去年のSF大会、今年3月のださこんに続き、またしてもSFイベントに足をつっこんでしまいました(笑)。5月2日(日)、水道橋にある全逓会館において開催された「SFセミナー」がそれ。
私には、セミナーは本当にコアなSFもののいくところ、という感覚があり、少々敷居が高かったのですが、思いきって参加しました。 やはりメンバーもプログラムも濃かったので(笑)、SF若葉マークの私には難解な部分もありましたが、それなりに楽しめました。
会場は200人ほど入れる大きな会議室のような雰囲気で、前の壇上で、ゲストがトークをするという形式。会場の左右では、ファンジンを販売していました。
☆プログラム1「文庫SF出版あれやこれや」
出演者:込山博実氏(ハヤカワ文庫編集)、小浜徹也氏(東京創元社SF文庫担当)、村松剛氏(ハルキ文庫担当)。司会:高橋良平氏。
各出版社の紹介の後、絶版・復刊についての話題になりました。
まずハヤカワの弁。復刊というのは特になく、あくまで品切れという形にしておいて、5年くらいたって読者の要望が高まったら(売れそうなものに限り)重版をかけるという形式にしているとのこと。
創元の弁。今回の4月の復刊フェアはとても好評だったそうです。これからもいいものを掘り起こして復刊していきたいとのこと。コストを無視して復刊や重版のたびにカバーを変えたりして、なんとか売ろうとしてる前向きな姿勢に好感が持てました。
ハルキは昔角川が出していて今読めないものをフォローしたらどうだろうと考えて始めたら反響がよかったので、SFにシフトしたとのこと。昔からのファンも、新しい若いファンも獲得できたらしい。
印象的だったのは小浜氏の名言。「みんな、SFが冬だって言うけど、出版界そのものが冬!とくに小説は冬!さらに翻訳界は冬!!」出版社も危機感を抱いているというのがよく分かるお言葉でした。
これからは、ベスト10の帯を付けてみるとか、影響力の強い書評家のようなオピニオン・リーダーに期待したい、などの熱い抱負が語られました。
☆プログラム2「スペース・オペラ・ルネッサンス」
ゲスト:大宮信光氏(SF評論家)、森岡浩之氏(『星界の紋章』の著者)。司会:堺三保氏。
実は私『星界の紋章』を読んでおりませんので、あまり理解できませんでしたが、おそらく『星界』ファンには垂涎の一幕だったことでしょう。スペース・オペラの中の帝国主義と民主主義、スペース・オペラによって宇宙への憧れをかき立てたい、などのトークに花が咲きました。
☆プログラム3「『雪風』また未知なる領域へ」
ゲスト:神林長平氏(SFファンには神様的存在のSF作家。新刊『グッドラック 戦闘妖精・雪風』をひっさげて登場!)聞き手:牧眞司氏。
実は私は、これの前作『戦闘妖精・雪風』も未読状態。が、そんな参加者でもじゅうぶん楽しめる内容のトークでした。神林氏には初めてお目にかかりましたが、言葉をゆっくり選びながらの穏やかな話し方がとても素敵でした。
まずは牧氏による前作と新作のあらすじ紹介と、15年後の今になって続編を書くことになったいきさつの説明。「ずっと前から自分の中にあったラストシーンに向かって書いた」とのこと。
新作まで15年というブランクがあったのだが、現実のテクノロジーの変化はあまり意識しなかったそう。「前作でメカ的趣味は書き尽くした。現代の戦闘機は姑息!カッコ悪い!」という神林氏の答えに場内爆笑。
「いい機械を見た時、それを作った人間、作り手に対する畏怖を感じる。別に機械を擬人化しているわけではなく、あくまで機械は人間が作ったものという意識がある。」と、彼独特の機械への愛情を披露。
最近は京極夏彦にハマっておられるとのこと。あの分厚さを、「こんなに沢山読めると思うと嬉しくて」と語るところがいかにも本好きらしくてよかったです。
あとは敵である「ジャム」の正体についてなど。「この本のテーマは全く未知の相手とのコミュニケーションは可能か?≠ネので、正体がわかっては意味がない。でも人間には未知のものを解釈するという力があり、それを書きたかった」と語っておられました。
最後に出版予定をいくつか発表。書下ろし長編や『敵は海賊』続編など、これからもバリバリSFを書かれるようで、実に楽しみ!
