6月 2001年上半期私的ベスト10

 2001年も、はや半分を過ぎてしまった。時の流れにますます加速度がついてるのを感じる今日この頃。というわけで、今年読んだ本の上半期ベストの時期になってしまった。まあ、ベストを出せるほどたくさん読んでないのだが(汗)。ゆえに、順位はかなり僅差でございます。こういっちゃなんだが、読了した本のタイトルを見るだけでほれぼれしてしまう。ああ、これもあれもよかったよなあ。

 ちなみに、乱読にアップしてないが読了した本は、『祈りの海』イーガン、『中継ステーション』シマック、『銀河帝国の弘法も筆の誤り』田中啓文、『非・バランス』魚住直子、『三人目の幽霊』大倉崇裕、『本の業界 真空とびひざ蹴り』本の雑誌編集部、『20世紀SF 1,2』、『上と外4,5』恩田陸、『皇帝のかぎ煙草入れ』カー、『昔、火星のあった場所』北野勇作、『夏のレプリカ』『今はもうない』森博嗣、など。これ以外にもあったかもしれないが。トータルで、およそ46冊でした。

 では、ベスト10の発表です。今回は10位から。

★10位 『Y』(佐藤正午、ハルキ文庫)

 日本版『リプレイ』。どこか大人の哀愁を感じる、切なくやるせない余韻を残す恋愛時間ミステリ。文庫にもなったことだし、未読の方はぜひ。

★9位 『スタジアム 虹の事件簿』(青井夏海、創元推理文庫)

 私の好みである、創元お得意の「日常の謎」ミステリ路線。野球とミステリが見事に溶け合った傑作。野球が苦手の方でもオッケーですよ。私もほとんどルール知らないんだけど、じゅうぶん楽しめました。北村薫、加納朋子ファンならぜひ。

★8位 『遠い約束』(光原百合、創元推理文庫)

 同じく創元ミステリ。ほのぼのあったかなタッチがよい、私の偏愛する光原百合の最新刊。大学のミステリ研の女の子とその先輩が繰り広げるキャンパスライフ。まさに野間美由紀のマンガイラスト装丁のまんまの、明るくてポップな雰囲気。まさしくミステリファンによる、ミステリファンのための1冊です。著者の、ミステリへの愛があふれています。

★7位 『祈りの海』(グレッグ・イーガン、ハヤカワSF文庫)

 なにせSFの基礎知識もない私なので、この本のよさをどれほど理解できてるかは、はなはだ不安である。が、この短篇集が実に素晴らしいということだけはわかる。どれを読んでも、1篇だけでおなかがいっぱいになってしまうほどの、ものすごく濃厚な1冊。ここ10年の傑作SFのひとつとして、名を残す本であることは間違いない。

★6位 『さよならダイノサウルス』(ロバート・J・ソウヤー、ハヤカワSF文庫)

 今まで読んだ海外SFの中で、おそらく最速レベルのスピードで読み終えた1冊。抜群の読みやすさ、読者をぐいぐいひっぱるストーリーの見事さ。非常に優れたエンタテイメント。いやあ、このネタには本当に驚いたねえ。

★5位 『失踪HOLIDAY』(乙一、角川スニーカー文庫)

 2篇収録されているのだが、表題作ではなく、「しあわせは子猫のかたち」を評価して。ひとの心の一番弱くて柔らかいところに刺さる話。切なさとさみしさと、生きることへの幸福があふれる、感動の一篇。

★4位 『それいぬ』(嶽本野ばら、文春文庫+)

 エッセイなんですが、あまりのインパクトにベスト入り。退廃的少女趣味にどっぷり浸れる1冊。すっかり彼の「乙女哲学」に毒されてしまいました(笑)。読者を非常に限定する本ですが、ハマるひとはハマれます。私にはヤバすぎるくらいツボ。ふ〜あぶなかった、10代の頃に読んでいたら、間違いなく道を踏み外していたことでしょう。危険な本(笑)。

★3位 『ハイペリオン(上、下)』(ダン・シモンズ、ハヤカワSF文庫)

 もう紹介するまでもない有名本ですが、やはりこのボリュームと読みごたえはすごかった!6人の身の上話がそれぞれ語られるのですが、いやいやもうハラハラドキドキ、波乱万丈、奇想天外の冒険譚なのですよ!長いわりには読みやすい、極上のエンタテイメント。ああ、早く続編を読まないと〜。

★2位 『模倣犯(上、下)』(宮部みゆき、小学館)

 これも本当に押しも押されぬ力作で、期待を裏切らない傑作。まさしく宮部みゆきは、小説を書くために生まれてきた人間のひとりである。これだけの厚さを最後までテンションを落とさず引っ張れるのだから、さすがというほかない。被害者の悲しみが切々とこみあげてくる、重くつらい本だったが、だからこそ目を背けずひとりでも多くの人に読んでほしい本だ。どうか、この世から残忍な犯罪がなくなりますように、と心から祈らずにはいられない1冊。

★1位 ぶたぶたシリーズ(『ぶたぶた』、『ぶたぶたの休日』、『刑事ぶたぶた』)全て (矢崎存美、徳間デュアル文庫)

 1位はやはりこれでしょう!!ぬいぐるみの「山崎ぶたぶた」さんのキュートさには、んもう誰でもメロメロさ!(笑)どんな方にオススメしても「楽しかった」と仰っていただける(ありがとうございます)、実に稀有で幸福な現代のファンタジー。この設定には「やられた!」としか言いようがないよね。私は特に『刑事ぶたぶた』がお気に入り。ぬいぐるみのぶたである、という利点(?)を活かして捜査するなんざあ、たいしたもんじゃありませんか!(何が?)

 ★番外編 『フロン』(岡田斗司夫、海拓舎)

 ネット書評界に大きな反響を巻き起こした1冊。婦論であり、夫論であり、父論。非常に評価の分かれる本ですが、だからこそぜひ読んでみて欲しい。この本にどう反応するかによって、自分自身があぶり出しにされるという、かなりオソロシイ本です(笑)。さて、あなたはどう受け止めますか?

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5月 SFセミナー2001 本会・合宿編

 2001年5月3日(木)、全電通労働会館ホールにて、SFセミナーの本会が開催されました。

 13:00スタート。オープニングは冬樹蛉さんの超かっこいいナレーションから始まる(笑)。司会は去年と同じく、尾山則子さんと風野満美さん。

 13:10〜14:15、「レキオス、翔ぶ 池上永一インタビュー」。聞き手は鈴木力さん。池上さんは、とてもお若い印象を受けました。70年生まれだそう。

 …が!彼がしゃべりだすや否や、会場は唖然呆然。機関銃のように炸裂する彼のトークに、司会も聴衆も、ただもう圧倒されまくりでした。こんなにパワフルでブッとんだ方だったとは!ああ、でも確かに『レキオス』のむちゃくちゃさとは共通するものがあったかも(笑)。

 『レキオス』執筆時の裏話(トンデモなBGMを聞かせてくれたり、本当はもっとたくさん書いたのだが、泣く泣く500枚(!)削ったという話など。執筆中はほとんど自動書記状態で、次に何を書くのか自分でもわからないという話には仰天)や、取材のときの体験談などのオモシロ話満載!でも、その中にふと見せる、小説を書くことへの真摯な眼差しが印象的でした。「セヂ」についての質問が会場から出たときなどは、一生懸命説明してくださり、とても好感が持てました。「沖縄」という場所のせいでファンタジーが書けるわけではなく、住んでいればそこは現実で、逆にいえば東京にもファンタジーの入り口はあると思う、などという話も聞けて、とてもいいインタビューでした。


 14:25、「アンソロジーの新世紀」。パネリストは左から山岸真さん、中村融さん、河出書房新社の伊藤靖さん、東京創元社の小浜徹也さん(司会兼)。

 2000年に、久しぶりに日本オリジナル編集の海外SFアンソロジーが立て続けに刊行されたということで、その裏話という趣向。河出文庫の『20世紀SF』シリーズ、東京創元社の『影が行く』などを編纂した時のお話をいろいろうかがうことができました。

 ここで会場をうならせたのは、なんといっても中村氏のマニアぶり!(笑)いやあ、こういう方が存在したから、今こうして『20世紀SF』のようなアンソロジーが編まれ、この世に登場することができたのかと思うと、感慨ひとしおでした。彼が短篇博士と呼ばれるに至ったのは、読書記録ノートのおかげだったのです。彼は高1のときから25年間、このノートに、(短篇の)タイトル、原題、著者名、推定枚数(400字原稿用紙で何枚分)、面白かったかの点数をずっとつけてたというのです(しかもこういう記録をつけるのは当たり前だと思っていたそうな)。さらに話の内容は全部覚えているというから、驚くではありませんか!

