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「キングダム」

2019年:日本
○監督:佐藤信介〇脚本:黒岩勉/佐藤信介/原泰久○撮影:河津太郎〇美術:斎藤岩男〇音楽:やまだ豊〇原作:原泰久〇プロデューサー:松橋真三/北島直明/森亮介/平野宏治
山田賢人(信)、吉沢亮(漂/嬴政)、長澤まさみ(楊端和)、橋本環奈(河了貂)、本郷奏多(成蟜)、満島真之介(壁)、宇梶剛士(魏興)、加藤雅也(肆氏)、要潤(騰)、坂口拓(左慈)、高嶋政宏(昌文君)、石橋蓮司(竭氏)、大沢たかお(王騎)ほか




 漫画原作映画を劇場まで見に行くことはあまりない。原作にされる漫画そのものを読んでない(特に最近のものは読んでないことが多い)というのもあるし、漫画原作の実写映画の大半がロクなことにならないという経験則があるためだ。それでも一定の観客が見込めるので最近はますます漫画原作実写映画が増えているわけなんだけど、この「キングダム」もそんな映画の一本、と言っていい。ただし、中国古代に材をとった歴史劇、現地ロケも行った大規模なスケールなど、漫画原作作品としては珍しい作品になっている。だから僕も映画館まで足を運んだわけで。

 映画を見る時点では原作未読だったが、「キングダム」は以前テレビアニメ化されてNHKで放映されていて、僕はそのアニメ版を熱心に見ていた。だからこの実写映画版の予告編などの映像を見て、「ああ、かなり原作どおり撮ってるんだな」とすぐに分かった。漫画は未読だったがアニメ版がかなり原作通りだとは分かっていたので、映画も完全にその線でいくんだな、と分かった。アニメ版の出来がよかったことと、歴史映画マニアとしてこれはチェックしておかないとな、と映画館に足を運んだわけである。

 原作はすでに10年以上の長期連載が今も続いている大長編で、アニメ版もその前半までしか映像化できなかった。そして今度の実写映画だが、2時間程度の内容では原作のプロローグ部分、後の秦の始皇帝となる嬴政が異母弟との争いに勝利するまでだろうな、という予想はついた。そうでなければ話を飛ばしに飛ばしてのダイジェストでアニメ版くらいまでの話をやってしまうか、という予想もあったが、結局は素直に原作の序盤部分、漫画連載で言うところの「打ち切られたらここまで」みたいなひとまずの決着点までをじっくり描く映画となった。原作を知ってると物足りない映画化ではあるが、うまくいったら続編制作で…くらいに考えての企画なんだろう。

 アニメで先に見ていて、映画鑑賞後に原作漫画も読んでみたが、この映画、確かに原作そのまんまの内容で実写化をやっている。他の漫画原作映画はあまり見てないけど、聞いた話の限りでは、この映画の「原作忠実度」は抜きんでたものだと思う。よく見れば脚本に原作者自身もクレジットされているんだな。
 ただ、実は映画の最初の最初、冒頭だけは原作にないオリジナル。戦災孤児で奴隷に売られていく信が、将軍・王騎を見かけて「将軍」というものに憧れる、というシーンだ。これが映画のラストと結びついて、これ一本だけでもひとまず「映画」になる仕掛けになっている。

 そのあとは原作知ってる人には完全にそのまんま実写化された形で映画は進行してゆく。奴隷の信が、同じ奴隷の漂と「いずれ将軍になって出世しよう」と誓いあい、毎日二人で激しい訓練(木刀の撃ち合い)を繰り返す、そのうちに二人は成長して山田賢人吉沢亮になるのだが(笑)、二人ともまさに原作イメージそのままで違和感はほとんどなかった。あえて言うと原作通りに漫画的にハイテンション続きの信をそのまま実写でやると浮いちゃってる気はしなくはなかったが。
 この二人を見かけた昌文君(演:高嶋政宏。老けメイクで演者がしばらくわかんなかった)が、なぜか漂だけをスカウトして信は置き去りにされる。ところが突然、漂が瀕死の状態で帰って来て、信に後事を託して死ぬ。信が指示に従ってある隠れ家に行くと、そこには漂とうり二つの少年、嬴政(のちの始皇帝)がいた。

 といった調子で話は原作そのまま、いいテンポで進行してゆき、おかしな山の民の子供・河了貂(演:橋本環奈。そこそこ原作的に中性的になってる)が仲間に加わり、大昔に秦と盟約のあった「山の民」の族長・楊端和(演:長澤まさみ)の協力を得て、信と政らは宮殿へ討ち入り、政の異母弟・成蟜(演:本郷奏多)と戦うことになる。次から次へと難関が現れ、それを知恵と勇気と友情とド根性で切り抜けていく展開は、実にジャンプ系連載漫画的で、映画はそれをほとんどいじらず(一部に前後させたものはあったが)映画化していた。結果から言えばやはり下手にいじらないで正解だったと思う。

 主人公二人以外の登場人物たちも、少なくとも僕の目で見た限り、原作イメージを損なう人は一人もいない。ま、しいて言うと大沢たかおの王騎は原作のオカマ風キャラが強烈すぎるので、ややマイルドにされ、実写ということもあるからこれはこれで…という造形だった。事前にキャストを知らなかった僕はオネエキャラということで片岡愛之助がやるのかな、などと勝手に思ってたけど、大沢たかおでこういう感じになるのか、と感心もした。惜しむらくはこの映画の中ではそれほど活躍の場面がばく、ラストでだけ存在感を示すしかなかったこと。続編が作れれば、そこで下手すると主役級の活躍ができるんだけどね。

 本作は日本の中国古代史漫画を原作に、スタッフ・キャストは日本、ロケの多くを中国で、という形で製作された。日本で製作され日本人キャストばかりの中国史映画の例は過去には「楊貴妃」「秦・始皇帝」「敦煌」といった例があるが(いずれも大映製作だな)、日本人が中国人を演じるのはアメリカ人がローマ史劇を演じるよりは近いように思うんだが、こうした過去の作品はいずれもどこか「違和感」を感じざる絵緒えなかった。
 そこいくと、この「キングダム」はそうした違和感が全く感じられないのが驚きだった。みんな日本人俳優で日本語しゃべってるのに。これhやはり現地ロケで中国人スタッフの衣装や美術での協力があったからなのかな。特に美術セットは最近の中国で製作される古代史ものに共通する重厚さ、いかにもその時代風の考証などが感じられ、そこに日本人を混ぜても違和感がない、ということなんだろうな。僕は前々から、そのうち逆に中国のスタッフ・キャストで製作された日本史劇映画が製作されたりすると予想してるのだが、日本側の協力がきちんとあれば十分可能だな、ということも思った。すでに「墨攻」の例もあるし、東アジア的に歴史物が製作体制がゴチャゴチャグローバルになっていくんじゃないかな、ということをこの映画でを見ていて改めて感じたものだ。

 これはこれで一本の映画としてまとまってはいるんだが、なにしろ原作のプロローグ部分だけ。これは続編作らなくちゃダメでしょ、という出来だと思うんだが、スケールがさらに大きくなる話(本作では描かれなかった大合戦スペクタクルをやらなきゃらない)なので製作はかなり大変だろう。アニメともども「続きが見たい」と僕に思わせたんだから、頑張ってほしいものだ。(2019/10/3)




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