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#11596 
バラージ 2026/07/17 20:07
青春が時代を作ったとき

 『ヌーヴェルヴァーグ』というフランス映画を観ました。ジャン=リュック・ゴダールが長編初監督映画『勝手にしやがれ』(原題の直訳は『息切れ』)を製作した、その舞台裏を描いた映画です。監督は米国人のリチャード・リンクレイター。
 1959年、フランソワ・トリュフォーが長編初監督の『大人は判ってくれない』でカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞。ヌーヴェルヴァーグ(直訳すると“新しい波”)仲間のクロード・シャブロルも長編2作目の『いとこ同志』を公開していたが、彼らと共に「カイエ・デュ・シネマ」誌で映画批評家として活動していたゴダールは未だ長編監督デビューができないでいた。しかしそんな彼にもようやくチャンスが巡ってくる。旧知の若い俳優ジャン=ポール・ベルモンド と『悲しみよこんにちは』の主演でブレイクした米国女優ジーン・セバーグを主演に迎え、撮影が始まった『勝手にしやがれ』だったが、脚本を用意せずその日に用意したわずかなメモで即興的なスタイルの撮影をしたり、手持ちカメラによる狭い部屋での撮影や街頭でのゲリラ撮影をするゴダールの斬新で非常識で独創的な撮影方法にスタッフも俳優も困惑する。しかしゴダールの、そして俳優やスタッフたちの若さと情熱は、そのような障壁を超えて映画作りを推し進めていく……。
 いやぁ、面白かった! 題材的に興味はあったし、そこそこ面白い出来だろうとは思ってたんですが、そこまで多大な期待はしてなかったんですよね。しかしそんな予想を覆す良作でした。映画は『勝手にしやがれ』と同じモノクロで撮影されているばかりか、おそらく今時では珍しくフィルムで撮影されている(もしくはフィルムで撮影されたような加工を施されている)と思われ、また屋外ロケでは(というか『勝手にしやがれ』は大半が屋外ロケの映画)VFXを使って当時の街並みや風景を再現したとのことで、室内や衣装なども含めて再現度がものすごい。なんだか『勝手にしやがれ』のメイキングを観ているかのような気分で、まるであの頃のパリにタイムスリップしたように感じられました。
 映画製作の舞台裏も面白い。当時は台詞が同録ではなく、後でアフレコするため撮影中の台詞は重要な部分以外は俳優が適当にしゃべってたとか、そのためゴダールも演技中ひっきりなしに大声で俳優に指示を出していたとか(よく聞く知ってる話ですが、実際に再現されているのは初めて観ました)、ゴダールの撮影の進め方をめぐって他のスタッフや俳優と侃々諤々の議論が繰り広げられたり、怒ったプロデューサーと取っ組み合いのケンカになったり、映画製作をめぐる情熱と情熱のぶつかり合いがとても興味深かった。後に映画史を代表する大物となるゴダールもセバーグもベルモンドも、当時はまだ何者でもない20代の若者であり、そのような彼らの“青春”の日々が後から振り返れば時代の変革になる、その瞬間を切り取った一種の青春映画でした。

 ヌーヴェルヴァーグの仲間たちも、トリュフォーやシャブロル以外に、ジャック・リヴェット(『美しき諍い女』)、エリック・ロメール(『獅子座』)、アラン・レネ(『去年マリエンバートで』)、ジャック・ドゥミ(『シェルブールの雨傘』)、アニエス・ヴァルダ(『5時から7時までのクレオ』)ら錚々たる顔ぶれが登場。みんな顔見せ程度でたいした出番はありませんが、もうこの面子だけですごい。さらに彼らが敬愛する先輩の、ロベール・ブレッソン(『スリ』『ジャンヌ・ダルク裁判』)、ジャン・コクトー(『美女と野獣』『オルフェ』)、ロベルト・ロッセリーニ(『無防備都市』『ドイツ零年』)、ジャン=ピエール・メルヴィル(『サムライ』『仁義』)らも登場。僕の世代だとなんとなく「昔の監督」として皆全員ひとまとめにしてしまいがちですが、当然ながらそんなことはないわけで、後に巨匠となるヌーヴェルヴァーグの監督たちにも憧れの巨匠はいたのだと認識させられました。
 演じる俳優陣はセバーグ役の米国女優ゾーイ・ドゥイッチ以外は無名の人たちがオーディションで選ばれたとのことですが、ゴダール役のギヨーム・マルベックやベルモンド役のオーブリー・デュランをはじめ、全員あまりにもハマり役。ゾーイ・ドゥイッチが僕のフェイバリット映画の1つ『恋しくて』の監督ハワード・ドゥイッチとサブヒロイン女優リー・トンプソン(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のお母さん役)の娘だと知ってびっくり。ドゥイッチとトンプソンが映画公開から数年後に結婚したことは知ってましたが、その娘が女優になってたことは知りませんでした。あの映画を観た頃にはこの世に存在しなかった人が今ではあんなに大人になっているということに、個人的にはなんだか不思議というか奇妙というか、なんと言ったらいいのか困るんですが、とにかくなんとも感慨深かった。
 ま、とにかくとても面白かったです。今年ここまでで1番かな。『勝手にしやがれ』もまた観たくなって、Blu-rayに落としてる録画を観直してしまいましたが、やはり傑作です。


>なんだかよくわからない本能寺の変(『豊臣兄弟!』ネタバレ)
 『豊臣兄弟!』の本能寺の変ですが、個人的には正直言って、なんで光秀が謀反を起こしたのか今ひとつよくわかりませんでした。
 まず前回もちょっと触れた織田信澄(津田信澄)ですが、確かに父(信長の弟)信勝を殺された恨みを20数年も忘れていなかった信澄が、信長を討てという将軍足利義昭の密書を偽造したことを光秀本人に告白し、光秀に謀反をけしかけてましたが、結局光秀はそれに乗りませんでした。なお史実での信澄は本能寺の変後に光秀の娘婿だったため巷に共謀の噂が流れて信孝・丹羽長秀に疑われ、討たれてしまうんですが、どうもこれは冤罪だったようで、ドラマは冤罪の上塗りということに。しかもどうやら信澄は映像作品初登場だったようなんで、今のところ唯一の映像作品で冤罪にされちゃったというのはちょっと気の毒。
 光秀による家康への饗応というお決まりのエピソードも出てきましたが、今回は馳走に何者かが毒を持ったという展開に。信長の魚のほうが客人の家康の魚より大きかったことから、信長が交換させたところ、家康が毒が入ってることに気づくという展開で、実はこれも信澄の仕業という描写です。驚愕する光秀を問い詰めた信長は、真犯人をかばっていると気づき、怒って光秀をボコボコに……という、これまたお定まりの展開となります。しかしここでも光秀は謀反を考えてないようで、少し後に会った秀長から「災難でしたな(同情)」と声をかけられ、「いや参りました(意気消沈)」といった感じ。なお家康も実は毒を持っていたことを家臣に告白。信長の命令で妻子を殺した恨みを抱いていたが、実際に使うつもりは無かったとのこと。スルーされていた信康切腹事件が台詞で済まされちゃうことになりましたが、このドラマしか観てない人には、なんのこっちゃなのでは? まあ、このドラマを観てる人は『どうする家康』もどうせ観てるだろと言われれば、確かにそうなんだろうけど。ちなみに『どうする家康』の時も書いたけど、近年では信康切腹事件は信長の命令ではなく家康自身の意向だという説が有力なんですが、またも信長が悪者にされてしまいましたね。また武田滅亡もナレーションで済まされちゃうことに。だったらやっぱり信玄や三方ヶ原もナレーションで良かったんでは。豊臣兄弟とはほとんど関係ないんだし。
 で、光秀に話を戻すと、なぜか唐突に光秀自身も将軍義昭の意向を確認するため、斎藤利三に書状を送らせていたという話になり、その返答は「もう、わしを巻き込むな」という冷たい反応。今まで旧主義昭のためにがんばってきた光秀は絶望し、泣き笑いした後で突然「敵は本能寺にあり!」……。えっ? どういうこと? よくわかんないんですけど。義昭に見捨てられて絶望したってのはわかるんだけど(ま、これも史実とは正反対なんですがそれはともかく)、なぜそこから一足飛びに信長への謀反になるのかがいまいちよくわからない。俺、ぼーっと観ててなんか見逃したか?とも思ったんですが、ネットニュースによると同じようによくわからなかったという人も結構いたようでSNSにもそういうつぶやきが流れていたらしい。
 今年の『豊臣兄弟!』はあえて定番路線を外そうとしているところも見られ、本能寺の変も定番の怨恨説を採らなかったんでしょうが、そのおかげでかえって謀反の理由がなんだかよくわからないことになってしまったような。歴史学においてもだいぶ前から怨恨説にはほとんど根拠が無いことが指摘されてきたんで、その影響もあるのかもしれませんが、ドラマ(=要するに「物語」)としてはかえって謀反の理由を上手く描けなくなってしまったような感じですね。どれだけ怨恨説に根拠が無いと研究者方面から言われようが怨恨説が採用され続けるのには、それなりに理由があったんだなあと思ってしまいました。



#11595 
ろんた 2026/07/14 08:49
「I,KILL」(WOWOW)

 相変わらず読書欲は減退中。『天幕のジャードゥーガル』の新巻については書くと思いますが。「豊臣兄弟!」もぐずぐずしているうちに本能寺の変になっちゃったなぁ。そしてまた録りっ放しになっていた時代劇アニメを探しつつあるのでした(汗)。そしたらWOWOWの連続ドラマW、旧作の一挙放送で時代劇がありました。以下HPから。

・あらすじ
 関ヶ原の合戦から35年後。ようやく平和な世を取り戻しつつあった日本に突如現われた、人を襲い、喰らう化け物“群凶(Gun−kyou)”。幕府はひそかに討伐衆を派遣し、群凶とその地域を焼き払い隠蔽していた。そんな騒ぎを知らない多胡宿では、忍びであった過去を隠すお凛(木村文乃)が、医師・源三郎(高橋克実)の助手として、血のつながらない娘のトキ(田牧そら)とともに平和に暮らしていた。ある日、トキの病気を治す薬をもらうため遠く離れた村へ向かったお凛だが、村に着くと姿形が恐ろしく変わった群凶たちに襲われる。その時お凛は、過去の苦々しい記憶を鮮烈によみがえらせる。こうして大切な娘・トキを守るための壮絶な旅が始まった。一方、人の意識を持ったまま群凶になってしまい、過去を持たず苦しみを抱える“半群凶”の男・士郎(田中樹)。忌み嫌われ幽閉されていた彼は、自分が何者なのかを知るために、ある人物を捜していた……。
・キャスト
お凛:木村文乃/士郎:田中樹/十兵衛:山本耕史/氷雨:富田靖子/源三郎:高橋克実/トキ:田牧そら/ヒデロウ:西村拓哉(関西ジュニア)/徳川家光:田中樹/青葉:黒崎レイナ/春日局:山下容莉枝/柳生宗矩:矢島健一/兵藤:高橋光臣/仁志:金山一彦/八重:長井短/桜:穂志もえか/ひばり:佐藤江梨子/センヤ:室龍太/スエ:濱田マリ/船頭 近藤芳正/
・スタッフ
脚本:港岳彦,ばばたくみ,川滿佐和子/監督:ヤングポール,服部大二/音楽:フジモトヨシタカ/制作協力:松竹/制作プロダクション:松竹撮影所/製作著作:WOWOW/(いずれもWOWOW公式より)

 ということで、お凜が源三郎やトキを守って戦う時代劇(カムイ外伝?)+バイオハザードっぽい話のよう。1635年と年代を特定していて、実在人物も登場。権力欲にかられたこいつらが色々悪巧みをするんでしょう。ただし十兵衛は柳生十兵衛かどうか不明。放送は07/16 00:00から6話連続。

>「心配無用ノ介天下御免」(BS-TBS)
 BS-TBSのHPで随分前から告知されていた番組。

・はじめに
あの映画『侍タイムスリッパー』の劇中劇が、まさかの現実(リアル)に!第48回日本アカデミー賞 最優秀作品賞を受賞した映画『侍タイムスリッパー』から、奇跡の外伝ドラマ 連続時代劇「心配無用ノ介天下御免」がBS-TBSに登場。主演は映画でも同役を演じた田村ツトム。舞台は江戸。貧困にあえぐ庶民を尻目に暴利を貪る悪党たちを、正義の侍・心配無用ノ介が、仲間のおゆう(沙倉ゆうの)、善治(井之上チャル)と共に懲らしめる痛快勧善懲悪物語! さらに特別キャス>トとして、映画で主演を務めた山口馬木也、ライバル役の冨家ノリマサをはじめ、本田博太郎、大竹修造、竹中直人ら豪華俳優陣の出演も決定。監督を務めるのはもちろん、『侍タイムスリッパー』の生みの親・安田淳一。映画の遺伝子を100%受け継いだ、新たな伝説が幕を開ける!
・キャスト(時代劇パート)
心配無用ノ介:田村ツトム/おゆう:沙倉ゆうの/善治:井之上チャル/五兵衛:田村克幸/お梅:Rene/
・キャスト(現代劇パート)
西経寺住職:福田善晴/住職の妻:紅萬子/
・スタッフ
企画・監督・脚本・撮影:安田淳一/監督:白石和彌(第二話)/エグゼクティブプロデューサー:安部眞太郎(BS-TBS),水野貴夫(ギャガ),高橋剣(太秦映画村)/プロデューサー:黒木彩香(BS-TBS),堤智愛(BS-TBS),南田圭一郎(太秦映画村),井汲泰之(太秦映画村),西尾勇哉(ユニバーサルミュージック)/制作プロダクション:未来映画社,東映/ED:CRAZY KEN BAND「心配無用節」(Doublejoy International)/製作委員会:BS-TBS,ギャガ,太秦映画村,未来映画社,ユニバーサルミュージック/製作著作:「心配無用ノ介 天下御免」製作委員会/(いずれもBS-TBS公式より)

 映画『侍タイムスリッパー』で主人公の侍が迷い込む撮影現場がテレビ時代劇「心配無用ノ介天下御免」。企画は監督が舞台挨拶で本当に制作したら面白いんじゃないかと口を滑らせたのがきっかけとか。ライムスター宇多丸による番宣も制作されて、BS-TBS、力入ってる。様々なパロディ的ツッコミ的メタフィクション的な視点を取り込んでいる模様。放送は07/16 23:00から毎週木曜日。土曜日17:00から再放送あり。映画の方も07/14(火) 21:00から放送される。

>「韮山城主北条氏の後家と結婚した」
 この話、永井豪の『北条早雲』に出てきます。そっちでは最初の妻は小笠原家の娘(冴子)ですが、男装して山中才四郎と名乗って駿河へ同行。産後の肥立ちが悪くて亡くなる。その後、北川殿と龍王丸が相談して韮山城主の後家と娶せると、この人がなぜか冴子と瓜二つで新九郎も気に入ってしまうという展開。

>「豊臣兄弟!」
 (20)までしか見てないのに、うっかり「本能寺の変」の予告やPRを見てしまう。NHK、力入れすぎ。信澄黒幕説ということなんだろうか。なんだかテーマは兄弟愛(+憎悪)と言われてる気がするんだけど、この後、秀吉は信雄と信孝を離反させて織田家を解体、同時に家康も排除、天下人を目指すんだけどいいのか。豊臣兄弟さえ仲良ければ、後は野となれ山となれ?(笑) あっ、与一郎はどうなったんだろ。

>『幻想水滸伝』
 その後、確認すると原作がコナミデジタルエンタテインメント、制作・プロデュースがKONAMI animation。そりゃぁ、ゲームですよね(汗)。



#11594 
バラージ 2026/07/11 11:38
テープが残ってないであろうマイナー時代の歴史ドラマ 前編

 テープが残ってないであろう古い時代の北条早雲実写ドラマのことを書いたんで、その他のマイナー題材の古い実写ドラマも探してみたら、意外にまあまああったんで2回に分けてご紹介。

『石の庭』(1957年、NHK、単発)
 テレビドラマデータベースの解説によると、「京都龍安寺の石庭作りをめぐる兄弟の愛憎と封建社会における階級制度を鋭くえぐったドラマ。」「【役名(演技者)】小太郎(久米明)、末二郎(石田茂樹)、白妙(高森和子)、さよ(鳳八千代)、善阿弥(松岡与志雄)、定利義政(関本勝)、細川政元(武周暢)、竜安寺管主(内田朝雄)」。定利義政というのはおそらく足利義政の誤字誤植でしょうが、引用元の誤植なのか、データベース執筆者の誤字なのかは不明。NHKアーカイブスにも「ドラマ 石の庭」という項目があり、それによると「室町時代、応仁の乱後の京都を舞台に、龍安寺の石庭にまつわる兄弟愛と封建社会の階級制をえぐり出したドラマ。久米明が庭師兄弟の兄を演じる。1時間の生放送でカメラが2台のみという限られた条件での制作。演出は和田勉、NHK大阪放送局制作。第12回芸術祭奨励賞を受賞。」とのこと。
 原作はドラマの台本として書かれた有吉佐和子の戯曲とのことで、テープが残ってないだろうとか言っといて初っぱなから何なんですが、このドラマは映像が残ってるようです。NHKアーカイブスの「93歳の久米明さん、和田勉ドラマ&大河第1作」という記事によると、和田勉がキネコ(テレビ画面をフィルムで撮影して記録したもの)のテープを久米明に贈り、久米明はそれをVHSにダビングして持っていたとのこと。キネコの映像がすでにNHKアーカイブスに保存されていたとも書いてあるんですが、僕が「ドラマ 石の庭」の記事のトップにあった3分ほどの映像を観たところ、これがどうも同じタイトルでストーリーも同じと思われるものの出演者が違う。どうやら下記のリメイクドラマの映像のようで、NHKにメールで指摘したところ、ご指摘ありがとうございますとのことで削除されてしまいました。まあ、それとは別にこちらのドラマもアーカイブスに映像が残っていた可能性もありますが。

『石の庭』(1962年、NHK、単発)
 テレビドラマデータベースの解説によると、「管領細川政元の娘(有馬稲子)を主人公に竜安寺石庭にまつわる物語を描いた1957.11.22に放送された芸術祭参加作品のリメイク。」「出演 有馬稲子、佐藤慶、小林昭二、飯田桂子、谷口完、入川保則、西山嘉孝、内田朝雄」。しかし細川政元の娘では時代が合わないし、そもそも政元に子供はいない(笑)。おそらく細川勝元の間違いでしょう。NHKアーカイブスの「過去番組表検索 NHKクロニクル」には、「文芸劇場 「石の庭」 〜1962年イタリア賞テレビドラマ部門参加作品〜」として情報が掲載されてますが、内容についてのくわしい記載は無し。上記1957年版の誤掲載映像では最初に勝元の娘と足利義政が出てきて、おそらく勝元の娘が有馬稲子。その後に出てきたのが庭師兄弟の兄の佐藤慶と弟の小林昭二でした。こちらでは庭師兄弟よりも勝元の娘の白妙のほうが主人公のようです。NHKは何らかの形でこちらの映像も再び掲載することを検討しているとのことだったので、そのうちどこかに掲載される可能性もあるかもしれません。
 原作である有吉佐和子の戯曲を読んだ人のブログも発見。それによると、足利義政は足利善政、細川勝元は細川且元と読みは同じでもちょっとずつ字が変えられてます。どうも昔は史実からちょっと離れた伝奇ものなんかではこの手のことがちょくちょく行われてたようですね。どうせ演劇でも映像でも台詞だけで字幕が出なけりゃ同じ発音ですし。且元の娘の白妙の弟も出てくるようですが、政元という個人名は記されていません。また半田美永の「有吉佐和子『紀ノ川』の研究」という論文によると、戯曲「石の庭」は相阿弥の作と伝えられる室町時代の名園・龍安寺の石庭を題材にした作品で、史実では相阿弥に築庭の事実は無く、竜安寺が建築されるずっと前に死んでいるという疑問を契機として、龍安寺石庭で本堂からは見えない高い岩の裏側に彫られていた「小太郎、末二郎」という2人の名前に着目して創作した作品とのこと。白妙が細川勝元の娘で政元の姉なら、史実の洞松院「めし」なのかというと、「めし」とは設定が異なる部分があり、あくまで架空人物と考えたほうが良さそうです。作品全体の雰囲気はなんとなく岡本綺堂の『修禅寺物語』に似たところも感じられますね。

『幻花』(1977年、テレ朝、全15回)
 テレビドラマデータベースの解説によると、「文化は爛熟したものの、政情騒然たる室町時代を背景に、将軍義政をめぐる正妻・富子(夏純子)と愛人・お今(藤村志保)との壮絶な女のいくさ≠ノ、重要な役割を果たした侍女・千草(中野良子)の波乱に満ちた半生を描く。」「千草は実は日野富子の双子の姉妹という設定だったという。政情騒然たる室町時代、将軍・義政(山口崇)の侍女で子どもの頃から予知能力を持つ女(中野良子)の波瀾の半生。」「千草(中野良子)、日野富子(夏純子)、お今(藤村志保)、重子(三益愛子)、又四郎(沖雅也)、義政(山口崇)、おしん(佐藤友美)、善阿弥(下元勉)、一休(金子信雄)、源真坊(牟田悌三)、日野勝光(西沢利明)。」。
 原作は瀬戸内晴美(寂聴)の小説とのことで、観た人のブログというかサイトを発見。結構探せばいるもんですね。上記登場人物のおしんというのは千草が幼い頃から姉のように慕っていた盲目の琵琶弾きで生臭坊主の一休と愛し合うとのことだから、史実の森侍者をモデルとした人物だと思われます。大河ドラマ『花の乱』ではその森侍者が日野富子の異父姉妹で入れ替わるという設定だったことも含めて、『花の乱』との相似を指摘してる人がAmazonの原作小説レビューにいました。生臭坊主の一休が金子信雄ってのもなんかいかにもだな(笑)。
 それにしてもマイナーな室町時代、しかも東山文化の時代のドラマが複数あったのは意外というかなんというか。しかも原作者が有吉佐和子に瀬戸内寂聴だというからなんとも文学の香りがします。どちらも女性作家だし、東山文化は何か女性を惹きつける時代なのかも。


>『豊臣兄弟!』
 あー、なるほど、本能寺の変、そういう展開なのね。確かに津田信澄がクローズアップされるなんて珍しいなとは思ったんだ。それと観てて四国政策変更説じゃ、ちょっと弱いよなぁとも思ったんですよね。それだけで光秀が謀反起こすかなぁ?と。今んとこ光秀はそんなにいじめられてないんで怨恨説や不安説は無さそうだし、野心家キャラでもないんで野望説もまず無い。黒幕説も今のところあまり押し出されてないんで、結局は四国政策変更説なのかなあ?と思ったら、思いっきりフィクションをぶち込んできた(笑)。でもあれじゃ信澄がなんかちょっとかわいそうな気も。いやドラマ的にじゃなく史実的に。

