[演劇]劇団☆新感線「野獣郎見参〜Beast is RED」(2001.03.12,於 : 青山劇場)
感じたのは、前半が弱かったなぁ、と。
ストーリーがすっきりスマートになりすぎてて、人間関係の描き方が希薄に感じました。
例えば、野獣郎と美泥の関係、野獣郎と蛮獄の関係、蛮獄と美泥の関係、野獣郎と甚五の関係、美泥と荊鬼・葛鬼の関係、甚五と北の宮の眠り姫の関係。
それと役柄個人、蛮獄や甚五の描き方も弱いなぁ、って。
蛮獄が最初っからあんまり熱く無さすぎてる・・・ちょっと「悪」っていうんかなぁ、世をすねてるっていうんかなぁ、が見え隠れしてるかのうような雰囲気を感じました。
甚五は・・・出番が少なすぎ、でしょう。彼がなぜ眠り姫を助けたいのか、の描き方が薄すぎ。また、粟根さん演じる錐蔵って役があることで、結果的に散漫になったような感じを受けました。
野獣郎=堤さん、美泥=高橋由美子ちゃん、蛮獄=古田新太さん、甚五=河野まさとさん、眠り姫=大沢さやかさん、荊鬼=前田美波里さん、荊鬼=村木よし子さんが悪い、ってのは無いんですよ。
ストーリー的にというか、演出的にというか、その当たりの説明が弱い・・・
前半のそういったエピソードというか、前振り、下敷きがあってこそ、後半の見せ場がもっと生きてくると思うんです。
個人的に野獣郎の中でのおいらの好きな「見所」って、蛮獄の三変化、眠り姫が道満王を指さすシーン、荊鬼の最期、そしてラストの野獣郎vs蛮獄の殺陣の中での美泥の台詞「殺さないで!」「なぜ殺した!」なんですよ。
で、さすがにね、一幕終わったときに感じた「なんかすっきりしすぎてるなぁ。」という感想とちがって二幕は集中して観ていました。
でもね、前半のエピソードがもっと描かれると、後半はもっと「グッ」と来るもんになるんやけどなぁ。
その当たりが、「面白かった」、けど「凄く面白かった」では無い理由です。
後、役者さん的には西門 & 風鏡役の松井誠さんが、おいら的には「?」でした。
初めて観るかたなので、ああいうお芝居をされる方なのかどうか分かりませんけど、「松井誠さんの西門、風鏡」ってのを観たかった気がします。
「初演に比べて」ってのはあんまり言いたくない、「初演は初演」「再演は再演」なんですけど、どうしても「西門、風鏡」が初演の「粟根さん」とダブってしまうんです。
他の野獣郎や美泥にはそれを感じなかったのに、西門、風鏡だけそれを感じてしまいました。
ひょっとしたら、初演を非常に熱心に研究された結果かもしれません、でもやっぱり「松井誠」さんを観たかったです。
今後変わっていけばいいのになぁ、と期待したいところです。
とまぁ、ここまではちょっと比較的辛口ですけど、これはね、せやかってそれだけ期待してる、ってことで。
でも、辛口だけやないですよ。
音楽、役者さんには、おおむね楽しませてもらえたし、お芝居としても、二幕以降はやっぱりよかったです。
照明は、おいらの中での「野獣郎」のイメージカラーって「赤 〜 BEAST IS RED」やったのに「青」やったのが、違和感受けましたね。
いや、それでも綺麗な照明でした。
ステージは奥行きが凄くあって、「阿修羅城の花道疾走」とは違うけど舞台の奥から手前への疾走、上手から下手、下手から上手への疾走が凄くよかった。
それと今回は「雨」のシーンを本水使っての演出があるんですけど、これもいい・・・はずです、初日はちょっとキッカケとかがずれてたのが残念でしたけど。
音楽ではオープニングのよし子さんがほんっとにいい、すばらしいです。
いきなりオープニングではいきなりド派手な殺陣・ダンスと歌・音楽は、いつもと同じ感想、「やっぱり凄くかっこよかった〜」!
で、オープニングは、予想してた2パターンのうちの一つが当たりました。
美泥と野獣郎の関係を語る上で、組み込んで欲しかったエピソードですからね。
(実はもう一つは、いつも通りのかっこよくド派手に始まるオープニングにはならないかもしれんけど、甚五と北の宮の眠り姫のエピソードを予想してました・・・オープニングどころか、本編でも無かったのが残念!)
