日記の中にぽつぽつと書き散らした本の感想を、まとめてみました。
06.1
1.12 『暖炉の火のそばで ターシャ・テューダー手作りの世界』 ☆☆☆☆ ターシャ・テューダー メディアファクトリー
本当にこのおばあちゃん、なんでもかんでも作っちゃうんだなあ!麻のシャツを作るのに、まず麻を育てるところから始めるってすごすぎ。もはや恐れ多いというか、自分の怠けっぷりが恥ずかしくて「ごめんなさい!」と叫んで裸足で逃げたくなる。機織りって本当に大変なのね。でもその織られた布の、なんとあたたかみのあることか。籠も編むし、人形も作るし、いやホントに脱帽というかひれ伏しちゃうものすごさ。そして、そのひとつひとつを本当に楽しんでやっているのね。なんでもチャレンジ、ダメなものからは手を引いて。写真も皆きれいで、なんでこんなにあったかい写真なのかなあと思ってたんだけど、もしかしてろうそくの光のせいなのかもね。
1.11 『蝶のゆくえ』 ☆☆☆☆1/2 橋本治 集英社
実は橋本さんの小説はほとんど読んだことないんですが、これはすごかった。橋本治という人間がちょっと空恐ろしくなるほど。あまりにもいろんな人間の心理をわかりすぎているんだもの。
市井の人々を描いた短編がいくつか入ってて、若い夫婦の児童虐待や、26歳の女性の結婚に揺れる微妙な心理とか、田舎にいる老いた1人暮らしの母が骨折したので様子を見に行く中年の女性などが描かれているんだけど、そのリアルさ、深さに愕然とする。なんでここまで書けるんだろう?
でも登場人物に肩入れするわけじゃなくて、上から淡々と、まさに神の視点で書いてるのね。観察者というか。この中の誰かが著者本人、ということはまったくなくて。著者は神なのよ。橋本治の才能に驚愕。☆4つ半。
児童虐待の話、タイトルは「ふらんだーすの犬」。話の最後ではじめて読者にこのタイトルの意味がわかって、がーんとするのですよ。いつ犬が出てくるんだろう?と思ってたら、こういうことか!!!!このエピローグなしなら普通のミステリなのね。で、このエピローグによってがらりと色が変わるんだ。これ、クリスマスの奇蹟の物語だったんだ!非常に優れた誘拐ミステリでありながら、同時に感動のサプライズ。長かった苦しみは、クリスマスに浄化される。本当によかった。そして亡くなった子供たち、どうぞ安らかに。☆4つ半。