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システマティックリスクとアンシステマティックリスク分散投資によりリスクは低減していくのですが、私の株式投資のバイブルの1冊である「ウォール街のランダムウォーカー」(バートンマルキール著 日本経済新聞社)によると20銘柄程度で大幅にリスクは低減する、とのことです。保有銘柄を増やすことでポートフォリオのリスクが低減する部分をアンシステマティックリスクと呼び、銘柄固有のリスク、例えばデフォルトのリスクや雪印にあったような会社の不正による株式価格変動リスクは、他の銘柄によって相殺されることになります。一方、銘柄をいくら増やしても減らないリスクをシステマティックリスクと呼びます。これは、市場そのものに存在するリスクです。たとえば株式市場全体がある税制改正によって下落した、という場合、個別銘柄をいくら増やしても、リスクは減少しません。「ウォール街のランダムウォーカー」ではこのシステマティックリスクを減らすため、国際分散投資を勧めています。私もこの意見に賛成です。ただし、最近ではアメリカの株価動向が日本の株価に影響を及ぼしやすいことは注意が必要です。具体的にはユーロ圏と米国・日本のインデックスファンドに分散投資し、残りはアジア・オーストラリアなどに投資するのがよいと思います。この投資で問題なのは為替です。為替は大体ユーロ・米ドル・円・ポンドといった主要通貨をいったりきたりしており、たとえば、円安が進めば、何かの通貨が高くなります。したがって、為替ヘッジをせず、日本円に置きなおして考えなければ、為替差損・差益は存在しないことになります。ところが、日本で海外マーケットのインデックスファンドを購入する場合、通常、日本円で購入します。これはよいのですが、解約する場合は現地通貨でもらえません。日本円に転換してもらうので、為替差損益が発生してしまいます。また投信の基準価額計算も為替差損益を考慮して求めていますので、日本で国際分散投資として主要マーケットのインデックスファンドを買う場合は為替差損益の問題は避けられません。一方、「いや、私は日本円をもとに為替差益も期待している」という方は、このような国際分散投資も手軽でよいと思います。詳しくは別の機会にしますが、年金の運用や外資系プライベートバンクの提案では、主要な通貨、たとえばスイスフラン・ポンド・米ドル・ユーロ・日本円等をそれぞれ、キャッシュアカウントとして、カストディに預け、その口座を利用して証券売買を行います。これですと為替差損益は発生しませんし、売買の都度、円転しませんから、売買のタイミングを逃さず、機動的な運用ができるのです。 だいぶ横道にそれてしまいましたが、基本的知識としてアンシステマティックリスクは20銘柄程度保有することで大きく低減するが、市場全体のリスクであるシステマティックリスクは海外のマーケットに投資対象を広げ国際分散投資とすることで、下げることができる、ということを覚えておきましょう。 効率的フロンティア資産運用を行うにあたり、複数の資産や銘柄から構成されるポートフォリオを組成することになるのですが、その構成比率にヒントを与えてくれるのが、効率的フロンティアと呼ばれるものです。効率的フロンティアとは、最小分散境界上で同一のリスクのもとにおける、最大の期待収益率をもつポートフォリオの集合のことです。さてこれではなんのことかさっぱりわかりませんので、具体的に考えていきましょう。 例えば、ある株式AとBにいろいろな比率で投資したとして、そのポートフォリオのリスクとリターンをグラフ化すると次のようになります。 ![]() この場合、株式ABの相関係数が1でない限り、株式ABのリスクリターンを示す、A・B点を結ぶ直線ACB上にポートフォリオのリスクリターンは存在するのではなく、曲線ADB上に存在することになります。これでいえることは相関係数が1でない限りリスクは必ず低減するということです。もし、相関係数が正反対の-1であるときは次のようになります。 ![]() 2つの株式をくみ合わせたポートフォリオを、もっと多くの株式をくみ合わせた場合、次の弓なり曲線で囲まれた部分にリスクとリターンのくみ合わせは存在します。 ![]() XYZの曲線上のポートフォリオは、同じリターンでも一番小さなリスクを持つポートフォリオの集合で、このXYZをリスクが最小ということから、最小分散境界と呼んでいます。 さらに投資家がリスク回避型である場合、同じリスクなら、リターンの高い方を選択するでしょうから、XYZの曲線のうち、YZの曲線上のポートフォリオを選択するはずです。