>プレジデントオンラインの連載記事「徹底検証「大河ドラマと本能寺の変」」
 すいません、1週間に2記事ずつ掲載でもなかったようで、一気に『どうする家康』まで全て掲載されてしまいました。しかしこうして全部読んでみると、大河ドラマでは意外に野望説は採用されてないんだなあ。一昔前は怨恨説と双璧の説でしたが、大河で採用されるのは怨恨説ばっかり。黒幕説が登場する90年代からはちょくちょく黒幕説が微妙に入りつつもやっぱりメインは怨恨説。その後も現在に到るまで基本的には怨恨説で、たまに黒幕説がスパイス的にまぶされるといった感じですかね。信長が主人公なんで悪者にできない『信長』では不安説、光秀が主人公なんでカッコ悪くできない『麒麟がくる』では義憤説だったけど、まあこれは例外でしょう。野望説はドラマ的にというか物語的に話が上手く展開できないんだろうなあ。

>『幻想水滸伝』
 これはわりと有名なファンタジーRPGゲームなんじゃないですかね。僕はコンピューターゲームはかなり前にほぼやらなくなったんですが、このゲームの名前はわりとちょくちょく聞くことがあるんで。「水滸伝」は名前に付いてるだけで内容とは関係ないんだろうと思ってましたが、Wikipediaによると一応『水滸伝』をモチーフにしているそうです。ただし、シリーズを追うごとに『水滸伝』との関連性は薄くなってるらしく、ゲームの人気が高まるにつれて作品自体の自律性が生まれたんでしょうね。



#11593 
ろんた 2026/07/09 22:55
「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」

 録画して放っておいた冬アニメ。ふと思い立って見てみると面白い(<「豊臣兄弟!」見ろよ)。多分、大名火消しの話だったのが珍しくて録画したんだと思う。町火消しは「め組の辰五郎」みたいに時代劇によく出てくるけど、大名火消しはもっぱら悪役ですからね。フル3DCGだからと一部で評判が悪いみたい。でも、わたしは何も感じなかった。んで、あらすじ(↓)。

かつて「火喰鳥」と呼ばれた江戸随一の火消侍・松永源吾。訳あって火消を辞めていたが、突然新庄藩から仕官の誘いが来る。新庄藩の火消組は、金も無く、人材もおらず、周囲からさげすまれていた。妻・深雪の後押しもあり、源吾は頭取として崩壊した火消組を再建することに。一癖も二癖もある仲間を集め、「ぼろ鳶」と揶揄されながらも「どんな命も救うのだ」と奮闘する源吾達だったが、江戸では「狐火」という謎の連続不審火が続いていた。迫りくる災いに、諦めの悪い火消達が奔走する、エンタメ活劇が開幕! (公式HPより)

 原作は今村翔吾の「羽州ぼろ鳶組シリーズ」。瀬口忍のコミカライズあり(少年チャンピオン連載)。前半は「七人の侍」的な王道パターンで「一癖も二癖もある仲間を集め」る。後半、「羽州ぼろ鳶組」が発足してからは「狐火」との対決。こいつらが明和の大火(目黒行人坂大火)を引き起こす。「ぼろ鳶組」と一緒に戦うのは火付盗賊改方・長谷川平蔵宜雄(鬼平=平蔵宜以の父)。平蔵宜雄が火付盗賊改方だったのは史実で、明和の大火を引き起こした放火犯をお縄にしている。作中では田沼派っぽい。そして「狐火」の後ろ盾が田沼失脚を狙う"あの人"(名前だけしか出てこない)なのであります(笑)。田沼(こちらも名前だけ)も、もっと決定的証拠がないと追及できない、と見逃してしまう。原作は2017年には刊行されてるんで、「べらぼう」の影響じゃないでしょう。蔦重出てこないし。

>「無用庵隠居修行10」
 BS朝日のHPに情報がありました。2026/09/22 19:00-20:54放送。8月中に過去シリーズの再放送あり。公式のあらすじは長いんで見出しだけにすると「職と妻をなくした旧友と再会した半兵衛/その荒んだ生活のウラには悪徳商人が!?」という話。悪徳商人というのが古道具屋・剥屋忠右衛門で、転売ヤー、地上げ屋、博打の元締めなどなどの悪事に手を染めている模様。そしてこの剥屋とつるんでいるらしいのが蔦重。さらに登場人物を見ると「一橋治済(中村又五郎)」とある。あ〜っ、ラスボスだ、ラスボスだよ、間違いない(笑)。こっちは「べらぼう」の影響かな。

>「幻想水滸伝」
 やはりBS朝日のHPで発見。秋アニメらしい。サブタイが"Suikoden:The Anime"なんで(アニメで『水滸伝』やるんだ)と思ってあらすじを見ると「デュナン地方北東部に存在し、強力な軍事力を保有するハイランド王国。その少年兵部隊に所属する少年──主人公・リリュウと親友のジョウイ。」とある。どこで誰だよ! どうも中世ヨーロッパ風ファンタジー世界で『水滸伝』をやるみたい。一応、あらすじの最後の方には「108の星が一際輝く夜空の下で、答えの無き問いを胸の内に抱えながら、少年達は、自らの信念のもとに歩み始める──」とあって『水滸伝』テイストがあります。キャラ名が全部カタカナなんで誰が誰やら分からないけど(笑)。原作はゲームかな?

>「逃げ上手の若君 第二期」
 第一回は07/17とのこと。07/10は「アニメダマ」という番宣らしい。番組表が「調整中」となっていて変だと思ってたんだけど。そしてMXとBS11で第一期の再放送が始まり(07/13(Mon) 24:30〜)、終了次第、同枠で第二期が放送される模様。

>『豊臣兄弟!』
 (17)で足利義昭追放をやってはいたんですけど、(18)の爆走の冒頭も義昭追放だったんでああいう表現になってます。今考えるとあれ、髑髏の薄濃とか万福丸の串刺し(磔?)をスルーするためだったような気がしないでもない(笑)。それにしても義昭に引導渡したり、お市を引き取りにいったり、豊臣兄弟大忙し。ちょっとフォレスト・ガンプっぽいと思ったりして。

>「ワールド イズ ダンシング」「天幕のジャードゥーガル」
「ワールド イズ ダンシング」は、舞による身体表現と映像の美しさで引き付けられましたね。あの「よきもの」、人ならざる者の仕業なのか、人の仕業か。今後の宿題になるのか。原作読んでないからわからないけど(汗)。「天幕のジャードゥーガル」はあのマンガの世界が再現されていて驚きました。どこかエキゾチックでありながらもリアル。そこにあのデフォルメされたキャラが動く。ただアニメとして出来がいいだけに第二回が辛くなったりして。奥様も朋輩の女奴隷たちも死んじゃうし。そして第三回はエウクレイデスの『原論』を読むためにソルコクタニ・ベキのもとに引き出される。ドレゲネと出会うのは第三回の終わり? それとも第四回か。



#11592 
バラージ 2026/07/04 18:58
今頃になって考えが変わる

>鎌倉史ミニ追記 源実朝の後継者の話
 また久々に鎌倉史の話です。
 以前#11278で、慈円が『愚管抄』に、北条政子が熊野参詣のために上洛中、後鳥羽上皇の乳母の卿二位(藤原兼子)と対面し、その際に卿二位が政子に、後鳥羽の皇子で自身が養育した頼仁親王(母は実朝正室の姉)を息子のいない3代将軍・源実朝の後継者とすることを持ちかけたという噂を記したことを紹介しました。そしてその上で、源氏将軍の後継者を源氏とは血のつながりのない親王にすることを幕府の人間でもない卿二位のほうから言い出すことは不自然な話で、実際には政子の側から卿二位に相談したんだろうとする推測があることも紹介し、僕もそれを支持した上でその主体は実は実朝自身だったんではないかとも推測しました。
 しかしその後、時間を経てつらつらと考えた結果、もし実際に政子の側から卿二位に相談したのなら、逆に卿二位が政子に話を持ちかけたという正反対の噂に転じるのは、やはり無理があるだろうと考え直しまして、やはりこれは噂通りに卿二位の側から政子に話を持ちかけたというのが事実なんだろうと考えを変えました。ただ、いくら後鳥羽の乳母の卿二位でも、後鳥羽に無断で皇子を鎌倉将軍の後継者にするよう持ちかけるのは僣越のそしりを免れないでしょう。よって卿二位の独断とは考えにくい。少なくとも後鳥羽の了承を得ていたか、もっと言えばそもそもこの話は後鳥羽の主導だった可能性が高いように思われます。実朝より上位の存在である後鳥羽だからこそ、このような少々無理筋の話を持ちかけることが出来たと考えるのが自然なんではないでしょうか。後鳥羽にすれば、自らの皇子を鎌倉殿にすることが出来れば、幕府を直接コントロールしやすくなると考えた可能性が高いように思います。その一方でそのような提案にはやや無理があり、幕府がそれを受け入れる可能性が高くないことも認識していたでしょうから、幕府から圧力と受け取られぬよう、また断られても後鳥羽の体面に傷が付かぬよう、後鳥羽の名前は出さず、あくまで水面下での非公式な打診として卿二位が政子に持ちかける形を取ったものと考えれば納得ができるように思うんです。
 また政子はその上洛中に卿二位の斡旋で従三位に叙され、また後鳥羽より参内して対面するよう仰せが下りましたが、政子は辺鄙の老尼が龍顔に拝するなど益も無いことなので仰せには従えませんと辞退して、諸寺参拝を切り上げて急ぎ鎌倉に帰ったとあります。実朝後継に親王を下す打診は重大事で、当然ながら政子がその場で返答できるような話ではなく、また参内して後鳥羽に拝謁し直に要請されて断れなくなることを恐れ、幕府へ持ち帰る形となったのだと思われます。しかしその後幕府から何らかの返答がされた形跡がありません。幕府としては受け入れがたい要求ではある一方で、背後にいるであろう後鳥羽の心証を悪くしないよう、また一応万が一の選択肢として残しておきたいという考えもあったのではないかと思われ、明確な回答は避けてうやむやにしてしまったんではないでしょうか。受け入れた後で実朝に息子が誕生してしまったりしたら、後の時代の足利義政みたいにややこしいことになりかねませんし。

 さて、それではなぜ実朝暗殺後には逆に幕府の側から後継者として親王の下向を求め、後鳥羽の側がそれを嫌がるという正反対の展開になってしまったんでしょうか。それは実朝暗殺によって状況が変わってしまったからだと思われます。まず幕府側ですが、もともと北条氏や大江広元ら幕閣は公暁ら頼家の遺児に警戒心を持っておらず、だからこそ鎌倉に呼び戻して鶴岡八幡宮別当にしたと考えるのが妥当だと考えられます。ところがその公暁が実朝を殺害し、その際に「親の敵はかく討つぞ」と叫んだ上、さらに北条義時をも殺そうとした(しかし義時と間違えて源仲章を誤殺した)ことは、義時をはじめとする幕閣には驚天動地の非常に大きな衝撃だったことでしょう。公暁を誅殺した時点で頼朝の直系男子としては公暁の弟の禅暁と実朝の異母兄の貞暁が存命でしたが、おそらく幕閣は禅暁も兄同様の恨みを抱いていることを恐れたと思われ、公暁に与したという嫌疑で誅殺。貞暁については実朝より年上な上に当時すでに僧籍が長く、俗世間と隔絶した高野山に入っており接触も難しかったという理由もあって、後継から除外されたんではないかと推測します。そして過去に卿二位から打診があったことを思い出し、後鳥羽上皇の親王下向を求めるということになったんではないでしょうか。
 一方の後鳥羽上皇ですが、実朝後継として親王下向を求める幕府に対して、「いずれ必ず下向させるが、今はまだその時ではない」と返答したと『吾妻鏡』は記しています。なぜ今はまだその時ではないのかは述べられておらず不明。一方『愚管抄』では後鳥羽は親王を鎌倉に下せば日本を2つに割ることになると危ぶんだと記しており、実は王権が分裂することを危惧していたということになります。ところが山本みなみ氏の発見した『門葉記』に収められている慈円が西園寺公経(実朝後継に下された摂関家の三寅〈九条頼経〉の外祖父)に宛てた書状には「実は後鳥羽院は大変にご立腹である。三寅の下向を本心では納得せず反対していたのを、自分がいろいろと工作して、ようやく下向にこぎつけた。やはり院は自分が武士を思うようにできないのは、不本意だと思っておられるようだ」と書いてあるとのこと。人臣である摂関家の三寅なら日本を2つに割ることは無いわけですから、それもまた後鳥羽による朝廷公卿向けのポーズだったことがわかります。三寅下向にも反対だったのなら後鳥羽はそもそも鎌倉殿の後継を出すこと自体に反対していたことになりますが、それはなぜでしょうか? これは推測ですが、後鳥羽は鎌倉殿の後継を出さないことによって幕府が自壊に導かれ、主を失った武士たちが個々に朝廷(というか自身)に仕える源平合戦以前の状態に戻ることを望んだんではないでしょうか。つまり後鳥羽上皇の意図と志向は「自身の息子を鎌倉殿として幕府をコントロール→鎌倉殿不在による幕府の解体→そして武力倒幕(承久の乱)」と幕府や武士を自らの支配下に収めることで一貫していたというのが、現在の僕の考えであります。


>世阿弥アニメ
 え? 世阿弥のアニメ?と僕も思って調べたら、そんな作品の放送が始まったことを知りました。『ワールド イズ ダンシング』、僕の地域の地上波放送は無いんですが、BS朝日の放送の第1話をとりあえず録画して観てみたところ、ふむ、なかなか面白いじゃないですか。これはちょっと続けて観てみようかな。しかし南北朝室町ものってなぜかアニメが多いですねえ。なんといってもまず『一休さん』がありましたし、最近でも映画『犬王』にテレビアニメ『逃げ若』、そして本作など実写よりアニメのほうが多いような。足利義満なんてアニメでばっかり見てるような気がします。

>『豊臣兄弟!』
 僕も主人公の秀長がいまいち目立たんなあ、と感じてます。まあ『平清盛』や『真田丸』にもその傾向がありましたし、ある種の型にハメられやすく遊びの部分の少ない主人公よりも、自由にやれる周辺人物のほうがキャラを立たせやすいのかもしれませんが。本作でも秀吉役の池松壮亮のほうが出色という感じで、ドラマが始まる前はこれまで池松壮亮が演じた役どころから秀吉を演じるイメージがわかなかったんですが、さすがの演技派と感心しております。
 話変わって将軍足利義昭追放ですが、浅井・朝倉滅亡と同じ回にやってませんでしたっけ? 兄弟が尾上右近に会いに行ってたと思うんですが。確か追放の通告?か何かの使者みたいな役回りだったような。

>長宗我部父子の出てきた映像作品
 大河ドラマ+時代劇登場人物配役事典によると、長宗我部元親は大河ドラマ『黄金の日日』(演:庄司永建)と『軍師官兵衛』(演:ダイヤモンド勝田)に出てきたようです。どっちもほとんど、もしくは全く観てないからよくわからんけど。
 一方、長宗我部盛親はやはり大坂の陣絡みで登場例が多いようで、映画『真田幸村の謀略』(演:有川正治)、『茶々 天涯の貴妃』(演:中丸新将)、『真田十勇士』(演:吉永秀平)、大河ドラマ『徳川家康』(演:大久保正信)、『葵 徳川三代』(演:冨家規政)、『天地人』(演:川野誠一)、『真田丸』(演:阿南健治)、『どうする家康』(演:火野蜂三)、新大型時代劇『真田太平記』(演:久富惟晴)といったあたりに出てきたようです。でも『真田丸』以外は全然記憶に無いんだよなあ。『真田幸村の謀略』『真田十勇士』『徳川家康』『葵 徳川三代』『どうする家康』は観たはずなんだけど。ま、大坂の陣の豊臣軍牢人衆は基本的に真田幸村一色で、盛親はその他大勢扱いだからでしょうけどね。

>プレジデントオンラインの連載記事「徹底検証「大河ドラマと本能寺の変」」
 すいません、1日1記事ずつ掲載ではなく、1週間に2記事ずつ掲載だったようです。よくよく考えりゃ1日1記事ずつ掲載じゃ編集部も大変ですよね。なお、新たに『利家とまつ』『功名が辻』の本能寺の変の記事が掲載されたようです。

>『若き日の北條早雲』
 あ、なるほど。応仁の乱中の足利義視の伊勢出奔とごっちゃになってるわけですね。あと個人的に思ったのは新九郎の姓が伊勢だからそこに引っ掛けたのかなと。それから自分の書き込みを読み直したら、義視の没落先を近江と書いちゃってましたが、美濃の間違いでした。そりゃそうだ、斎藤妙椿だって美濃の人なんだし、これは完全なる勘違い。どうもすいません。



#11591 
ろんた 2026/07/02 18:11
頼まれてもいないのに告知

 まだ読書欲は復活せず。書き込むネタはない。しかしなんだか『シン関ケ原』という本の噂というか、呉座氏の批判を読んでしまう。一応、読んどいた方がいいのかなぁ。なんか売れてるらしいけど。
 そしてこちらは、一週間遅れぐらいでテレビ雑誌(月刊)を買ったら、歴史ものアニメが三本あったのでご紹介。しかも南北朝時代が二本。

>「ワールド イズ ダンシング」
1374年、南朝と北朝二つの朝廷の争いが続く動乱の時代、北朝の征夷大将軍・足利義満は着々と権力を強めていた。猿楽を舞う観世座の座頭・観阿弥の子として生まれた少年、鬼夜叉。「なぜ人は舞うのか」ぼんやりした疑問を抱えながら、気持ちの晴れない日々を過ごしていたが、ある日『よい』舞に出会う。好奇心の強い美しき少年は人と出会い、笑い、泣き、自分の情けなさと向き合いながら、無常の世に生きる新しい舞を形作っていく― (公式ホームページより)
「三原和人によるモーニング刊行の衝撃的『能』漫画がついにアニメ化!」(公式HP)ということです。舞は「ダンス」でよかったのかな、とちょっと面倒臭いこと考えたりして。あと、なぜかTV雑誌の紹介では「12世紀」と200年ばかり間違っている。それじゃぁ、平安時代だよ(笑)。放送はTOKYO MXは07/02(木) 22:00-22:30から。視聴できない方はBS朝日でどうぞ(07/03 23:00から)。徹夜城さんの書き込みにあったのはこれですかね。

>「逃げ上手の若君」(第二期)
時は西暦1333年、武士による日本統治の礎を築いた鎌倉幕府は、信頼していた幕臣・足利高氏の謀反によって滅亡する。全てを失い、絶望の淵へと叩き落とされた幕府の正統後継者・北条時行は、神を名乗る神官・諏訪頼重の手引きで燃え落ちる鎌倉を脱出するのだった…… 。逃げ落ちてたどり着いた諏訪の地で、信頼できる仲間と出会い、鎌倉奪還の力を蓄えていく時行。時代が移ろう大きなうねりを、「戦って」「死ぬ」武士の生き様とは反対に「逃げて」「生きる」ことで乗り越えていく。英雄ひしめく乱世で繰り広げられる、時行の天下を取り戻す鬼ごっこの行方は――。(公式ホームページより)
 第一期が諏訪神党の撤退戦までだったんで、第二期はその続きから。尺的に時行が正体を明かして蜂起を呼び掛けるまでか? 国司の人力木造戦車が出てくるのでしょう(ワクワク)。中先代の乱は第三期ですな。みんな、放送を見たり円盤買ったり配信数を稼いだりしよう!(笑)。放送はフジ系のノイタミナ枠で多分、07/10(金) 23:30-24:00から。BSでの放送は無いのかな?

>「天幕のジャードゥーガル」
少女と妃。復讐の絆で結ばれた二人が、地上最強の帝国に嵐を起こす。母を亡くし、故郷からも遠く引き離された幼い少女・シタラは、学者一家の心優しい奥方・ファーティマに拾われる。「勉強して賢くなれば、どんなに困ったことが起きたって何をすれば一番いいのかわかるんだ」ファーティマの息子・ムハンマドの言葉に心を揺さぶられたシタラは、"知"の可能性と大切さを知り、教養を深めていく。いつの日にか、ムハンマドに追いつくことを夢見て……。その頃、皇帝チンギス・カンによる地上最強の「モンゴル帝国」が日に日に勢力を拡大していた。その歴史のうねりは、ついにシタラの住む街をも巻き込んでいく。帝国の第四皇子トルイによってすべてを奪われ捕虜となったシタラは、ただ一つ残った“知恵”を駆使して王族に取り入り、帝国を内側から崩壊させようと決意する。心に復讐の炎を宿しつつ、表向きは帝国に仕える身となったシタラはある日、第三皇子オゴタイの第六妃ドレゲネと運命的な出逢いを果たす。彼女もまた壮絶な過去を抱え、心の内に帝国への深い恨みを秘めていた。シタラとドレゲネ。出逢うはずのなかった二人が手を取り合うとき、運命が大きく動き始める。(公式ホームページより)
 夏アニメだと思ってなかったんでちょっとビックリ。原作者が産休ということで連載は休止していたみたいだけど、再開したのかな? 最新6巻も07/15に発売。アニメのサブタイが原作とちょっとだけ違っているのは何故か気になる。放送はテレビ朝日系IMAnimation枠で07/04(土) 23:00-24:00(次週からは23:30-24:00)、BS朝日も07/04(土) 25:00-26:00(次週からは25:00-25:30)で放送。土曜日の25:00というのは日曜日の01:00ということです。テレビ朝日系のない地方の方はBSでどうぞ。TVerでもやるかな。

>皆川博子原作の二時間ドラマ
 JCOM BS(BS260ch)で06/30 18:30-20:30に「北の椿は死を歌う」というのが放送していて、原作が皆川博子の同名小説。あらすじを見ると、結婚式場から消えた花嫁を探し求める話。新書版ノベルスからの注文が多かった頃の作品みたい。そしてノベルスからドラマに原作が供給されたのだな。その後、『恋紅』で直木賞をとると人情時代劇の依頼が殺到したそうな。

>「豊臣兄弟!」
 とりあえず20話までは見たけど、なかなか追いつけない。
 (18)はアヴァンのナレベースで足利義昭追放から長篠の合戦までをすっ飛ばしててポカ〜ン(笑)。まぁ、兄弟に関係ない話と言えばそれまでなんだけど、大状況として描いておいた方がいいんじゃないかなぁ。視聴者が自分の歴史知識を動員しないとついていけなくなりそうな。本編はコント風に演出された人材採用話。ネコの手も借りたい状況なのに採用人数が少なすぎるぞ。石田三成の茶坊主話はナシ。藤堂高虎ってあんな直情径行な奴なのかなぁ。
 (19)は慶の話。役者は頑張ってるんだけど脚本というかシリーズの構成がなぁ。エピソードをたった一回にギュッと圧縮しちゃったんで、キャラたちの気持ちの動きが急すぎる。こういうの、ちょっとずつ小出しにした方がいいんじゃないか。特に他人の子供を跡継ぎにするって小一郎の心理、当時の人間としては異常としか思えない。堀池頼昌が慶を斬ってまで与一郎を取り返したのは跡継ぎだから当然だと思うけど、ドラマ的には慶(あるいは父の安藤守就)憎しで斬ったみたいになってたな。そうじゃないと養子には出さないか。普通なら慶の下で養育し、後々堀池の家を再興するという話になるかと思うが。あと、信長がわざわざ慶を小一郎に嫁がせる理由、描かれてたかな。そして与一郎、本能寺の変前後に死んでしまうのであった。合掌(まだ早い)。
 (20)は信貴山落城、松永久秀爆死。しかし平蜘蛛は……ってあんな落ちはないだろう。北陸から勝手に帰って来ちゃう秀吉に信長激怒は当たり前だけど、殺すと言い切っちゃうのは「?」。そして都合よく松永久秀が裏切るの、なんか説明が欲しかった。久秀の話は悪い意味でコント的になってるし。羽柴兄弟が説得にあたったってのはフィクションだけど、まぁいいでしょう。
 まだ五話もあるけど書き込みできるように頑張ります(汗)。テレビ雑誌の情報だと07/12が本能寺の変、7月中に中国大返しと山崎の戦いかな。なんだか小一郎が大活躍するみたい。

>「若き日の北条早雲」
 足利義視の伊勢出奔はあったことのようです。『新九郎、奔る!』にも出てくる。ただし時期は応仁の乱の初め。でもあらすじの書き方だと応仁の乱の終結時の美濃下向と混同しているような。ドラマ自体の問題か、あらすじが間違っているのか。キャストは年齢的に合わない人が多いかな。さすがに「新平家」で牛若丸をやった志垣太郎でも茶々丸は無理だろうし、太田道灌は(当時の通説では)新九郎と同い年なのに芦田伸介だし。映像は残ってないんでしょうね、民放で80年ぐらいだと。石井ふく子Pの「肝っ玉母さん」「ありがとう」とかは残ってるんだけど。この間、最初期の土ワイ(一時間半)が放送されてたけど、フィルム制作だったし。扇谷上杉定正については、ゆうきまさみ先生ぐらいの年代の人たちは「関東管領」だと思ってる模様。たしかブログかなんかで「関東管領じゃないじゃん」と驚いていた。それはおそらくNHKの人形劇「新八犬伝」のせい。現在残っているのは三回だけみたいだけど。

>「13代将軍家定がふかわりょう」
 カステラ焼くのかな?(笑) この人の名前を見ると、『ブロッケンブラッド』(塩野干支郎次)に出てくる架空の時代劇「幕末ん坊将軍」を思い出して笑ってしまう。少年忍者と一緒にペリーの工作員と戦って、カステラも焼くのです。裏番組が「光圀公江戸日記」。

>皇室典範改定
 小林よしのりが「愛子天皇阻止のためだ!」と吠えてました。南朝子孫が出てきたら……X染色体を調べる?