お話のあとは新作のサイン会。私もしっかりサインをいただきました。ありがとうございました。
☆プログラム4「篠田節子インタビュウ」
おっとりした上品な方、と思いきや、話していくうち、実は意外な素顔が判明。聞き手:山岸真氏。
篠田氏、黒板を持ち出して会場にいきなりクイズを出題。「10年前のアスファルトの下に、3ヶ月前の死体が発見されました。なぜだと思いますか?」と、突然彼女、「大森!出て来い!答えろ!」と暴言。登場した大森望氏の「えーこれはですね、地球にはマントル対流というものがありましてー」という解答に、会場爆笑の渦!が、篠田氏の答えは「地層の逆転があった」または「地底王国というものがあった」で、ミステリものから大顰蹙をかったとか。
「ミステリは収束型の思考である。緻密に組み立てられた、合理的に納得のいく考え方をする。が、SFは拡張型の思考である。常識をはずれた発想がどんどん出てきて妄想が止まらなくなる。で、私はどうも後者の発想である。」と解説。彼女はSF思考型作家のよう。
現在小説家に至るまでを述べた後、「やっぱり読者がいてこそ小説!読者の為に、読者をゆさぶりながら自分の表現したいものを書いていきたい」とおっしゃってました。
★ ★ ★ ★ ★
お次は夜の部。会場は旅館ふたき。
オープニングは夜企画の紹介と有名人紹介。本でお名前はかねがね、みたいな方があっちにもこっちにもごろごろいて、あまりの濃さにビビりました(笑)。
夜企画は4コマあり、しかも同じ時間に4つの企画が同時進行。とりあえず参加したものだけ、ご紹介します。
☆「スター・ウォーズの部屋」
渡辺麻紀さん、大森望氏、添野知生氏、柳下毅一郎氏などが、夏の新作「エピソード1」の予告編を見せてくれて、いろいろと熱いファン話で盛り上がっておりました。公開が待ち遠しいです!
☆「老いたる霊長類のためのフェミニズムSF」
牧眞司氏と柏崎玲央奈氏が、フェミニズムについて、ティプトリーなどを例に出してしっとりじっくりと語っておりました。私は基礎知識がないので静かに拝聴。
☆「真夏の前のホラーの部屋」
出演は倉阪鬼一郎氏、東雅夫氏、大森望氏ほか。「今、ホラーとSFの領土問題をはっきりさせよう」という趣旨で進行。「『パラサイト・イヴ』は果たしてSFかホラーか?『黒い家』や『リング』は?」などの議論が白熱しました。
面白かったのは、ホラーの人が読むと、その本のここがホラーだ、SFの人が読むとここがSFだ、というのがちゃんとわかる、ということ(笑)。同じものを読んでもその人がSF読みかホラー読みかで皆意見が全然違って、興味深かったです。
ホラーが怪奇小説と恐怖小説と幻想小説などなど、あれほど細分化されてるとは知りませんでした。しかも、ホラー読みの方にはきちんとすべて分類できるそうで驚き。
☆「ネットワークのSF者たち」
司会は森太郎氏と田中香織嬢。ネットとSFに関する議題がとりとめなく出ていました。
まず検索エンジンを使って、SFとミステリを検索してみた結果を図面で発表。実は読者の多いミステリよりSFページの方がずっと多かった、などが浮き彫りに。
また、ネットの書評を見て本を買ったことがあるか、買うときの参考にするか否か、他の人の書評が気になるか、などの質問に挙手で解答。だいたい皆、人の書評はよく読んで参考にしてるようでした。
「ネットで十分コミュニケーションできるのに、どうしてオフ会をやるのか?」という問いに、ださこんなどのことを絡めていろいろ意見が出ました。
星雲賞で、野尻抱介氏の『沈黙のフライバイ』組織票はいいのか否か?という議論も出ました。これは何かと難しい問題のようです。
東京創元社のホームページについての質問も。ネットは、今後こういった出版社と読者の大きな架け橋になってゆくことでしょう。
☆「古本オークション」
実にディープなオークションでした。「そんな本がこの世にあったのか!」という超貴重本がいっぱい!見てるだけで勉強に(?)なりました。口上も面白かったです。
オークションが終った時点でなんと朝4時!部屋に戻って爆睡。
8時半、エンディング。スタッフの挨拶で閉幕。皆様、本当にお疲れ様でした。今回は大盛況だったそうで何よりでした。また来年を楽しみにしております!