 山岸氏も、そのマニアぶりにおいては負けてない。海外SF雑誌の〈ローカス〉を読んでいて、そこに紹介されている短篇が読みたいという飢餓感のあまり、原文を読み始め、ついには自分自身がそれを日本に紹介することになってしまったそうな。

 「それっていわゆる“世界を征服したい”っていう願望?」という小浜氏のツッコミが絶妙(笑)。そう、まさに彼らは世界の果てまで突き詰めたい!という野望を持っているのかもしれません。

 ほかにも、具体的な編集手順や、アンソロジーを作ろうという話が出た発端、どういう意図をもって作られたのか、などが披露され、いろいろと興味深い話を伺うことができました。


  16:00より、「SFにおけるトランスジェンダー(性別越境)」。出演は三橋順子さん、聞き手は柏崎玲央奈さん。さすがに2つのパネルを集中して聞いてたので疲れ、この回はパス。


 17:25、「『SF』とのファースト・コンタクト 瀬名秀明、SFに対するアンビバレントな思いを語る」出演は瀬名秀明氏のみ。膨大な資料と40枚ものスライドという裏付けによって、彼の熱い思いが語られました。

 彼はまず「SFファンとコミュニケーションがうまく取れない気がする」とSFに対する違和感を述べました。というのは、『パラサイト・イヴ』でホラー大賞を受賞したときに、SFファンから「これはSFではない」との猛烈な批判を受けたのが発端だそう。

 これに始まって、彼はなんとかしてSFファンとコンタクトを取り、相互理解をはかろうと、まずはSF系日記更新時刻の主だったところを1年分全部読んだ、とおっしゃるではないですか!思わず会場は拍手喝采!(笑)また、SFセミナーサイトからアンケートを募り、筑波大では「どれだけSFを読んでいるか?」というアンケートを取り、さらには方々の文芸編集者からもお話を伺うなど、その熱意と真面目さには会場も驚きの連続でした。

 そして,それらの結果とその分析・考察が述べられました。個人的には、編集者の方々の意見が大変興味深かったです。SFは決して売れてないわけではないのだが、ミステリなどのように突出したベストセラーが出ていないため、どうも売行きが地味だ、売れない、というイメージがある、など。なるほどね。

 それらの結果を踏まえ、瀬名氏からいくつかの提案が出されました。これが実に面白かったので明記しておきます。

1、作家が共同で新聞広告を出したらどうか?
2、「これはSFじゃない」というセリフを今後5年間言わない!(会場爆笑&拍手!)
3、編集者を教育せよ!若いSFファンよ、将来編集者になれ!
4、SF読者は、買い支えよ!出たら必ず買え!そしてもしSFブームがきたら、素直に喜べ!(会場爆笑)

 まあ、実現できるかどうかは別として、とてもユニークかつ興味深いご意見でした。彼の真面目さ、誠実さがよく出ていた、池上永一氏とはまた違う意味で、インパクトのある面白い企画でした。


 合宿は恒例のふたき旅館にて。20:30、大広間にてオープニングスタート。今回は、後進に譲るということで、企画紹介を小浜さん@東京創元社さんが行う。有名人紹介はセミナースタッフの鈴木力さんとみらい子さん。

以下、私の参加した企画のみコメント。 

21:30、「ヨコジュンのハチャハチャ青春記」ライブ版。出演は横田順彌さん、司会は牧眞司さん。

 先日出た『横田順彌のハチャハチャ青春記』(東京書籍)の裏話を聞かせていただく。いわゆる「一の会」(1日、11日、21日、31日、と1のつく日に某喫茶店で開かれていたSFファンのオフ会)のオフレコ話など。めちゃめちゃ面白く、会場は終始爆笑の渦。横田さんの話ぶりは、なんとも味があってよかったです。牧さんの突っ込みも絶妙。まさに青春記、といったお話でした。当時、SFファンなんてのはそりゃあもう奇人変人としか思われていなかったそうな。でも、そう言いながらも実に楽しそうなんだよなあ。当時のSF好きな人々の情熱ぶりが伝わってくるようなお話でした。

 23:00、「こんなSF入門はイヤだ」。出演は巽孝之さん、小谷真理さん。

 SF作家などが集まって作った「日本SF作家クラブ」。彼らの初めての単行本として、去年の12月に、SFアンソロジー『2001』(早川書房)が発行されました。が、もっとほかにも何か活動しようよ、という話になり、じゃあここんとこ「SF入門書」が全く出てないから、これを作ってみようか、という話になったそう。

 で、福島正実が昔作った『SF入門』(早川書房)を参考に、いろんな意見が活発に出されました。この福島さんが作った本は、SFの書き方まで載っており、実に有益なよい本だそう。で、もし今作るなら、SFの歴史(日本、海外含め)はもちろん、映画やアニメ、ゲームについての章も必要だね、という意見が。また、「読者はどういった人間を想定しているのか?全くの初心者か、あるいはSFをよく知っている人間か?」という質問があり、「全くSFを知らない人は手にとらないだろう、ある程度はSFに興味があり、少々は読んでおり、もっと深く知りたいから手にとる人が多いのでは」という意見が出ました。あと、「早川書房から『新・SFハンドブック』が出てしまったので(これは寝耳に水だったらしい)、あれと重複しないように気を使っている」という話も巽さんたちから出ました。というわけで、発売を楽しみに待ちましょう!

 24:30、「海外SFアンソロジーの部屋」。出演は大森望さん、中村融さん、山岸真さん、大野万紀さん、水鏡子さん、牧眞司さん。

 昼企画の続編、といったカンジの企画。もっとくだけた内容で、「でもオレはこれはどうかと思う」「なんであれが入らんのだ!」みたいな喧喧諤諤の発言続々(笑)。

 槍玉に上がったのは例の河出文庫の『20世紀SF』。これの目次が昼企画の資料として配られていたのですが、この紙を見ながら1冊1冊、40年代から水鏡子さんがチェック!(笑)「これが入ってるのが気に食わないなあ〜。○○(著者名)でこれを選ぶってのはないでしょう。どうしてあれを入れなかったのか」と水鏡子さんが言うと、中村さんが「枚数が多すぎ」とぴしゃり(笑)。ほかにも「古すぎ」「あれはこないだのSFマガジンに再録されたからダメ」など、却下発言びしばし。ひ〜、そこまで考えて作ってらしたんですか!改めて、このラインナップを選んだご苦労をひしひしと感じましたよ。他の方々も、「あれはどうよ」「あれは?」と、ぽんぽんと短篇のタイトルが出るところがすごい!彼らの博学ぶりにはもはや言葉を失いましたよ。ここでも中村さんが光ってましたねえ。だからさ、どうしてタイトル聞いて即座に枚数が出るわけ?(笑)この企画のレポは湯川さんのがとても詳しいので、そちらをどうぞ。

 2:00、「ほんとひみつ はりまぜスペシャル」。出演は小浜徹也さん、牧眞司さん、北原尚彦さん、星敬さん、日下三蔵さん、ダイジマン。

 例の東京創元社の限定200部、30万円の『貼雑年譜』が公開され、会場は押すな押すなの大騒ぎ。小浜さんがまるで講談師のように熱弁を奮う。1ページごとに三村美衣さんがめくっていったのだが、仕掛けのあるページに来ると「はいっ!ここです!この裏をめくるとですね、これが書いてあるわけなんですねえ〜」どよめく観客。制作裏話も満載。いやあ、貴重なものを見せていただき、ありがとうございました。

 さて、おあとは恒例の「ほんとひみつ」。要するに古本な方々のお宝自慢(笑)。1番バッターの牧さんは、星新一関係の本。天野さんは、アジア関係の面白本を紹介。北原さんはよくわからないけど、三村美衣さんへのリベンジらしい(笑)。十五少年漂流記でまとめてました。ダイジマンはとっておきのお宝、創元・早川の文庫目録コレクションと、紙魚の手帖をはじめとする挟み込みチラシコレクションファイル!その膨大な量には、古本者の観客一同からも「おおお〜!」とどよめきの声が。ラストは日下三蔵さん。彼の出品は香山滋コレクションから。

 これが終った時点で午前4:00(!)。さあ、これからオークションだぜ!もう皆、ナチュラルハイ状態になってて、ささいなことで笑い転げるというむちゃくちゃなオークションでした。「100円から」って言ってるのに「200円!」って声が飛んだり(笑)。そしていつのまにか、窓の外は朝になっていたのでした。6:15、オークション終了。

8:30、エンディング。スタッフ挨拶。皆様、今年もお疲れさまでした。おかげさまで楽しませていただきましたよ!

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4月 SFセミナー特別編 カナダSFの世界

 2001年4月29日(日)、青山のカナダ大使館にて、SFセミナーの特別編として『カナダSFの世界』が開催されました。 

 14:00スタート。柏崎玲於奈さんの司会。カナダ大使館の女性の方と、SFセミナー実行委員長の永田さんがご挨拶。

14:10〜15:00、「カナダSFの現在」。パネラーは向かって右から山岸真さん、北原尚彦さん、加藤逸人さん、司会の井手聡司さん

 英語圏のカナダSFに限定してご紹介いただきました。カナダではフランス語で書かれたSFも多く、盛んに読まれているそう。さらにはSFファンダムも活発で、ワールドコンが開催されたこともあるそうです。

 有名なカナダ出身の作家として、年代順に『スラン』や『宇宙船ビーグル号』で有名なヴァン・ヴォクト、アンソロジー編者として名高いジュディス・メリルや、ジュブナイルSF作家のスザンヌ・マルテル、モニカ・ヒューズ、ダグラス・ヒルなどの名が挙げられました。新しい作家では、ロバート・J・ソウヤー、ウイリアム・ギブスン、ガイ・ゲイブリエル・ケイ、マーガレット・アトウッドの名が挙げられ、その著作も紹介されました。

 最新の注目作家では、巨大凶悪サンタSFということで会場を沸かせた(笑)カール・シュローダー、ジャマイカ系作家のナル・ホプキンスン、ファンタジー系のショーン・スチュアートなどが紹介されました。

 カナダの作家は、アメリカに紹介されて評価されるという傾向がある、などの話は初耳でした。また、方向に迷いがあるアメリカSFに比べ、カナダSFはストレートな内容が多く、また主人公がスーパーヒーローではなく等身大の人物で、大人の作品という印象があるそうです。要するに読みやすく親しみやすい、ということでしょうか。英語文化とフランス語文化が混在しているということもあり、多彩なテイストの作家が出ているのも特徴だそうです。


  3:00〜4:00、「ジュディス・メリルという人がいた」。パネラーは右から浅倉久志さん、森優さん、山野浩一さん、司会の牧眞司さん。

 彼女はベトナム戦争に反対して1968年にカナダに移住してきたそうです。70年に日本で開催された「国際SFシンポジウム」で来日しており、日本とも縁の深い方だそうです。彼女が来日したときの興味深い裏話(半村良の英訳話など)が、その当事者である森さんらから、いろいろ披露されました。また、彼女は政治に関心が強く、日本に来た頃にはすでに反戦活動にハマっていたそうです。SFに興味があったのは、その前くらいだったとか。