>清水幾太郎
 今更ながら視点の話。徹夜城さんのお父上が手に取った『社会学入門』はカッパブックス。アマゾンで書影を見るとオーギュスト・コントの記念切手が表紙カバー。(なんでカッパブックス?)というのは、社会学が新しい学問として一種のブームになっていたのでしょう。その後もこういう例はありますね。感心する人はその先見性に驚いているみたいだけど、そうかなぁ? で、わたしが持っている清水幾太郎の本は『オーギュスト・コント−社会学とは何か』(岩波新書・黄)。オーギュスト・コントは社会学の創始者。しかし、この本を読んでも社会学について分かるわけじゃない。実はコントの社会学と今日の社会学は違うのであります。今日の社会学は人間集団(部分社会)を研究するもの。対してコントのいう「社会」は全体社会で、ヘーゲルの「世界史」みたいなものなのです。んで仕舞には「人類教」とか言い出しちゃう。「社会学入門」というならヴェーバーとかデュルケームの話しろよ、と毒づいたのでありました。
 その後の「転向」とか考えると清水幾太郎って、論壇の中心にいたい人だったんじゃないかという気もするなぁ。



#11590 
徹夜城(相変わらず忙しくて帰宅するとバテてる管理人) 2026/07/01 22:46
鳥なき島の蝙蝠とやら

 どうも、かなり久々に書き込みます。
 今頃になって世阿弥主役のアニメなんか見まして、「犬王」でも思いましたが、何気に最近は室町・南北朝ブーム…ってほどでもないけど、まったく不毛地帯といっていいほどだったこれまでに比べれば未開拓地帯がまだまだあるところにクリエイターの目がゆくようになったかな、と。


>「豊臣兄弟」
 一応主役のはずの秀長がどうしても存在感が薄く、結局は太閤記ドラマなんだよなぁ、と思いつつ、まぁまぁ毎回楽しんで観てます。
 さて長曾我部元親がいきなり出てきました。そりゃまぁ「姫和子」と呼ばれた事実はあるんですが、ああいうキャラなのかどうか。いきなり信長の前に現れるという分かりやすい展開になってましたが、考えてみると戦国大名として名前は知られてる方ですが元親が映像作品で出てきた前例ってあるんですかね?盛親はいくつもあるとは思うんですが…

 元親を出したのは最近有力視されてるらしい本能寺の変の原因「四国説」(四国方面の平定工作を光秀が担当してたら信長にちゃぶ台返しされて面目を失ったため、ってやつ)でいこう、ってことなのかな。歴代大河はその時その時の最新説を取り込んできたのも確かですからね。
 今度南北朝大河をやることがあったら、先日話題が出た「太平記史観」の本で出てくるように「新田義貞は尊氏のライバルどころか一門の一員程度だった」という描き方がなされるかな…などと。楠木正成も御内人説が有力で、最近の南北朝もの小説類にも反映されてますが、とにかく比較しようにも他の例がないですからねぇ。


>皇室典範改定
 この件、次回「史点」で書きますので短く。南北朝マニア的には「正平一統」の因果がめぐりめぐって…とか考えてしまいます(笑)。養子案も後花園の前例にならってますし、そこに継体天皇の例まで絡んできちゃう。
 ところで自称南朝子孫という人物が旧宮家の有名人のあの人と接点があったはずですが(著書でも触れてた)、彼が「正当な男系男子子孫」とか言い出したらどうするんだ、と(笑)。



#11589 
バラージ 2026/06/29 21:16
追記

 『若き日の北條早雲』を観た人のブログを発見。それによると、夢子という登場人物が新九郎の妹で今川義忠側室北側殿とのこと(演じたのは、あべ静江)。また小笛という登場人物が新九郎の妻で伊豆千代丸(氏綱)を産むがドラマの途中で病死(演じたのは叶和貴子)。その後、北條家の未亡人の伊都女という登場人物が新九郎の後妻になるそうです(演じたのは梶芽衣子)。北條家の未亡人って何だ?と思ったら、Wikipediaの北条早雲の妻子の項によると軍記物に「韮山城主北条氏の後家と結婚した」という記述があるらしい。



#11588 
バラージ 2026/06/29 20:29
北条早雲実写ドラマ

 マンガ『新九郎、奔る!』も大詰めに入ったようですね(すいません、僕は読んでなくて……)。時々、大河ドラマ候補に挙げる人もいる北条早雲ですが、実は過去に主人公の実写ドラマが2度ほど作られたことがあったようです。その2本を「テレビドラマデータベース」を基として以下にご紹介。

『天下を取れ』(1964年、日テレ、全13回)
 テレビドラマデータベースの解説によると、「このドラマの主人公は、関東武者の代表的な男、北条早雲。伊勢新九郎長氏と名のる彼は、応仁の乱から約20年後の延徳年間、日本史上に姿を現わした。この時彼は駿河の守護職今川義忠の食客で、年はすでに五十を過ぎていた。この30分は、その彼がついには足利将軍の甥、茶々丸を死においやり、伊豆、相模の両国を手中に収め、北条早雲の名を後世にのこすに至ったいきさつを描く。26回連続。ロケは小田原城を中心に、箱根湯本、湯河原、真鶴、日本平、伊豆半島、富士のすそ野と、北条早雲の足跡を追っている。」「今夜の物語は、戦乱で焦土になった京の町に、破れぞうきんのような衣をまとって現われた新九郎が、名僧一休と知り合い「天下を取る」と広言、その手始めに伊豆の扇谷上杉家と山内上杉家との争いの中にはいっていくところまでが放送される。」。
 文中の「今夜」とは第1回のこと。26回連続(2クール)とありますが実際には13回(1クール)で終わったようなので、まあ打ち切りですね。30分ドラマなんで、30分×13回だからだいぶ短い。たぶん茶々丸を倒すところまでは行かなかったんじゃないかな。若き日の早雲が一休と出会うという展開も珍しい。旧説にしても早雲が「天下を取る」とまではさすがに言わんだろとか、なぜ伊豆に堀越公方ではなく扇谷上杉家と山内上杉家が?とかいろいろツッコミどころもありますが、史実云々よりも時代劇としての面白さのほうを優先したのかも。配役は「伊勢新九郎(北上弥太朗)、一休(中村栄二)、今川義忠(小堀明男)、新九郎の姉北川(阿井美千子)、小雪(佐治田恵子)」とのこと。小雪という人物が架空人物なのか名前のわからない実在人物なのかは不明。てか役者全員知らね〜。ま、時期的にテープは残ってないでしょうね。

『若き日の北條早雲』(1980年、テレ朝、全20回)
 テレビドラマデータベースの解説によると、「「国盗り大名」として戦国の世に地位を築いた北條早雲(若き日の名は伊勢新九郎)の大望に満ちた半生を描く大型スタジオ時代劇。応仁の乱が長期戦になり出したころ、伊勢新九郎=後の北條早雲(北大路欣也)は足利八代将軍義政の弟・義視(仲谷昇)に仕え、都での戦いに加わっていた。しかし義視は兄との争いに敗れ、伊勢の豪族・宇部兼友(川合伸旺)を頼って都落ちし新九郎もこれに従った。しかし新九郎は、義視と側近の手に負えぬ悪徳ぶりを目の当たりにし、浪人する決心をした。そんな新九郎の気骨に惚れた相模の乱破の長老・風魔の弥造(中村翫右衛門)は、彼に軍資金を与え後押しした。」。
 原作は早乙女貢の小説『北条早雲』とのこと。こちらは1時間ドラマです。あらすじは第1回のもののようですが、足利義視の扱いがちょっとひどいなあ。「手に負えぬ悪徳ぶり」ってなんだよ。都落ちした義視の行き先が伊勢ってのも謎。宇部兼友ってのも架空人物のようだし。史実では斎藤妙椿の助けで近江に赴いたはずだけど、当時の研究状況ではそこまでわかってなかったんだろうか? いやでもそんなはずはなあ。
 Wikipediaによると登場人物は架空人物が物語の中心を占めてるっぽいですね。実在人物は新九郎と義視以外に、今川範満〈小鹿範満〉(中山仁)、足利茶々丸(志垣太郎)、太田道灌(芦田伸介)、竜王丸→今川氏親(工藤秀和→吉田友紀)、上杉定正〈扇谷上杉定正〉(伊藤正次)、足利政知(内藤武敏)、伊豆千代丸〈北条氏綱〉(木内さとし)といったところ。2代目の氏綱が出てくるのは珍しい。実写作品で他に出てくるのは大河ドラマ『風林火山』ぐらいのようで、むしろ親父の早雲よりも登場作品が少ないんですよね。3代氏康は信玄・謙信もの、4代氏政・5代氏直は三英傑ものでわりと出てくるんですが、氏綱は時代的にも難しいですし。また扇谷上杉定正は『南総里見八犬伝』で悪役まわりにされている(史実とは異なり関東管領でもある)ため、『八犬伝』の実写映像作品に出てきたことがあります。2006年のTBS2夜連続ドラマ『里見八犬伝』では大杉漣が、2024年の映画『八犬伝』(原作は山田風太郎の同名小説)では塩野瑛久が演じてました。
 なお、こっちは時期的にテープが残ってるかどうか微妙なところ。時代劇専門チャンネルで放送されたことも無いようだし、やっぱりテープは残ってないのかもしれません。


>『豊臣兄弟!』
 何話かぶりに観たら、ちょうど長宗我部元親の初登場の回。なかなかに面白いキャラクターの持ち主で印象的でしたね……と思ったら、どうやら本能寺の変が大河ドラマでは珍しい長宗我部関係説みたい。これは大河では初めてか?と思ったら、プレジデントオンラインの連載記事「徹底検証「大河ドラマと本能寺の変」」によると最初に長宗我部関係説に言及されたのは1989年の『春日局』だったそうです。この連載、古典『信長公記』に始まって、今のところ大河『太閤記』『国盗り物語』『黄金の日日』『おんな太閤記』『徳川家康』『春日局』『信長』『秀吉』までが掲載されてますが、続けて読むと大河の本能寺の変の描写って結構その時々の通説や流行りの学説を反映してるのが分かって面白い。1日1記事ずつ掲載されていくようなんで、すぐ次の記事が読めるのがいいですね。

>お前ん城(ち)の階段、急だな(By徳川家定)
 来年の大河ドラマ『逆賊の幕臣』の追加キャスト第5弾が発表。12代将軍徳川家慶が宅麻伸、13代将軍家定がふかわりょう、14代将軍家茂が神尾楓珠とのことで、この面子だと3人の将軍はいずれも好意的に描かれそう。ま、主人公が小栗忠順だから当然か。家定もふかわりょうならアホっぽくならなそうだな。そういや史劇や時代劇で階段のシーンってあんまり見ないような。
 それより驚いたのは鳥居耀蔵が登場すること。大河初登場ですね。北村一輝だといい人の可能性も悪い人の可能性もありそうですが、役紹介によると「徳川家に忠義を尽くすことを誇りとして出世。初登城した若き小栗は、そんな鳥居の背中に憧れを抱く。天保の改革では南町奉行として市中を厳しく取り締まり、幕府に有害とみれば決して手段を選ばないため無慈悲な「妖怪」と呼ばれる。徳川の秩序を揺るがすものとして西洋の思想を警戒し、小栗の師で儒学者でありながら西洋事情に精通する安積艮斎ら開明派を目の敵(かたき)にする。」とのことだから、少なくとも全面的な悪者になることは無さそう。鳥居再評価路線でしょうか。小説だと平岩弓枝の『妖怪』(文春文庫)が鳥居再評価路線だったみたいだけど(未読)。以前紹介した『「蛮社の獄」のすべて』(田中弘之、吉川弘文館)でも、鳥居については性格は卑劣だが識見は確かな人物と評されてましたね。天保の改革が描かれるのも大河では初めてだなあ。ってことは水野忠邦も出てくるのか?
 そして主演に続いて第2弾で早くも単独で紹介されていた勝海舟。演じるのは大沢たかおだから悪役まわりってことはおそらく無いでしょう。役紹介によると「エリートの小栗とは圧倒的な身分の差があったが、開明派同士で時に手を組み、西洋列強の脅威に立ち向かう。だが、やがてその道は大きく分かれていく――」だそうです。



#11587 
ろんた 2026/06/21 16:26
『新九郎、奔る!(23)』(ゆうきまさみ/小学館)

 読書欲というものが消失。「シャム猫ココ」シリーズも読み進められず。読書欲とは関係ないけど「豊臣兄弟!」も録画したまま。じゃぁ、何してたかと言えば、HDDの肥やしになっていたバラエティ(「かりそめ天国」とか)を見ていたのでありました。とっくに終わってるけど「ぶらぶら美術館博物館」とかもすごく溜まっている。ということで、『新九郎、奔る!(23)』であります。以前にチョコチョコ書いていたこととかぶってる部分あるけど乞うご容赦。

明応二年八月三十日。興国寺の新九郎のもとへ、伊豆討ち入り参加の面々が集結。夜間の出発に備え軍議と準備が進む。一方、堀越御所では茶々丸の側近・狩野太郎が、警固の手薄さを危惧し、対策を講じていた。迎える討ち入り当日。新月のなか進む新九郎に訪れるのは、明るい夜明けか、それとも───(カバー裏より)

・帯には「伊勢新九郎が歴史の表舞台に登場する日。」とあり、いよいよ伊豆討ち入りであります。
・新九郎の戦略は、まず葛山に三島を突かせる。これで黄瀬川(*1)の関所を動揺させ、根方街道(*2)を進んできた本隊が制圧、下田街道(*3)に出て堀越御所へと南下。本隊の一部を関所の手前で狩野川河口に向かわせ、騎馬は陸路で徒士は海路で三津湊へ。山越えさせてこれも下田街道に出て北上。南と北から堀越御所を包み込む。東は下田街道で西は狩野川なんで逃げ場なし……のはずだったんだけど(笑)。
・堀越御所の警護が手薄だったのは、茶々丸が義高融和派討伐に奉公衆をつぎ込んでしまったから。法事の打ち合わせに実家に行っていた狩野太郎佑長が戻って気づき、自らの手勢を御所に詰めさせ奮戦。人というのはどこにでもいるなぁ、と思ったら本当につまらない死に方をしてしまう。かわいそう。
・太郎の知らせで駆け付けた中伊豆の狩野勢は間に合わず。堀越御所にあがる火の手を見て歯がみする狩野狩野介佑貞(太郎佑長の父)。しかしそこに「朝飯はまだか?」とのんきに茶々丸が顔を出す。茶々丸、夜通し山で遊んでいたのであった(笑)。
・「ふざけるなぁっ!! どこの世界に山遊びのために法要をすっぽかす施主がいるか!! 真面目にやれ!!」(新九郎) 「上手の手から水がもれたどころか──すくう水がなかったわけだからな」(大道寺太郎) 「武門に身を置けば討ち死にが誉れということも当たり前にござるが──太郎らはそこに居りもせぬ御所様を居るものと信じ、守らんとして死んでいったのですぞ! これほど空しい討ち死にがどこにござろうか!!」(狩野狩野介佑貞) 「茶々丸の首を獲りそこなったとはどういうことだぁっ!! ……茶々丸の首を獲るまで、上洛は許さぬとそなたの兄に伝えよ!」(足利義高)という具合に諸方面に波紋を広げる伊豆討ち入り。幕府ではとりあえず細川政元に従って「私闘」ということで知らんぷりすることに。しかし伊勢貞宗は自分の思惑を越えて新九郎が動いているのを感じるのであった。山内上杉は茶々丸方につくことになるけど、扇谷がちょっかい出すだろうから、伊豆にかまけてる余裕はないような。
・面目を失った(同時に本貫の領地を失った)茶々丸の腰巾着どもが夜襲を計画。大失敗して流れがぐっと新九郎側に傾く気がするなぁ。ってことで待て次巻。
・追記:「長岡」という地名がやたら出てくるんだけど、現在は温泉場で賑わってるものの、温泉が見つかったのは明治時代で、新九郎の時代にそんなメジャーな地名だったかどうか。そもそも長岡という地名があったのかどうか。分かりやすさ優先か? 近くにある古奈温泉の方は、信じるも信じないもあなた次第ではありますが、頼朝も湯治に来たという話があるぐらいに古い。テレ東の旅番組でやってた(笑)。

*1:駿河と伊豆の国境。狩野川の支流。頼朝と義経の対面石でも有名。
*2:愛鷹山の裾野を走る街道。海側には東海道(with千本松原)。間が水田というか湿地帯。この辺が新九郎の領地で名目三百貫、実質三十貫(笑)。現(県)22号。
*3:伊豆半島を南北に貫き三島と下田を結ぶ街道。分かりやすく言うと「あまぎ〜、ご〜え〜」の道。現(国)136号。

>『信長遊び』(黒鉄ヒロシ/リイド社)
 本箱から見つかった本。マンガだけどストーリーはなく、様々な点から信長を論じている。もっとも、信長が神や仏といった超越者を信じず、本能寺の変直前の光秀が神経症気味なのは司馬遼太郎準拠っぽい。そういえば黒鉄ヒロシには新選組ものもあったな。最後、近藤さんが馬賊になって満洲の荒野を駆けるという幻想で終わっていたような。



#11586 
バラージ 2026/06/19 18:22
南北朝本小ネタ

 先日、本屋に立ち寄ったら南北朝関連の新書や文庫の新刊本が同時にいくつか並んでました。ま、たまたま偶然近い時期に発売されたってだけなんでしょうが。

『南北朝時代』(森茂暁、講談社現代新書)
(公式サイトより)
「二人の天皇が存在した日本史上稀有な混沌の時代。しかしそれは同時に抑圧されていた「下々」には「成り上がる」恰好のチャンスでもあった。同時代の記録『太平記』で人々が生き生きと跳梁するのもそのような時代ならばこそ。「悪党」「バサラ大名」・・・後醍醐天皇も足利尊氏も、そのような時代を象徴する人物像ではなかったか? それまでになかった新たな「キャラクター」たちが既成の秩序を蔑ろに、新たな時代を切り開く。鎌倉幕府の滅亡から後醍醐による建武政権の成立と瓦解。観応の擾乱を経て足利義満による南北朝合体まで。混沌の中から新たな秩序が生まれ出る過程を多彩な資料を駆使して活写する意欲作。」

『太平記史観 日本人の歴史認識を支配した物語』(谷口雄太、角川新書)
(公式サイトより)
「中世から現代まで、数多の作品の種本になり続ける『太平記』。武士像はじめ、実は日本人の歴史認識を縛ってきた物語である。その虚実に加え、「史観」の影響力を気鋭が最新研究で暴く!」
「足利尊氏、新田義貞、楠木正成、高師直をはじめ、『太平記』で描かれた武士像、話の構成は中世から近世、近現代まで何百年も日本人の歴史認識を縛り、現実にも影響を及ぼした。例えば、徳川光圀の『大日本史』も『太平記』に依拠しており、その楠木正成像を筆頭に、尊王攘夷・皇国思想に「太平記史観」は繋がっていったのである。重要史料だが、虚実ないまぜで取り扱いが難しい物語。高師直=悪玉の修正はじめ、歴史学と国文学の格闘の成果を示しながら、我々の歴史認識まで問い直す。」

『極楽征夷大将軍(上・下)』(垣根涼介、文春文庫)
 これは単行本の文庫化ですね。上下巻で結構分厚い小説なんですねえ。

 しかし申し訳ないけど僕はどれも読んではおりません。あしからず。



#11585 
バラージ 2026/06/06 21:57
1990年代上海という時代

 ウォン・カーウァイ監督初のテレビドラマ『繁花』全30話の録画をようやく視聴終了。
 1980年代末から90年代前半の上海を舞台に、改革開放路線で計画経済から市場経済へと切り替えられた激動の時代の中国の金融市場とビジネス界に飛び込んでのし上がろうとする青年を主人公とした群像劇ドラマです。原作小説があるとのことで(邦訳あり。未読)、原作は1960年代の文化大革命時代から90年代までの上海を舞台としているそうですが、ドラマでは最も上海がエネルギッシュだった時代に焦点を絞ったんでしょう。ドラマを観る限りでは、日本で言うと60年代の高度経済成長期や80年代後半のバブル経済時代の雰囲気に近い。
 個人投資家となった主人公による株式市場でのマネーゲームが主な題材ですが、そういう題材だけで1本の作品、しかも30話もあるドラマにするというのは結構珍しいような気が。個人的にはウォン・カーウァイでなければあまり観ようとは思わない題材ですが、もちろんそればかりではなく主人公や彼を取り巻く人々の人生や愛や友情をも描いていきます。いわばマネーゲームが一応の題材ではあるものの、むしろあの時代の上海とそこにいた人々を描くことこそがカーウァイのやりたかったことなんでしょう。
 実際、カーウァイも半分ぐらいにさしかかるあたりで我慢できなくなったのか(笑)、90年代の自作映画『欲望の翼』や『花様年華』の音楽を使ったり、それらのシーンを想起させるシーンを入れてきたりして、おお、やっぱりウォン・カーウァイ作品、と喜ばせてくれました。両作とも60年代の香港を舞台とした香港映画ですが、よくよく考えると90年代に60年代を舞台とした作品を作るのと、2020年代に90年代を舞台とした作品を作るのはほとんど同じような年月の差があるわけで、90年代もそんな昔のことになったのか……とあの頃に思いを馳せてしまいましたね。日本の東京も回想で出てくるシーンがあり、そのシーンでは『有楽町で会いましょう』(カヴァーバージョン)や『ラブストーリーは突然に』が流れます。カーウァイによると90年代の中国ではドラマ『東京ラブストーリー』が爆発的にヒットしたんだとか。
 主演はフー・ゴーで、3人のヒロイン、下町で飲食店を経営する中年女性をマー・イーリー、国営貿易会社の営業女性をティファニー・タン、1等地の巨大飯店オーナーの女性をシン・ジーレイがそれぞれ演じています。下町女性と営業女性は主人公に密かに想いを寄せてるんですが、主人公はかつて若く貧しい頃に付き合いながら別れた女性を今だ密かに想っており、またオーナー女性はかつて愛し合った男が自殺していて、結局誰の想いも成就しません。そういうところもまさにウォン・カーウァイ。なお僕はフー・ゴーの出演映画は『バタフライ・ラヴァーズ』『1911』『チィファの手紙』『クライマーズ』『鵞鳥湖の夜』を観たし、シン・ジーレイも映画『長江 愛の詩』『修羅:黒衣の反逆』『レスキュー』、ドラマ『如懿伝 紫禁城に散る宿命の王妃』で観ています。ティファニー・タンは名前はよく聞くんですが出演作品を観たのは初めて。マー・イーリーは名前を聞くのも初めてでしたね。
 最終回、主要人物の多くがそれぞれに旅立ちの時を迎え、その多くが上海を離れる展開には、寂しさと切なさを禁じ得ませんでした。独立起業して一時上海を離れていたティファニー・タンが上海に戻ってきて、自分の知らぬ間に顔見知りの人々が姿を消していたことに寂しさと切なさを感じていたように。しかしそれこそが常に変貌していく大都会上海の姿なんでしょう。そしてそのような“別れ”を描くのもまたウォン・カーウァイという作家の作風なのです。


