありがとう北上さん、大森さん!
鷺沢さんの新作がもう読めないのが心から残念です。☆5つ。マジ傑作。
6.18 『ピピネラ』 ☆☆☆ 松尾由美 講談社文庫ううむ、設定も謎でひっぱるのもすごくいいのに、ラストがちょっとなあ。ええ?そこで終わりなんですか?ってカンジ。読後感が悪いという意味ではなく、なんかスッキリしないんですよ。中途半端な印象。もやもやが残るなあ。著者の言いたいことはわかるんだけど、締めに失敗してるというか。
6.17 『ベルカ、吠えないのか?』 ☆☆☆☆☆ 古川日出男 文芸春秋
トヨザキ社長があまりにもプッシュするので読んでみることに(笑) 。ちなみに本の雑誌7月号の「寄らば斬る!」に書評が載ってます。
実は古川さんは本書が初チャレンジ。いやあ、すげーカッコいい!文体が非常にシャープで、すごくテンポがよい。でも短い文章だけど、その1文1文の情報量がけっこう濃いので、つるつる読めそうでいて案外サクサクとは読めない。いやでもうまいなあ。なんかこういう感激は久しぶりかも。 内容もすごく引き込まれますね。ちびちびと犬の系譜をなぐり書きしながら読んでます。でも公表はしないよ(笑)。☆5つ。すげえ面白かった。ただひたすら圧倒されました。犬を中心に描かれた、激動の20世紀。こういう書き方があるとはねえ。まいったわ。なんかあまりにもすごすぎて、言葉にならない。
6.14 『扉は閉ざされたまま』 ☆☆☆1/2 石持浅海 祥伝社ノン・ノベル
ああ、いかにもうちのダンナの好きそうな(彼が読み終わって貸してくれたのだ)、推理頭脳ゲームみたいな叙述ミステリ。先に犯人も犯行の様子もわかってて、探偵がそれを崩していくのを楽しむという、コロンボ形式ですね。キャラもストーリーもなかなか面白かったですよ。んー、でもその動機だけで殺人までするかなあ?まあ小説の推理ゲーム、と思ってしまえばそれでいいけど。そして女ってやっぱコワイわ、と思いました(笑)。☆3つ半かな。こういうのが好きな方なら☆4つか4つ半だろうけど。
6.12 『れんげ野原のまんなかで』 ☆☆☆☆ 森谷明子 東京創元社
なりたてほやほやの、若い女性図書館員のまわりでおきる、日常の謎ミステリ連作集。とてもよかったです。このひと、うまいわ。謎をそれぞれ本にからめるあたりがすごくうまかった。1話めとか特に。ここでそこに出てくる本を書いちゃうと、即ネタバレになるという仕組み。考えたなあ。この元ネタ本を読んでた人なら、この謎、すぐわかったかしら。
主人公のキャラがイマイチ立ってない(読んでて顔が見えてこないカンジ)のが残念なんだけど、探偵役の男性はもちろん、他の登場人物はぱっと脳内に映像が浮かぶくらい、よく書かれてた。子供も老人も。一見ほんわかしていそうで、実はビターチョコのようにほろ苦い話が多かったな。みかけほど甘くない。安易なハッピーエンドにしないところも、なかなか好感が持てました。☆3つ半か4つ。んー、4つでいいかな。
6.7 『蒲公英草紙』 ☆☆☆☆☆ 恩田陸、集英社
ああ…素晴らしかったわ…。☆5つ。またあとで詳しく感想書くけど。
6.3 『クリック』 ☆☆☆☆ 佐藤雅彦 講談社
まさに「ピタゴラスイッチ」の世界でした。くすりと笑える。文章というよりは見て楽しむ本なので、文庫化されないのね、きっと。超短篇集、というよりはひとコマ漫画みたいな感覚。☆4つ。