戸波の子守うた |
守のうるさいは 霜月極月(しもづきごくづき) 雪もちらちら 向こう風 雨の降る夜と日の暮れどきを 思いまするぞ母親を |
子守うたは ”ねんねよねんねよ” のように子供の語りかけるうたもあれば、守さん自身の境遇に 触れた歌もある。県下には優れた子守うたがたくさんあるが後者の傑作が『戸波の子守うた』であろう。土佐でも貧困 な家の子は地主や網元の家の子守奉公に出された。いくつになっても子守はつらいもの。この子守うたはむずかる子 を揺すりつつ、情けない思い、親や故郷への恋しさを切々と歌いあげている。幡多地方の子守うた』は美しい調べで全 国の有名な子守うたと比べて全く遜色がない。詞には美辞もなければ理屈もない。人間の本心に触れる強烈な表現がある。 「大根きざむように.....」の詞が残酷だとあげつらうのは子守うたの本筋から外れている。
『亀の子』『お亀の子』のように、亀という言葉は土佐の子守うたに再三使われている。赤ん坊を背負 った姿が亀に似ているからだろう。また、『馬馬子馬』など赤ん坊をあやしつつ歌うものも母親の肌のぬくもりを伝えて くれる。