>村重だしぃ〜
 秀長と奥さん=吉岡里帆の仲も修復されてラブラブになり、個人的にはあとはだいぶどうでも良くなってきた『豊臣兄弟!』。前回は太賀くんと中野英雄の父子共演もあったりしましたが、荒木村重(演:トータス松本)の奥さんの「だし」も登場(演:山谷花純)。いや誰もが思うだろうけど、すげえ名前だな。呼称の由来はWikipediaで知りましたが。その「だし」、近日公開される映画『黒牢城』にも登場してるらしい(役名は千代保。演:吉高由里子)。その他では大河ドラマ『軍師官兵衛』ぐらいにしか出てきてないらしく(演:桐谷美玲)、突然なんなんだ? だしブームか?(笑)
 その『黒牢城』、僕はてっきり架空時代劇だと思ってたんですが、荒木村重が主人公だったんですね(演:本木雅弘)。ただ内容は、村重が信長に反旗を翻して織田軍に包囲された城の中で謎の殺人事件が発生。村重は捕虜の黒田官兵衛の力を借りて犯人の捜索に挑む……というやっぱり架空のミステリー時代劇のようです。ちなみにこっちの官兵衛役は、『豊臣兄弟!』では竹中半兵衛役の菅田将暉……って紛らわしいわ!
 荒木村重というと、北野武監督・主演の映画『首』にもメインキャストとして出てきてましたが(演:遠藤憲一)、そちらでは明智光秀(演:西島秀俊)との男色関係という架空エピソードに焦点が当てられていたためか、「だし」は出てきませんでした。しかしなんでまた村重をフィーチャーする映像作品が近年になって突然こんなにも出てきたんだ。村重ブームなのか? バラエティでも村重が人気だし……ってそれは村重杏奈でした。

 そういえば上杉謙信役の俳優、全然知らん人だなぁと思ったら案の定1シーンだけのほぼモブというかカメオ出演状態でしたね。あれなら無理して謙信を出さなくても良かったのでは……。あれ? そういや長篠の戦いは? 見逃した回でやってたのか?と思ったら、ナレーションだけで済まされたらしい。まあ豊臣兄弟とはあんまり関係ない合戦なんで別にいいんだけど、だったら信玄もやっぱり別に出さなくても良かったような……。三方ヶ原の戦いや信玄の死が描かれて長篠はカットってなんだかバランスが悪いような気がします。あれだけ出てきてた斎藤龍興の討死も描かれなかったなあ。やっぱりどうもバランスが悪い。あと合戦シーンが以前から危惧されていたようにかなりショボい。去年一昨年は合戦シーンの無いドラマだったからわからなかったけど。

>皇位継承問題
 最近の皇室典範改正議論についていろいろと考えを抱いていたら、ちょうどAERA DIGITALに宮内庁書陵部に定年まで32年間勤務した専門研究者の鹿内浩胤(お茶の水女子大学客員研究員〈日本史〉)という方による「皇室典範改正案の「養子案」復活は正当性欠く 元宮内庁書陵部専門研究者が指摘する問題点」というネット記事が出ました。とても参考になるのでご紹介しておきます。



#11584 
バラージ 2026/05/18 20:54
史点の脇道 宇宙編

 おお、いつの間にか史点を久しぶりに更新されてたんですね。気がつきませんでした。
 今回の史点の本論部分ではなくてかなり脇道にそれた話題で、なおかつ歴史ともほとんど関係ない話題で恐縮なんですが、個人的になんか書きたくなっちゃった話を書きたいと思います。どうかご容赦を。

 書きたくなった話、それは宇宙の話題でして。実は僕も子供の頃から宇宙の話が好きなんですよね。むしろ子供の頃は歴史よりも宇宙のほうが好きだったな。といっても宇宙開発のような話にはそれほど興味は無く、どっちかっていうと宇宙そのもの、星とか太陽系とか小宇宙とかブラックホールとか宇宙の果てとか、そういった完全に理系分野のものに興味を持っておりました。歴史との関連で言えば太陽系の成り立ちなんかには興味がありましたね。
 さて、そんな宇宙関連を題材にしたドラマ『サバ缶、宇宙へ行く』が現在放送中です。福井県立若狭高等学校(旧・小浜水産高等学校)の生徒たちが地元の名産品であるサバの缶詰をJAXAの宇宙日本食として認証させるまでの12年間を記録したノンフィクション『さばの缶づめ、宇宙へいく 鯖街道を宇宙へつなげた高校生たち』が原作とのこと。ただしドラマの内容は事実を基にしつつもあくまでフィクションで、いわゆる朝ドラ方式のようですが、なかなかに面白い青春ドラマになっています。
 実はここ1〜2年、宇宙を題材とした映画やドラマの良作が何本か作られているようで、そういうコラム記事がいくつか書かれてました。去年の僕のNo.1映画であるコロナ禍の天文部を題材とした『この夏の星を見る』(原作は辻村深月の同名小説)と、同じく発達障害と思しき天文好きの弁護士が高校のスクールロイヤーとなって学校の諸問題に向き合う去年の個人的No.1ドラマ『僕たちはまだその星の校則を知らない』も、宇宙(正確には天文)を題材とした青春映画&ドラマの傑作でしたし、同じく去年のドラマ『いつか、無重力の宙(そら)へ』も30代の元天文部の女性たちによる人工衛星開発を題材とした良作でした。また僕は未見ですが、定時制高校の生徒たちが理科教師の導きで科学部を結成し、教室に「火星のクレーター」を再現する実験で学会発表を目指すという一昨年のドラマ『宙(そら)わたる教室』(原作は実話をモデルとした伊与原新の同名小説)も高い評価を受けたそうですし、さらに僕は録画で観たんですが不眠症に苦しむ男女の高校生が自分たちの居場所である学校の天体望遠鏡を守るために天文部復活に向けて奔走する2023年の映画『君は放課後インソムニア』(原作はオジロマコトの同名マンガ)もやはり素晴らしい作品でした。
 僕が観たのは必ずしも宇宙や天文が題材だからというだけでなく、青春映画や青春ドラマが個人的に大好きだからというのが大きく、また体育会系ではなく文化系のドラマだったからってのもあるんですが、いずれも当たり映画&ドラマだったことは間違いなく、宇宙(天文)✕青春というのは当たり率が高いのかも。

 それから、月に行く計画なのになぜ太陽神アポロ(アポロン)の名が付けられたのか?という話。確かに言われてみるとと思い調べてみたんですが、どうやら最初にまず有人宇宙飛行計画「アポロ計画」があり、 予定に無かった月に行く話は後になって出てきたからだそうです。当時のNASA長官エイブ・シルバ−シュタインは宇宙と関係が深い神話の中にその名を求めたようで、 太陽の戦車に乗り天空を駆け巡るアポロをその計画の名にしたようだとのこと。
 なお双子の兄妹神アポロンとアルテミスは太陽神と月の女神とされますが、もともとのギリシャ神話の太陽神はヘリオス、月の女神はセレネでした。アポロンは詩歌や音楽などの芸術芸能の神、神託を司る予言の神、そして光明の神であり、またアルテミスは狩猟の女神にして貞潔の女神だったんですが、紀元前4世紀頃からヘリオスとアポロン、セレネとアルテミスが同一視されるようになったようです。
 オリオンがアルテミスの恋人というのも諸説ありまして(なにしろ神話なんで)、処女神のアルテミスがオリオンと恋仲になったことを危惧したアポロンが奸計を使ってアルテミスにオリオンを射殺させたという話が有名ですが、一方でアルテミスに円盤投げを挑んだため身の程知らずとしてアルテミスに射殺されたとか、アポロンを崇拝していた乙女オーピスに暴行したためアルテミスに射殺されたなんていう話もあるようです。1番有名なのは「私にかなう動物などこの世にいない」と高言したためガイア(またはヘラ)の送った大サソリに刺されて死に、そのまま星座になったという話。そのためオリオン座はサソリ座が上ってくる頃に逃げるように沈み、サソリ座が沈む頃にまた上ってくるという由来話ですね。ただ、どれにしても最後は殺されちゃう話なんだから、実は縁起の悪い命名のような気も。まあオリオンに限らずギリシャ神話の英雄は大概が最後には悲劇的な死を迎えちゃうわけですが。

 それから太陽系が主な舞台となる有名なSF作品にはアニメのガンダムシリーズもありますね。富野由悠季監督のいわゆる富野ガンダムには、ヘリウムを地球圏に輸送する木星船団を指揮した“木星帰りの男”として『機動戦士ガンダム』にシャリア・ブル、『機動戦士Zガンダム』にパプテマス・シロッコが出てくる他、『機動戦士ガンダムZZ』の最終話では主人公のジュドー・アーシタが木星へと旅立ち、また『機動戦士ガンダムF91』にも木星船団がチラッと登場したり、『機動戦士Vガンダム』でも「木星圏にも独立の動きがある」という台詞が出てきたりしてました。そして富野氏が原作、長谷川裕一が作画のマンガ『機動戦士クロスボーン・ガンダム』においてついに敵組織として木星帝国が登場。『F91』の10年後、『V』の20年前が舞台でして、ついに木星圏が舞台となりました。また小惑星帯(アステロイドベルト)も、『Z』に登場したハマーン・カーン率いるアクシズ(後にネオ・ジオン)が、アステロイドベルトに逃げ込んだジオン残党が地球圏に帰還したという設定でした。
 しかし意外なことに火星は少なくとも富野ガンダムでは登場するどころか全く言及すらされていなかったはず。おそらく舞台としての扱いが中途半端に使いづらい存在だったんでしょう。そのため宇宙世紀のガンダム世界では火星がどうなっているのかほとんど不明。周辺企画など非富野作品だと、『F91』のMSV模型企画『機動戦士ガンダムF90』に火星ジオン軍なるものが出てきたようですが。


>『豊臣兄弟!』
 ようやく秀長の奥さん「慶(ちか)」のストーリーが展開。いや良かった。久々に良い出来の回でした。吉岡里帆も仲野太賀も奥田瑛二も麻生祐未も名演でしたね。吉岡さん、やっぱいい女優だわ。子役の子も良かったです。てか、このドラマ、史実消化の部分はあんまり面白くなくて、史実に無いフィクション部分になると面白くなるんだよな。
 太賀くんと吉岡さんは以前も夫婦役を演じたことがあるんだけど、その時は不仲な夫婦役だったんで、「今回は心の通じ合う夫婦になれるといいね」と話してたそうで。夫婦役で共演した作品って何だ? 太賀くんの出世作となった2016年のドラマ『ゆとりですがなにか』にも2人とも出てたけど、2人はあんまり接点無かったし、と思って調べると『泣く子はいねぇが』という2020年の映画だったようです。
 ちなみに『おんな太閤記』では第10回が「小谷落城」だということは以前書きましたが、第15回が「秀長の恋」、第20回が「秀長の祝言」で第21回が「本能寺の変」だったとのことで、そっちのドラマでは秀長はずいぶん晩婚だったんだな(笑)。



#11583 
ろんた 2026/05/13 00:44
『逃げ上手の若君(25)』(松井優征/ジャンプコミックス)

 出ていたのに気づかなかった『女北斎大罪記(3)』、発売日にどこにも見かけなかった『ユーベルブラットII(4)』と一緒にe-honで注文、しかし『逃げ上手……』は予約注文になって先に着いてしまい、車で三十分もかかる書店に二度も通う羽目に。田舎住まいが恨めしい。あらすじはカバー裏より。

南朝軍と尊氏軍の決戦「武蔵野合戦」が開幕! 東西同時作戦で先制した時行たちは、待ち構える尊氏をよそに戦場を抜け出し鎌倉へ!? さらなる動揺を与え、尊氏を追い詰めていく一行だったが、ついに解き放たれた悪神の猛威に、なす術なく蹂躙されていく……。だがその時、暗雲を吹き飛ばす斬撃が奔り──!?

・武蔵野合戦は『太平記』準拠でなく、人見原の戦い>鎌倉奪還>小手指ヶ原の戦いの三段階。人見原の戦いは本軍が合流するまでの時間稼ぎ、鎌倉奪還は尊氏を挑発して動揺を誘うため。「そんなに野宿がしたいならすればぁ。わたしは鎌倉でゆっくりするから」とか手紙送ったりして。動揺が最大限になったところで小手指ヶ原の戦い。
・小手指ヶ原の戦いでは時行の逃げに誘われて饗庭命鶴丸が突進、伏兵にボコボコにされて潰走、足利方総崩れ。命鶴丸は趙括・馬謖の類ということに。その本性を見切っていたのが佐々木道誉、雫、時行。
・北条軍が尊氏本陣に突進。逃若党が車掛かりで尊氏を襲う。だが、神力を最大限に放出し始めた尊氏の前には形勢不利。そしてあのキャラが復活し形勢逆転。逃げ出した尊氏を時行が追う鬼ごっこで次巻へ。
・これ、どうやって足利方が勝つんだろ。悪神が消滅する前に最後の力を振り絞って歴史改変?
・石塔家、すっかり痛鎧の家に(笑)。
・時行、鎌倉を奪還して子作りに励む(笑)。出陣を見送る中に由(ゆい 清子の侍女)がいるそうだ。犬も三匹。第一話に登場した子犬とその子(孫?)かな?
・上杉憲顕の最強武士製造理論が完成。その成果が上杉謙信!?
・復活したキャラについては秘密。

>『女北斎大罪記(3)』(末太シノ/ヤンマガKC)
 最終巻。っていうか、打ち切り? 太河「べらぼう」終了にあわせて12月に単行本を出すために原稿が揃った時点で連載を終了させたみたい。そのせいか、展開が早すぎたり時間経過がバグってるようなところが後半に散見される。あらすじはカバー裏より。

 吉原での経験から葛飾北斎を演じながら大衆の前で絵を描くのは無理だと判断した栄は、代わりに北斎を良く知る滝沢馬琴に協力をあおぎ、名古屋での実演描画へ挑む! さらに絵師として成長する中で「自分のために描きたい絵」を模索し始めた栄は、吉原で出会った遊女・豊菊の姿を描こうと決意する。しかし彼女は病におかされていて――。

・名古屋での実演描画、そもそも主催者の牧墨僊は北斎と面識があるんだから替え玉を使うのは無理がある。まぁ、誤魔化せることにしちゃってるけど。っつ〜か牧墨僊、出版業者みたいな感じに描かれているけど実はガッツリ絵師。歌麿の弟子で北斎の弟子でもあり、名古屋における銅版画の創始者。
・絵を描いて彫って刷るまで一人でできる、と牧墨僊が銅版画の優位性を語る場面あり。そこで上方は肉筆画、江戸は木版画という話も出てきた。美術史には暗いのでちょっと調べると本当らしい。言われてみれば若冲も応挙も上方者だ。ただまったく木版画が無かったわけでも無くて、役者絵に特化していた模様。リアリズム志向で絵柄に写楽と共通点があるらしい
・名古屋からの帰りに富士を眺めて富岳三十六景の構想を得るってのはいいんだけど、その後「神奈川沖浪裏」をさらさらっと描くのは「?」だし、これからの日本や日本人を示す判じ物だ、とやるのは作者の見解が生のまんま出てきてしまってる。北斎の影についての見解も作者のもの。
・豊菊姉さんの病は多分梅毒だけど進行が速すぎる気がする。そしてそこから「吉原格子先之図」を描くというのは時期的に早すぎる。最初のものは豊菊さんと一緒に火葬したことになっていて、作者も分かってやってるけど。
・実は北斎は生きていて、木版画を止めて肉筆画を描くために死んだことにしたというのが本来の構想だったとか。いや、あの第一話ではこの展開無理ないか? その他、「あとがき」に様々なアイデアが記されている。

>その後の「豊臣兄弟!」
・慶、今のところ、ただただ面倒臭い女。そんなに亡夫が慕わしいなら出家して菩提を弔ってろよ。この後、盛り上げるための伏線でしょう。
・木下家の女たち、もう野良仕事とかしてないはずなのに寧々と慶以外は真っ黒なのなぜだろ。
・金ケ崎の退き口、『国盗り物語』みたいな秀吉、光秀、家康の共闘はなし。(そういう説もあったはず) 藤吉郎が殿を志願したのを足の怪我で合理化。かゆみ止めを怪我に塗ったら痛いんじゃないか? 義昭が書いてた書状、朝倉・浅井への感状?
・光秀の立場がよくわからなかったんだけど、叡山焼き討ちの前に正式に家臣になったのか。おかげで焼き討ちを頑張る羽目に。お山にいた女子供は避難民という解釈だが、いやお山でナニするのはなんだから麓に住まわせていた、とか邪推しちゃうけどな。
・朝倉義景、さすがに家臣に殺されちゃうのはなぁ。お市が長政の介錯をするのは剣術を好んでたのが伏線だったか。あの展開だと長政の首を持って信長のもとに行ったことになるけど。
・武田信玄、餅をついていたから(信玄餅だぁ!)と思ってたら、かつてないほどに情けない死に方の伏線だったとは。あと百姓の差し入れを平気で食べちゃう武田家、危機管理意識低すぎ。義昭が信玄に会いに行ったのはさすがに失笑。織田方も毒殺狙いとはせこい、家康ならまだしも。このドラマの家康、『関ケ原』の家康っぽいんだよな。こずるい印象が強いけど。
・三方原の大敗を忘れようとする家康。しかみ像は「お前は覚えてろ」と言われた石川数正が描かせたのか(笑)。「味噌じゃ、味噌じゃ」も空城の計もなかったな。まぁ、歴史の面白い話はフィクションってことで。ドラマもフィクションなんだからやればいいのに。
・(18)はまだ見てませんが、上杉謙信って有髪なの?(HPの登場人物紹介) 長曾我部元親は司馬に『夏草の賦』という長篇があるんだけど、映像化はされていないみたい。盛親の方は『戦雲の夢』で描いてるが、こちらも映像化はなし。
・おそらく六月中に本能寺の変があるくらいの展開の速さだろうけど、その後の十年足らずで半年もつのか? 小一郎死後のあれやこれやはナレベースですっ飛ばすしかないだろうし。天下取りの過程をじっくり見せ、興福寺いじめ(?)をじっくり見せ、慶とのラブラブをじっくり見せ……大丈夫か?