この曲線を効率的フロンティアと呼んでいます。例えば、リスク回避型投資家は最小分散境界上にアとイがあればアを選択します。 さらに、無リスク資産を入れた場合はどうなるでしょうか。それが次の図です。 ![]() この場合、直線ABが新たな効率的フロンティアとなります。例えば仮にリスク資産だけの効率的フロンティア上のポートフォリオがあり、このリスクとリターンがTだとして、一般的投資家はリスク回避型だとします。これに無リスク資産ABを加えると、いままでのリスク資産のみのT点より、同じリスクでリターンの高いγ点を選択することができます。すなわち、無リスク資産を加えることでより優れた、効率性の高いポートフォリオを選択することが可能となります。 ショートフォール確率とヴァリューアットリスクいままでリスクというのはリターンのばらつきであり、標準偏差で捉えてきました。しかし、リスクというと上へぶれるというより、下にぶれることをいうのが自然である、といことから、下にぶれることをダウンサイドリスクと呼んでいます。ショートフォール確率は一定利率を下回る確率を示すもので、ダウンサイドリスクを表すものです。これはエクセルで計算できます。たとえば、期待リターンが5%、標準偏差が15%であるとき1年後にリターンが0%を下まわるショートフォール確率を求める場合、次の計算式で求められます。=NORMDIST(目標リターンここでは0%、期待リターンここでは5%、標準偏差ここでは15%、TRUE) ヴァリューアットリスクは次のような場合に利用されます。期待リターンが5%、標準偏差が15%のポートフォリオについて、今後1年間の確率95%でのヴァリューアットリスクは何%か、といった場合です。 これもエクセルで簡単に求められます。 =NORMINV(1−95%、5%、15%) 効率的市場仮説さきほどご紹介した「ウォール街のランダムウォーカー」を読んで頂くとよくわかると思いますが、ここでは効率的市場仮説とはなにかを説明します。その説明に入る前にパッシブ運用とアクティブ運用について説明します。近年、年金資金・公的資金運用の世界ではアクティブ運用からパッシブ運用への比率を高めているケースが目立ちます。年金資金運用基金の平成13年度の運用報告では運用手法の見直しとしてパッシブ運用中心の運用への移行があげられています。ここには次のような記載があります。 「資金運用の手法としては大きく分けて、パッシブ運用とアクティブ運用があります。パッシブ運用とは原則として市場を構成する全ての銘柄をその構成比どおりに保有して、市場平均並みの収益率を確保することを目指す方法であり、アクティブ運用とは、銘柄選定に関する一定の考え方に基づいて、投資する銘柄をある程度限定して市場平均以上の収益率を目指す方法です。厚生労働大臣が定める「運用の基本方針」では、@長期的にみると市場は効率的であり、高い収益率を生む銘柄を継続的に事前に見つけ出すことにより市場平均を上回る収益率をあげることは容易ではないとされています。一方において、A年金積立金は巨額であり、市場への影響を配慮する必要があるとともに、Bパッシブ運用はアクティブ運用に比べ、管理運用が容易でありコストが低いことなども考慮して、「各資産クラスともパッシブ運用を中心とする。」と定められています。」 「この考え方を踏まえて、基金では国内株式と外国株式のパッシブ運用の割合を、70%〜80%を目標に段階的に引き上げていくこととしています。・・・・」 現実に米国での過去の実績を見てみると、1年2年といった短期的運用期間であればともかく、長期的にはアクティブ運用はパッシブ運用を上回るパフォーマンスをあげることはできません。また、アクティブ運用の投信はパッシブ運用の投信を較べて手数料が高いため、ネットの運用パフォーマンスはさらに差がつくのです。結局、高いコストを払って値上がりの期待できるよい銘柄を探してもらう投信も、TOPIXや日経平均に連動する人的コストが低廉な投信には勝てないのです。 しかし、多くの資産家の方にはこの考え方を説明しても受け入れられません。市場平均を上回るパフォーマンスを得たい、というのは多くの人の希望ですが、特に資産家層には強いようです。それは、それなりのリスクをとれる資産背景があるからで、資産家の方からよく伺うのは、「市場平均を上回るパフォーマンスを目標とします、というのではなく、絶対利回りで何%以上を目標とするのか」、ということです。 さて、引用したところの@はまさに効率的市場仮説の考え方です。