安:今回はコミックにチャレンジしてみたんだけど、とにかくあの主人公の性格設定がすごい!今までの主人公っていい子ちゃんが多かったじゃない?それが実は作ってただけだよってのは強烈だった。
I:私とAさんの感想は「青春だねえ」の一言だったね(笑)。
E:私は単なる青春ものだとは思ってないな。恋愛はからんでるけど。
I:でもいわゆる学園ものじゃない?
E:これは壊れた家庭や見栄っ張りだのっていうコンプレックスをテーマにしたマンガじゃないかと。普通恋愛ものって、いろいろあって仲良くなって、その後はほとんど語られなかったけど、これはその後の心の動きを追ってる。
M:いわゆるマーガレットみたいな少女マンガとは違うよね。マーガレット系って、暗くてうじうじしたの多かったよね。横恋慕してた彼女がケガして責任取るとか、親の都合で転校とか(笑)。
E:仲良くなった後の、彼がどうしたとかじゃなく、それからの自分っていうものに視点が向いてる。だからバリバリの恋愛ものとは思ってないな。その辺が逆に今のマンガだっていう気がする。
H:つばさちゃんが出てきた時、ああここで三角関係になるかと思ってたら、あっさり終ったね。普通ならあそこでドロドロになるのが少女マンガの王道でしょ(笑)。
E:そういうのをことごとく外れてるよね。絶対にこう行くだろうなって方向に行かない。ある意味、シビアというかクールだよね。
I:それはわかるんだけど、でもやっぱり若かったら楽しめたかもしれないな。もうスレちゃってる年代だから(笑)。
安:もう自分の実年齢と離れ過ぎちゃってるからね。確かに「LaLA」でも私の年代の鑑賞に耐えうるマンガは減っていってるね。でも、「カレカノ」は大丈夫だよ、私。何といっても話の作りのうまさ、キャラのうまさだよね。これ、たまたま連載第1回を読んでハマったんだけど、そうでなかったらこの絵柄は読まなかったと思う。例えばカレンダーを買いたいマンガ家じゃないんだよね(笑)。
M:1、2回読んだらハマリますよね。「おっもしれー」って。
E:何気にすごい大胆なコマ割りのシーンとかありますよね。ページ開くと真っ黒で、独白一言だけとか。モノローグがうまいと思う、この人。
M:デートのシーンとかも面白かったよね。同じ事してるんだけど、雪野から見た有馬と、有馬から見た雪野が対照的で。そういや、雪野がいじめられた時、自分の頭を缶でガーンて打って、「よっしゃー!反省終わり!」ってスカッとしてたのに比べて、有馬はいつまでもうじうじしてるのが、現代的なカップルって感じがする。
安:男がいじいじしてて、女がサバサバしてるっていうカタチね。
H:あそこで、雪野が猫かぶってて悪かったなって反省するのはエライと思った。あれだけ本気になって猫かぶってたら誇れるよ。朝5時に起きてマラソンだよ(笑)。
E:ギャグの混ぜ方とかもうまいよね。コンプレックスがテーマなのに、暗くならない。
I:今、あまりどっぷり暗くマジメにしたら読者がついてこれないんじゃない?今の若い子って、いいとこばかり見て、イヤなところは全部なかったことにしちゃうから。
M:そういや、ひと昔前のスポ根みたいなマンガ、今ないですよね。ひたすら主人公が苦しんで成功する、みたいなの。
E:いじめられても、缶でガーンだし(笑)。マンガも時代と無縁ではいられないと。
M:小学館系でエロが流行ってんのも時代?(笑)
E:それは雑誌のカラーじゃない?「LaLa」はそんなことないよ。男同士ってのは忍び寄ってきたけどね(笑)。
安:同人誌でコソコソやってたのが、どんどん商業誌に入ってきてる。
I:今までは暗黙の規制みたいなのがあったけどね。今や男性誌より、女性誌の方が規制がなくてコワイ。
M:有馬が今暗くなってるけど、どんなになっても雪野には受け止めて欲しいですね。
E:彼は今、雪野ひとりに寄りかかってるから、危ういというか、脆いですよね。
H:有馬が立ち直ったら、もう描くことないんじゃない?