 アメリカはストレートにはイギリスSFを読まない傾向にあり、彼女はアメリカがイギリスSFに関心を持てるよう、間を取り持つかのごとく紹介していて、これは彼女の大きな功績だそうです。アンソロジーを編集するためには、よい読者であり、同時によいレビュアーであることが必要で、彼女はこの点非常に優れた方だったそうです。

 活動的で大胆でありながら、同時に繊細で優しいところもある、彼女の隠れた素顔が浮き彫りにされました。


 16:00〜17:30、「ロバート・J・ソウヤー インタビュー」。聞き手は野田令子さん。英語によるインタビューで、会場では同時通訳の翻訳機を使って拝聴しました。

 ソウヤー氏のSFとのかかわりは古く、6歳のスタートレック体験に始まり、10歳くらいで『タイタンの反乱』(アラン・E・ナース)を読み、その後アシモフにハマったとか。SFファンダムにも縁が深く、高校の時にそこで現在の奥様にお会いしたそう。ずっと密かにSF作家になりたいと思っていて、しばらくはジャーナリズムの世界でライターをしていたが、30代直前に思い切ってSFの道に進んだそうです。

 「ソウヤー氏の作品は「知性」にこだわっているという印象を受ける」という野田さんのコメントを受けて、「はい。現実的に考えて、私の生きてる間にひょっとしたらファーストコンタクトや人工知能が実現する可能性はあると思う」とおっしゃり、A.I.について「人間がその扱いをマスターしないうちに、人間よりも高度な知性を持ったものを作ってしまうのではないか」という恐怖、今は野生の動物などよりも人間そのものが危険ではないかと語っておりました。

 また、コンピュータが未来を予測したり、人間の意識をコンピュータに入れることについてもいずれは可能だろう、というコメントも出ました。E.T.の存在については、コンタクトできる可能性は低いかもしれないが、そのコミュニケーションについてはかなり困難で、長い時間を要するでしょう、とおっしゃっていました。もしそれができたら、地球人とはおそらく全く異なるであろう異星人の考えを聞いてみたい、と話しておりました。そもそもSFというのは、全く異なる見方を導入するものだから、と。

 また、著作『スタープレックス』に出てくる「人間原理」についてのコメントとして、「宇宙が機能するには、知性が必要なのではないかと密かに考えている、もしかすると全ての知性が宇宙の創造にかかわるのではないか。もしそうなら、知性を持った生物というのはとても大きな特権と責任を負っているといえるだろう。人間の心が何か意味あるものだと思いたい」、と述べておられました。『フラッシュフォワード』についても「人間が未来の選択肢の決定権を持っていると思いたい、それならやはり決定には責任を持たねば」と述べておられました。

 未来については、「国」というものが存在しなくなっているのでは、世界中の人間が「隣人」になっていてほしい、と仰っていました。宇宙開発についてはどのくらい進むかわからない、とのことでした。個人的未来については、書きたいものをこれからも書いていくそうです。

 会場からの質疑応答では、本のデザインに関してや(日本のブックデザインは非常にいい、と絶賛しておられました。オンライン書店では中身でなく、表紙だけで判断されることに憂慮を感じておられるとか)、科学の本をたくさん読んでサイエンス・テクノロジ^を日々研究しているとか、小説のジャンルについて、自作の映画化などなどの興味深い話がたくさん出ました。

 カナダはとても人口の少ない国で、そこではどんな小説も一般書として売られているそうです。もちろんソウヤー氏もSFというくくりではなく、普通の作家として知られているそうです。「文学は文学です」という言葉が印象的でした。また、カナダはとても平和な国で、イギリスとフランスという二つの文化が、内戦なしに融合したという素晴らしい歴史を持っており、多文化がうまく効率的に機能している国だそう。そのことが、「SFは地球全体の文学です」という彼の大きな考え方の源になっているのかもしれません。

 この後すぐ17:30より、会場の外でレセプション、とソウヤー氏には偽って、実はサプライズバースディパーティが!彼がスピーチをはじめようとするやいなや、スタッフがクラッカーの嵐を浴びせ、会場から拍手!そしてセミナースタッフ発注の恐竜型の超ビッグなバースディケーキ(1メートルくらい?)に驚く彼の周りで、全員で「ハッピーバースデー」を合唱。カナダ大使館からのご好意で、とてもおいしいカナダ産の白ワインと赤ワインが配られ、ワインと先ほどのケーキ(中身はチョコレートケーキ)でみんなとてもご機嫌。なごやかで楽しい雰囲気のパーティでした。

 いつもながら、楽しいセミナー(特別編)でした。スタッフの皆様、カナダ大使館の皆様、ソウヤーさん、本当にありがとうございました!

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3月 DASACON5レポート

  3月24日(土)〜25日(日)にかけて、箱根温泉のますとみ旅館において、DASACON5(読書系ネット者のオフ会)が開催されました。恒例の企画はいっさいなく、温泉にゆっくり入ってただひたすらしゃべり倒すのが目的という、実に慰安旅行テイストのオフでした。話がネタ切れになったりしないかな?と思ったのは全くの杞憂。とぎれることなく、いろんなネタが出るわ出るわ!(笑)実にまったりと楽しいひとときでした。

 夕方6時スタート。まず大広間にて、テーマソングをBGMに(笑)真赤なシャツでガオレッド仕様(風邪で来れなかったうちの娘対策)の総統の挨拶&乾杯。夕食を食べていると、いきなりステージでひとりずつ自己紹介&抜き打ち企画「今日持ってきた本の紹介」の指令が。これには一同びっくり。が、この企画、けっこう面白かったです。意外なひとが意外な本を読んでいたり。人気があったのはハヤカワ文庫の新刊『星界の戦旗3』。驚いたのは、(オークションをやるわけでもないのに)ひとりで何冊も本を持ってきてる方が多かったことです。さすがは本読みオフ。でもなぜに?ああ、お買い物帰りの方がいらしたのね。秋葉原に寄ってからいらした方とか。

 ちなみに私が行きの電車で読んでて紹介した本は、もちろん『遠い約束』(光原百合、創元推理文庫)です。野間美由紀の表紙に驚いてる方がけっこういらして、「どこのレーベルなんですか?」「えっ、ホントに創元推理文庫なの?」「背表紙見せてください!」…黄色の背表紙を見せたら、「おお〜っ」と納得の声が。ステージから帰る途中に、湯川さんに嶽本野ばらちゃんの切抜きをいただく。ヘアスタイルが野ばらちゃんそっくりのπRさんからは『それいぬ』ハードカバーを。ありがとうございます!(しかし、私=野ばらちゃんという図式はいつの間に?^^)

 あとはひたすら歓談タイム。お風呂に行くひとは行ったり。女性陣は宿についてからすぐ入り、夜もう一度入りました。小さいけど、露天風呂もあり。は〜、極楽。無色無臭のいいお湯でした。実にたくさんの効用がある温泉らしいです。食事の片づけをしてもらってから、大広間の後ろ側を使って、ディーラーズの店開き。机移動中にらじさんと少しお話。おお、光原百合さんとお知り合いなんですか!のむのむさんからは『谷山浩子童話館』を100円で譲っていただく。ありがとうございます!しかし、なぜ浴衣の袂から本が?(笑)

 MZTさん総統、πRさんたちと、昔のSF話など。総統は相変わらず、本の内容説明がむちゃくちゃでオカシイ(笑)。MZTさんが大ウケしてました。そのMZTさんには、ダイジマンからの預かり本を渡して、大いに喜ばれました。久保書店SFはコンプリートだそうで、おめでとうございます。

 ワタクシ的に最もださこんらしい盛り上がりを見せたな、と思ったのは『かめくん』談義。のむのむさんが、まず「ヒガさんとミギタさんがぐちょぬちょになっちゃう、あれは何?意味があるのかないのか?」と納得いかない旨を述べ始めたあたりからスタート。おおたさんヒラノさんあたりが中心になって、あちこちからさまざまな意見が。

 結局のところ、のむのむさんの疑問を突き詰めてみると、「あのエアコンとかあれやこれやのネタはハードSFのネタとして書いてるのか?だったらなぜきっちり説明しない?」というのが、わかる人にはどうも気になってしまうらしい。私は「ん?ここ、何かあるな?」というのはもやもや〜んとはわかったが、あれがハードSFネタだとは全然気がつかなかったクチ。おおまかにいって、あの本の捉え方はのむのむさんのようなハードSF読みの人と、私のような薄い人ではかなり違う、というのが判明。けっこう目ウロコなご意見だったので、非常に興味深かったです。

 同じく北野勇作の『昔、火星があった場所』『クラゲの海に浮かぶ舟』と比較した話がヒラノさん、おおたさんからいろいろと出てましたが、聞いててもやっぱり読んでないことには何もわからず、残念。デュアル文庫がもうひと足早く出てればよかったなあ。私が知りたかったのは、この2冊も、『かめくん』みたいに何かネタをふってはあるけど説明せずにそのまま雰囲気だけぼや〜んと出しているのか、つまりあれは北野勇作のスタイルなのか、ということだったのだけど。まあ、5月の文庫化を待ってからだな。

 あの表紙&挿絵はどうか、という疑問も出て、いろいろ意見が出てました。私はあれでいいと思う派。あれが平台に載ってたらどうだ?とか、皆かなり真摯に「いかにしたらもっと売れるか?」という話をしていたのがすごい。「もっともっと売りたい!」という、あの熱意はどこから来るのだろう。

 あとの印象的なテーマは「ガオレンジャー&仮面ライダークウガ」談義(笑)。これは総統、向井さん森山さん七沢くんなどが中心に話を盛り上げてました。もう、観客みな爆笑につぐ爆笑!そ、そんなに「やおい」系&むちゃくちゃな話だったとは!いやー、それにしてもみんなよく覚えてるよなあ、細かいとこまで。総統はともかく、森山さんが妙に詳しいのがおかしかったです。向井さんもすごかった。総統と互角に話してたからなあ。