効率的市場仮説とは、市場は効率的で、すべての情報が直ちに完全に証券の価格形成に反映されるはずで、だれも継続して他人よりも優れた投資成果をあげることはできないという仮説です。このような効率的市場ではすべての情報が、瞬時にしてかつ正確に、証券価格に反映されるので、その時点で得られる情報から今後の証券価格を予想することはできません。 効率的市場では、証券の価格はランダムウォークします。市場が効率的であれば、今、手に入れられる全ての情報は現在の価格に織り込み済みで、また、新しい情報が出てくれば、証券価格はすぐにその情報を織り込み、変動しつづけます。 具体的には企業が発表する決算情報やアナリスト情報、新聞記事、統計資料などの情報は、特にインターネットなどの情報網を通じて伝えられ、株価もすぐにその情報を織り込み、変動していきます。 効率的市場仮説には市場効率性の度合いにより3つに分類できます。 1.ウィークフォーム 過去の価格や取引量などの市場情報はすべて現在の価格に反映されているため、チャート分析やテクニカル分析のような過去の動向を分析するような手法では将来の価格予想は不可能であるということになります。(過去情報のみ、すでに価格形成に織り込まれている。) 2.セミストロングフォーム 一般の公開情報はすべて価格に反映されています。これには企業の決算情報や新製品発表といった情報が含まれていますが、公開情報から将来の価格予想は不可能です。しかしこのフォームでは公開情報を分析し、その情報がまだ価格におりこまれていないだろう、と予測して投資成果をあげることを否定していません。 3.ストロングフォーム 3つのフォームのうち、もっとも強い仮説で、公開情報だけでなく、非公開情報もすべて市場価格に織り込まれているとするものです。 リスクの時間分散効果リスクの時間分散効果とは、投資期間が長くなるにつれて、リターンのブレ、つまりリスクが投資期間の平方根に反比例して減少するというものです。これは、投資期間が長くなればポートフォリオの年間換算標準偏差が小さくなったり、年次収益率の信頼区間が期待収益率にむかって収束していくことでもわかるとおりです。時間経過とリスクの関係は次のイメージ図のとおりです。![]() たしかに、長期の投資期間で標準偏差が小さくなり、年次収益率も期待収益率に近くなってくるのですが、これをもって直ちに長期投資が投資方法のベストな方法である、と言い切ってしまうのには、問題があります。というのは、一方で、長期投資により損失額は拡大する可能性も高くなるからです。 というのは、投資期間中の累積リターンのばらつきを見た場合、長期になればなるほど、その累積リターンのばらつきは大きくなり、資産金額の残高も大きく違ってくるのです。 つまり、リスクは長期投資によって減少する、というのは、年次収益率の平均が期待収益率からブレにくくなるということをいっているのであり、累積損失金額をいっているのではない、ということです。この理論は実に実践的な考え方ではないかと思われます。 なお、さきほど説明した、資産残高が負債額を下回るショートフォールの確率をリスクとして考えれば、期待収益率が運用予定利率より高い場合に、長期投資によって年次収益率が期待収益率に収束していくため、期待収益率の高さがリスクをカバーすることになるため、ショートフォール確率は低減していきます。 期待収益率の推計アセットアロケーションについて説明する前に、期待収益率の推計方法には3つある、ということを説明しておく必要があります。その3つとは次のとおりです。1.ヒストリカルデータ方式 2.ビルディングブロック方式 3.シナリオアプローチ方式 前に日経平均の期待収益率を求めましたが、あれはヒストリカルデータ方式で求めたものです。3つの方式について、簡単に説明しましょう。 1.ヒストリカルデータ方式 これは過去のデータの平均値を算出し、期待収益率とする方法です。実績リターンから効率的フロンティアを求める、ということは、過去のデータからみたもっとも効率的なポートフォリオを導きだす、ということになります。しかし、逆にいえば、このポートフォリオをもとに未来の資産運用戦略を立てるということは、前提として、将来においても、資産運用の市場変化が過去と変化しない、という考えが必要になります。したがって、過去のいつの期間をデータとして採用するか、が重要です。短い期間では、データとして異常データを抽出している可能性がありますし、また、長い期間では現在の市場環境と大きく変化しているデータも抽出してしまう可能性がある、といわけです。