E:他の登場人物の「彼氏彼女の事情」が描けるよ。今もそうじゃん。
M:それまで有馬、暗いままなの?そんなのやだ!(笑)その前に、ぜひ浅葉くんディナーショーをやっていただかないと(笑)。
昨年の9月に引き続き、再びアヤシい集まりにお呼ばれして行ってまいりました。その名は、「ださこん」。つまりはSF系ネットものの集いに、「銀河通信オンライン」のWebマスターとして、ダイジマンと参加いたしました。
期日は3月13、14日の土日。東京の某旅館に泊まりこみでの合宿形式。私は当日仕事を終えてから、速攻で参加。夜7時からの開催でした。
広い畳の部屋に、縦に2列長い机が並び、ほぼ30人近くくらいの方がいらして、u-ki総統の挨拶により、スタート。ざっと自己紹介。ほとんどの方がホームページを持っていらっしゃる方で、あのページをこの人が作ってるんだ!と興味しんしんで周りを見まわしておりました。ここで、なんと電報が来てるとのことで、スタッフの森太郎さんが読んで下さいました。「ヤマトの諸君」で始まるこの電報からして、アヤシさ大爆発。のっけから、会場は大爆笑の渦に。
お次は本日のメインイベント、山之口洋氏&涼元悠一氏対談。お二人は、第10回ファンタジーノベル賞大賞&優秀賞受賞作家でいらっしゃいます。前に出したテーブルに並んでいただき、浅暮三文氏(第8回メフィスト賞受賞作家)の司会でゲストの挨拶。
ネタバレ覚悟ということで、『オルガニスト』コーナーからスタート。『オルガニスト』の作者、山之口氏を涼元氏と浅暮氏が質問攻めにするという趣向でした。身振り手振りで、音楽と自分とのかかわりなどを話してくださいました。
お次は『青猫の街』コーナー。今度は涼元氏が質問攻めに。あの話の中の暗号についての解説をして下さいましたが、いやはや脳のメモリの足らない私にはとてもついていけませんでした。次回作についてなど、楽しいお話を聞かせていただきました。著者自らが、自作について語るのをナマで聞けるというのは感動ものでありました。
ここで乾杯の後、雑談。スタッフによる、Webクイズなどがありました。
やがて夜も更け、会場はふたつに分かれて、古本オークション&SFカルタ大会に突入。私はカルタは全くわからないので、ダイジマンとオークションに参加しました。
それぞれ、本を持ちこんだ方が値段を決めて、口上を述べるのですが、この木戸英判さんの口上はお見事でした!もう、あれはひとつの芸ですね。u-kiさんのむちゃくちゃなコメントには、場内爆笑。とにかく驚いたのは、後から後から出てくるSF本をほとんどの方がご存知だったこと。皆、すごく詳しくて、さすがマニア!と初心者の私は敬服。皆さんの解説を聞いてるだけで、大変勉強になりました。私も、いろいろ面白そうな本をゲットできて、ほくほく。
先日つぶれた、三一書房の山尾悠子の本の競り合いは、すごいものがありました。ゲストの作家三名が、熾烈な戦いを繰り広げ、見ものでした。ダイジマンも、SFマガジンを山のように持ってきてガンガン売りさばいておりました。1冊50円くらいだったので、かなり格安だったのでは。
また雑談になり、もうこのあたりは夜明けの時刻。ここで、かつき@ファンタジア領さんのアニソンクイズスタート。なんと出題100曲!よくそんだけ集めたよなあ、とダイジマンと感心することしきり。また、解答者もツワモノ!なんで最初の1音だけでわかるのよ、あなた方!もう、3人ほどの方の独壇場。外野は、「おお〜っ」と声をあげることしか出来ませんでした。
気がつけば、外は明るくなってて、すでに朝。あまりの楽しさに、つい徹夜してしまいました。
9時にエンディング。注目のださこん賞(SF系の優れたウェブサイトに送られる賞)発表。読んで面白いサイト3位「大森望のSFページ」、2位「倉田わたるのミクロコスモス」、1位「冬樹蛉の〜」でした。役に立つページは、3位森山氏の「独断と偏見の〜」、2位「倉田わたるの〜」、1位「大森望〜」でした。賞品は、超昔のでっかいフロッピー(笑)。また、メダルを最も多くもらった記念すべき「第1回ださこん大将」も、大森さんでした。
いろんな方々と直接お話できて、ホントに楽しい集いでした。初めてお目にかかる方もいらして、また、世界がひとつ広がったな、と思いました(SFセミナーも誘われちゃったし)。次回の「ださこん2」が今から楽しみです。
☆未読の方、ネタバレ注意!