 森山さんとは、リアル書店&オンライン書店の話などなど。「そういえば、オンライン書店って万引きがないのはいいですよね」とか。森山さんは本当に熱血書店員である。いつもいつでも、もっとお客様を増やすにはどうしたらいいか?と考えてらっしゃる、実に前向きな方。こちらも気持ちが引き締まる思い。ううむ、何かいいアイデアがあればいいんですが。しかし、リアルにしろオンラインにしろ、儲けを出すのが非常に難しい仕事ですね、書店業って。

 湯川さんは予告どおり、ちゃんとビデオデッキを持参しており、男性側のひと部屋を使ってビデオ上映会が催されていました。ついつい話に夢中になって、「キャプテン・フューチャー」を見にいかれず、すみませんでした。けっこう盛り上がったご様子。

 明け方、パソコン関係の話になったあたりで睡魔に負け、2時間ほど就寝。

 翌朝9時にまた大広間に集まり、エンディング。ウサ耳をつけた総統がご挨拶。「ひと晩、ひたすらしゃべり倒す」という志は遂げられたようで何より。

 しかし箱根にも、ださこん徹夜明け御用達喫茶「ルノアール」があったのには驚き!(笑)ここで朝食をとりつつ、10人くらいでまたわいわい話し、各自帰宅&元気な方は引き続き観光&遊びに。私はロマンスカーで爆睡しつつ帰宅。森山さんいわく、「実にヘルシーなオフだった」(笑)。

 いろんな話が聞けて、公私共に勉強になりました。充実したひとときでした。でもやっぱりひとつくらいは企画があったほうが全員で盛り上がれるのでは(と思ってたら次のDASACON6はまた企画立ててゲストも呼んで東京で、って話らしいです)。皆様、お疲れさまでした&ありがとうございました。スタッフの皆様、いつもご苦労様です。また次のださこんでお会いしましょう!

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2月 特集 吉野朔実

   先日、ふと懐かしさから手に取った一冊の新刊コミック文庫。それが怒涛の吉野朔実既刊本イッキ読みにまで発展するとは、いったい誰が想像したことだろう?(笑)「焼けぼっくいに火がついた」とはまさにこのこと(ん?違うか?)。都内の大書店を漁り、近所のブックオフを漁り、あげくの果てはヤフーオークションにまで手を伸ばし、探した見つけた既刊・絶版本!コンプリートではないが、とりあえずゲットして再読したものを、かたっぱしからレビューするぞ!

『ジュリエットの卵』全3巻(小学館文庫)

ジュリエットの卵

 今回の発作的イッキ読みの引き金となった元凶(笑)。設定などはおぼろげながら記憶はあったのだが、結末などすっかり忘れていた。ので驚愕。

 美しい双子の兄と妹、水(ミナト)と蛍。「一生ふたりで生きてゆこう」と誓い、片時も離れたことがなかったが、蛍が東京の美大に入学したときから、二人の歯車は少しずつ狂い始める…。

 二人の恋はかなうことはない。永遠に、卵を温め続けるだけ。そんな屈折した恋の行方は…。

 主人公ふたりの、一見強く見える男の弱さ脆さ、一見脆く見える女の強さしたたかさが対照的。そして、これはまぎれもなく「ジュリエット」、女側の物語である。兄との殻に閉じこもっていた蛍は、下田との出会いから、未来を、世界への扉を開いてゆくのだ。その代償は、あまりに大きかったけれど。卵の中で眠っていた彼女がゆっくりと目覚めてゆく物語、ともいえよう。

『いたいけな瞳』全8巻(集英社ぶーけコミックスワイド版)

いたいけな瞳

 全31話の中篇集。しかし、こんなに贅沢な中篇集があっていいのか。ここに吉野朔実のエッセンスの全てが収められている。実にさまざまなテイストの話が入っている。ホラーあり、センシティヴな恋愛あり、子供の話あり、ミステリあり、リリカルな青春ものあり、そのどれもが吉野朔実だ。

 自分に正直なあまり、世の中から少しはみ出している彼ら。その心の純粋さは、読んでいて痛い。実に読み応えあるシリーズ。

『ECCENTRICS』全4巻(集英社ぶーけコミックスワイド版)

エキセントリックス

 おそらく吉野朔実の作品中、最大の問題作。何から何まで謎だらけ。『エヴァンゲリオン』、または『ツイン・ピークス』なみ(笑)。最後まで読んで、頭を抱えてしまった。その謎ゆえに、いっそう強烈なインパクトのある物語。彼女の作品の中では、いまだに『少年は荒野をめざす』が私的ベスト1だが、これはベスト2に決定。

 記憶を失った千寿は、町である青年と知り合い、恋に落ちる。が、彼はなんと双子だったのだ。それも、見分けのつかないくらい外見も中身もそっくりな。二人の間で混乱する千寿。そして、彼女自身の自我も混乱している…。

 作中、「E」というアルファベットだけを描いた絵が出てくる。EはEGOのE、ECCENTRICSのE、そしてEROSのE。作者の描いているのはまさにこれだ。「自我」と「エキセントリック」、そして「性愛」。または「理想的なものへの愛」。

 まるで迷宮に閉じ込められてしまったような錯覚を覚える。何度読んでも、決して出口は見つからず、謎も解けない。いったい、吉野朔実はどういうつもりでこれを描いたんだろう?と思うとまた迷宮をぐるぐる彷徨うことになってしまうのだった。知るのは作者ばかりなり。

『ぼくだけが知っている』全5巻(集英社マーガレットコミックス)

ぼくだけが知っている

 小学4年生の、らいち君が主人公。小学生というあの時代特有の、繊細な感情が描かれる。さまざまな学校での友人達とのエピソードなどを通して語られる、精神的に大人のような、子供のような、彼の心情が時に微笑ましく、時に痛い。しかし、つい最近だったような気もする、こういうこと。自分がすっかり忘れていただけで。懐かしい感情たち。

『恋愛的瞬間』全5巻(集英社マーガレットコミックス)

恋愛的瞬間

 続き物、というより連作短篇集。心理学の森依教授と、その生徒ハルタを中心に、その周りの登場人物やクリニックに訪れる患者達の「恋愛」を分析していく作品。

 さまざまな恋のかたち、愛のかたち。真摯だけれど、皆どこかいびつで歪んでいる。ひょっとすると、「まともな恋愛」なんてもの自体、この世に存在しないのでは、とまで思ってしまう。真剣になればなるほど、それは常識から逸脱していく。

 恋愛の幸福も不幸も、人間の善も悪も、作者は冷静な第三者の眼差しで見据えている。清濁併せ持つ、それこそが人間なのだとでもいうように。恋愛のトラブルを通して見えてくるもの、それは人間そのものの姿なのかもしれない。

『グールドを聴きながら』全1巻(小学館プチフラワーコミックス)

グールドを聴きながら

 5つの短篇が収録されている。ううん、これはどうもいまひとつピンとこない。作者に迷いがある?どこか中途ハンパで、突き抜けてないような、テーマが未消化のような印象を受ける。悪くはないんだけど。

非常に私的な総論(というほどのものでもないが)

 吉野朔実は、私にとって非常に共感できるのと同時に、異質なものを強く感じる漫画家でもある。私とは明らかに「違う」ひと。なのにどうして悪魔に魅入られたかのように、こんなに惹かれてしまうのか?それは、おそらく私の中にも、吉野朔実的な何かがあるからではないだろうか。理性という名の綱渡りの下で、奈落のような心の奥底にじっと沈んでいる、危険な何かが。

 彼女は、いつも繰り返し同じテーマを描いているような気がする。作品を続けて読んでいると、共通点が多々見受けられるからだ。そのキーワードは、例えば「双子」、「生と死」、「親子の確執」、「自我」、そして「恋愛」。そして、そのどれもが世間一般に見受けられるそれと比較して、明らかに歪んでいる。

 吉野朔実の思考のベクトルは、いつもその人間の内側へ内側へと向かう。外に開いてゆく登場人物はほとんどいない。彼らはその純粋さゆえに自分をどんどん追い詰めていってしまい、その結果破綻する。ゆえに、彼女の作品はみな「痛い」。

 彼女はいつでもじっと静かに、人間の「心」という深い穴の中をどんどん堀り探ろうとしているかのようだ。その中にはありとあらゆるものが入っている。善と悪、愛と憎悪、生と死、夢と現実、希望と絶望、その他もろもろ。それらを、まるで標本を並べるかのような冷静さで、ストーリーに織り込んでいく。そこには一切のえこひいきは存在しない(彼女は性善説でもその逆でもない、と思う)。まるで、その混沌全てひっくるめたものが人間だ、とでもいうように。

 だから、彼女の作品を読んでいると、時折人間の恐ろしさにぞくっとさせられもするのだが、同時に大いに救われるのだ。自分の中に巣食う混沌を、そこに見るからだ。「ひょっとしたら、ヘンなのは自分だけではないのかも?」と密かに安堵するのだ。人間なんて所詮その程度のもの、自分の思うままに生きていくしかないのだ、と囁かれているような気がしてくるのだ。

 彼女の漫画に出てくる危うい登場人物達は、一見突飛でエキセントリックだが、実は私たちそれぞれの心の奥に眠る影、なのかもしれない。

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1月 皆の2000年ベスト1

  皆様からアンケートを取り、2000年に読んだ本の中から新刊・既刊を問わず、一番面白かった本を一冊挙げて頂いた。ご協力して下さった方々、ありがとうございました。

(タイトル)『刑事ぶたぶた』

(著者名)矢崎存美

(出版社) 廣済堂出版 

コメント:いやー、イイッス。ぶたぶた最高ッス。
刑事物だがなんせ主人公が「ぶたのぬいぐるみ」なもんで、ニヤつきながら読みまし
た。癒し系ですな、これは。21世紀にはピンクのぶたが刑事をやっているかも?