#11582 
バラージ 2026/05/04 21:58
奥さんの正体はどんぎつね(嘘)

 前回の『豊臣兄弟!』、武田信玄が登場しながら、あっという間に出番が終わってしまいましたね。朝倉義景、浅井久政・長政父子もまとめてあの世行きで、オープニングを省略してたというのに、なんだかちょっとダイジェスト気味だったような。
 第17回が「小谷落城」ってちょっと展開が早くないかと僕も思ったんですが、調べたら同じ大河ドラマの『おんな太閤記』は第10回が「小谷落城」、『秀吉』は第14回が「小谷落城」だったようで、別に全然早くなかった(笑)。むしろちょっと遅いくらいですが、主人公の退場が早い分を考えれば妥当なところ。てかサブタイトルみんないっしょかい! 唯一『太閤記』が第19回「旧閣瓦解」で信玄死去、第21回「花の輪」が長政の出番の最後と『豊臣兄弟!』より遅い展開ですが、『太閤記』は展開が遅すぎて終盤にバタバタしたらしいんで、あまり参考にはならないでしょう。

 そもそも豊臣もので武田信玄が出てくるのは珍しいような気が。『おんな太閤記』には出てきた記憶がありません。調べるとやはり『おんな太閤記』や『秀吉』には出てこなかったようで、出てきたのは『太閤記』(演:早川雪洲)だけ。大河以外でも同じ原作の『新書太閤記』 (1973年、テレ朝、演:神田隆)ぐらいのようです。今後は上杉謙信も出てくるとのことで、こちらはさらに珍しい。他に豊臣もので謙信が出てきたのはやっぱり『太閤記』(演:石山健二郎)と『太閤記 天下を獲った男・秀吉』(2006年、テレ朝、演:下元佳好)ぐらいのようですね。信玄も謙信も豊臣兄弟とはあんまり関係ないから別に出さなくても良かったような気もするんだけど……。さらに信玄・謙信よりは豊臣兄弟に関係する戦国大名の長宗我部元親も出てくるとのことで、これはもっと珍しい。信玄と謙信は主人公作品もあり、映像作品への登場自体は多いんですが、元親は登場した映像作品自体が少なく、『黄金の日日』(演:庄司永建)と『軍師官兵衛』(演:ダイヤモンド勝田)ぐらいのようですからね。息子の盛親のほうが大坂の陣絡みで登場することが多いくらいで。

 ただ個人的にはそんな史実関係がどうこうよりも、吉岡里帆演じる奥さんの話はどうなったんだよと。なんか思わせぶりな匂わせしながら、結局その後フェードアウトしちゃってるような気がしないでもない。まぁ今後亡夫の両親も出てくるようなんで、ちゃんと描かれるんでしょうが、前回は全く出てこなかったんだもんなあ……。



#11581 
バラージ 2026/05/03 11:25
時は流れていきます……

 テニスの錦織圭選手が今季限りでの引退を表明しました。
 思い返せば彼の名を知ったのは確かプロ転向した2007年頃。翌2008年にはデルレイビーチ・オープンの決勝でトップ選手のジェームズ・ブレイクを破り、18歳でツアー初優勝を飾るという衝撃でした。同年の全米オープンでも3回戦でトップ選手のダビド・フェレールを破りベスト16に進出するという再びの衝撃。あれももう20年近く前のことなのか……。
 その後、1〜2年は怪我で低迷したものの10年代には再び浮上し、2014年の全米オープンにおいて4回戦で同世代のミロシュ・ラオニッチ、準々決勝でビッグ4に次ぐ第5の男とも呼ばれたスタン・ワウリンカ、そして準決勝ではビッグ4の一角ノバク・ジョコビッチと強敵を激闘の末に次々と連破して、アジア人男子としては初めての決勝に進出。決勝では反対側の山から準決勝でビッグ4のロジャー・フェデラーを破って勝ち上がってきた同世代のマリン・チリッチに敗れたものの、見事アジア人男子初の準優勝を遂げました。あれももう10年以上前なのか……。
 翌2015年には自己最高となる世界ランキング4位となり、2016年リオデジャネイロ五輪では3位決定戦でビッグ4のラファエル・ナダルを破り銅メダルを獲得。全米オープン準々決勝でもビッグ4のアンディ・マレーを破り……って、あれももう10年前なのか……(こればっかりですいません)。ビッグ4のフェデラー、ナダル、ジョコビッチ、マレーにはさすがに負け越しつつも、それぞれから2勝以上挙げている数少ない選手の1人でもありました。全盛期がビッグ4の円熟期に重なったことは不運でもあったかな。男子の上位8人のみが出場するATPツアーファイナルにも2014・2015・2016・2018年と4度出場しており、こんな日本人男子選手はおそらく僕が生きてるうちは2度と現れないかもしれません。いや、現れないでしょう。
 近年は怪我に苦しんできたし、同世代のトップ選手たちの引退も相次いでいるのであるいはいずれ……と予感もしてましたが、もちろん僕ばかりではなくテニスファンは皆そうだったことでしょう。時は流れていきますね……。
 テニスに興味ない人にはなんのこっちゃの話でしょうし、歴史ともあまり関係ないようなネタではありますが、歴史というより時代の移り変わりの話として趣味全開で書いてしまいました。ここんとこ個人的にちょっとノスタルジックかつセンチメンタルな出来事が続いちゃいまして……。他に歴史ネタも無いし、どうしても書きたくなってしまいまして、ご容赦のほどを。


>テニス選手の伝記映画
 上のネタだけじゃなんなんで、もうちょっとテニス史に近い話題として米国の1978年のTVムービー『リトル・モー』の話。
 #11012にも書いたんですが、1950年代に活躍した女子テニス選手モーリン・コノリーの半生を描いた伝記作品で、子供の頃にたまたまテレビ放送で観てとても印象に残ったんだけど、VHS化のみでDVD化も配信もされてないんでそれ以来観てなかったんですよね。ところが最近、某有名動画配信サイトに全編アップロードされてるのを発見。某公共放送局のBSで放送されたもののようで日本語字幕付きです。
 喜び勇んで数十年ぶりに再観賞したんですが、やはり良い作品でした。時代的なものなのか過剰に映画的に盛り上げたりせず、あくまで実直かつ丁寧にコノリーの半生を描いてましたね。テニスの試合のシーンもやはり時代的に特撮など使ってなく、それでいてきちんと見応えのあるシーンになってました。1950年代の試合なら、たとえトッププロの試合であってもそれで十分に再現可能だったんでしょう。しかも実際の試合の映像はほとんど残ってないだろうから、本物と比べられる恐れもないわけだし。ま、ともかくやはりとても良い映画(というかTVムービー)でした。



#11580 
ろんた 2026/04/28 18:44
『海賊女王』(上)(下)(皆川博子/光文社)

『海賊女王』(上)(下)、地図を無視すると物語の面白さでズンズン読み進められる。ただし地理的なものはチンプンカンプン(笑)。その一方で登場人物一覧には80人近くが掲載されていてありがたい。あらすじは光文社HPより。ただし文庫版のもの。なぜかそっちの方がちょっとだけ詳しい。

[上巻]時は16世紀。スコットランドに生まれたアランは、17歳で戦士集団に加わり、アイルランドに渡る。そこで出会ったのは、海賊を生業とするオマリーの氏族の猛々しい男たちと、赤い縮れ毛の首領の娘グラニュエル・オマリー(グローニャ)。アランはグローニャの従者となり、闘いと航海に明け暮れる波瀾の日々が始まった。壮大なスケールで描く、実在の女海賊の凄まじき生涯!
[下巻]女王エリザベスが統治するイングランドはアイルランドへの属国支配を強める。だが、氏族は内輪もめを繰り返し、団結することができない。息子をイングランド に捕縛されたグローニャは、彼の釈放と冷酷な行政官の解任を要求すべく、ロンドンに向かう。相対する“二人の女王”。グローニャに従い続けたアランを待ち受ける運命とは――。海洋冒険歴史巨編、圧巻の終演!

 序章「イングランド─1593〜─」にグローニャは登場せず、名前だけ。描かれるのはエリザベス一世の宮廷。主流派は大宰相バーリー卿ウィリアム・セシル(*1)と枢密院顧問官ロバート・セシルの親子だが、それに挑戦しているのが、やはり枢密院顧問官のエセックス伯ロバート・デヴロー。自己顕示欲が強いが実力が伴わず、部下の手柄を横取りするタイプでセシル親子が右と言えば左と言う……ということで普通なら敵ではないのだが、女王の愛人というのが最大の武器。負けそうになると、二人っきりになって「リズゥ〜」と甘えて無理を通して道理を引っ込ませる(笑)。そんなエセックス伯は現在、女王やセシル父の主治医ロペスがスペインのスパイだという告発に夢中。ただ、これはセシル親子の仕掛けた罠。そんな権謀術数渦巻く宮廷に、グラニュエル・オマリーというゲーリック・アイリッシュ(*2)の族長から女王への謁見願いが届く。女王のお気に入りであるアングロ・アイリッシュ(*2)のオーモンド伯トム・バトラーが、セシル父宛に添え状を送ってきたのでセシル父子も無視できない。過去の記録ではこの人物は、Grany Imalye、Granny Nye Maleという海における窃盗と殺人の指導者、海賊の頭と同一人物かと思われるのだが……。ということで序章はここまで。だがあだやおろそかに読んではいけない。女王をめぐるスキャンダル、ロバート・セシルの腹心の部下オーランド・バード、オーランドと硝石集め人ナサニエル・フック、ロペスの弟子フリオなどが伏線となって、読み進めるにつれ「おお!」「ああ!」「なにそれ?」となること間違いなし。

*1:『セシルの女王』(こざき亜衣/小学館)の主人公。このマンガでは初登場13歳だが、『海賊女王』では73歳の晩年。1598年没。
*2:16世紀、アイルランドには三つの民族が存在した。ゲーリック・アイリッシュは先住民族を駆逐して住み着いたゲルト民族、ゲール人。アングロ・アイリッシュはイングランドを征服したノルマン人がアイルランドにも来襲して土着した者たち。そしてイングランド人が植民地政策により入植してくる。先住の両民族は抵抗し続けたが、後者の中には爵位と本領安堵を条件に英国王に従う者もいた。オーモンド伯もその一人。

 続く「I」でいよいよグラニュエル・オマリーが登場。ただし舞台は50年さかのぼって1543年。グローニャは10歳(エリザベス一世と同い年)。スコットランド高地の牧童だったアランとロイのジョスリン兄弟はガログラス(*3)としてアイルランドの族長オフラハティのもとへ向かう。彼らを運ぶのは海賊を家業としている族長ドゥダラ・オマリーの船。その船中でアランは、赤い縮れ毛の少女グラニュエル(グローニャ)と出会う。ドゥダラの娘だが密航して父についてきてしまったらしい。そしてアランはグローニャとの賭けに負け、従者となる。初めての「狩り」(海賊行為)の中でドゥダラにグローニャを託され、以後60年程も彼女に仕えることになる。以後はもう波乱万丈すぎてまとめられない。wikiのグレース(=グラニュエル)・オマリーの項には「陸上海上において恐れ知らずのリーダーで、政治的実際主義者で、政治家で、非情な略奪者で、傭兵で、反逆者で、やり手のネゴシエーターで、家族と部族を守る女族長で、はるか遠い祖先から地母神と戦う女王の特徴を純粋に受け継いでいた。そして何よりも、従来の型を破り、それゆえに歴史上でユニークな役割を演じた女性といえる」とあるが、それがまんま描かれている。付け加えるなら、必要とあらば女の武器を使うのも辞さないというところ。二度の政略結婚で三人の子をもうけたが、いずれも父親が違う。真ん中の息子の父親とは一緒に牢に放り込まれると嬌声をあげ、鼻の下伸ばして覗きに来た牢番を殺して鍵を奪い脱獄、逃走中に船中で続きを始める。アランともオーモンド伯とも関係する。とにかくグローニャ、ネコ科の猛獣みたいなのに(あるいは、だから?)男を引き付けるんですな。
 読み進めるにつれて序章の伏線に気づいていくのだが、そうなると影の主人公が実はエリザベス一世とも思えてくる。この人も私掠船に出資している「海賊女王」。終盤、「セシル、いつぞや、謁見したアイルランドの女族長、あれをロンドンに呼びなさい」「あの女は私に忠誠を誓った。あの女なら、理解する。女王の孤独を」と女王がセシルに漏らすシーンが印象的。

*3:毎年、5月から10月の戦争(=略奪)の季節に、アイルランドの族長に雇われるスコットランド高地の男たちのこと。一団を統べる隊長は特定の族長と強い信頼関係があり、気ままに主を換える、いわゆる傭兵とは違う。

 ストーリーと関係なく面白かったのが死刑。斬首刑は貴族だけでそれ以外は絞首刑。そしてイングランドのそれは縄が短い。長いと勢いよく体重が首にかかるんでほぼ即死するが、短いと逆になかなか死なない。で、死にかけたところで下ろし(この辺が処刑人の腕の見せ所)、腹を裂いて内臓を掴みだし見物に御覧じろとやる。見物は大喝采。ああ、斬首は貴族だけといっても、反乱を起こしたアングロ・アイリッシュの中には、斬首された挙句に首を鍋で煮られさらされた者もいる。イギリス人て野蛮だなぁ(笑)。

>「豊臣兄弟!」
 バラージさんのおっしゃる通り、人物像で冒険はあまりしてないとは思います。ただ、コミカルな方に振ってるかな。しかし、柴田勝家がお市に気があることになってるのはどうなんだろ。秀吉の方がお市に惚れていて……ってのはよくあるパターンだけど。あれじゃぁ柴田勝家、ロリコンじゃねぇか(笑)。
 ストーリー上は盛り上げようと頑張ってるあたりが、前も書きましたけど"not for me"なことが多い。面白いところもあるんだけど。あとテンポが速すぎる気もします。どうやら5月中に武田信玄が死に、浅井朝倉が滅び藤吉郎は羽柴秀吉となって北近江を領有、北陸攻めに加わって柴田勝家ともめる。松永久秀退場、足利義昭追放、但馬攻めの中で小一郎は竹田城城代に。そして信長は安土城築城にかかるらしい。髑髏の薄濃やるのかなぁ? 視聴者ドン引きな気がするけど。
「「天下布武」の「天下」は近畿のことだ説」は(10)のアヴァンで紹介されてました。それ自体は時代考証の先生がそっちの支持派なんだろうと思っただけだけど(「解説上手の若君」は天下=全国派)、室町幕府の再興と組み合わされると「?」でした。畿内の平定が幕府の再興だというんなら、室町幕府って「畿内公方府」になってしまうような。三好松永勢力の駆逐を再興の第一段階としているのかとも思ったんだけど、それじゃあスローガンとしてみみっちい気がする。もっと大風呂敷広げなきゃ。

>朝ドラ史
 実在モデルの話、原作付きの話の後にするつもりが、なぜかごっぞり抜けてしまいました。すいません(汗)。
 この二つが連動するのは原作が自伝的小説なことが多いから。名前をあげたうち獅子文六、壷井栄(複数作品の合成)、林芙美子(同じく)がそれにあたります。つまり原作者=主人公で、林芙美子原作の「うず潮」の主人公の名前は「林フミ子」(笑)。
 さらに初期には女性が主人公とも限らない。獅子文六原作の「娘と私」は亡き妻の忘れ形見である娘を育て上げ嫁に出す話で、主人公はお父さん(=獅子文六)。武者小路実篤原作の「あかつき」は、お父さんが大学教授を辞めて画家になる話で、川端康成原作の「たまゆら」は定年退職したお父さんが古代史研究にはまる話。お父さんが主人公のホームドラマ? 試行錯誤を繰り返して女性が主人公の原作を使うようになり、オリジナルに移行していったようです。「おはなはん」のヒットがきっかけかも。
 オリジナル脚本でモデルがいるのは「雲のじゅうたん」が最初でしょうか。複数人のエピソードの合成らしいけど。以後、「風見鶏」(神戸ドイツパン屋の創業者夫婦)、「なっちゃんの写真館」(写真家・立木義浩の母・香都子)など結構ありますね。ほかにも複数人のエピソードを合成したと思しきものがチラホラ。「おていちゃん」(澤村貞子)、「マー姉ちゃん」(長谷川町子)は原作付きだけど。
「おしん」のモデルはヤオハン創業者・和田カツだと思ってたんだけど、橋田壽賀子も和田カツ本人も息子・一夫も認めていないそうで。ただ、一商店からからスーパーチェーンを作り上げたというのはそのまんまなんで、複数人のエピソードを取捨選択したうちの一人ということかな。和田カツって女学校出てるし、ヤオハンも海外進出したりしてドラマより大規模に商売してる。それに放映時、和田カツは存命していたし、一家の中のあれやこれやが描かれるし、スーパー・タノクラは倒産しちゃうし、生長の家との関係もあるしでモデルとは言えなかったのかも、と想像してしまいます。もっともヤオハンは和田カツ没後に本当に倒産しちゃうんだけど。



#11579 
バラージ 2026/04/22 22:16
再び小ネタ

>『豊臣兄弟!』
 僕は(『どうする家康』なんかに比べると)わりとベタな豊臣ものだなあと感じてます。前も書いたけど主要人物である秀吉や信長のイメージがかなりベタだし(主人公の秀長にはそもそもあまりイメージが無い・笑)、秀吉や信長とお市と浅井父子と朝倉義景それぞれのイメージや関係性も特に新味のないベタな描写に終始してるような。細かいところではちょこちょこ新ネタや新解釈も入れてるようだけど、物語の大勢にはあまり影響していないように思います。
 そんな中、「「天下布武」の「天下」は近畿のことだ説」が出てきたのは知らなかった。僕が脱落してたあたりに出てきたのかな。その説、確か昔この掲示板でも話題になったような……と記憶がよみがえって探してみると、#9504〜9517あたりにありました(こういう昔のを探すの結構大変なんだけど、個人的になんだか気になっちゃって)。もう10年以上前のことなんですねえ……(遠い目)。

>朝ドラ史
 僕は過去(一種の時代劇)か現在(現代劇)かというよりも、実在モデルありか全くの架空人物かという意味合いで書いたんですが、確かこの話題も昔書いたような……とこれまた探してみると、#9967と#11421(&11422)の2度書いておりました。それより後の朝ドラだと1つ前の『ばけばけ』、今やってる『風、薫る』、次の『ブラッサム』が実在モデルあり。そのまた次のバカリズム脚本『巡るスワン』は架空人物のようです。
 朝ドラは有名な『おしん』のように架空人物主人公の過去時代ものも多いんですが、実在モデルありというのは一昔前はごくたまにしかなく、Wikipediaの「連続テレビ小説」の歴代作品一覧を見ると、90年代は『凛凛と』『春よ、来い』『あぐり』の3作しかありません。00年代も『てるてる家族』『芋たこなんきん』の2作だけで、90〜00年代は大半が現代劇でした。しかし2009年の『つばさ』『ウェルかめ』あたりで視聴率がドン底となり(ちなみに『つばさ』の主演が多部未華子で、埼玉県が舞台となり朝ドラの舞台が47都道府県コンプリートしたとちょっと話題になった記憶)、次の『ゲゲゲの女房』あたりから徐々に実在モデル路線へと舵をきり始めます。2014年の『花子とアン』からは大半が実在路線となり、その後の架空主人公ものは27作中『まれ』『ひよっこ』『半分、青い。』『おかえりモネ』『カムカムエヴリバディ』『ちむどんどん』『舞いあがれ!』『おむすび』、そして来来季の『巡るスワン』の9作のみ。そのうち評判が良かったのは『ひよっこ』と『カムカムエヴリバディ』ぐらいで、どっちも過去時代ものでして現代劇は全滅となっています。『おかえりモネ』から『舞いあがれ!』までは4作連続で架空主人公ものでしたが上手く行かず、実在路線に戻りました。



#11578 
ろんた 2026/04/18 16:11
「豊臣兄弟!」(10)(11)(12)

『海賊女王(上)』(皆川博子/光文社)、エリザベス一世の宮廷を描いた序章「イングランド─1593〜─」を読み終わり、「I」に入る。エリザベス一世に主人公グラニュエル・オマリー(グローニャ)の書簡が届いたところから時代は50年さかのぼり、グローニャの幼い頃が描かれる。目を離すと父の海賊船に潜んで密航するおてんば(笑)。しかし、なかなか読み進められない。詳細な登場人物一覧があるのはありがたいが、アイルランドの地図とその西北部の詳細図が役立たず。本編に登場する地名が見つからないことが多々あってイライラ。編集、仕事しろよ。

 さて「豊臣兄弟!」。なんというか、新味を出そうと頑張っているのは分かるんだけど"not for me"というか、滑ってる感じがするんだよなぁ。(10)では「天下布武」の「天下」は近畿のことだ説が断定的に紹介されていたけど、そこを平定すると足利幕府が再興されるってのがどうもうまく呑み込めない。明智光秀の従者(荷物持ち)に扮する足利義昭──なんでそんなことすんの? しかも荷物持ちなのに座敷に上がり込んでるし。あと義昭の使者の光秀がなんで下座なんだろ。そして義昭に刀を突き付ける信長、切腹もんだろ。(11)の本圀寺の変、三好三人衆が間抜けすぎ。足利義昭が高いところから督戦していたけど、撃たれちゃわないかとハラハラ。ていうか、撃てよ射ろよ。小一郎の猿芝居に引っかかるって、覚醒した(?)竜興が呆れるの当たり前。堺の牢人衆を雇って秀吉が駆けつけるのは面白かったけど、たった百騎を岐阜からの救援と見間違うかぁ? 後続の有無ぐらい確かめろ。この辺、豊臣兄弟の時間稼ぎで助かったってより、今井宗久が諜報網を駆使して三好三人衆の動きを秀吉に知らせ、牢人衆百騎を援軍につける。秀吉はいち早く岐阜に急を告げ、信長が間に合うって方が無理ないんじゃないか? 何でも兄弟の手柄にしなくていいよ。松永久秀の足利義輝殺し、アリバイがあるとのことだが息子が加わっているので黒だろ(笑)。大仏殿はわざわざ火をつけたわけじゃないみたいだけど(戦火の類焼?)。ああ、秀吉が信長に怒鳴りつけられるのは面白かった。浅井久政の嫁いびり、昔々のドロドロホームドラマみたい。結果、息子と嫁がラブラブに。気になったのは足利義昭が松永久秀に茶器を献上される場面。信長のとどっちが高い、と難癖付けるのは面白かったけど、その後の義昭のセリフ「頂戴する」は無いだろ。(12)は秀吉の顔を踏んづけて起こす信長が面白い。浅井家訪問で長持ちから現れる兄弟、まぁドッキリってことで許すか(笑)。朝倉の使者との密談を覗いちゃう信長。直後にヤバいからって逃げるように去る。そこまで気づいててなんで浅井が寝返らないって思ったのかな? 世間は淀殿が出てきたのにざわついたけど、わたしは万福丸が出てきたのに(うわぁ〜)って思っちゃった。あと、ねねさんが地雷女になっちゃってたな。吉岡里帆は顔見世の後に正式に紹介されるというラブコメ風展開(「遅刻、遅刻」(ドカ〜ン)「え〜、転校生です」「あっ、あのときの〜!」)。そしてこの後はまだ見ていないのであった。

>「家族に乾杯!」
 直こと白石聖さんが出演、名古屋市中村を旅してました。これもお疲れさん、ということか。う〜ん、ファンになってしまいそうだ(汗)。出発は太閤産湯の井戸がある太閤山常泉寺。しかし鶴瓶は歴史とか地理には一切興味は無いのであった。以前、「ブラタモリ」と特番やった時、久能山東照宮を訪ねたけど目が死んでたもんなぁ(笑)。来週は続編。やはり中村では「豊臣兄弟!」、視聴率100%みたい。
 そういえば「ブラタモリ」では桶狭間の戦いを取り上げ、信長の進軍路をなぞってましたね。尾根にさしかかって、このままではバレちゃうってところで雹交じりの大嵐になったという。梅雨時だから雨になって視界が悪くなると思ってたろうけど、これは天佑神助だなぁ。こっちの方がドラマのチマチマ策略巡らす話より面白かったりして。

>「眠狂四郎」
 史実というか、記録に残っている最後の伴天連はシドッチらしいですね。白石の『西洋紀聞』関係の人。そしてそして狂四郎の父親は、前もちょっと書いた覚えがあるんだけど、オランダ人の伴天連。そんなのいるはずないだろうと思いつつ辻褄をあわせると、スペイン人かポルトガル人、イタリア人の神父が東インド会社にもぐり込み、シーボルトみたいにオランダ人と幕府に偽って出島に来て、カピタンの江戸参府に同行。長崎屋を拠点に布教したところを大目付(宗門改め兼任?)・松平主水正(狂四郎の祖父)に捕まるって感じ? やっぱり無理矢理(笑)。で、主水正の娘・千津は伴天連の復讐の犠牲になるんだけど、今回のドラマでは愛し合ってるっぽいですな。
 円月殺法ですが、眠狂四郎のご先祖様・机竜之助(中里介山『大菩薩峠』)にも音無しの構えってのがあります。後の先というか相手に攻撃させてその隙をつくという技。刀を受けないので音がしない。これが元ネタかな。今回のドラマも雷蔵版の見せ方を踏襲していたけど、CGで変に派手にしちゃってたのは残念。

>ジョン万です、こんばんみ〜
 え〜、「ジョン万次郎資料館」名誉館長のギャグです(笑)。ビビる大木さん、歴史に興味を持ったのは太河「新選組」を見てからだそうで、資料館にはたまたま立ち寄っただけなのに、「芸能人が来た」というので名誉館長ということになったそうな。なにはともあれ、資料館では署名運動をはじめ活動していたそうで、めでたい。しかし熱海五郎一座最年少座員(51歳(笑))の会見はこのニュースで吹っ飛んだな。
 ドラマは……1/4ぐらい海洋冒険もの? 捕鯨とか大丈夫? 逆に『白鯨』ネタで盛り上げたりして。クジラの横っ面に張り付いたホイットフィールド船長の腕が「こっちこ〜い」的に動いてジョン万の背筋は寒くなる……とか。実はほとんど同時代。さらに1/4は西部劇? カリフォルニアで金採ってたんだもんなぁ。ひょっとしたら、初めてジーンズ穿いた日本人だったりして。
 ちなみに(っていうかwikiによると(汗))「ジョン万次郎」というのは井伏鱒二が小説で言い出し、それが中浜万次郎(本名)より有名になってしまったそうな。これは知らなかった。だから「ジョン万」にしたのか。そして『風雲児たち』を読んでいる者たちの脳内には「ぼ〜く〜とらえもん〜」というギャグが脳内を駆け巡るのであった。岡田以蔵が護衛する話やるかな。幕末維新篇と明治篇が1/4ずつ?