安:いかがでした、皆さん?
I:某保険金詐欺事件がどうしても頭から離れなくて(笑)。
安:あれ、思いっきりネタバレだよねえ(笑)。
M:あれ知らなかったら「あの奥さんだったのね!」って驚きがあって、もっと楽しめたんだけど。
安:皆さん、どの辺りが一番怖かったですか?
E:ラストで、主人公は苗字でしか書いてないのに、犯人の方はずっと「菰田幸子」ってフルネームで書いてあるのが怖かった。あの名前が出てくるたび、「あ〜、こわい!」って(笑)。
K:確かにあのシーンは怖かったけど、けっこう短かったから、私はそんなには。それより、犯人がなぜか鍵持ってて、主人公の部屋に勝手に入ってきちゃうとことか、怖かった。
M:私は、彼女の研究室で主人公が死体を見せられたところ。主人公が吐いちゃって、詳しく描写してないだけにかえって「えっ、どんな死体なの?」っていろいろ想像しちゃって、気になって(笑)。
K:自分で指噛み切っちゃったりとか、ああいうのが心理的に怖かった。
安:なんか気持ち悪いっていうか、生理的にやな感じなのね。
E:そうそう、虫の描写とかも嫌だった。
安:私はあの黒い家の匂いのシーンが印象的だったのと、やっぱラストだな。何かが追っかけてくるってのは、私よく夢に見たりするんで、すごく嫌なの。「ああ、あの雰囲気そのまんまだよ!」って。あのシーンがあるとは思わなかったから、びっくりした。解決したと思ってたのに、「うわ〜、またか」みたいな。
M:妖怪菰田幸子(笑)。始め、行動とか感情が抑え気味だったのが、後半すごく執念深くて嫌。
K:あの保険の取立てのコワイ人が殺されるところは怖かったな。生きてる状態で解体されちゃったところ。殺し方が残虐で。
安:あんなの見せられたら、発狂するよね(笑)。
安:架空じゃなくて、生身の人間のホラーっていうのが、ワタクシ的には新鮮でしたね。
K:『リング』とかは正統なホラーだよね。これこそホラーって感じ。これは、怪奇現象じゃないホラー。
E:『黒い家』は、もろ現実世界のホラーですよね。異世界じゃなくて。私は日頃、ホラーって読まないので、余計に怖かった。読み終わっても、「ああ、無事に解決して良かった」じゃないからそこがまた。またやっかいな客が来たところで終わってるじゃないですか。悪夢再び、みたいな。
I:20年前には書かれなかった話だろうね。昔はもっと素直な客が多かったんだろうけど、今はなんか歪んじゃってるのが多いから。
M:この主人公、たった一言で目つけられちゃうなんて、保険会社って嫌な商売って思った(笑)。
K:細部がリアルなホラーだよね。
安:そうか、作者は保険会社に勤務してたのね。
E:そうでなきゃ、こんなに詳しく書けないよね。
安:やっぱ働いてて、嫌な目にあったのかな。
K:とりあえず、保険会社には入りたくないな、と(笑)。
K:気になったのはあれだけ人格が破壊した犯人が、そこまで金に執着するかなってこと。だって家はボロいわけでしょ。贅沢三昧するでなし。
安:貯めてるのが好きな人っているじゃん。一種の貯金マニアだよ。
I:いるよね、貧乏暮ししてて、亡くなってみたら貯金残高がすごくあった人とか。
E:主人公も暗いよね。お兄さんのトラウマのせいもあるだろうけど。
M:よく、いい彼女がついたよね(笑)。
E:あの彼女の存在だけがこの話の唯一の救いだよね。こんなひどい目にあっても、「サイコパスなんかいない」なんて。
E:私は文章があまり肌に合わなかったな。あまり主人公と同化して読めないというか。いろんなエピソードが出て来るんだけど、とってつけたような感じがして。
安:ネタを生かしきれてないという感じ?
