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「恐竜・怪鳥の伝説」

1977年・日本
○監督:倉田準二〇脚本:伊上勝/松本功/大津一郎○撮影:塩見作治〇美術:雨森義充○音楽:八木正生〇製企画:橋本慶一
渡瀬恒彦(芹沢節)、沢野火子(小佐野亜希子)、林彰太郎(谷木明)、清島智子(園田淳子)、諸口あきら(本人)ほか




 長いこと名前だけは知っていた映画。東映が製作した怪獣映画の一本だけど、どういう映画なのか情報も得られないままでいたのだが、先日からYoutubeの東映公式で期間限定公開になってて初鑑賞、というまたこのパターン。「ギララ」もそうだったが、「ゴジラ-1.0」の影響でもあるんだろうか。
 見始めてしばらくたったら、主役が渡瀬恒彦であることに気づいてビックリ。いやぁ、若い、若い。「仁義なき戦い」なんかのギラギラ感がまだまだ凄かったころで(現実の本人もケンカは最強、撮影でも命知らずのアクションをやってた)、こう言ってはなんだが、こんな怪獣映画に主演していたとはと驚いたのだ。

 映画の舞台はほぼ全編山梨県の富士山の裾野。「自殺の名所」と名高い樹海にやってきた女性がある風穴に転落、そこで石の卵から何かが生まれるのを目撃したと言い残して死んでしまう。メキシコへ出張しようとしていた石材会社の芹沢節(演:渡瀬恒彦)はこのニュースを空港で見て渡航をキャンセル、富士の樹海へと調査に向かう。実は芹沢の父は「恐竜が現在も富士にいる」と主張した異端の古生物学者で、芹沢は認められぬまま死んだ父親の無念を晴らすため恐竜を見つけようとしていた。おりしも富士五湖の一つ「西湖」では、首長竜とおぼしき怪獣が生息しているとの伝承や噂があり、若者が集まってにぎわう観光地に不気味な影を落としていた…

 ってな感じで始まるこの話、全体的に雰囲気は怪獣とか恐竜ものというよりはホラー映画タッチで(舞台が「サイコ」なのは偶然だろうけど)、実際に怪獣が登場するまで馬や人が次々殺される(それも体の一部が明らかに食われて見つかる)というなかなかエグ描写が連発する。ついに怪獣が姿を現した!湖の水面に背びれが見えて大騒ぎ、というシーンまでくると、「あれ、これって…?」と勘付く人も多いはず。そう、この映画、どう見ても「ジョーズ」を意識、というかパクったというか便乗したというかな映画なんである。この背びれが見えたときに、これが偽物を使ったイタズラであり、それでホッとした直後に惨劇が起こるというのが予想できてしまい、実際にそのまんまだった(笑)。だいたい怪獣の目線で人の足に迫っていく水中カットなんて「ジョーズ」そのまんまだもんな。

 当時の東映社長・岡田茂は「アメリカで当たった映画はやがて日本でも当たる」という信念のもと、パニック映画が流行れば「新幹線大爆破」を作り、「スター・ウォーズ」がヒットすると「宇宙からのメッセージ」を作る、といったことを繰り返していて、この映画も「ジョーズ」(1975年公開)便乗であったことは間違いない。サメを恐竜にしてるあたりは工夫だが、スピルバーグも「ジョーズ」のサメを現実のサメというより怪獣のつもりで作ったというから、そもそも根底で通じるところはあったんだろう。ただ東映の方はその料理の仕方がジョーズじゃなかったというのが残念(笑)。

 渡瀬演じる主人公は、西湖で撮影をしていた水中カメラマンの元恋人・亜希子と再会する。この二人の恋愛再燃も映画の一つの筋になってるんだけど、ここは結構大人な雰囲気でターゲットの観客の年齢層をどう考えていたんだろ、と思うところも。同時上映が実写版「ドカベン」(原作冒頭の柔道編をかなり忠実に映像化した割と出来のいい一本)なので子どもがターゲットだったと思うんだけど、怪獣映画を期待した子どもは結構怖い思いをしたと思うぞ。
 大人ドラマ部分では、恋人に危険な水中撮影をやめさせるためではあるが、渡瀬が思い切りビンタをかますシーンなんかは、いかにも当時の渡瀬的(東映的)男くささが感じられたなぁ。今では通用せんだろうけど。それでいて自分自身は危険もかえりみず、父の思いを継いで恐竜に対面したい(もう何人も食われてるんだよ)と言い出すなど、どうにも理解しがたい言動がある。

 西湖にいた「恐竜」は劇中「プレシオザウルス」と説明され、むかし考えられていた「爬虫類に近い水中生物」という説明がなされている。首が長く、四つの足はヒレ状になっているタイプで、やはり劇中で言及されるネッシーのイメージに近いものになっている。厳密にはこういうのは「恐竜」ではないのだがドラえもんの「のび太の恐竜」もそうだったし、細かいことはそれ以上言うまい。
 そしてこの映画のタイトルにもあるように、もう一方の主役の「怪鳥」がいる。映画冒頭で卵からかえっていたアレが、しばらく出てこなくて存在を忘れた終盤になってやっと登場してくる。ハッキリと映るカットがあまりないので確信はないんだけど、「鳥」といっても翼竜に近いデザインになっていたような。始祖鳥と翼竜の中間ぐらいを意図したんだろうか。なお、古い化石の卵が孵化する理屈づけに「ベンジャミン=フランクリンが数百年前(だったか、もっと昔だったか)のヒキガエルをよみがえらせたことがある」というようなセリフがあったんだけど、検索しまくってもそんな話は今のところ発見できていない。

 とにかく終盤あわただしく登場したこの「怪鳥」と、話の中心にあり続けた「プレシオザウルス」とが、なぜかは分からないが闘争を開始数r。それに合わせて富士山が噴火活動を始め、主役カップル二人はそれらに囲まれるピンチの中を手を握り合って生き延びようとする。クライマックスの盛り上がりなわけだけど、なんか詰め込みすぎカオス状態で訳が分からない(笑)。エンドマークが出ても結局何がどうなったんだかわからなかったんだよな。(2024/1/28)




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