お名前:ことぶ
メールアドレス:kotobuky@hotmail.com
サイト名、アドレス:http://www5b.biglobe.ne.jp/~kotobuky/


(タイトル12人の指名打者』

(著者名J.サーバー他

(出版社)文藝春秋(文春文庫)

コメント:共通のモチーフ(野球)を名人たちがそれぞれ異なるコンセプトで料理した名
品逸品満載のアンソロジーです。凄まじいほどの粒の揃いっぷり! こういうアンソロ
ジーこそ、真に傑作選/精選集の名に相応しい。サブタイトルに「野球小説傑作選」と
あるのを見て、「野球、よくわからんしー♪」と毛嫌いして読まない方もいたかもしれません。
が、それはあまりにもったいない!野球の知識なんざ、ほとんど必要ありません。
野球はあくまで道具立てなんですから。コミカルな話、シリアスな話、無情な話、
心温かになる話、事実を元にした話からスラプスティックな話まで。様々な趣向が凝ら
されており、見事なまでにハズレなしであります。絶対に読まなきゃ……。久しぶりに
「誰彼構わず読ませたい!」と思える本に出会いました。評価星を付けるとしたなら、
もちろん★★★★★でしょう。とにかく、まず1篇でよいから読んでみていただきたい!

ジェームズ・サーバー「消えたピンチヒッター」、エリオット・アジノフ「ザ・ルーキー」、ポール・ギャリコ「アンパイアの叛
乱」、ホーク・ノリス「双生児の秘密」、ジョン・オハラ「大いなる日」、チャールズ・アインスタイン「夢のカーヴ」、
ウィリアム・プライス・フォックス「待ちわびた一球」、デイモン・ラニヨン「ハッティのお手柄」、
アーノルド・ハーノウ「新米審判」、ウィルバー・L・シュラム「馬が野球をやらない理由」、
ルイス・グレイヴス「十割打者の謎」、フランク・オルーク「閃くスパイク」を収録。

少しでも興味を持っていただければと考えて、以下に〈12人の指名打者〉の内訳を掲載順に記してみます。

(1)パール・デュ・モンヴィル。小人。ストライクゾーンが異常に狭い。どこに投げても
フォアボール。やば……。二死満塁のチャンスに起用されたが、さてさて。
(2)マイク・カットナー。35歳。プロ16年目にして、初めてメジャーの打席に立つ。なんとしても打ち
たい。一発かましてメジャーに残りたい。ネクスト・バッターズ・サークルの焦燥。
(3)ローワン・キャサディ。アンパイア。“コンクリート”の異名を持つ堅物。恋人の要求に負
け、カラフルかつファッショナブルな装いで審判を務める羽目に。
(4)ハーマン・シャウラーとシャーマン・シャウラー。山岳民。通称“ヴー”と“ドゥー”である。無敵の双子バッ
テリーの秘密とは?
(5)ウィリー・ハート。ニューヨーク・ヤンキースファン。野球賭博で儲けたへそくりを何に使おうか。
考えた末、息子ブーカを試合観戦に連れていく。ところが……。
(6)サム・ルイス。通称は“シックス・イニング・サム”である。どんなに好投し
ても、なぜか6回には打ち崩されてしまう。トレードで下位球団に出された彼の心中や如何に。
(7)リーロイ・ジェフコート。41歳。草野球選手。選手の物真似が得意。心底
野球を愛する男なのだが……超へたくそ。サウス・カロライナ州立刑務所チームと対戦。
(8)ベースボール・ハッティ。熱狂的なジャイアンツファン。のちにヘイスタック・ダゲ
ラー投手の妻となる。幽霊になってもジャイアンツ戦を観戦。
(9)ビリー・ニーディ。メジャーリーグの新米審判。マイナーから上がってきたばかり。初めてのジャッジはロビ
ンズ戦。ロビンズのタッド・ラウシュ(監督兼遊撃手)とはマイナー時代、判定を巡って
ちょっとした因縁があった。
(10)ホース・ジョーンズ。馬。ドジャースの三塁手。トレーニング・シーズンでの成績は桁外れ。
打率.538、守備率.997、20盗塁、7HR。文句なしに野球史上最高の三塁手である。
しかし、彼には人知れぬ悩みがあった……。
(11)ルドルフ・スペックルドナー。元フリッツ・シュナイダー食料雑貨転勤務。趣味はフルート。
友人のインド人隠者モハジ・カーンの呪術のおかげで、10割打者に。即ジャイアンツ入り。
(12)デーン・ビョルランド。元ホワイト・ソックスの名遊撃手。八百長疑惑(ブラック・
ソックス事件)に巻き込まれて退団。現在は、流しの旅がらす球団所属。町チームの大学生遊撃手との交流を描く。

お名前:mut
メールアドレス:huckfinn@rr.iij4u.or.jp
サイト名:Huckfinn Rocket Punch
アドレス:http://www.rr.iij4u.or.jp/~huckfinn/


1位:『バトル・ロワイアル』
      これはもうブッチギリ。これほどの本には滅多に出会えないでしょう。「中学生が殺し合い」というイメ−ジ
      ばかりが先行してたので、ずっと敬遠してましたが、銀通の書評を読んで、今年になってようやく読了。
      そして驚嘆。そこらじゅうの人間に勧めまくりました。活字嫌いのうちのラグビ−部の連中が半分以上
      読んでいるほどですからその面白さは推して知るべし。先入観で敬遠していた自分を反省。そして先に結末を
      知っていた自分を猛省。そうでなければオ−ルタイムベスト1になったかも。
      個人的には千草貴子の「もう一言オ−ケイですか、神様?」と、秋也のラストの台詞が一押しシ−ン。

ついでに2位:二進法の犬
              ブックオフの100円セ−ルで「分厚いのに安いから」という恐ろしくいいかげんな理由で購入。
              んが、100円ではお釣がじゃんじゃん来るほど満喫しました。もうほとんど一気読み。
              博打とヤクザと純愛(純か?)のお話。花村萬月の他の本も読みたくなりました。
              特に「吉祥寺幸荘物語」は近所が舞台ということもあって目下古本屋で探索中。
 
おまけに3位:少年たちの密室
              これはかなり好きです。特に被害者と真犯人?のゲスっぷり。ここまで嫌な人間を書けるのは
              スゴイとおもいます。このミスに入らなかったのがかなり不思議。

お名前:ゆう


(タイトル)『ハローサマー、グッドバイ』

(著者名)マイクル・コニイ

(出版社)サンリオSF文庫

コメント:
絶版でもう読めない本。でも評判が良いので苦労して読んでみるとやはり
絶品。うむむ、良い本だけが生き残るわけじゃないところが悲しいですな。
この作品はもう古いSFですが、SFが最もSFらしかった70年代の
作品だけあってスゴク楽しめました。この最後の一撃のために私はSFを
読むのです。

お名前:u-ki
メールアドレス:gates@hate.club.ne.jp
サイト名、アドレス(お持ちの方のみ):私立東鳩学園分校No.6
http://www.geocities.co.jp/Technopolis/2665/no_2.html


(タイトル)『鵺姫真話』

(著者名)岩本隆雄

(出版社)朝日ソノラマ  

コメント:
既刊・新刊を問わずと言うことですが、今年出版された岩本
氏の三作品をひっくるめてベスト1と言いたいのが本心。で
も、他の二作品は一応再出版と言うことで『鵺姫真話』を。

最初、現在の自分に不安を抱いていたり絶望していたりする
登場人物たちが、それでも希望を捨てずに前へ進んでいく様
は、夢を見られなくなりつつある今の自分にも、夢を与えて
くれますよね。読んでいて楽しいですし、読み進むにつれて
もっと先をもっと先をと読みたくなり、しかし左手のページ
の厚さが薄くなるのを心のどこかで悲しく感じながら、それ
でも読むのをやめられない。それを久しぶりに味わいました。

岩本氏の作品には、青臭さとかこっぱずかしいほどの正義感
が溢れているんですよね。テレビを見ても暗いニュースばか
りが流れる昨今、岩本作品を読むと心が洗われるようです。

『星虫』の吉田秋緒さんの言葉を借りれば「夢は、叶えるた
めにある」。信じさせるもので溢れています。

お名前:ローリー
メールアドレス:syoueido@lilac.ocn.ne.jp
サイト名、アドレス:http://www3.ocn.ne.jp/~syoueido/


(タイトル)『提督ボライソーの最後』(海の勇士/ボライソー・シリーズ24)

(著者名)アレグザンダー・ケント/高橋泰邦 訳

(出版社)早川書房(ハヤカワ文庫NV969)  

コメント:シリーズ第1巻刊行から20年。ついに運命の日がやって来ました。
主人公のリチャード・ボライソーの戦死は、最初から設定されていたのです。
16歳から59歳までの人生の物語は、本書で完結しました。続きを早く読みたいが、
巻を追う事に主人公の最後は近くなる。何と屈折した思いを持たされたシリーズでし
ょうか。さようなら、われらがディック。今後は、甥っ子アダムが活躍するそうです。
それにしても、長かった。リアルタイムで読んできた私も、いい年になってしまった。

お名前:draken
メールアドレス:draken@lib.bekkoame.ne.jp


(タイトル)『ダンクトンの森』(上・中・下)

(著者名)ウィリアム・ホーウッド

(出版社)評論社

コメント:名作「スカヤグリーグ」の著者による動物ファンタジー(昭和62年刊)。
宮崎駿とジョージ秋山が合作した様な話で、次から次へと襲い来る災難に耐え、力強く生きる
ーまたは、力尽きて死ぬーモグラたちを描く。
前半は文句無しの傑作。胸に黄金の心を秘めた一匹のモグラの無償の愛に泣かされました。
後半、これでもかとばかりに試練、苦難の連続で、読むのがつらいほどだけど、最後の最後に
盛り上がって神話へと昇華する。
2000年に読んだ本の中で、最も感動した作品です。