一同:そうそう。
K:読ませるけど、詰めが甘いよね。細かいところが曖昧なまま終わってて、まだなんか歯の奥にはさまってる感じ。
安:雰囲気作りはうまいよね。あの、いや〜な感じ。まだ、第二作目なんだよね、これ。まあ、これから頑張って下さいということで(笑)。
今回は、紀行文のお勧め本をいくつかピックアップみました。読んだら、その国に行ってみたくなること請け合いの本ばかりですよ!
☆『マザーグースころんだ』ひらいたかこ・磯田和一/東京創元社
ひらいさんのイラスト満載の、スケッチ紀行。絵が描ける人っていいなあ、こういう本が作れて!絵本作家なので、街を歩いてても目のつけどころがどこか違う。例えば、看板やガーゴイルなど、うっかり見過ごしてしまうところを、ちゃんと描いてくれてる。
しかも、この本の素晴らしいのは、フツーの観光客が行かないような街を紹介してくれているところ!やはり、イギリスは(に限らずかな)田舎町がいいっす!ガイドブックとしても使える本。同じシリーズで、『グリムありますか』『アンデルセンください』もお勧め。
☆「モロッコへ行こう ダヤンのスケッチ紀行」池田あきこ/中公文庫
これはダヤンという猫(著者の絵本のキャラクター)が、著者の代わりにイラストに登場しているので、ダヤンのファンにもお勧め。こちらは、イラストと文章が交互に描かれている。
モロッコなんてどんな国だか全然知らないのだが、これを読むと市場の喧騒までが聞こえるよう。地中海の迷宮都市、サハラ砂漠の夜明け、どれも旅心をかきたてる。街で会った人々の表情も、味があっていい感じ。『英国とアイルランドの田舎へ行こう』も出てます(こちらはMPC出版)。
☆『「イギリス病」のすすめ』田中芳樹・土屋守/社会思想社
全篇、ふたりの対談でイギリスの話が繰り広げられる。この方達なので、内容が単なる紀行文と一風変わっててユニーク。イギリスの歴史や文化にまで言及している。といっても堅苦しくはなく、楽しく読めてイギリスのことがいつのまにか良く分かってしまう本。
☆『マリカのソファー/バリ夢日記』吉本ばなな/幻冬舎
「マリカ〜」の方は小説で、「バリ〜」が紀行エッセイなのだが、どちらを読んでもバリに行きたくてたまらなくなります!バリのことを書きたくて、無理やり小説化したのではと思うほど。吉本ばななの描写にかかったら、バリはもう天国のよう!とにかく、気持ちよさそう。でも、どこかあやしげな所があって、それがまた良い。
☆『パタゴニア』椎名誠/集英社文庫
シーナさんの紀行エッセイはどれもお勧めなのだが(あやしい探検隊シリーズはホントに爆笑もの!)、これはわりと真面目路線。パタゴニアなんてどこそれ?という感じだが、なんとこれが南米大陸の最南端なのだ。シーナさんお得意の辺境もの。ここ、風と氷河の国なんですね。おそらく、自分は一生行くことはないであろうワイルドな土地を体感できる。
が、実はこのエッセイはもうひとつ、隠しネタがある。全篇、静かで深い妻への思いで貫かれてるのだ。ラストのタンポポのシーンがじいんと胸を打つ。
☆『ハイジ紀行』新井満・新井紀子/白泉社
雑誌「MOE」に掲載されたエッセイの単行本化。新井夫婦が旅した、ハイジの足跡紀行。奥様が、ハイジのファンらしい。マイエンフェルトには、あのアニメのまんまのハイジの家があり、私の長年の憧れである。スイスって、本当に写真の通りの美しい国です。
☆『雨天炎天』村上春樹・松村映三/新潮社
箱入りの二冊セットで、ギリシャ編とトルコ編になっている。
ギリシャ編は、エーゲ海からアトス山までを修道院に泊まりつつ歩く、質素で厳しい旅。トルコ編は、4輪駆動の車で21日間でトルコを一周するハードな旅である。
淡々とした村上春樹の文章と、村松映三のくっきりとしたモノクロの写真のコンビが絶妙。どちらも表現が饒舌でないところがいい。装丁も素敵。ぜひハードカバーで!
