第拾四話 AD物語〜10〜

 「ラジオとテレビの違い」っていろいろあると思うんですが、
 そのひとつに、「ラジオは生放送がメチャクチャ多い」ってことがありますよね。
 例えば、フジテレビなんかは、「プロ野球ニュース」とかが終わっちゃうと、
 あとはほとんど録画の番組だったりしますよね。
 ところがラジオは、朝から晩まで、ほとんどの番組が「生放送」です。

 ああ、それなのに!
 何故ニッポン放送には生用のスタジオが、
 2つしかないんでしょう?

 そう、ニッポン放送には、8つもスタジオがあるのに、
 生用のスタジオって、2つしかないんです。
 朝5時から、翌日の朝5時までのスタジオの動きを見てみましょう。

 今仁哲夫のジョイフルモーニングニッポン  →  2ST
 高島ひでたけのおはよう中年探偵団     →  1ST
 加トちゃんのラジオでチャチャチャ     →  2ST
 高田文夫のラジオビバリー昼ズ       →  1ST
 塚ちゃんのGoGoヒットパラダイス    →  2ST
 笑福亭鶴光の噂のゴールデンアワー     →  1ST
 ショーアップ・ナイター          →  2ST
 ゲルゲットショッキングセンター      →  1ST
 オールナイトニッポン1部         →  2ST
 オールナイトニッポン2部         →  1ST
 今仁哲夫の・・・・・

 以上、ひっきりなしに生放送なのに、
 2つのスタジオを交互に使ってるだけ!!

 ま、それでもいいんですよ。平日は・・・ね。
 
 大問題は、「アニメガ」のある金曜日です。
 「アニメガ」こと「スーパーアニメガヒットTOP10」は、22時〜24時30分の放送。
 月曜日〜木曜日に放送している「ゲルゲットショッキングセンター」と「ほぼ」同じ時間帯ね。
 「ゲルゲ」っていうのは22時〜25時の放送だよ。
 つまり「ほぼ」っていうのは、「ゲルゲ」にくらべて「アニメガ」の方が30分短いってことなんです。
 金曜日はこの30分の間に「クールKのマルキン・チャレンジランド」があるわけです。
 先ほどのように表で書くと、

 アニメガ     →  1ST
 マルキン     →  1ST
 オールナイト1部 →  2ST

 ・・・となるわけです。
 さあ、大変だ!
 アニメガとマルキンの間は約2分のコマーシャルしかありません。
 この2分の間に、パーソナリティはもちろん、
 スタッフも全員(ミキサーさんだけは同じなんだけど)、「総とっかえ」です。
 アニメガのエンディングゾーンには、
 アニメガスタッフ、マルキンスタッフ入り乱れて、1STは、
 しっちゃかめっちゃかです。
 
 「3番のテレコ(テープレコーダー)マルキンのテープセットしていいっすか?」
 「え? あ、まだ、ダメ! エンディングテーマのテープ、そこにかけるから!」
 「おい! マルキンの台本は?」
 「さっき、ボク、そこに置きましたよ!」
 「アニメガの荷物、搬出しちゃって!」
 「岩ちゃん、残り時間あと1分!」
 「お茶、お茶、お茶・・・・。」
 「俺の台本が、ないって!」
 「アニメガの荷物、とりあえず、廊下の棚の上に置いとけ!」
 「クールK、スタジオ入って!」
 「お茶、お茶、お茶・・・・。」
 「岩ちゃん、残り時間あと10秒!」
 「うわー、マルキンの台本に目ぇ通す余裕がねぇ!」
 「エンディングテーマ終わったあと、5番のテレコから次回予告でまーす!」
 「ねぇ! お茶、もう外にもってっちゃった?」
「はい! お疲れっしたぁ!」
 「お疲れさまでしたぁ!」
 「マルキンのみなさんどうぞ!」
 
 ・・・てな、状況が毎週続いてます。
 かろうじて何とかなってるのが、アニメガには、「次回予告」があるからかもしれません。
 先ほど書いたとおり、本当なら、アニメガとマルキンの間には、約2分のCMしかありません。
 でも、前もって録音してある「次回予告」を番組の一番最後に出すことによって、
 スタッフの入れ替え時間をさらに45秒も(!)かせぐことができるわけなのよ。
 でも、毎回の「総とっかえ」はかなりきついんですけどね・・・・。

 ちなみに、ニッポン放送は生用のスタジオに愛称をつけるのが好きらしく、
 前の有楽町本社の生用のスタジオには、
 「ブルースカイ・スタジオ」「レッドスカイ・スタジオ」
 と、名前がつけられていました。
 今度の、お台場本社の生用スタジオの愛称は、リスナーのみなさんからの応募で決まりました。
 1STが「シーだいば・スタジオ」、2STが「スカイだいば・スタジオ」です。
 ちなみに僕ら「アニメ好き」のスタッフが、
 準生放送用スタジオである「3ST」を、
「マグマだいば・スタジオ」
 と、呼ぶようになったのは言うまでもありません。
 
続く  1997/05/19

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