お名前:河合恭


(タイトル)『ペパーミントの魔術師』 

(著者名)上遠野浩平

(出版社) 電撃文庫

コメント:今更だし、誰もが知ってるから避けるって手もあったの
だが、本読みとしてはそれは出来ないな、と。やはり、こういうの
に弱い模様。

お名前:りゅーし
メールアドレス:ryushi@moon.co.jp


(タイトル)『リサイクルビン』

(著者名)米田淳一

(出版社)講談社ノベルズ  

コメント:
 いやー、自著を書くのは反則というかイタいというか、いろいろ引け目もあっ
たんですが、まあイロモノと言うことで。というか、自著をベストに選ばないと
言うのは自著で手を抜いた引け目があるからなのではないかという疑念もありま
して、実際私のようなアップアップで小説を描いている人間には、資料調べに忙
殺されて他の方の本を読んで批評したり選んだりする余裕はないというのもあ
り、あえて非常に恥ずかしいのですが選びました。確かに文章ヘタいとか構成甘
いとか、なぞ展開とか反省しているところもいっぱいあるのですが、それでもや
っぱり世に送り出した実の子どものような作品、せめて著者だけでも応援してあ
げなきゃ、という気になっております。第一、読んで欲しかった『たましい』に
はいささかの疑念もありませんし。人は歴史の前には皆無力だということとか、
『運がいいとか悪いとか』とかいろいろあります。

 実際『プリンセス・プラスティック』の2142年しか描けなかった私が初めて現
代物に挑戦しただけあって、必死でした。国際線ダイヤのトリックとか、なぞ展
開もよく考えるとちゃんとミステリの文法にしてあったりします。
 密かにリサイクルビン2として『R2』が進行中です。なんだか『SFはダメでー
す♪』と編集さんに言われて『リサイクルビン』を書き出したのに後半部はSFマ
ガジンに載ってしまうような(あ、ネタバレか?)なぞ展開で、『R2』では真面
目に本格ミステリにしようと(いやリサイクルビンも真面目に書いたんですが)
思ったんですが、某筋よりなぞ展開を期待されているのでとんでもないことにな
っています。もう講談社ノベルズからは本は出せないのかな……。なんだかウツ
になっている暮れであります。でも、ヘリコプターに地盤沈下だけでSFというこ
とであればSFじゃない小説って何が楽しいの、とか思う無駄知識普及の会でもあ
ったりします(うわ戦ってるな)。

 DASA勢でも倉阪鬼一郎さまがうちの取っている産経新聞の書籍売り上げベスト
テンに入賞したり、浅暮さんも新作を出したり、ちょっとだけ先輩に当たる高瀬
彼方さんがものすごく忙しそうで派手な話ばかり耳に入り、省みれば私は200
0年は『リサイクルビン』一冊で淋しいとはいえ、でも98年99年と2年新作
が出せなかったので、うちの日記で既報ですが『遅れてきた防空巡洋艦・綾瀬』
と『翼の接線』の作業で2001年はなんとかガンバラナクテワと思っておりま
す。

 まあ作家としては地味に、『なんだか名前知らない人が書いているんだけど面
白いよ!』と言っていただけるような本を書くことに専念しようと今も思ってお
ります。
 ただ、DASAとかには自分の知識がいかに間違っているかを反省するために行っ
ているはずなのですが、毎回おちゃらけてしまっていて、作品よりも作者がイロ
モノで目立つという状態になっているようでツライです。なんかキャラ立て間違
えたのかなあ。
 まあ、来年も全力でガンバルので、よろしくおねがいします。ママ様にもお読
みいただける作品が描けますように(2001年の目標)。

お名前:米田淳一
メールアドレス:jyl@ma4.justnet.ne.jp
サイト名、アドレス:
 プリンセス・プラスティック http://www4.justnet.ne.jp/~jyl/index.htm


タイトル)『バトル・ロワイアル』

(著者名)高見広春

(出版社)太田出版                      

コメント:読み終わってまず第一に「上手い」と思いました。42人の生徒が見事に書き分けられていて、すぐ登場人物の名前を忘れてしまう私にも一人一人がはっきりと印象に残りました。物語の中の42個の選択、42個の動機、42個の結末、これらの全てが、あるいは儚く、あるいは激しく、あるいは悲しく、私の中に残りました。これは決して暴力を売りとしたものではなく、私が今までに接してきた何ものよりも人を信じると言う事、人を愛すると言うことについて考える機会を与えてくれました。

お名前:高葦永蒼
メールアドレス:
bkaon100@rinku.zaq.ne.jp


(タイトル)『からくりからくさ』

(著者名)梨木香歩

(出版社)新潮社  

コメント:くわしくは"http://www2.odn.ne.jp/~cbh39000/book2000-3.html#karakuri"にて。
清澄で健気な女性が美しいです。他候補はマイクル・コニイ『ハローサマー・グッドバイ』、
J・R・ランズデール『バッド・チリ』他。

お名前:おおた 
メールアドレス:uporeke@freemail.fresheye.com
サイト名、アドレス:粗忽長屋(http://www2.odn.ne.jp/~cbh39000/index.html)


(タイトル)『モダンガール論』

(著者)斉藤美奈子

(出版社)マガジンハウス

20世紀における女性の地位や、意識の変遷を著者独自の視点で概観した本です。
フェミニズム、ジェンダー関連の本は、とてもかみ砕かれたものか非常に高度なものの両極端なものが多いなか、予備知識の無い人間でもフェミニズム論の推移を知ることが出来るという意味で貴重な本です。
また、そんな難しいことを抜きにしてもこの著者独特の知的でユーモアある文章を読むとわくわくしてきます。
フェミニズムの本なので、銀河通信では不向きかと思ったんですがあんまり面白かったので他の人にも知ってほしくて、この本に投票します。
なお、銀河通信的には同じ著者の「ヤマト」「ガンダム」「エウ‘ア」に登場する女性の役割をとおしてその時代の女性観を探っていく紅一点論もお勧めです。

阿部雄介
bzm10266@nifty.ne.jp


(タイトル)「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」「エンディミオン」
      「エンディミオンの覚醒」
4冊をひとつの物語と考えて。
     それでもいいですか?
      
(著者名)ダン・シモンズ

(出版社) 早川書房 

コメント:こんなに楽しめる本に出会ったのは久しぶりです。
     フランス料理のコ−スのように、オ−ドブルから
     デザ−トまでおいしくて濃厚で満足感たっぷり。
     これを読んだあとは、どの本も物足りなく感じてしまったほどです。

お名前:MAKI
メールアドレス:mochida@mvi.biglobe.ne.jp
サイト名、アドレス:http://www2u.biglobe.ne.jp/~macomo/
                                                  MAKI’s HOME


(タイトル)『三丁目の夕日』

(著者名)西岸良平

(出版社)小学館  

コメント:
サイケデリックな画風をアレンジして描かれた、独特な作風が、
東京オリンピック以前の、日本のどこかにあった夕日町三丁目に、
あなたを、いざないます。
解説が多い点から「なつかしもの」を、看板にしているようですが、
どうしてどうして、しっかりした作品が、多いこと。
例えば、「てぶくろ」という作品は、あの時代の女性の悲劇なんですね。
これが、淡々と描かれており、しみじみと良い。
(ビッグコミックス27巻・マイファーストビック『冬支度』より)
かつての映画や文学が好きだった人は、読むと、ほっとするのでは?

サブテキストには、なぎら健一の『下町小僧』(ちくま文庫)が、ベスト。

西岸先生は、SFも描かれております。(双葉文庫で今も読めます)
好き嫌いが分かれると思いますが、私は、SFも好きです、西岸ワールド。

お名前:ネコネコ


(タイトル)『童話物語』

(著者名)向山貴彦/著 宮山香里/絵

(出版社)幻冬舎  

コメント:
いつまでも物語の世界の中にとどまっていたい・・・そんな気持ちにさせられた一冊
でした。
挿絵の美しさも物語を支える重要な要素になっています。
惜しむらくは、子どもたちにも読んでほしいと思える本なのに、児童向けの体裁では
ないということ。ルビを振り、文字のフォントを大きくして、小学生高学年ぐらいか
ら読めるようにしてほしい。ベストセラーの『ハリー・ポッター』シリーズに勝ると
も劣らないファンタジーだと思います。

名前:Moni
メールアドレス:miotise@shikoku.ne.jp
サイト名、アドレス:Poco a Poco のんびりゆこう   
http://user.shikoku.ne.jp/miotise/


(タイトル)『猫の地球儀』

(著者名)秋山瑞人

(出版社)メディア・ワークス「電撃文庫」  

コメント:
【焔の章】
 凄い作品があったものだ。涙が出るほど愛らしく、身震いするほど格好よく、
適度にミステリアスでとことんエンタテイメント。こんな作品が読みたかった。
子供だましなどではない、こんな本を子供だけのものにして置く事が即ち罪で
ある。SF系の本読みサイトで評判を呼んでいるので、騙されたと思って手に
とってみたところ、これが大当たり。こんな話。