前に説明しましたが、近年のデータほど重みをつけて評価するのは、この問題を解決するひとつの方法です。 2.ビルディングブロック方式 年金運用の世界では一般的な手法です。リターンをいくつかの構成要素に分解し、個々の要素について予測値を設定し、それらを積み上げ、将来のリターンを予測する手法です。リターンを各資産に共通するリスクフリーレート(リスクのない短期レート、例えばコールレート)と、リスクをとって得られるリスクプレミアム(たとえば各資産のリターンとリスクフリーレートの過去実績値平均との差)等に分解することで、推計していく方式です。リスクの高い資産はそれだけリスクプレミアムを大きく付加していくことになります。 3.シナリオアプローチ方式 今後の市場動向や経済社会環境について複数のシナリオを立てて、それぞれの場合の期待収益率を算出します。次にそれらのシナリオの起こる確率を加重平均して最終的期待収益率を算出する方法です。この方法は多くのシナリオを作成するのは不可能ですから、年金では、ビルディングブロック方式によるリターン測定の補完的なものとして、3つから4つのシナリオを作成しています。 資産運用方針の決定これから説明するアセットミックス・アセットアロケーションの実践はすでに年金運用では行われていることですが、個人の資産運用においては、現在のところ、まずやっていないか、やっていても正確には行われていない、と思います。しかし、私はこの手間のかかる作業も、プライベートバンキングにおける顧客資産管理手法として、もっと研究され実践されるべきだ、と考えております。なぜなら、顧客資産のALM(資産負債の総合管理)・アセットミックスの決定・基本ポートフォリオの作成・各アセットクラスにおける運用方針の決定、そしてアセットミックスの管理といった一連の流れは年金基金と同様、顧客資産のトータル管理に最適の方法だからです。しかし、現在、個人富裕層でこのような運用を行っている人がいないのは、コストがかかるということと、プライベートバンカーに知識がないということ、また、正確に行うには組織的に複数の人員で対応しないと膨大な作業のためほぼ不可能、クライアントに対し投資教育をしなければならない、アセットミックスコンサルティングフィーがとれない、といった理由からであると思われます。しかし、なんとかして、クライアントの資産負債やリスク許容度などの情報をもとに、システム的に低コストで、このような管理ができるようになれば(イメージとしてよくあるFPのシステム)、顧客からの信頼はより深まり、他のプライベートバンクに比し強い競争力を持てるようになると思います。さて、言葉の意味ですが、アセットアロケーションとは、ポートフォリオ全体における各アセットクラスの組入比率を決定する工程・作業のことです。アセットクラスとは、全体のポートフォリオに組入れる資産区分、たとえば、短期金融商品・国内株式・国内債券・外国株式・外国債券・REIT・貴金属・商品ファンドなどです。そしてアセットミックスとは、アセットアロケーションの結果として決定される各アセットクラスの組入比率のことを言います。 なぜ、アセットミックスを考えなければならないのでしょうか。それは、各アセットクラスに固有のリスク(システマティックリスク)があり、そのアセットクラス間の相関係数をもとにバランスのとれた構成比率をとることが、リスクを最小限に抑え、かつ効果的リターンを得る近道だからです。 まずは投資理論の流れについて簡単にみてみましょう。現代投資理論はマーコウィッツによるポートフォリオ選択理論よりスタートし、これをもとにシャープが市場全体における個別証券の均衡価格を扱う理論としてCAPM(=Capital Asset Pricing Model)を生み出しました。詳しくはあとで説明しますが、CAPMでは、それまでのリスクの概念である標準偏差に加え、個別証券の無リスク資産に対する期待超過収益率は、市場リターンに対する感応度(β)により説明されることを示しました。しかし、その後、CAPMでは説明できない事象(アノマリーと呼ばれている)も出てきており、シャープの理論を発展させる形で、ロスのAPT(アービトラージ・プライシング・セオリー)やブリンソンの政策アセットミックスの重要性の実証などが生まれたのです。 こうした投資理論をもっとも活用しているのは年金・公的資金運用です。年金資金運用の場合、アセットミックスは政策アセットミックスと呼ばれ、中長期的に変更しないポートフォリオの基本方針として策定されますが、これを決定するまでのプロセスやポイントを簡単に見てみましょう。 