>朝ドラ
 NHKアーカイブスに第一作から「あんぱん」までがリストになっているんですが、初期は一年間放送で獅子文六、壷井栄、武者小路実篤、林芙美子、川端康成(書き下ろし)などの原作もの。中短篇をまとめて一本にしたりもしている。林芙美子とか大丈夫だったんかな?(笑) 半年放送になるとオリジナル脚本になって来るみたい。なんとなく朝ドラというと、明治・大正・昭和の激動の時代をたくましく生き抜いた女性の一代記的な印象が強いけど、アーカイブスの舞台年表を見ると、現代を舞台にしているものも多い。何と言っても「あまちゃん」がある。実在人物をモチーフにしたものは女の一代記となることが多いみたい。逆に評判悪かったのは「おにぎり」だけど、ヤンキーが主人公というのが受けれられなかったのかなぁ。同じ脚本家、同じ主演でやってたドラマも爆死してたけど、悪口書いてた視聴者はヤンキーまんまの医者というのが、コメディーだと理解されなかった模様。「そんな医者ありえない!」ってそりゃぁいないよ。ドクターXだっていないだろ。まぁ見てませんでしたけど。



#11577 
バラージ 2026/04/17 21:29
また作ったのかよ……

 超駄作ワンマン映画『信虎』を作った宮下玄覇氏が、懲りもせずにまたも『長篠』というワンマン映画を作ったようです。
 タイトルからもわかる通り今回は長篠の戦いを題材とした映画で、『信虎』では監督に金子修介を招聘し自身は共同監督という立場でしたが、さすがに今回は名乗りを上げてくれる人がいなかったのか、それとも予算が減ったのか、はたまた妙な自信を付けちゃったのか、自ら監督を務めてるとのこと。出演者も『信虎』ではそこそこの数の有名俳優を(ほとんどが特別出演状態だったとはいえ)そろえてましたが、さすがに今回は出演してくれる人がいなかったのか、それともやっぱり予算の関係か、ほぼ知らない人だらけ。
 今のところ東京と大阪と広島でしか公開してないけど、もしご興味のある方は怖いもの見たさで観てみてはいかがでしょうか。僕はもうさすがに観る気は全くありません(笑)。


>朝ドラ
 今季の朝ドラ『風、薫る』の主人公2人と大きく関わる人物として実在の歴史上の人物である大山捨松が登場。演じてるのは多部未華子で、夫の大山巌は嶋政宏です。見上愛と上坂樹里が演じる主人公2人も実在の人物(日本最初期の看護師である大関和と鈴木雅)をモデルにしているそうで、近年の朝ドラはすっかり一昔前の時代の実在人物モデル路線が定着。たまに架空人物主人公の現代劇があっても大概が低評価となっています。実在の人物そのものが主人公ではなく、あくまで実在の人物をモデルとした架空人物なので、ドラマ的にというか物語的に都合の悪いところは自由に改変できちゃうのがドラマとしては都合のいいところか。まあ、ドラマとしては何より面白いことが1番ですしね。



#11576 
バラージ 2026/04/10 21:44
ゴールデン万次郎

 再来年(2028年)のNHK大河ドラマが、山ア賢人主演でジョン万次郎が主人公の『ジョン万』に決まりましたね。2年連続で幕末かあ。ほとんど同じ時代が続くとは意外ですが、個人的には幕末はあんまり興味が無い時代でして……。まあ同じ時代といっても小栗忠順とジョン万次郎はさほど接点は無かったと思うし、また万次郎は幕末の人物ではありますが、いわゆる「志士」ではないんで、そういう意味ではちょっと新鮮なのかな。米国滞在の時代がかなり長いような気もするんだけど、でもまあ『いだてん』でも外国のシーンがかなり長かったしどうにでもなるか。ちょこちょこ観てる朝ドラでも前季の『ばけばけ』は当然ながら英語のシーンが多かったし、今の『風、薫る』も英語のシーンがまあまああるし、問題ないでしょう。
 ジョン万次郎はドラマや映画には脇役ではちょこちょこ出てくるような人ですが、さすがに主役になったことは無いだろうと思ったら、なんと1968年に日本テレビでその名もずばり『ジョン万次郎』というタイトルで全8話の連ドラになっていたようです。主演は江原真二郎。もちろんテープは残ってないでしょう。テレビドラマデータベースの解説によると、「日本の夜明けに貢献した庶民の男の、波乱に富んだ人生と、人間性を浮き彫りにしたストーリー。嘉永4年1月。沖縄に上陸した男たちがあった。10年前、土佐沖で事故にあい遭難した土佐の漁師・万次郎、伝蔵、五右衛門の3人で、彼らは米国の捕鯨船に助けられ米本国に渡ったものの、望郷の念から鎖国の故国へ決死の覚悟で帰国したのだった…。近代社会の教育を受けた万次郎が鎖国令下の日本で苦悶しながら生きる姿を史実に基づきながら描いた異色時代劇。」とのことで、米国滞在の部分はやはりばっさりカットしてるようですね。ま、時代的に仕方がない。
 個人的にはジョン万次郎というと歴史上の人物でも子供の頃のかなり早い段階に覚えた人という記憶があります。名前が変わってたからってのもあるんでしょうが、その経歴も特異で印象が強かったんでしょう。



#11575 
バラージ 2026/04/04 20:27
ドラマや本など

>奥さん登場
 『豊臣兄弟!』、白石聖ちゃんが退場したからってわけではありませんが、その次の回からちょっと脱落してました。しかし今回から代わって主人公の奥さん役の吉岡里帆さんが登場するということで、ちょっと久々に観てみることに……って結局女優じゃねえか!(笑) ま、大河ドラマの序盤で1回脱落するってのは個人的にはわりと毎年のことなんですが、そこから視聴復活することもあれば、しないこともあるし、もちろん脱落しないで観続けることもあるという感じなんで。
 確か以前も書いたと思うけど、秀長の奥さんが映像作品に登場した例は非常に少なく、『豊臣兄弟!』以前には大河ドラマ『おんな太閤記』と『江 姫たちの戦国』に出てきたのみのようです。同じ大河でも『太閤記』や『秀吉』には出てこなかったみたいですし、『おんな太閤記』のテレ東リメイク『寧々 おんな太閤記』にも出てこなかったんですね。『おんな太閤記』では「しの」という名前で元キャンディーズのスーちゃんこと田中好子が演じていたとのこと。そう言われればそんな記憶も薄っすらと。Wikipediaを読むと設定やストーリーはほぼオリジナルの展開だったようですが、そもそも秀長の奥さんについてはくわしいことはほとんどわからないようなんで、今年もほぼオリジナルの設定と展開になるでしょうし、物語としては別にそれでいいと思います。『江』での役名は「秀長の妻」で固有名詞なし。演じてたのも柴垣亜希というよく知らない女優さんですが、そもそもなんで『江』に秀長の妻が出てきたんだろ?

>『ちるらん 新選組鎮魂歌』
 第1夜の前半の1時間のみ視聴。10時からはNHKのほうの2夜連続ドラマ『片想い』を、舞台が地元だからって理由で観てしまいまして。さらに翌日の第2夜は、これまた裏番組のフィギュアスケートの世界選手権を観たんで、両ドラマとも全く観ず。どっちも録画してまで観たいもんでもなかったんで。そんな最初の四分の一だけ観た感想としては、意外になかなか面白かったかな。新選組自体にあまり興味が無いし、マンガ原作というのもなんとなく知ってたんでたいして期待してませんでしたが、俳優陣の熱演もあってキャラクター設定もなかなか面白かったし、現代風スピーディー・アクションも見応えがあって良かったですね。とはいってもやっぱり録画してまで観たいとは思わなかったけど。しかし「続きは配信で」ってのはムカつくなあ。全部観ないで良かった(笑)。

>『眠狂四郎』
 これは録画して観ました。黒島結菜ちゃんが出てるってところがちょっと気になりまして。もともと『眠狂四郎』は市川雷蔵版の映画だけ全作観ていて(感想は映画板#1881)、原作は未読、他の映画やドラマも一切未見。ということであくまで雷蔵版しか観てない前提で見る前に思ったんですが、あれをそのまま今のドラマ(や映画)でやるのは厳しいよなあと。あれはあくまで昔の映画という前提で観てるから許容できるんであって、今あのままのノリで作ったらいろいろと問題になりそう。特に女性描写とキリスト教描写は今となっては視聴者に受け入れられないでしょう。製作側もさすがにそう考えたのか、雷蔵版よりもかなり現代的な視点になってましたね(雷蔵版でも後半はキリスト教から分派した邪教という昔の時代劇や特撮番組みたいな設定になってた)。そこは良かった。
 実在の人物は水野忠成、水野忠邦の他に将軍家斉と息子の家慶もちょろっと出てきてましたね。ただ史実的に考えると江戸後期に転び伴天連、というかそもそも伴天連はいねえだろとも。だいたいこの頃の異人は長崎の出島にしかいないだろうし、江戸前期の転び伴天連の子孫も日本人との混血を重ねてクオーターどころか8分の1とか16分の1ぐらいしか白人の血は入ってなくて、ほとんど日本人になっちゃってるはず。ま、時代劇なんだからそんなところツッコんでもしょうがないんだけど。あと円月殺法って現在の作品で改めて出てくると良くも悪くも必殺技感があるよな。一応理屈は付けてあるけどかなり無理矢理だし、今見るとちょっとリアリティに欠けるなあと(『巨人の星』の“消える魔球”みたいな・笑)。とはいえ全体的にはまあまあ面白かったです。ただ続編まではどうかなあ。
 それにしてもNHK、次は『銭形平次』って……。昔の時代劇のリメイクばっかりじゃん。

>本の話
 呉座勇一『平家物語と太平記 通説の虚像を暴く』(朝日新書)を読了。有名な軍記物語である『平家物語』と『太平記』それぞれの成立過程や創作構想を近年の研究動向をもとに考察しつつ、その内容の史実反映と物語創作を分析した上で歴史研究にどう活用していくかを考える本でした。どちらかといえば呉座氏の守備範囲に近い『太平記』についての言及が多い印象ですが、個人的には『平家物語』諸本のうち最も古態を残すと言われてきた延慶本『平家物語』についての最新の考察が興味深かったです。『太平記』については、以前『陰謀の日本中世史』で呉座氏が書いていたとこの板に書かれていた正中の変の後醍醐天皇冤罪説が、『平家物語』における鹿ヶ谷の陰謀の虚構と対比して説明されており、なかなか説得力がありましたね。合戦描写についても「後詰」や「野伏」の実態などはやや専門的ながらも興味深かったです。
 その後、3〜4年前に古本で買った咲村観の小説『源頼朝』(全2巻、1983年、講談社文庫)を読み始めたんですが……うーん、これは今ひとつだなぁ。単純に小説としていまいち面白くありません。保元の乱直前から物語が始まってるんですが、登場人物の口から状況説明を長々語らせちゃうんで、途中から台詞を読んでるんだか地の文を読んでるんだかよくわからなくなってくる。序盤で早くも放り出してしまいました。



#11574 
ろんた 2026/03/31 18:26
「ちるらん 新選組鎮魂歌 〜江戸青春篇〜」(TBS)

 TBS系で二夜にわたって放送された二時間ドラマ×2。タイトル通り新選組もの。「江戸青春篇」といっても3/4ぐらいはは浪士組として上洛してからの話。その後、続編の「京都決戦篇」が連続ドラマとして配信されている。

■OA 2026/03/26 20:58-22:57,2026/03/27 20:57-22:54
■ストーリー
●第1夜…幕末の江戸。喧嘩に明け暮れる「バラガキ」土方歳三は、道場破りの末に「試衛館」の主・近藤勇と運命的に出会い、その圧倒的な強さと人間性に心酔し、沖田総司や山南敬助ら仲間たちと共に、初めて「家族」と呼べる場所を見つけた。「家族」のために江戸の町を騒がせる辻斬りとの対決に臨んだ土方は、勝負の中で魂から分かり合える友・岡田以蔵と出会う。1863年(文久三年)。大志を抱き京に乗り込んだ土方らを待っていたのは、時代の裏切りと、圧倒的な暴力と狂気を宿す・芹沢鴨だった。さらに、京の闇では暗殺が横行、その刃を振るう「人斬り」の中には以蔵の姿が…
●第2夜…京を「会津狩り」と名乗る人斬りの恐怖が覆う中、土方歳三ら壬生浪士組は会津藩預かりとなるため、藩主・松平容保からの試練に臨む。“日本一の武人”と称される佐川官兵衛との立ち合いで、土方は死を恐れぬ捨て身の剣でその覚悟を示し、彼らは京の治安を守るという大義名分を得ることに。 そんな中、近藤勇と芹沢鴨が同時に襲われるという事件が発生する。これは暗に仲間の中に長州と通じる裏切者がいるということを示唆しており…。裏切者を探す土方たちだったが、それは悲しい真実と仲間の死という最悪の結末に繋がる茨の道だった。
■スタッフ
脚本:酒井雅秋/チーフプロデューサー:森井輝(THE SEVEN)/プロデューサー:井上衛,下村和也(THE SEVEN)/VFXプロデューサー:赤羽智史(THE SEVEN)/監督:渡辺一貴/アクション監督:園村健介/原作:橋本エイジ,梅村真也『ちるらん 新選組鎮魂歌』(ゼノンコミックス)/放送:TBSテレビ/配信:THE SEVEN/製作,著作:THE SEVEN/音楽:出羽良彰/
■キャスト
土方歳三:山田裕貴/芹沢鴨:綾野剛/永倉新八(明治時代):柄本明/近藤勇:鈴木伸之/山南敬助:中村蒼/沖田総司:細田佳央太/市川真琴:生見愛瑠/お梅:桜井ユキ/新見錦:奥野瑛太/平山五郎:高橋光臣/永倉新八:上杉柊平/斉藤一:藤原季節/阿比留鋭三郎:杉野遥亮/原田左之助:蜿r太郎/藤堂平助:宮崎秋人/井上源三郎:岩永ひひお/佐々木只三郎:金子ノブアキ/岡田以蔵:中島健人/田中新兵衛:安藤政信/松平容保:松本潤/佐川官兵衛:加治将樹/久坂玄瑞:渡辺大知/佐伯又三郎:濱正悟/武市半平太:市川知宏/島田魁:長田拓郎/ムシクイ:渡部龍平/世木:嶋尾康史/佐々木愛次郎:田中偉登/和田弘之丞:小日向星一/ほか

・冒頭、小樽で隠棲する永倉のもとを「土方歳三のことが知りたい」と市川真琴という記者が訪ねてくる。その素性に気づいた永倉の問わず語りが本編。
・ストーリーは概ね新選組ものをなぞっているが、演出がヤンキーマンガ(笑)。ということでわたしは苦手なんですが、あれが史実と違う、これも違う、とかあげつらってはいけません。なんせ、松平容保すらクレージーな演説をして拳銃をぶっ放すんですから。その極が綾野剛演じる芹沢鴨。女ものの着物をゾロっとひっかけ、なぜか紙巻きたばこを吸い、「いいねぇ、剥き出しの暴力」とか呟いてニヤニヤしながら人を斬る。見てるだけでブルってしまう危険な男。田中新兵衛はナタみたいな刃物を操る二刀流。例の姉小路公知殺害は田中新兵衛の犯行だけど、現場に残された刃物は偽物。武市半平太や久坂玄瑞にはめられた。ほかに公知卿は奮戦したろうとか、以蔵は江戸に出てきてたかなぁという疑問は抱いてはいけない。
・アクションは「殺陣」ではなく「ジャパニーズ・ソードアクション」と呼ばれ、かなりアクロバティック。迫力はあるんだけど繰り返されると肉体の重みというか存在感が消えてしまう気がする。ワイヤーアクション全盛期にもそういうの感じたんだけど。縁側から庭に降りる感じで十メートルぐらい飛びあがっちゃったりして。それなりの予備動作しろよっていうか。
・佐々木只三郎がお姉言葉を使っているのはなぜだろう?
・主要キャラがチョンマゲ結ってないのは最近の流行ですね。衣装はシャレオツじゃなくて小汚いけど。
・「京都決戦篇」予告編を見ると芹沢鴨一派の排除から池田屋事件、蛤御門の変へと進む感じ。高杉晋作が登場し拳銃をぶっ放しているけど、京に出てきてたかなぁ。おっとこれも言わない約束ですな。
・原作は戊辰戦争まで描いて完結しているらしい。
・スポットCMが流れてきて、来年の冬アニメでまた新選組のアニメが始まる模様。また新選組のブーム来てるのかな。

>「眠狂四郎」(NHK-BS)
 なんか、市川雷蔵の方がよかった、田村正和の方がよかった、片岡孝夫(現仁左衛門)の方がよかったという声が聞こえてくるんだけど、それは「昔はよかったなぁ」ってヤツじゃないかな(汗)。市川雷蔵派のわたしでも今回のは楽しめました。あれはあれ、これはこれってことで。ストーリーは公式のものとちょっと違っていて、メインは水野忠邦に下賜された束帯雛をめぐる暗闘。狂四郎は忠邦に取り込まれるわけではなく、気まぐれ要素が強い。サトエリの片肌脱ぎがあったり、忠邦の寝所に忍び込むと真っ最中だったり、腰巻一つの間者を始末したりと、NHKではギリのお色気シーンあり。キリシタンは忠成にいいように使われているという設定。また、狂四郎誕生の経緯は原作通りだけど、母親の扱いが違う。そのせいで松平主水正の冷酷さが際立つ。円月殺法の使いどころはちょっと違和感。最後の最後、ラスボスを斬る時に使うもんだと思っていたけど、一対一ながらさんざん斬り合った後に使うのは違うんじゃないか。女壺振りの名が文字若って、これ、常磐津の師匠かなんかの名前だろ。ああ、忠邦はけっこうガッツリ出てきました。さて、長谷川博己さんによると評判次第では続編ありとのことだがどうなるだろう。

>コミックス、再読
『海賊女王(上)(下)』(皆川博子/光文社)を読み始めたんですが、エリザベスの宮廷を描いている序章もなぜか読み終われず、『新九郎、奔る!』『逃げ上手の若君』を再読。意外な伏線に気づきました。
『逃げ上手の若君』は青野原の戦いで、日本最古の軍用犬(?)・犬獅子が登場しているのを確認。名前が出てないんで気づかなかった。『新九郎、奔る!』は、龍王丸の誕生祝で駿河を訪ねた新九郎が、伊豆遊覧(笑)中に葛山氏堯と会っているのを確認。さらに夜陰、香厳院清晃の寝所で細川政元が酒を飲んでいて灯りを消す、という下りを発見。これは……そうか? そうなのか? そういうことなのか? 後に京兆家内衆が酒盛りで「御屋形様の御趣味は身分の上下など軽く越えるぞ」などと語っていて、以前は戯言かと思っていたのにマジだったみたい。
 再読ではないけどビッコミの『新九郎、奔る!』無料分。完璧な包囲網から茶々丸が逃れた理由が明らかに。狩野介も読者もあぜん。新九郎は怒髪天(笑)。

>「銭形平次」(NHK)
 8Kでの放送が終わっているのに、なぜかキャストが亀梨和也(銭形平次)しか発表されていない。不思議だ。ストーリーは平次一番手柄もので、お静さんとはまだ一緒になっていないっぽい。大川橋蔵の劇場版「銭形平次」もEP0ものだったな、と思い出す。もちろんリアルタイムでなくBSで見たんですけど。脚本も演出も亀梨くんも、子供の頃に見ていたってコメントしているけど、大川橋蔵のじゃなさそう。風間杜夫か北大路欣也か村上弘明か。村上弘明版ですら二十年ぐらいたっている。

>NHK ONE
 勘違いしていたんですが、配信しているのは地上波で放送したものだけ。ということで「悪魔の手毬唄」も「銭形平次」も見られませんでした。なぜだ! BSで放送される番組は色々と権利関係が難しいものもあるらしいけど、自社制作の番組はクリアしているはずなのに。地上波放送をじっと待つしかないか。



#11573 
ろんた 2026/03/12 22:55
『クロコダイル路地』(皆川博子/講談社文庫)

 単行本二分冊を合本。1000ページ越えの文庫本になってしまった大作をなんとか読了。これがなぜか意外と読みやすい。あらすじ(↓)は、カバーのヤツはどうも要領を得ないので帯の裏から。
 1789年7月14日、民衆がバスティーユ監獄を襲撃。パリで起きた争乱は瞬く間にフランス全土へ広がった。貴族の嫡男フランソワとその従者ピエール、大ブルジョアのテンプル家嫡男ローラン、日雇いで食いつなぐジャン=マリと妹コレット。<革命>によってそれぞれの運命は変転していく。革命後、登場人物たちは、フランスを脱出してイギリス・ロンドンへ。ローラン、ピエール、コレットは、革命期に負った「傷」への代償としての「復讐」を試みる。
 各章はIからVIのローマ数字がふられ、前半がフランス編、後半がイギリス編。これが単行本の1巻と2巻にあたる。フランス編は大革命を背景にしているが、ロベスピエール、サン=ジュスト、ダントン、マラー、ルイ16世、マリー・アントワネット、ジョゼフ・フーシェ、ナポレオンなどのスターは名前だけの出演。なぜならお話の舞台がナントだから。異なる階級の人々を語り手にして、社会を重層的に描き出す。そして革命の混乱が、本来は無縁なはずの人々の人生を交錯させる。"ナントの虐殺"が始まるとイギリスへ脱出。後編の舞台はロンドン、時は1808年。貧民街の人々、『開かせていただき光栄です』『アルモニカ・ディアボリカ』の登場人物が物語に関わっていく。後半はローランの営むテンプル商会の支配人が行方不明となるという、ミステリー仕立て。ナント脱出時の因縁が探られ、ジャン=マリの妹コレットが疑われる。
 タイトル『クロコダイル路地』の「クロコダイル」は鰐のこと。ローランはナントの商館で未払い代金のカタの鰐を見るのだが、以後、その姿に取り憑かれたようになってしまう。鰐を見ているうち、次々と大革命勃発の知らせが入ってくるんで、歴史の悪意的なものの象徴だろうか。作中、「運命が運び、連れ戻すところに、われわれは従おう(Quo fata trahunt, retrahuntque, sequamur.)」(ウェルギリウス『アエネーイス』より……らしい)が繰り返し引用されるので暗い運命の象徴かも。

>『ビジャの女王(9)』誤記
 ジファルとブブが異父兄弟、と書いてしまいましたが、異母兄弟です。父親は旅の薬売りで女癖が悪く、港々じゃなかった、オアシスオアシスに女ありな男という設定。

>「豊臣兄弟!(9)」
 やっぱり竹中半兵衛、『泣き虫弱虫諸葛孔明』風。火計はしないけど、玄関にからくり弓矢を仕掛けるヤバいヤツ(笑)。稲葉山城乗っ取りはセリフで触れられるのみ。ただ、やっぱり新味を加えようとしてうまくいってない感。居城を稲葉山城のミニチュアに……って無理あるだろ。それにしても稲葉山城、あの小人数で落城しちゃうの? 脆弱すぎない? もっと外部との連携を描かないと。あと、竜興はどうやって逃げたんだ? 小一郎、直の墓の前で土豪の坂井様に文句言われる。けどそんな筋合いないよなぁ。手前が村をちゃんと治めてないのが悪い。ああ、直が死んでいちばん落ち込んでるのが弥助ってのちょっと笑った。
 第10話は「信長上洛」。なんか展開が早すぎる気がするけど、明智光秀登場で盛り上がってるなぁ。どうやらキンカン頭ではないようだ、要潤だしね。そういや、この人、タイムスクープハンターだったな。お市の輿入れもある。HPのエピソード紹介には「市は嫁ぐ前に、あることを小一郎(仲野太賀)に頼む。」とあるけど、織田家の奥向きに関わりすぎじゃないか、豊臣兄弟?