 人類が増え過ぎた人口を宇宙に移民させるようになって既に半世紀が過ぎていた。
過ぎたところで人類は滅び、地球を回る巨大な人口都市には猫たちの社会が築かれ
ていた。ロボットをパートナーとし、「天使」たちの遺産を活用しながら独自の
文化を持つに至った彼等の中に、スカイウォーカーと呼ばれる「種」がいた。
壁の向こうにある「地球儀」に降り立つ事を信じるスカイウォーカー。しかし、
猫社会を統治する大集会は、スカイウォーカー達の「信念」を許す訳にはいかな
かった。これは37番目の、そして最後のスカイウォーカー<幽>の物語。
36番目の<朧>の残した智を託された少女型アンドロイド・クリスと<幽>
の出会いの物語。一方、スパイラル・ダイブというフリー・フォール状態でのロボット
バトルに挑む一匹の若き挑戦者がいた。名を<焔>。伝説のチャンピオン<斑>に
挑戦状を叩き付けた彼に勝算ありや?賭けすら成立しない絶対不利の下馬評の
中、<焔>の勝利を疑わない放浪者<楽>。そして、儀式の鐘は鳴る…。
と、ここまでが37ぺーじ。みたかこの密度!といって、読みにくい訳ではない。
とびきりの設定が時にユーモラスで、時にはしたないまでに格好良いストーリー
に当たり前のように織り込まれているのだ。綺羅星の如きアイデアを惜しげも
なくつぎ込んだ「本物」の手応えがここにはある。どうかこの本を手に取って
欲しい。もう一度言う。こんな話が読みたかった。早く次、読ーもおっと。

【幽の章】
 さて、本年度ベストSFとの呼び声も高い活劇<猫>SFの後編。前編の興奮が
冷めないうちに読むのがお作法と、とりかかった。前編のラストで、最強の白猫
「焔」に対し作法に則った挑戦状を叩き付けた37番目のスカイウォーカーである
黒猫「幽」、その天才の幼年期のエピソードから後編はスタートする。伝説的な
女盗賊であった「ビリビリ尻尾のキジトラ円」率いる菊水一家に拾われた不愛想な
子猫は、どこで身につけたのか、奇跡的なロボット操りの技術を持っていた。
なぜか「円」のお気に入りとなったその黒猫は「幽」と呼ばれるようになる。そして
彼は、あらゆる知識や技法を吸収しては、その「教師」たちを凌駕していくのであった。
語られざる悲劇の後、生っ粋の「まつろわぬ者」として再び一匹(ひとり)になるまで。

 ……時は流れ、<戦闘>という名の友情の幕は開く。戦いの鐘に向かって準備を整える
二匹(ふたり)、その間を好意と親愛を惜しげもなく振りまきながら「楽」は舞い、
震電は踊る。自由落下の中で強き者どもの命は紅蓮に縺れ、時間は加速する。それは、
不器用な格好良さの墓標。許せないのは誰?確かめたいのは何?夢を持つ事が罪と
いいきる事は、別の罪。天空の盆に向かって魂は昇る、どこまでも。涙を失った
猫たちの目に映るその色は、「青」。

 はしたないまでに格好いいキャラクターが思わせぶりの中で漏らす「真実」が痛い。
メカ戦の妙味を知り尽くした作者によるナノ・セコンド単位の戦闘描写が凄い。
夢と夢の遭遇と意地の張り合いはどこまでも心地よく、命の軽さが滂沱の涙を誘う。
巷の感想では「詰め込み過ぎ」との風評もあるが、私にとってはこれで必要充分で
ある。嵌まりました。やはり面白い。惜しげもなくアイデアをぶち込んだ究極の
エンタテイメント。天翔ける猫たちの「神話」に心からの敬礼を送る。もう一度言お
う。
「こんな小説が読みたかった」!!絶賛。

お名前:kashiba
メールアドレス:kashiba@ann.hi-ho.ne.jp
サイト名、アドレス:猟奇の鉄人
http://www.ann.hi-ho.ne.jp/kashiba/


タイトル:『永遠の森 博物館惑星』

著者名 :菅浩江

出版社 :早川書房

コメント:
「末枯れの花守り」から3年。「天上の調べ聞きうる者」が掲載されてから7年。
菅浩江さんの久々の単行本は、待ちに待った「博物館惑星シリーズ」の単行本化。
もうファンとしては言うことがありません。ということで今年のベスト1です。
それぞれの話については、思いが拡散して言葉になりませんが、
私的に一つあげるとすれと「夏衣の雪」がいいかな。

名前:えんど
Mail:jagd@mirage.pobox.ne.jp
Site:終翁邸 http://mirage.pobox.ne.jp/orange/


(タイトル)『エンジン・サマー』

(著者名)ジョン・クロウリー

(出版社)ベネッセ

コメント:
私のイメージでは「クリスタルの切子細工」。
透明感があって静謐。そしてどこか醒めている感があって、
読後にじーんときたSFでした。もうメロメロ〜!
どこかの出版社で復刊してくれるのを願っています。

お名前:H2
メールアドレス:hitoshik@jasmine.ocn.ne.jp
サイト名、アドレス:Tea Garden
http://www2.ocn.ne.jp/~h2tea/


(タイトル)『神無き月十番目の夜』

(著者名)飯嶋和一

(出版社) 河出文庫 

コメント:
今年はいい本に沢山出会ってどれをベスト1にしょうかちょっと迷いましたが、
『神無き月十番目の夜』を私のベスト1にしました。

『始祖鳥記』を読んで作品の出来に感動し、飯嶋和一に興味が湧き、出会ったのが
この『神無き月十番目の夜』でした。
江戸初期に村ごと消えた百姓一揆の話で、なぜ老人から赤子まで亡骸になったのかを
描いた話です。
ほんのちょっとしたズレが積み重なり、それが破滅へ進んでゆく様子は実に圧巻。
『始祖鳥記』もそうだけど、いろいろな場面のデイテール描写が丁寧で、まるで映像を
見ているような感覚になります。特に主人公藤九郎が死ぬシーンでは私の頭の中で
゛無念"という言葉が駆け巡り泣けました。

お名前:みき
メールアドレス:miki-0201@mud.biglobe.ne.jp


(タイトル)『いとしい』

(著者名)川上弘美

(出版社)幻冬舎

コメント
:自分がこの本を好きなことはよくわかっているのに、何が好きなのか
説明しようと試みるのは、どうにも難しいこの1冊。それでもベスト1に押す
のは、「川上弘美」という、自分にとってこの先も読み続けて
いくであろう作家と出逢わせてくれた、思い出深い1冊になったから。
読み返せば今も、物語と一緒に2000年の夏の香りが匂い立つ気がする。

#ちなみに「本」ではないかもしれませんが。
#漫画だと『西洋骨董洋菓子店』(よしながふみ、新書館)が
#文句なくベスト1。これまた出逢えてよかったと思う1冊。
#特に洋菓子好きは、読んで涎を垂らして欲しい。

お名前:ちはら
メールアドレス
chiharak@geocities.co.jp
サイト名、アドレス:いろつきおとつき(http://www.geocities.co.jp/Technopolis/2371/)


(タイトル)『永遠の森 博物館惑星』

(著者)菅浩江

(出版社)早川書房  

今年の私のベスト1は迷わずこれに決まり!です。
これですっかり菅作品のとりこになり、読み終えた次の日から
書店と古書店をハシゴし、ネットを使い、今までに出版された本を買い揃えました。
美しくて、やさしくて、少しせつない、素敵な物語だと思います。

凍月
wbs45442@mail.wbs.ne.jp
今宵、月の裏側で。
http://www2.wbs.ne.jp/~tsukiura/index.htm


(タイトル) 『鉄の夢』

(著者名)  N・スピンラッド

(出版社)  早川書房(SF文庫)

コメント:いろんな意味で今年一番楽しみました。
     本トに奇書ですな、これは。
     あんまり強くお薦めは出来ないんだけど、
     予備知識無しで読んでいただきたい作品です。

お名前:πR
メールアドレス:smile@aa2.mopera.ne.jp


(タイトル)『第三の警官』

(著者名)フラン・オブライエン(アイルランドの作家です)

(出版社)筑摩書房 (世界文学大系が入手しやすい)

コメント:あふれるイメージと奇想の数々。幻想と哄笑の文学です。マイオールタイムベストは確実。幻想文学ここにあり!

お名前:土田裕之
メールアドレス:pooh@02.246.ne.jp
サイト名、アドレス:幻想文学館/www.02.246.ne.jp/~pooh 


(タイトル)『ハンニバル』(上、下)

(著者名)トマス・ハリス

(出版社)新潮社  

コメント:今年は、あまり本読みませんでした。ビジネス書ばかり読んでた
ような気がします。この本は、待っていたこともあり一気にいけました。

お名前:相澤 健一
メールアドレス:ken-a@tkf.att.ne.jp
サイト名、アドレス:http://www.geocities.co.jp/Bookend/4420/index.html


(タイトル)『陰陽師 生成り姫』

(著者名)夢枕獏

(出版社)朝日新聞出版

コメント:これを読んでいた時、まだまだ寒い初夏のイギリスにいました。日本の自然はしっとりと華やかで暖かく、日本の女性の情は、じんわりと怖くも、美しいと思ったものです。獏さんが、これほど、美しい描写を出きる人だと知りませんでした。

お名前:堀田康彦
メールアドレス:yasuhiko@hotta.fsnet.co.uk


(タイトル)『光の帝国 常野物語

(著者名)恩田陸

(出版社)集英社文庫

コメント:
なんてきれいな小説なんだろう。
まぎれもなくぼくが今年読んだ小説の中ではベスト。
今年は恩田陸の小説ばっかり読んでいた気がするのですが
(2000年中に何冊刊行されたんだろう?)、
その中でも一番のお気に入りです。
文庫化をきっかけに購入したのですが、
親本をチェックしていなかったのがちょっと悔やしい。

「七瀬ふたたび」を思わせる悲劇的描写があったりもするんだけれど、
そういった部分よりむしろ日常描写、自習のシーンや唄を歌うシーンなどを
読んでいると泣けて泣けて、たまりませんでした。
いやあ、すばらしかったです。

お名前:くろっくはち
メールアドレス:hachi@rr.iij4u.or.jp


(タイトル)『コールドマウンテン』

(著者名)

(出版社)新潮クレストブックス  

コメント:(南北戦争時代アメリカ南部はファンタジー世界であった)