年金では、最適なアセットミックスを見出すために、ALM(Asset Liability Management)の考え方から分析作業を行います。ALMはもともとは銀行経営から生まれたものですが、年金の場合、その目的は年金基金の現状分析と将来の財政状況を明らかにし、最適な政策アセットミックスを引き出すことにあります。資産・負債について多くのシミュレーションを立てて、現在のアセットミックスあるいは有効フロンティア・リスク許容度など参考に最適な政策アセットミックスを見つけるという作業を行います。政策アセットミックスを導き出す手法としてはマーコウィッツのMVアプローチ法(平均分散アプローチ法)もありますが、負債側を考慮しない点や、標準偏差のみをリスクとしている点などに問題があるため、ALMの考え方が取り入れられたのです。 プリンソンは政策アセットミックスの重要性について、パフォーマンス変動の90%以上は政策アセットミックスによって説明される、としていますが、政策アセットミックスはこのようにコストをかけて策定するほど重要なもので、中長期的にこのアセットミックスにしたがって、基金全体の資産構成は維持されるのです。 さて、個人の場合、このような手法をどのようにして取り入れるかが、重要な問題です。私もまだまだ具体的方法は研究中ではありますが、少なくとも、中長期的に守るべきアセットミックスが、成功か失敗かの90%のキーを握っている、という点はブリンソンらによって実証されたものであり、そのため、ALMから最適なアセットミックスを見つけ出すというプロセスは十分に効果があると思います。たとえばALMにおいては、リスク許容度・有効フロンティアを確定的な条件として、現在の資産と負債の分析を行い(たとえば不動産・金融資産等の個別洗い出しや負債の金利・借入期間・金額の洗い出しなど)、それを参考としたアセットアロケーションを数種類作成し、そこにさまざまな環境の変化をつけ(事業承継問題の発生・運用環境の変化など)、最適なアセットミックスを見つけ出すようなことができればよい、と思っています。個人の多くの場合、アセットアロケーションといっても、たとえば「ここにキャッシュが1億円あります。この運用資金のアセットミックスは外貨定期が20%、国内株式投信が20%、・・…」というような話になってしまうことが多いと思います。しかしそれは、そのクライアントが保有する不動産や他の金融資産、あるいは負債について考慮していないため、正しいアセットミックスではありません。 アセットミックスの策定では、まずはクライアントのリスク許容度の確認・資産状況・負債状況等の確認を行い、次に運用対象となるアセットクラスの選択を行います。 対象とするアセットクラスを決定したら、それぞれのアセットクラス毎のベンチマークを決めるとともに、期待収益率・標準偏差を求め、アセットクラス間の相関係数を求めます。 これらの作業工程後に有効フロンティア上の数種類のアセットミックスを提示し、将来起こり得るいくつかの環境変化を想定し、この変化に対しこのアセットミックスがどうなるかをシミュレートしたり(ストレステスト)、バリューアットリスクを求めたり、さらには目標を下回る確率(ショートフォール確率)を求めたりして、ひとつのアセットミックスを決定します。 アセットミックス決定後のプロセスいままで述べたように、アセットミックスの決定は中長期的な視点からの運用スタンスでありますが、そのまま放置しておくと、各市場の動向により構成比率は変化してしまいます。これをバイ・アンド・ホールド戦略と呼びますが、これですと、価格が上昇しているアセットクラスの資産のウェートが高くなり、一方、価格が下落しているアセットクラスの資産ウェートが小さくなりますから、順張り的な投資戦略をとっていることと同じことです。そこで、修正をしていかなければならないのですが、前に説明した効率的市場仮説からすると、市場は情報を瞬時にして織り込んでしまい、それらの情報をもとに投資しても勝てないわけですから、アセットミックスを変更することで追加のリターンを得る、ということはできないことになります。言いかえれば、オートマティカリーなリバランス戦略をとるべき、ということになります。 また、一方で、市場は短期的には非効率なることもあり、情報により超過リターンを得ることができる、とする考え方もあり、この場合はアセットミックスの変更で追加収益を得ることも可能だということになります。これをアクティブなアセットアロケーションと言います。 