あと客演の高橋由美子ちゃん、前田美波里さんもうまい!
もう一つ、個人的には「レッツゴー ミドロスキー5」がツボでした(^o^)
ただ今回の音楽、全般的に・・・もちろん「凄いなあ、毎回」って思いますし、実際今回も「凄いなぁ」と思ったんですけど、「殺陣」に食われてしまった、って印象もあります。
これはそれだけ「殺陣が凄かった」ってことで・・・殺陣はもう、これはほんと「すっごいなぁ」です。
ところでこれまた「初演」って話をしてしまうんですけど、今の劇団☆新感線の「殺陣」をささえている「アクションクラブ」田尻さん、川原さん、前田さんは、この「野獣郎」の初演からの参加なんですね。
せやから(これはおいらの思いこみかもしれませんが)座長いのうえひでのりさんの「野獣郎見参」に対する「殺陣」の思い入れって結構ある、と思うんですよ。
初演の殺陣、それはそれで凄くかっこよかったんですけど、ひょっとしたら「初めて」という部分で手探りなところもあったんかなぁ、って。
それを今回の再演で、「REVENGE」やないけど、ほんとものすごい数の「殺陣」を観せたかったんやろなぁ、って。
せやから、上に書いた「辛口」のなかでも書いた「ストーリーがすっきりスマート」になってるはずやのに初演より時間が長かった、それは一つには「歌が増えた」ってのもあるけど、「殺陣が増えた」からでしょう。
で、殺陣に関してはやっぱり主役で一番「殺陣数」の多い堤さん・・・かっこいいですねえ。
「阿修羅城の瞳」の染五郎さんとはまた違ったかっこよさ、染五郎さんが「静」なら堤さんは「動」、っかな?
そして、さすが元JAC! の殺陣に加えて、剣を構えて不敵に「笑っている」あの表情!
その「不敵な笑顔」が「舞台を楽しんでいる笑顔」に観えました、おいらには。
一番かっこよかった「殺陣」は、その堤さんと蛮獄新太さんが二人して道満王に挑むシーン。
二大「スーパー舞台俳優」の競演! この瞬間はマジでゾクゾクしました。
仮面ライダー1号と2号の競演、あるいはマジンガーZとグレートマジンガーの競演さながら(?)、スーパースペシャル、ゴージャス & デェ〜ラックス!
堤さんと並んでもう一方の主役、客演の高橋由美子ちゃん。
彼女はあんまりTVとかでもおいらは視てないんですけど、それでも一昨年「スカット 一心多助」を視てたので、むちゃくちゃ期待はしてないまでも、そこそこの期待はしてました。
で、今回の舞台の由美子ちゃんはというと、まずまず良かったんではないでしょうか?
殺陣に関しては、まわりが(特に堤さん、新太さん)がうますぎなので、割を食ってますね。
あれだけできれば十分うまいと思うんですけど、「まだちょっと甘いな」って感じてしまうのは。
後、美泥の「気持ち」の部分はまだ若干弱いです。
でも、初日の由美子ちゃんを観た限りでは、彼女ならこれからどんどんうまくなっていくような気がしました。
はっきり言って期待もてそうです。
その他の客演の方で特に目が付いたのが、前田美波里さん。
立ち姿が凄く綺麗、歌も殺陣もいいし、凄く劇団☆新感線に合ってました。かっこいいです。
松井さんは上に書いたとおり、「松井誠」さんを観たいです。
手塚とおるさんは可もなく、不可もなく・・・ま、正直、他の客演さんが強すぎます。でもあの声は味がありますよね。
大沢さやかさんは・・・う〜ん、分からんですまだ、はい。
「一応」客演の村木仁さん、もう「客演」やないでしょ(^^;) 準劇団員ですね。今回もお腹がすいてたようです、「いがいが栗満太」
と、今回はこのへんで。劇団員の方々の感想と、どれだけすばらしくなってるか、の感想は3週後、大阪初演を観たあとでまた書きます。
[演劇]花組芝居「かぶき座の怪人」(2001.03.03,於 : シアタードラマシティ)