お名前:浅暮三文
メールアドレス:asagure@interlink.or.jp
サイト名、アドレス:浅暮魂


(タイトル) 『亡国のイージス』

(著者名) 福井晴敏

(出版社) 講談社  

コメント:
今年の私的1位は金城一紀『GO』で決まりと思っていたのだが、『永遠の子』
『白夜行』と並ぶ1999年の「三強」といわれたこの小説を年始めに読んでい
たのだ。これを読んでしまうと、どうしても他の本は吹っ飛んでしまうなあ。

海上自衛隊ミサイル護衛艦の幹部自衛官が叛乱を起こす。米軍の毒ガス兵
器を奪った北朝鮮のテロリストと結託しての行動である。ミサイルの弾頭にそ
の毒ガス兵器を積み、東京都民1千万人の命を「人質」にとって……

650頁2段組のボリュームだが読み出すと止まらない、まるでハリウッド映画
を観ているような錯覚に陥るスケールの大きな傑作。こういう、ぶ厚い本がの
めり込むくらい面白いと、本好きで良かったなあ、と幸せな気持ちになる。

お名前: ヒゲうんちく
メールアドレス:higeun@mail.goo.ne.jp
サイト名、アドレス:http://www5a.biglobe.ne.jp/~yosenabe/index.htm


(タイトル)『雪の中の三人男』

(著者名)エーリヒ・ケストナー

(出版社)東京創元社  

コメント:ほのぼのとしていて、安心して読みました。
     こういう本はいつまでも残してもらいたいと思う。

お名前:慎吾
メールアドレス:singo@mxb.mesh.ne.jp


(タイトル)『レキオス』

(著者名)池上永一

(出版社)文藝春秋  

コメント:
 今年は他にも「西条秀樹のおかげです」(森奈津子)、「麦の海に沈む果実」(恩田陸)が
印象に残りましたが、「レキオス」ほど私の心のわしづかみにしたものはありませんでした。
実家が沖縄のせいか、出てくる場所が知っているところばかり(当たり前か)。変な人々を
書かせると池上永一はキラキラと輝きます。次回作は3年後かなぁ?

お名前:オクマン
メールアドレス:okuman@za2.so-net.ne.jp


(タイトル)『私が殺した少女』

(著者名)原寮

(出版社)ハヤカワ文庫  

コメント:
私は本当はハードボイルドが苦手なのですが、この作品の圧倒的な面白さにくらくらしました。

お名前:隼
メールアドレス:hayabee@mac.com
サイト名、アドレス:ブラボー・ブタカツ
http://kyoto.cool.ne.jp/hayabi/


(タイトル)『永遠の森 博物館惑星』

(著者名)菅 浩江

(出版社)  早川書房

コメント:
「美しいと思う心はどこにあるんだろう」腰巻きにあるこの文と、表紙の絵でつかみはOK!
「美」をめぐる9編の物語。各物語は、色々な角度から「美」に対して光を当て、それぞれが独自の輝きを放っている。
そして、9編を通して物語りを眺めたとき、それぞれの輝きが一つの物語を写し出して来る。
それは、読んだ人それぞれの想いを映し出しているのでは無いでしょうか?
私は、ラスト近くで主人公の妻が呟く、「この幸せな気分も一緒に覚えてね」
と言う言葉。この言葉によって、私なりの物語をつむぎ出しました。
あなたは、どんな物語を見付けますか?

お名前:山崎 晃
メールアドレス:r-man@din.or.jp


(タイトル)『レキオス』

(著者名)池上永一

(出版社)文藝春秋

コメント:
このノリの凄さに欠点もふっとびます。

お名前:青木みや
メールアドレス:live@sam.hi-ho.ne.jp
サイト名、アドレス:Life and Diet
http://member.nifty.ne.jp/live/


(タイトル) 『星虫』

(著者名) 岩本隆雄

(出版社) ソノラマ文庫 

コメント:今年はとりあえず目標の月10冊を達成できました。
思い返すとハインラインの『夏への扉』を初めて読んだのも今年だし、
あれもこれもと色々読んでいて31日ぎりぎりまで読んでから選んだのは結局『星虫』でした。
読後に「自分もやらなきゃ」って思わせてくれたっていうのが選んだ一番の理由ですね。
今後、何度でも読んでみようという本に出会えるということはそうないことですからね。
来年も良い本にいっぱい出会えますように・・・。

お名前: スー
メールアドレス: susuki@rouge.plala.or.jp


(タイトル)  『ターザンの復讐』

(著者名)エドガー ・ ライス ・ バロウズ

(出版社) 早川書房

コメント:
バロウズさんの、作品は、火星シリーズは、大好きでしたが、ターザンについては、
あんまりだったのです。どうしても、アメリカ映画のあのイメージが強すぎて・・
そして、ターザンの第一作目は、小学生のとき、子ども用の本を読んで、それには、
ジェーンとしあわせになる予感で、おわっていたので、私の心の中のターザンは、
それで、終っていました。

しかし、今、この年(40・・・ん歳ね。)になって、きちんと、バロウズさんの、ターザン
1巻目2巻目を読んで、ターザンというバロウズさんの、創り出した人間が、
どんなに、奥の深いキャラクターか、初めてわかりました。
特に、2巻目にあたる、この本では、自分の真実の愛を、居場所を求めて、彷徨する
ターザンが、描いてあって・・・・

ターザンをほかの方は、どう読まれるか私には、わからないけれど、それは、それは、
素敵な愛の物語だと思いました。
さらに、これは、今の年読んでよかったと・・・

若い頃、読んで、今みたいに感動できたか、どうか、私には、わかりません。
もちろん、若い頃には、それなりの感想があるかもしれないけれど・・・・

私は、今読んでよかった・・・そう思いました。

そして、今年、東京創元社からも、ターザンの帰還というタイトルで、
再刊されたことも、とても、とても、よかったです。
                       

お名前:おかぴー
メールアドレス:ZUM05374@nifty.ne.jp


★海外SFの部 
『ハイペリオン』
『ハイペリオンの没落』
『エンディミオン』
『エンディミオンの覚醒』 
ダン・シモンズ 早川書房 

『ハイペリオン』の文庫化を機会に、ちょっとはすに構えて読み始めたが…
読んでいる間も読んだあとも、現実世界とハイペリオン世界の区別がつかなくなる有様。
読み終わってしまうのがあまりにも惜しい、ほんとうに素晴らしい作品でした。
未読の人は、新世紀の最初に「読めっ!」

★海外幻想の部 『魔術師マーリンの夢』 ピーター・ディキンスン 原書房  

自分の別な時代における人生で必ずや知っていたと思われる物語たち。
深いところに根ざす感覚を呼び起こされる。

★海外児童文学の部 "Holes" Louis Sacher A Yearling Books 
(邦訳 『穴』 ルイス・サッカー 講談社)

一応「児童文学」に入れはしたが、その範疇に治まらない、これは思いがけぬめっけもの。
だまされたと思って手にとってご覧になることをお薦めする。

★国内の部 『風車祭(カジマヤー)』 池上永一 文藝春秋 

『バガージマヌパナス』『レキオス』のどちらかでも良かったのだが、彼の世界に
どっぷりひたる喜びを考えるとやはりこれが一番。六本足のプタの妖怪ギーギーにま
た会いたい。『レキオス』のろみひーも捨てがたいキャラクター。

★特別賞 『山尾悠子作品集成』国書刊行会

収録作のほとんどは幸いに昨年(1999年)中に読むことが出来たが、こうして美
しい書物の形をとってそれらが一つにまとまったことは特筆すべきことだ。山尾悠子
さんと関係者の皆さんに感謝です。

ニム♪♪♪
yomise@iblard.com
http://www.mars.dti.ne.jp/~gmotaku/index.htm


(タイトル)『女ともだち』 全6巻

(著者名)柴門ふみ

(出版社)双葉社 

コメント:10数年ぶりに読み返してあの頃はまだ希望があったなと感じた。
    
お名前:やまたか
メールアドレス:uokiyo3852@muc.biglobe.ne.jp


(タイトル)『アナン(上、下)』

(著者名)飯田譲治 梓河人共著

(出版社)角川書店

これが僕の今年のベスト1です。もう読んでるときは滂沱の涙でした。今も思い出すと涙腺が緩みます。
温かく、美しく、優しいお話です。これ以上は画面が霞んで書けません(T_T)

お名前:bo2ta


(タイトル)『戦後「翻訳」風雲録』

(著者名)宮田昇

(出版社)本の雑誌社

コメント:心踊る本、ではない。資料の労作、でもない。
しかしこれは、翻訳現場の最前線で闘ってきた
男による、鬼籍に入りたる戦友達へのレクイエムである。
哀悼の意を表す方法は、記録に書き留めることしかない。
その、赤裸々とも言える「神々」だった翻訳者の
人間臭いエピソードは、同時代を歩んだ同志のみが
果し得る、誠意の表れに思えてならない。
早川的翻訳文化に育った者には、ぼくらを楽しませて
くれた生身の翻訳者を窺い知る必読の書であり、
まさに時を経ねば描き得なかった一冊である。
神々の残した多くの遺産、それは、文士達の夢の跡…。

お名前:ダイジマン
サイト名:銀河通信オンライン


(タイトル)『慟哭』

(著者名)貫井徳郎

(出版社)創元推理文庫

コメント:これか『星降り山荘の殺人』か散々迷いましたが、
やっぱり今年のベスト1は号泣モノのこちらに軍配が上がりました。
あまりに救いのない悲劇。最後の一文を思い出すだけで、胸が詰まります。
ミステリとしても、綿密に練られた仕掛けにあっと驚く超超超一級品!
これがデビュー作とは、おそるべし貫井徳郎!!
今年はこの作家に出会えたのが何よりの収穫でした。他のも読まなきゃ!

名前:安田ママ
サイト名:銀河通信オンライン

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