日頃銀河通信をご愛読して頂いている皆様にアンケートを募り、今年の私的ベスト1を選んで頂いた。ご協力して下さった方々、ありがとうございました。さて、あの人の選ぶ第1位は果たして?そして、あなたは?
☆『瑠璃の方舟』夢枕 漠/文藝春秋
いやー、本を読んでてぼろぼろ泣けたのは初めてでしょう。小説が無性に書きたくなって、そして読みたくなりました。(秋山粒志)
☆『ブギーポップは笑わない』上遠野浩平/電撃文庫
これですね。きまり。凝った構成と簡潔だけど妙に心に残る文章、キャラクター。ぴったり嵌まってで相乗効果で作品の魅力を高めるイラストも含め、ほんとこの作品、この作家に「会えて良かった」と思います。その後の続巻もコンスタントに出してそのクオリティも相変わらずなようですし。今後の作品も楽しみです。来年はブギーポップ以外の作品も読んでみたいな。(kaz yamanada)
☆『パヴァーヌ』キース・ロバーツ/サンリオSF文庫・絶版
私は読んだ直後にはあるレベル以上肌にあったものは「かなりイイ」評価がついてしまうのですが、パヴァーヌは読んでからかなり経つのに読後の感触がすぐ思い出せるので他のあまたの候補を駆逐して一位にしました。
最初に思いついたものそのままはイヤだ!というひねくれた理由からなんとか転覆を図ったんですがどの作品も力及ばずでした。
作品の持つ「熱」について云うならば、「パヴァーヌ」はなつかしの「白金カイロ」のような温かさの本だと思います。燃えさかる紙みたいな作品は他にいっぱいありましたが、白金カイロのように厳しい寒さの中で辛抱強く一定の熱を放ち続ける、この作品のそんなところに惹かれたような気がします。
白金カイロに触れたのは中学生の時。冬山に天体観測に行った時、僕にではなく先生のカメラが曇らない様に使われたものでした。現代は使い捨てカイロのようなもので埋め尽くされているけれど、もし白金カイロのように何度も大切に使えるものが主流になるようなもう一つ別の世界があったなら、もう少し世の中の人の心が温かくなったのではないか、と思ったりするのです。(u-ki)
☆『タイム・シップ』スティーヴン・バクスター/ハヤカワ文庫
H・G・ウエルズの古典的名作、「タイム・マシン」の公式続編。量子力学をはじめとする最新の科学を盛り込んだハードSFとして、果てなき人類の進化を扱う英SFの末裔として、さまざまな歴史の中を行ったり来たりする冒険小説・歴史改変小説として、そしてもちろん、「タイム・マシン」の続編として……あらゆる楽しみ方ができる、98年のイチ押しSFです。できれば、ウエルズの作品を読んでからご賞味ください。
(かつきよしひろ)
☆『エンジン・サマー』ジョン・クロウリー/福武書店
私のベスト1ならもちろん『猿人様』でんがな。チョーマイナー。『パヴァーヌ』も同点です。新刊の部は、ええと、今読んでる『ゾッド・ワロップ』かなあ?(ニム)
☆『タウ・ゼロ』ポール・アンダースン/創元SF文庫
最近はあのダイジマンのおかげで、SF読者率が高くなってしまった。私としたことが、ミステリにごぶさたしている。が、この話は実に良かった。名作、銘作である。宇宙を飛び続けなければならなくなった男女の運命―飛び続けている間、船の外の時間は船内時間よりはるかに速く過ぎてしまい、乗組員は浦島太郎になってしまう。一種の不老不死状態の彼らの行動や精神状態を、淡々と語っていく。「お涙頂戴」的な文章でないのが実に良いと思う。私の好きなジェイムズ・ブリッシュもほめた作品です。(I澤・36歳・女)