>『逃げ上手の若君(24)』(松井優征/ジャンプコミックス)
直義に敗れ、腹心の高一族を失った尊氏。遂に引退の時が訪れたかに思われたが、土壇場でかつてない神がかりを発揮し、形勢を覆し始める。一方、高氏に宿る悪神を見破った雫は、その先に待つ最悪の未来を予見する。決戦に向け動き出す時行たちだったが、歴史は再び神の手によって狂わされていく──!! (裏面カバーより)
 観応の擾乱後半戦。軍事的勝利を収めたのに政治的敗北を喫する直義(<神力による歴史の書き換え)。幕府内で孤立し隠居を決意。だが尊氏が追い打ちをかけるのを察し桃井直常、吉良満義を伴い逃亡。北陸から諏訪を経て関東へ。上杉と合流して尊氏の追討軍を迎え討つが、サッタ山の戦で敗北(<同上)。捕らわれの身となり殺害される。殺したのは尊氏(の中の悪神)。たがついに人としての尊氏が耐え切れなくなって崩壊が始まる。それを狙って東西で南朝(というより反尊氏派)が蜂起、最終決戦へ。武蔵野合戦ですな。次巻は05/01発売とのこと。
・尊氏内部の悪神のヤバさが明らかになる。世界中から神力を吸収し天変地異や歴史の改編も自由自在。神力を奪われた地では災厄が続発し、ヨーロッパのペスト流行も尊氏のせいだという。ネコちゃんを虐待したせいだと思うけどなぁ(笑)。
・風間玄蕃の元ネタが判明。信濃・桔梗ヶ原の玄蕃狐の伝説とのこと。さらに玄蕃丞という人物が桔梗ヶ原に実在したという説もあり。桔梗ヶ原のある塩尻市では玄蕃祭があるというが、『逃げ若』とのコラボの話はないらしい。まぁ、キャラがキャラだからなぁ。小笠原政長(貞宗の子)も登場。キャラデザに注目(笑)。
・薩タ山の戦。「尊氏軍三千対直義軍五十万」と『太平記』にあるが、お得意の「嘘」「大げさ」「まぎらわしい」。地図を見ると分かるけど、この辺ってそんな大軍が集結できる地形じゃない。薩タ山は直接駿河湾に落ち込んでいて、東海道は山岳ルート。尊氏が三千の兵でここに布陣したのは理にかなっているけど、この要害を抑えなかったのは直義の戦下手を示しているような気がする。あるいは拙速な移動で薩タ山を抑えた尊氏の方が上手ということか。しかし、現在の通説ではここでは尊氏は戦っていないのであった(汗)。「解説上手の若君」参照。
・新田義興再登場。『神霊矢口渡』の人だとあらためて気づく。弟(腹違い)・義宗登場。『孫子』とか読んでるけど、新田一族なんでやっぱ「?」な人(笑)。
・関東独立構想(?)を時行に語る直義。足利基氏も登場しているから、その気ならこの後の関東のゴタゴタもやれた? それだと『新九郎、奔る!』につながってしまうなぁ(笑)。
・笑い所は、頼継の改名を神力でなかったことにする雫。そして出家するとキャラデザが……と愚痴る。可愛い直義。尊氏の正体を雫に教えられた直義。(直義「兄上の性格がちゃらんぽらんなのも『中の神』のせい」 雫「いえ」「ちゃらんぽらんは元からです」)

>「悪魔の手毬唄」「眠狂四郎」
 情報ありがとうございます。「悪魔の手毬唄」の方はもう、配信で見なさい、ってことでしょうか。そうすると「4K」要らないってことになりそうだけど。最近アニメのリメイクが多いのも配信用でしょうかね。SDじゃ見てもらえない?
 出演者は──宮沢りえが青池リカかぁ、としみじみしちゃったりして。白石加代子はおりん婆さんかと一瞬思ったんだけどそんなはずはなく、第一の事件が起こってから手毬唄を思い出し、第二の事件が起こるまで二番を思い出さない、ストーリー展開に都合のいい由良家のおばあさんでした(笑)。
「眠狂四郎」は水野忠邦を出さないで、忠成に一方的に悪口を言わせるパターンでしょうか。最後、「ほめて遣わす」と狂四郎を呼び出して強烈な皮肉をぶつけられて激怒するってのもありな気がするけど。

>これって真珠湾じゃね?
 アメリカ人に言うと激怒するだろうし、どのメディアもこの手の話はしてないんだけど、核協議中にいきなり攻撃って、そういうことだろ。



#11572 
バラージ 2026/03/10 21:54
歴史とはあまり関係ない小ネタ

>図書館にあった戦国史のデカくて超分厚い本
 正しいタイトルは『クロニック戦国全史』(講談社)でした。1995年初版なんで、最初に読んだのは00年代ではなく、ましてや10年代などでもなく、90年代だったかもしれません。

>『悪魔の手毬唄』
 ニュース記事によると、NHK BSプレミアム 4K(BSP4K)にて3月14日21時より前編、21日21時より後編がオンエア。NHK BSでは11月以降に放送される予定だとのこと。要するにこれは4K案件のドラマですね。BSで放送される頃にはもう忘れてそうだな。出口夏希と吉田美月喜が出るようですが、これであと南沙良が出てたら映画『万事快調〈オール・グリーンズ〉』の主演トリオでした。

>『眠狂四郎』
 NHKのドラマサイトですでに追加キャストが発表されており、それによると狂四郎に密命を託す武部仙十郎役に宅麻伸、静香の従者・喜平太役に今野浩喜、狂四郎を用心棒として頼りにする文字若役に佐藤江梨子、家斉の下で権勢を誇る老中・水野忠成役に西村まさ彦、豪商・備前屋役に神保悟志、狂四郎の母・千津役に原沙知絵、狂四郎の剣の師匠役に本田博太郎が出演するとのこと。



#11571 
ろんた 2026/03/08 00:01
「眠狂四郎」(NHK-BS)

「丹下左膳」に続いて「眠狂四郎」もやるそうです。NHK-BS、時代劇づいてるなぁ。放送予定は2026/03/24 22:00-23:29。しかし「悪魔の手毬唄」は放送未定だなぁ。
■あらすじ
将軍・徳川家斉の下、老中・水野忠成と水野忠邦が幕閣内の権力争いで激しくしのぎを削る文政の世。名刀・無想正宗を携えた謎の浪人・眠狂四郎が江戸に現れる。狂四郎は老中忠邦の側近・武部仙十郎から、忠邦を狙う刺客を倒すよう密命を受けたのだった。一刀のもとに刺客を斬り捨てる狂四郎だが、絶命した刺客の首にはロザリオがあった。狂四郎は後日、刺客の妹・茅場静香を探り当て、形見のロザリオを渡し、兄を斬り捨てたことを告げる。自身も熱心な信者である静香は、切支丹仲間の身を案じ、信徒たちを束ねる豪商・備前屋に助けを求める。備前屋は屋敷の地下に礼拝堂を作り、信仰の場として提供していた。そして信徒たちを守るため、手だれの武士たちを狂四郎暗殺に差し向ける。同じころ、大目付・松平主水正は忠邦の失脚をもくろむ老中忠成の命を受け、忠邦と通じる狂四郎を狙うよう腹心の剣豪・戸田隼人に命じていた。狂四郎を倒すべく、敵味方が入り乱れ、激しい戦いが始まろうとしていた…!
■スタッフ
脚本:酒井雅秋/制作統括:谷口卓敬,橋練,土田真通/プロデューサー:土井健生/演出:一色隆司/原作:柴田錬三郎/制作:東映京都撮影所,NHKエンタープライズ/制作,著作:NHK/音楽:池頼広/
■キャスト
眠狂四郎:長谷川博己/茅場静香:黒島結菜/戸田隼人:高橋光臣/女狐:菜々緒/金八:森永悠希/松平主水正:坂東彌十郎/
(番組HP、制作決定のお知らせより)
 隠れキリシタンが絡んでくるんで、おそらく狂四郎の出自がテーマになるんでしょう。松平主水正が狂四郎の命を狙うということは、出自を知らないのか、それだけ冷酷な人間という設定なのか。そして水野忠邦は登場するのか? ただ、水野忠邦の用心棒を引き受けちゃうってのがちょっと腑に落ちない。お色気シーンもないんだろうな。ついでに前から思ってたこと。高橋光臣って、チュートリアル徳井にそっくりだ(笑)。

>『陰陽師 烏天狗ノ巻』(夢枕獏/文春文庫)
 安定の面白さで内容に文句はないんですが、巻数表示してほしい。どこまで出ていてどこまで買ってどこまで読んだか分からなくなることがしばしば。収録作のうち二つは芦屋道満が主人公。原作では敵でもライバルでもない。そして「あとがき」の「追記」にちょっとしたニュースがある。2023年のニュースだけど(単行本のあとがきですから(汗))。え〜〜〜っ、源博雅が「武士」でなくなるそうです(笑)。初期作を読むと「武士なわけねぇじゃん」ってイチイチ引っかかってたんですけど、いよいよ改稿して削るそうな。晴明のバディとしては腕がたつ方がいいと考えてのことだった、としていて、RPGのパーティーでいうと晴明は後衛の魔法使いだから前衛が必要というのはわかるけど、わざわざ「武士」と書くというのは「みなもとの〜」という姓に引っ張られたとしか思えない。しかし、臣籍降下した元皇族だと晴明との関係が今みたいになったかどうか。その辺、結果オーライということで(笑)。

>伊豆討ち入り色々(無料公開分含む)
『新九郎、奔る!』では新九郎の実母・浅茅は尾張国衆・横井氏の出身。この横井氏は時行の末裔を自称しているので、伊豆討ち入りは時行と尊氏の子孫同士の再戦ということに(笑)。茶々丸は堀越御所を脱出した後、伊豆の各地を転戦。#11401でちょっとだけ触れた永井豪の『北条早雲』(リイド社/2005年)では深根城(現下田市)で討ち取られる説を採用。『新九郎、奔る!』は武田氏のお家騒動に触れているから、親山内上杉派に匿われる説を採用かな? 理由は扇谷上杉に背後から圧をかけるために伊豆と茶々丸が必要だから。新九郎もその辺を危惧している。茶々丸が殺される(あるいは新九郎に引き渡される)のはお家騒動に一応の決着がついたかららしい。願成就院の墓は……供養のため墓だけ建てたのか、首を継いで葬ったのか?
 wikiでは伊豆討ち入りの進路が書き換えられてますね。#11523に書いたように以前は清水湊−西伊豆−堀越御所のルートだったけど、現在は興国寺−三島−堀越御所と陸路を進んだとしている。(地図に痕跡が残ってる) やっぱ西伊豆上陸じゃぁ奇襲にならない? 『新九郎、奔る!』も陸路説をとるけど、一部狩野川河口から騎馬と船で三津湊へ向かい、そこから山越えして下田街道を北上、南北から堀越御所を攻めることになってる。茶々丸に逃げ場はないようだが実は……ということで初夏発売の(23)を待て!

>「豊臣兄弟!(8)」
 大河ドラマファンの言う通り、「あさイチ」出演が死亡フラグでしたね(笑)。ご苦労様でした、って意味なのかな。退場が早すぎるっていう人もいるみたいだけど、あんま引っ張っちゃうと、小一郎が嘆き悲しんだ翌週に嫁取りでハッピーな情緒不安定なヤツになっちゃうから。
 さて第八回は再び支離滅裂。信長が出てくるとなんでこうなっちゃうんだろう。墨俣は陽動で北方城奪取が本命って陽動になるの? てっきり織田の別動隊が攻撃するかと思ったら、墨俣の守備兵を二手に分けて攻撃? そんな少人数で落とせるようなチョロい城なの、北方城って? なぜか櫓に置かれた桶から油がトロリ(小一郎のおむすびコロリン)は藤吉郎の火矢一閃で伏線回収。ガソリン撒いたのかよ、ってツッコミはナシとしよう。一夜で落ちたから一夜城って、そんな城(砦)、古今東西に数えきれないぐらいあるだろ(笑)。直が水争いに巻き込まれて死ぬってのはちょっと面白かった。俗流日本人論が大好きな「水と安全はタダだと思ってる」って嘘っぱちだよなぁ。ただ争ってるのが水争いの現場っぽくないし、あんな大騒ぎしているのに気づかず、二人がフラフラ近づいちゃってるの不自然すぎる。ついでに言えば土豪の坂井様、何やってんの? 娘にかまけてる場合かよ。んな頼りない土豪、下剋上じゃ。水争いの場に子供がいるのも不思議。供の弥助も何してたんだ。大怪我ぐらいしろ。直の死を悲しむ小一郎、脚本と演出がくさすぎる。総じてこの辺、もっと上手くやれなかったのか感。
 第九回は「竹中半兵衛という男」。いよいよ本格的に登場するが、なんだか『泣き虫弱虫諸葛孔明』の孔明っぽい。最近読んだせいかなぁ。でもHPの画像では『三國志抄 諸葛亮伝』を読んでいる。気にくわないと火計(放火)はないだろうから、まだ付き合いやすいか(笑)。ただし、あらすじを見るとやっぱり支離滅裂な予感。稲葉山城乗っ取りはやらないのかな。

>「北方謙三 水滸伝」
 わたし、マチズモが苦手でして、北方謙三はちょっと……(汗)。一応、録画はしてますが、この間ダビングに失敗してディスクがまるごと読み取り不能に、WOWOWなんで元の録画データも消えました。なんかやたら再放送しているんでそっちを見ましょうかね。それにしても全19巻の小説を全7回でドラマ化って……続編ありきかな。
 そういえば大昔の「水滸伝」やらないかな。横山光輝原案らしいけど。



#11570 
バラージ 2026/03/07 19:01
小説『倭寇』読了

 南北朝時代末期、いわゆる前期倭寇の時代を舞台とした橋直樹の小説『倭寇 わが天地は外海にあり』(潮文庫)を読み終えました。
 00年代までは面白い歴史小説(や時代小説)を書いていた橋氏ですが、10年代に入ると平清盛、源義朝、黒田官兵衛、真田幸村、五代友厚、井伊直虎、西郷隆盛、北条義時、蔦屋重三郎、そして今年の豊臣秀長とNHK大河ドラマ(&朝ドラ)便乗小説ばかり出すようになってしまいました。正直ちょっと残念に思ってたんですが、『倭寇』は北条義時と蔦屋重三郎の間に書かれた小説で、その間の大河主人公の徳川家康はすでに山ほど小説があるし、紫式部のような人を書くのは橋氏はおそらく得手ではないってことで、その合間に便乗ではない自分の書きたい小説を書いたってことなんではないでしょうか。ちなみに橋氏は西郷隆盛と北条義時の間にも大河とは関係ない今川義元を主人公とした『駿風の人』という小説を書いてるようで、まさか金栗四三や田畑政治の小説は書けないだろうからなあ。まぁ、おかげで書けそうな明智光秀も飛ばされちゃったけど別にいいか。
 話を戻して小説『倭寇』ですが、冒頭の登場人物紹介の1番最初にアギ・バートルという倭寇の首領が挙げられており、知らない人だったんで検索してみると阿只抜都(あきばつ)という倭寇のことのようで、1380年に高麗内陸部まで襲い、李成桂に討ち取られた人物とのこと。ところが小説を読み進めるとアギ・バートルが主人公っぽいのはプロローグだけで、本編に入った後はプロローグにおいてアギ・バートルの右腕っぽく描かれてたカラスというあだ名の架空人物の舟指が最後まで一貫して主人公です。アギ・バートルはあくまで脇役なんですが、そもそも阿只抜都についてくわしいことはほとんどわからないようなので、小説もかなりの部分が創作。アギ・バートルの正体を源氏の末裔である熊野水軍の御曹司と設定し、カラスは熊野の名うての舟指だったが行きがかりで九州へと落ちのびる熊野水軍の船を操ることになる。しかし向かった九州はすでに室町幕府の九州探題・今川了俊に制圧されており、熊野水軍はさらに逃れて対馬へ。そこもすでに安住の地ではなく、彼らは海の向こうに新たな自分たちの国を作るためジャンク船に軍勢を乗せて高麗へと向かう……というお話。
 主人公たちが倭寇になるまでがやたら長く、前半はほぼ熊野が、後半の半分ぐらいまでは対馬が舞台。残り四分の一でようやく高麗が舞台となり、そこからが史実に残る(といっても半ば伝説のようですが)阿只抜都のエピソードとなります。しかも主人公は阿只抜都ではなく架空人物なので特に四分の三くらいまでは歴史小説というより時代小説とか伝奇小説に近いノリ。もちろん熊野の水運などの風俗描写や日常描写は細密に描かれ、史実に忠実だと思われるんですが、いわゆる倭寇の話だと思って読むと途中まではちょっと肩透かしかもしれません。アギ・バートル以外の実在人物で最も出番が多いのは終盤に出てくる李成桂で、他には高麗朝廷の人々(辛&#31121;王、李仁任、鄭夢周、朴修敬ら)や今川了俊と細川頼之がちょろっと出てくるくらい。ほぼほぼ架空人物たちで話が進む小説です。ただ小説としては非常によく出来ており、橋氏久々の快作と言っていいでしょう。僕は上記大河便乗小説のうち『平清盛』と『北条義時』を読んだんですが、源平時代の小説を多数執筆してる橋氏にしてはやはり完成度の低い作品だったと感じざるを得ませんでした。それらに比べればやはり長編小説としてきちんとまとまった力作にして佳作でしたね。
 ただし両手を上げて賞賛というわけではなく、いささか看過できない欠点もあります。なんと言いますか倭寇のやってることは結局のところ誘拐とか略奪とか殺人とか侵略とかなわけで、主人公の側がそういうことをやっているのはやはり著しく感情移入を妨げられます。倭寇を美化したり事実を隠したりすることなく、事実をそのまま描いていると言えばその通りなんですが、小説として主人公側に共感できないのは致命的。実際、読んでいて主人公側がひどい目に合ったり最終的に敗北したりしても同情心があまりわかず、むしろ読んでる途中は早くやられろなんて思ってしまう始末。また残酷描写もかなり多く、特に倭寇側の(現代人から見れば)残酷な儀式が描かれる部分では著者自身の言葉として「現在の感覚では倫理的に受け入れられない方も多くいるだろう。(中略)敢えて当時の慣例に沿って忠実に描くことをご理解いただきたい」とした上で、「この部分を読むことを避けたい読者の方は◯ページ◯行目から読むのを再開してほしい」とまで書いてあります。僕は比較的そのような描写に耐性があるようなんで(村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』や莫言の『赤い高粱』の残酷描写も読みましたから)そのまま読みましたけどね。確かにそこはその手の残酷描写が苦手な人は読み飛ばしたほうがいいかもしれません。なお橋氏の小説の欠点である女性描写の薄さは、題材と架空人物のためか今回はほとんど気にならなかったです。
 全体的には無条件で他人におすすめするのはちょっと躊躇するし、読む人を選ぶ作品であることは間違いありませんが、小説としての完成度が高いこともまた間違いないといったところでしょうか。


>直退場
 やはりフラグでしたねえ。3月いっぱいくらいまでは出るのかとも思ってたんですが、彼女が退場しないと秀長がいつまで経っても結婚できないからなあ。まあ仕方ないか。ちなみに大河や朝ドラの出演者が『あさイチ』にゲスト出演するとその週か次の週に退場するというパターンが多いらしく、白石聖ちゃんが出演した時点でSNSでは退場フラグだとすでに話題になっていたようです。
 そして菅田将暉演じる竹中半兵衛も登場。そういえば半兵衛も『おんな太閤記』に出てきた記憶が無いなあと思って調べてみると、やっぱり半兵衛も出てこなかったらしい。『豊臣兄弟!』にはまだ出てきてない黒田官兵衛も『おんな太閤記』に出てきた記憶が無いんですが、調べたら菅野忠彦というよく知らない俳優が演じてたとのこと。まぁ、あのドラマの登場人物は、ねねと秀吉の一族周りに集中してましたからね。でも前田吟が蜂須賀小六(蜂須賀正勝)を演じてたのはちゃんと記憶にあるんだよなあ。

>トランプがまたやった
 今度はイランと戦争状態に。トランプもイスラエルのネタニヤフもやりたい放題だな。2人ともイランをつぶしたいというばかりでなく、トランプはエプスタイン問題、ネタニヤフは汚職問題から国内の目を逸らしたいって思惑もあるんではなかろうか。実際、そうなってるわけだし。
 それにしても「ホルムズ海峡封鎖」と聞くたびに、僕は80年代に出版された第三次世界大戦もの近未来シミュレーション小説『ホルムズ海峡封鎖す!』(久留島龍夫と軍事研究グループ・著、二見書房〈サラ・ブックス〉)をなぜか思い出してしまうのです。別に読んだわけでもないのに……。



#11569 
バラージ 2026/02/28 18:46
またまた小ネタ

>南北朝室町小説&映画
 南北朝列伝を更新されるなら、もし可能なら僕が#10788で挙げた南北朝短編小説や、#11216で紹介したアニメ映画『犬王』についての情報も反映していただけるとうれしいです。もちろん無理にとは言いません。実際にご覧になったもののみ記載される方針かもしれませんし。

>逃げ上手の茶々丸
 足利茶々丸というと一昔前は1493年の北条早雲の伊豆討ち入りで討たれたというのが定番でしたが、近年では没年は1498年という説が有力になっているようですね。僕が最初にその説を知ったのは、地元の図書館にあった戦国史大事典だったか戦国史クロニクルだったかいう超分厚い本(正確なタイトルは忘れてました。今度行った時に確認しようと思います)で、1454年の享徳の乱から1616年の元和偃武までを1年ごとに見開き2ページで新聞記事風に紹介していくという百科事典風の本でした。図書館で最初に読んだのは確か00年代だったかなあ? いや、10年代になってからだったか? それによると確か茶々丸は伊豆ではなく甲斐だか信濃だかで早雲に討たれたと書いてあったような。Wikipediaにはさらにその後の研究の進展が書かれてるようですね。

>またまた『豊臣兄弟!』の直
 こないだの『あさイチ』に白石聖ちゃんがゲストとして登場してたようで。そんな聖ちゃん演じる直が病を乗り越えたことで病死展開は消えましたね。逆に言うとこれで後の展開が絞られてきたとも言えます。次週予告では直の口から秀長との婚姻に前向きな話が……って、これどう考えてもフラグだよなあ。秀長の奥さんになるのは吉岡里帆なんだから。ま、予告には全然関係ない台詞をそれっぽく見せるフェイクもよくあるんですけどね。ちなみに吉岡さんは第12話から登場するみたいです。
 お市に関しては『おんな太閤記』の夏目雅子もそれなりに出番が多かったんじゃないかと思うんですが(なにしろ夏目雅子だし)、夏目さんは『徳川家康』では娘の淀殿を演じてるんでそのあたりの記憶がどうもごちゃごちゃしちゃってるんだよなあ(笑)。『おんな太閤記』で淀殿を演じてたのは池上季実子で『徳川家康』では築山殿を演じており、また『おんな太閤記』で前田利家を演じてた滝田栄が『徳川家康』の主人公家康を演じてたんで、そのあたりはリアルタイムでもちょっと戸惑ったような記憶あり。ちなみに『徳川家康』でお市を演じてたのは真野あずさだったようです。