機械的なリバランス戦略をとるかアクティブなアセットアロケーションをとるかは、効率的市場仮説をどのように理解するかによって決まります。つまり、ストロングフォームであれば、リバランス戦略をとるべき、ということになります。しかし、実際には、市場には説明できないアノマリーもありますから、個人的にはリバランス戦略を中心にしながらも、一部は短期的に市場の非効率部分を狙い、追加収益をあげる、といった戦略がよいかと思います。アクティブなアセットアロケーションの手法については、TAAとよばれる手法が代表的なのでこれについて簡単に説明します。 TAAとはタクティカル・アセット・アロケーションの略で、これは、市場価格は短期的には情報を正しく織り込んでいない状態になることがあるが、やがて本来のあるべき価格水準まで必ず戻るため、その仕組みを利用して、割高な資産を売り、割安な資産を買うことで追加収益をあげようとする手法です。簡単な例をあげれば、まず、国内株式と国内債券の過去の平均リターンを算出しその差を求めます。そして、以後、毎日、そのリターンの差をウォッチしていくと、過去の平均リターンの差(スプレッド)と大きくぶれることがあります。この場合は国内株が割安で国内債券が割高、あるいはその逆の状態ですから、それに応じて割安なアセットクラスを買い、割高なアセットクラスを売る、ということになります。このようにTAAは逆張り戦略なわけですが、このタイミングを見ることができる有能な人材と、機動的に情報を収集し、売買タイミングのシグナルを発するシステムが不可欠です。例としてあげたTAAのうちのスプレッドをみたこの手法は、アメリカのブラックマンデーのときに効果がありましたが、以後、多くの投資家がこの戦略をとったため、90年代以降、効果が薄くなってきました。なお、最近では、外国証券まで含めたグローバルTAAが注目されています。 各アセットクラスの運用方針の決定決定されたアセットミックスのもと、各アセットクラスは期待された収益をどのようにあげるべきか、ということを決定しなければなりません。ここで考えなければならないことは、またしても市場は効率的か否か、ということで、これによりパッシブ運用かアクティブ運用か、はたまたミックスさせる場合は、それぞれ何パーセントにするのか、ということを決めるのです。以前ご説明したとおり、市場が効率的である、と考えるならばパッシブになりますし、非効率である、と考えるならばアクティブ運用になります。年金運用では、いまやパッシブ中心で、一部アクティブをとり入れる、といった感じです。 もし、アクティブ運用をとり入れるならば、この段階で目標超過収益率とそれに対するトラッキングエラーの許容幅を決定する必要があります。また、パッシブの場合もベンチマークからのトラッキングエラー率をどの程度とするか決めます。 パフォーマンスの測定パフォーマンスの主な3つの手法について具体例をもって説明します。ABそれぞれ、同じアセットクラスに属するファンドがあります。そのアセットクラスの平均リターンは10%、そしてその標準偏差は5%、無リスク金利は1%として、ABファンドはそれぞれ次のようなファンドであると仮定します。
シャープ測度 シャープ測度は(平均リターン-無リスク金利)÷標準偏差、で求められます。すなわち、無リスク金利以上のリターンを得るためにどの程度のリスク(標準偏差)をとっているのか、というものです。 これによると、Aは(8-1)÷3=2.3、Bは(12-1)÷7=1.6となりAの方が優れたよいファンドだということになります。 ジャンセン測度 ジャンセン測度は平均リターン-{無リスク金利+(アセットクラス平均リターン-無リスク金利)β}です。これは、マーケットのリスクを増やしたところでそこから得られたリターンは、その運用者の能力によって得られたものではない、として、マーケットリスクは考慮しない測定方法です。 これによると、Aは8-{1+(10-1)0.5}=2.5となり、Bは12-{1+(10-1)1.0}=2となり、Aのファンドが優れていることになります。 トレイナー測度 トレイナー測度は(平均リターン-無リスク金利)÷βで求められます。これは無リスク金利以上のリターンを得るのに使った市場リスク1単位あたりを求めたものです。 これによるとAは(8-1)÷0.5=18、Bは(12-1)÷1.0=11でAのファンドが優れていることになります。 |

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