☆『ささやき貝の秘密』ロフティング/岩波少年文庫
ドリトル先生シリーズで有名な作家ではあるが、中世の物語も書いていたのです。ささやき貝って何?それはね、読んだ人にしかわからないのです。たまにはこんなお伽話いいじゃないですか。でも、もしささやき貝が自分の身近に存在するとしたら…考え方一つでファンタジーって違う物語になるのですよね。(k木・36歳・女)
☆『マークスの山』高村薫/早川書房
今年出た本ではありませんが、やっぱり面白かった。これから、このミス1位の『レディ・ジョーカー』に挑戦しようと思っています。(O竹・33歳・女)
☆『段ボールハウスで見る夢』中村智志/草思社
「人間は人間で、自分を作らないといけない」自ら作った自由で残酷な日常は、読む人に小さな感動を与える。決して近づくことのできない世界にふれて、読み終わった後、妙に気持ちがざわつきます。人が生きるというのは、どういうことなのでしょう?(O竹・37歳・男)
☆『ノストラダムスの大予言 最終解答編』五島勉/祥伝社
文句があったら8月まで待て!!ウェルカム、恐怖の大王とやら!!(H野・18歳(ウソだ!編集長注)・女)
☆『屍鬼』小野不由美/新潮社
本そのものも重かったけど、テーマも重かった。吸血鬼vs人という古典的な内容ながらも、一体何が善で何が悪なのか、と考えさせられる哲学書のようだった。(O谷・24歳・女)
☆「時尼に関する覚え書」梶尾真治/ハヤカワ文庫『SFマガジンセレクション1990』収録
エマノン嬢のお勧めとして、氏の作品を何作か読んでみたが、ことごとく「やられた」と叫びたくなるくらいに、見事な話だった。現実的視野で見れば、いくつかの矛盾もあるのだが、主役達と同調すると、それすらも気にならなくなる。というより、気付かせない文の流れに脱帽でした。なんだか、悔しいっ。悔しいけど、気に入っている。そんな自分に、苦笑いだったりする。(S澤・27歳・女)
☆『遥かなる星の流れに デルフィニア戦記18巻」茅田砂胡 中公C・NOVELS
大好きなシリーズでしたが、とうとう最終巻に…数々の名シーン、名セリフ。愛すべきキャラ達。もう読めなくなるのは残念です。18冊があっという間でした。次回作に期待します。(エマノン嬢・25歳・女)
☆『御馳走帳』内田百聞/中公文庫
偶然、図書館で借りましたが、肌になじむ文体で心地よく読みました。なぜ今、百聞か、という気もしますが、選ぶとしたら、この本になると思ったので。(S藤・33歳・女)
☆「宇宙の男たち」星新一/新潮文庫『宇宙のあいさつ』収録
最後までオチがないブラックテイストの星作品には珍しい、ストレートな宇宙小説。思わず胸を熱くする、星新一版「万華鏡」である。ただし、これがベストだとは思っていない。読めば読むほど傑作に会えるのが星新一のいいところ。(ダイジマン・男)
☆『テロリストのパラソル』藤原伊織/講談社文庫
結局、今年、これを越える本には出会わずに終わってしまった。この作家に出会えたのは、今年の何よりの収穫だった。人をひきこむストーリー展開、文章のうまさ。極上のエンターテイメントとは、こういうものさっ!ラストも泣かせるぜ。(安田ママ・32歳・女)