>本の話
 先日、本屋にぷらっと寄ったら、呉座勇一の『平家物語と太平記 通説の虚像を暴く』(朝日新書)という本が出てました。僕は平家物語のほうに興味を持って、パラッと立ち読みしてみたらまあまあ面白かったんで買ってみましたが、今のところまだ積ん読になっております。ご興味がありましたらどうぞ。

>ドラマ『北方謙三 水滸伝』
 そういやすっかり忘れてましたが、WOWOWで連ドラ『北方謙三 水滸伝』が始まったようです。僕は日本人が中国人を演じる作品にいまいち興味が持てず、全く観ていませんが……。



#11568 
ろんた 2026/02/23 23:15
『新九郎、奔る!(22)』(ゆうきまさみ/小学館)

『逃げ上手の若君』は、ジャンプの掲載順云々と書いたら気になってしまって、確認したら真ん中ぐらいだったんですが、なんだかいやに老けた尊氏と和平交渉中、サブタイの年号が「1353」。びっくりして最終回まで確認してしまいました。普段は読まないんだけど。わたしも唐突に感じはしましたが、通常、雑誌掲載分と単行本とでは半年ほどタイムラグがあるし、正平の一統だの武蔵野合戦だの考えればそうでもないかな。
 それにしても、『新九郎、奔る!』も『ビジャの女王』も終わりそうで……あとは『天幕のジャードゥーガル』ぐらいかぁ。なんか寂しい。ああ、『女北斎大罪記』も終了していた。12月に最終巻3が出ていたのに気づかず。

 さて『新九郎、奔る!(22)』は、収録エピソードのタイトルがすべて「満を持す」。いよいよ伊豆討ち入り準備の大詰めであります。
幽閉中の前将軍・義材の脱走。その一報を耳にした新九郎は、伊豆討ち入りの準備を急ぐが、声かけをしている者たちの覚悟が決まらない。そんな膠着した状況を動かしたのは、甥・龍王丸からの"サプライズ"! 特大の追い風を得た新九郎だが、もうひとつ、思いもよらぬ話が降って湧き、結婚9年目の円満夫婦に危機が訪れて!? (カバー裏より)
・甥・龍王丸からの"サプライズ"とは新五郎範続率いる兵三百の合力。実は龍王丸の独断だが、新九郎の計画を知って大方様(伊都)も事後承認。正式に今川が兵を出すことになる。実は新九郎が伊豆を取れば、遠江奪還に集中できるという下心もあったりして(笑)。
・今川の出兵に動揺したのが葛山氏堯(かつらやまうじたか)。大方様の弟、将来の当主・龍王丸の叔父とはいえ、今川の内紛を解決したうえ今川に出兵させるのを見て、新九郎の影響力を過大に評価してしまう。在国奉公衆としての限界を感じていてもいて、今川の被官となることを決意。せっかくできた新九郎との縁をより太くしようと、実効支配していた興国寺周辺を新九郎に返還。新九郎に一目ぼれしていた娘・初を嫁がせる。
・ホームシックで家臣の士気が落ちているのを感じた新九郎、自身や家臣たちの妻子を呼び寄せ一部の者は一時帰京させた。ところがそこに葛山との縁談が持ち上がり、すったもんだ(笑)。
・伊豆国に新たな内紛勃発。茶々丸に取り立てられた者、元守護である関東管領・山内上杉の被官、新御所との融和を図る者の三派がおり、山内上杉被官の関東出兵の間の反乱を警戒した茶々丸が融和派を処断。被官勢の関東出兵は山内上杉が扇谷上杉の動きを警戒してのもの。守りが手薄になる、と新九郎は「天祐」と言うが、左近次は「本当に『天祐』なんですかね?」と一言。ひょっとして前巻で「関東管領絶対殺すマン」が"遊説"したせいか。思わぬ伏線回収。ああ「関東管領絶対殺すマン」は大道寺太郎ではなく新九郎の感想でした。
・(23)冒頭のエピソードはいよいよ「討ち入り」。次巻予告は討ち入り時の新九郎のバックショット。(明日からは俺の主は俺だ)との心の声。予定通り討ち入りで終わってしまうのかなぁ。実は茶々丸は堀越御所から逃亡して、首を取るまで何年かかかるみたいだけど。終わったら『セシルの女王』(こざき亜衣)でも読もうか。次巻は初夏発売。
・くすぐり1 富士下方の百姓の愚痴「水かき出して土を入れても、また水が湧いて元の木阿弥じゃねぇか!!」「バカタレ! その木阿弥はまだ生まれてねぇっ!!」
・くすぐり2 有力国人の拠点が描かれた伊豆の地図をにらむ新九郎。しかしその地図は巨大な盛定スクリーンに描かれているのであった。
・くすぐり3 葛山氏堯に「(身の回りの世話をする)女子に不自由しておるということはござらぬか?」とそれとなく持ちかけられるが、「身の回りのことは……たいがい自分でやりますから、さして不自由はしておりませんが」と答えてしまう。大人の男としては勘が悪すぎるぞ、新九郎。
・くすぐり4 恋に恋する乙女・初。愛読書はもちろん『源氏物語』である。
・くすぐり5 ぬいに縁談を打ち明ける新九郎。後ろめたさからついつい「ぬいが嫌であれば再考もしよう」などと言ってしまい、「……心にもないことを仰いますな」と突っ込まれる。最後に「私は伊勢新九郎の正妻でございますからね!」と微笑んで見せるぬい、カッチョいい。(しかし、眉は剃ってないな)
・くすぐり6 8月30日、興国寺。翌日の討ち入りに備え始まる軍議。シレっと盛定スクリーンを下げる新九郎。一同「それはいったいなんじゃ!?」 しかもこれが最後のコマ。

>『ビジャの女王(9)』(森秀樹/リイド社)
西暦1258年、ペルシャ高原の小都市【ビジャ】を、【ラジン】率いる蒙古軍の支隊が包囲した。世界の半分を制圧した最強騎兵は総数2万、 対するビジャの人口はわずか5千人である。陥落目前のビジャは【オッド姫】の救援要請に駆けつけた【インド墨家・ブブ】により何とか持ちこたえていた。市街地にまで入り込んだ蒙古軍の侵攻は、尾を引く蒙古内紛で大将ラジンがハーン直属軍に連行されるという意外な展開で中断する。しかしすかさず蒙古ラジン隊はラジンを奪還、大将を奪還したラジン隊は蒙古本国を敵に回すことに。後ろ盾と兵站を失い後のない状態で三たびビジャを目指すことになったラジン、そしてビジャで待ち構えるブブは、各々の20年の因縁を語り始める……! この物語は、この戦いは、どこから始まったのか──。20年を経て、ブブ、ラジン、ジファルの数奇な因果が明かされる。極上の本格劇画で魅せる中世大陸ロマン、第9巻!(リイド社HPより)
・ブブにとってフレグ、ラジン父子は母と姉の仇。ジファルの故郷であるオアシス都市サドラはフレグの百人隊に蹂躙され、ジファルはビジャを頼って逃亡。ブブ、ジファル、ラジンは、オアシス都市バザで出会うことになる。
・ジファルは全キャラクターの中で最も陰翳深く矛盾を抱えた存在。サドラの王子としてビジャ王家の庇護を受けて宰相となったのだが、実はイーブンという庶民の私生児。母の夫であるラクダの世話役に実子同様に育てられ、フレグ隊に母と養父が殺されると、本物の王子ジファルを連れ逃亡するが、野心から本物を殺し入れ替わる。ビジャを裏切りラジンに内通しているのも、副官としてラジンをハーンに押し上げ、あわよくば取って代わろうという野心のため。そのくせ、バグダット陥落にともない「知恵の館」(当時最大の学び舎であり図書館でもあった)が灰燼に帰すと、モンゴルへの憎悪を募らせる。だが、最終決戦寸前、ビジャを脱出しようとして、潜伏していたモンゴル兵に刺され重傷を負う。ラクダでラジン陣営に向かうが、傷の痛みが故郷や母、養父の復讐の念を蘇らせる。そして力尽きる寸前、自分とブブが異父兄弟ではないかと思い至る。
・二万の兵が一万三千にまで減り、今や反乱軍として補給も断たれたラジン軍は、崩れた城壁めがけて突撃を繰り返すが、罠にかかって次々に倒れる。後のないフレグはオッド姫に、共に父・フレグと戦おう、と驚くべき和平案を提示するが、オッド姫に毅然と拒否され激怒。さらに力攻めを繰り返す。だが馬たちが血を吐いて倒れ(墨家の生物兵器発動)、インド墨家からの援軍まで現れて状況は悪化。そして次巻へ。

>「豊臣兄弟!(6)(7)」
 第六回は大沢次郎左衛門編の続き。冒頭で「小一郎が"長秀"と名乗るようになりましたよ。これ信長から一字もらったんです」とやってた。足軽に? ありえない。本編ではやっぱり信長が支離滅裂。せっかく調略した相手を、確たる理由もなしに殺しちゃうってまともじゃない。仲のいい弟を殺す羽目になって人が信じられなくなった、とお市が解説(?)していたが、それにしてもだよなぁ。ドラマで語られない歴史と関連させると、そもそも道三は信長に美濃を譲ってるんで、大沢次郎左衛門が道三さまのために美濃を守る的なこと言ってるのがおかしい。信長と信勝──そんなに仲良かったか? 多分、土田御前の後押しで信長のライバルみたいになって戦までしてるじゃん。後の方で「殿を裏切りません!」(お市をチラ見)と言ってる柴田勝家も信勝派として戦っている。そして信勝暗殺の場では密告。ああ、二人で巻狩りみたいなことしてたけど(獲物が猪?)、そこは鷹狩の方が良かったんじゃないかなぁ。
 第七回。さすがに見る気が失せてきたんだけど、録画されてしまっていたので見る。すると結構面白い。藤吉郎、路上でねねに求婚。フラッシュ・モブでも始まるのかと思っちゃった(笑)。婚礼前の夫婦げんかも面白い。そういえばこの二人、諸大名の前でも尾張弁で夫婦げんかしてんだよなぁ。墨俣に砦を築くんで蜂須賀正勝と接触するが、蜂須賀が前野長康と大ゲンカ。本当に憎しみあっていないことをちょろっと示した後、藤吉郎が前野にライダーキック(笑)。直に中村に帰ると言われて小一郎は心ここに在らず。藤吉郎に追い返される。すると直が熱病に倒れていて……という仲直りのラブラブ展開。こりゃあ、吉岡里帆出る幕ないぞ。竜興が余計な手出ししてすべては丸く収まって次回に続く。むしろ脚本家さん、こういう細かいエピソードを連ねてストリーを作っていくのが得意なのかも。でも太河だといきなり大事件を起こさなきゃならないってことなのか? 来週も見る気にさせる回でした。
 濃姫の不在ですが、『太閤記』モノだと信長の奥向きの話は出てこないんでそれはそれでいいんですね。ただ、このドラマではお市の出番が多いので、不自然に感じてしまう。信長の孤独を強調するってのも、藤吉郎−小一郎と対照させるためかと思うけど、信長って同腹の信勝とはアレでも異腹の兄弟との関係は良好じゃなかったかなぁ。この異腹の兄弟も不在なんだろな。



#11567 
徹夜城(受験シーズン最終版でちと疲れてきた管理人) 2026/02/18 21:57
「逃げ若」完走

 すでに話題にあがってますが、漫画「逃げ上手の若君」がついに完結。ここ二週分は雑誌で読みました。
 時行の運命は史実としては決まっているわけで、この漫画をどう終わらせる気なのか、というは連載開始時から注目点でした。もしかしてまさに「逃げ」て終わってしまうという手もあるよな、と思っていたのですが、きちんと史実の年月日で死んで終わりました。まぁ単純に処刑という形にはなりませんでしたが。

 最終回の前の回、時行死後の各キャラのその後が間単にではありますが描かれ、ここが南北朝マニア的に感動しましたねぇ。足利直冬の「還幸の…」という駄洒落和歌がさりげなく紹介され、その後歴史の表舞台から完全に消えてそれなりに長く平和な人生を送ったことを語るなんて、泣かせてくれました。新田義興の最期はアッサリではありましたが、

 とにかく南北朝時代を扱った漫画で初めてヒット作となり、アニメ化までされ、きちんと予定通り(おそらく)に完結したというのは大変な「事件」でした。しかも南北朝時代でもマイナーといっていい北条時行を主人公に少年ジャンプで連載、という異例づくめでの完走には頭が下がるばかりです。
 この調子で…とはなかなかいかんでしょうが、南北朝時代に関心を持っていただけるような作品(漫画に限らず)が今後も出てきてほしいものです。

 さて「逃げ若」も完結しましたし、その内容を「マンガで南北朝!」コーナーはもちろん「南北朝列伝」にも反映させなきゃいけません。いろいろと忙しくてなかなか集中的作業ができないんですが、チビチビ進めていきます。


>大河「太平記」リマスター放送
へぇ、それは初耳でした。このくらいの年代の作品だとリマスターでどれほど画質向上になるのかわかりませんが、再放送となれば「太平記大全」へのアクセスもまた増えるかな。




#11566 
バラージ 2026/02/17 18:26
また小ネタ

 一昨年買った橋直樹の小説『倭寇 わが天地は外海にあり』をようやく読み始めました。といっても他の現代小説と並行して読んでるんで進み具合は遅いんですが、読み終わったら感想を書こうと思います。

>『逃げ上手の若君』完結?
 あら、なんだか突然な。僕は読んでないんでそう感じるだけなのかもしれませんが。まあ歴史ものってどっかで終わりが来るものだし、全くの創作ものと違って無限に続けられるわけでもないですしね。

>大河ドラマ『太平記』4Kリマスターで再放送
 だそうです。これも『逃げ若』効果か?……って必ずしも関係ないか。4KリマスターってことはもちろんNHK‐BSプレミアム4Kでの放送なので、観れない人にはそもそも関係ない話でもありますが(僕は観れません)。

>『豊臣兄弟!』
 選挙前の本放送を早くも見逃し、土曜昼の再放送も見逃した……と思ったら再放送は本放送とは逆に1週間遅れだったようでなんとか回収。でもこの調子だとそのうち脱落しちゃいそう。ま、毎年のことではありますが。
 帰蝶(濃姫)が登場しない理由についてはプロデューサーが取材会で説明したというニュースが出てましたね。それによると「“豊臣兄弟”の兄弟を立たせるため、秀吉と秀長、信長と市の対比を描く上で信長の孤独というものを設定しました。信長の妻や子供が出てくると信長の孤独がぼやけてしまう。唯一、本音を話せる人物が、ふたりきりの兄妹である市だけというふうに見せたかったんです。この後、市が浅井長政(中島歩)に嫁ぎ、3人の娘に恵まれたとき、信長がさらに孤独になることを際立たせたい。そうなると帰蝶の出しどころがないんです。これには時代考証会議でも先生方から『本当にいいんですか』と言われました。ただ、いないわけではないんです。信長の息子たちが登場するということは帰蝶だけでなく側室も存在していることになります。つまり帰蝶も姿を見せないだけと考えていただければ。」とのこと。んー、まあね、わからなくもないんだけれども。
 ただまあ個人的には帰蝶が出てこないことが僕はあんまり気にならなかったんですよね。豊臣兄弟とそんなに接点がある人でもありませんし。そういや『おんな太閤記』の濃姫役って誰だったっけ? 『徳川家康』では藤真利子だったことは覚えてるんだけど……と思って調べてみたら、なんと『おんな太閤記』でも濃姫は登場しなかったらしい。どうりで覚えてないわけだ。一方、お市は娘が後に秀吉の側室(近年はもう1人の正室だった説もあり)になっちゃうという接点があるため秀吉ものには必ずと言っていいほど登場するんですよね。『おんな太閤記』では夏目雅子が演じてました。



#11565 
ろんた 2026/02/10 22:24
松井優征先生の次回作にご期待ください?

『逃げ上手の若君』、なんか時行が死んじゃったみたいなんですけど……。でも最終回じゃなくてエピローグ的に何週か続くみたい。しかし感動的に死んだキャラがシレっと生き返ってるので、このマンガ、何が起こるか分からない。ご用心ご用心。とりあえず単行本未収録のエピソードが現時点で30話以上あるので、4巻ぐらい出るでしょうか。第一期が春アニメ、第二期が夏アニメとして地上波全国ネット放送されるので(フジ系ノイタミナ枠)、昭和のブラックな編集なら第二期が終わるまで連載続けさせたろうなぁ(笑)。最新巻は三月。

>『泣き虫弱虫諸葛孔明』
「シャム猫ココ」シリーズの『猫はクロゼットに隠れる』を読了。『クロコダイル路地』を読むはずが、実はこっそりコンプリートしていた『泣き虫弱虫諸葛孔明』第弐部に手を出してしまう。現在、第伍部。第壱部は発行時に単行本で読んでいるんだけど、続刊があるとは気づかなかったんですな。単行本には「第壱部」という表記もないし。単行本の評判が良かったんで、急遽続刊が決まったのか、少年マンガみたいに(笑)。
 ストーリーは基本『演義』ベースながら、『正史』「裴松之注」『平話』などを参照し考証を行いながら進行。ただし時としてパロディー的展開に走る。人物像もパロディー的。ただし説得力がある(<個人的感想)。孔明は頭脳明晰だが、摩訶不思議な理屈をこねまわして人を煙に巻き、気に入らない奴には火計(放火)というんで、関わり合いになろうとする人がいない。劉備は天然の人たらしで百戦百敗しても誰かしらが助けてくれる。関羽と張飛、趙雲は一人で一万人殺せるキリングマシーン。(万夫不当ってそういう意味かなぁ?) 関羽は『春秋左氏伝』マニアで理屈っぽくて面倒くさい。張飛は酔うと人を殺さずにはいられず面倒臭い。趙雲は人懐こいところがあって扱いやすい。曹操は自分大好きですぐ主役になりたがる。呉は反社の連合体で公用語が広島弁。第壱部は嫁とりから三顧の礼まで。第弐部は荊州盗りを進言するも受け入れられずブラブラしていたら曹操が攻めてきてさぁ大変。第参部は赤壁から周瑜の死まで。第四部は蜀の建国と劉備の死まで(ホウ統、関羽、張飛、曹操、魯粛、呂蒙などなども死ぬ)。第伍部は孔明の死まで。
 単行本冒頭には、現代日本における三国志受容などのエッセイが入る。どうやら日本にはサンゴクシシャンという秘密結社(?)があって、『演義』を愛し普及させるのみならず、なにやら陰謀を企んでいるらしい(笑)。『演義』の薄い本事情を語る『神聖モテモテ王国』まで引用されている。

>「豊臣兄弟!」
 書き忘れてたけど、旭姫の名前が「あさひ」なのちょっと面白い。「日吉」と対? あと濃姫がいないことになってるんで(?)、シスコンの信長とブラコンのお市の妖しい物語を想像してしまう。薄い本作者への餌まきじゃないよな(笑)。
 さて第四回で桶狭間の戦いが描かれたわけですが、いまいち盛り上がらなかったかな。東海一の弓取りらしく大鶴義丹が義元を貫禄十分に演じてたのに、今川軍が間抜けすぎる。しかも義元、あっさり討ち取られてしまう。もっと奮戦しろよ。毛利小平太の指食いちぎれ。さらに豊臣兄弟の敵討ちを絡めたんで随分と散漫になった。兄弟がどこで戦っているかも分からんかったし。脚本家も演出家も戦のイメージがつかめてないみたい。小栗旬の(?)幸若舞の敦盛には武士の情けで何も言うまい。今川の本陣を突き止めたやり方、回りくどすぎてリアリティ、ゼロ。簗田政綱が情報網を張り巡らせて信長の目となり耳となっていたとか、信長が忍者を使っていたって方がありそう(<白土三平説)。一万五千人も集まっていたら本陣なのバレバレな気もするけど(笑)。論功行賞。小一郎を近習にしようってのいただけない。織田の家風がアレで当主がナニだとしても無理がある。首泥棒(藤吉郎)を足軽組頭にするってのも訳が分からない。「秀吉」という諱も信長から貰ったすると重大な意味が出てくる気がするし(信秀+吉法師)、足軽に名乗らせちゃダメだろ。考えすぎか。
 第五回は先ず清州同盟。この時、藤吉郎は徒士身分だったらしく、家康の見送り時に徒歩。でも次の御前試合では馬廻り役で、前田利家のライバルになっている。このドラマ、ひとときも目が離せない(笑)。どうも脚本家さん、コツコツやって昇進し、いざって時に出しゃばって出世するってのが描けないみたいだなぁ、『太閤記』のパターンなのに。今後が心配。そして早速、大沢次郎左衛門の調略を任されてしまう。馬廻り役なのに? 濃姫がいたら(?)大沢の妻と異腹の姉妹だから、手紙や贈り物のやり取りがあっても不思議じゃない。で、その使いを藤吉郎(with小一郎)が任されるって話なら無理がないのに。でも予告だと大沢を殺そうとするところもやるみたいだなぁ。そんなことしてるから家来に裏切られ続けるんだよ。本能寺の変も自業自得だね(笑)。そういえば、お市もねねもそろそろ嫁入りじゃなかろうか。第六回で描かれるのか。「お市は誰にもやらん! わしのもんじゃ〜〜〜」とかやらないよね。信じてるぞ(笑)。
 直は回想とか亡霊とか幻影とか夢の中とかで出てくるのかと思ってましたね。ああ、退場といえば勝村正信。台所方だというんで色々と藤吉郎のフォローに回るかと思ってたのに(炭の節約とか)、あっさり退場。びっくりしたなぁ。



#11564 
バラージ 2026/01/26 17:33
小ネタ

>『豊臣兄弟!』の直
 直を当初演じる予定だった永野芽郁(後に彼女のなんやかんやで白石聖に交代)は、第1次出演者発表の際に仲野太賀・吉岡里帆・池松壮亮・浜辺美波と共に会見に出てましたからねえ。直はその4人(主役の秀長、その妻、秀吉、ねね)と並ぶ重要人物ということでしょうし、さすがに2話で退場ということはないでしょう。2話で退場する俳優が第1次出演者で発表されるわけないし、ましてや永野芽郁(だった予定)ですからね。秀長の妻の吉岡里帆登場までは直(白石聖)で引っ張るんじゃないかなあ。なんなら吉岡さん登場後もずっと白石さんも登場し続けるという可能性も無いわけではないんじゃないかと。

>何度も映像化される作品と1度も映像化されない作品
 信玄ものと謙信ものって対になってるというか2人で1セットみたいなとこがありますからね。そう考えると60年代『天と地と』、80年代『武田信玄』、00年代『風林火山』と20年ごとに作られてるという解釈もできるのかも。だとすると次は20年代ということになりますが、近年の傾向から言えば原作ものではなくオリジナルになるでしょう。
 あと同じ小説ばっかり何度も映像化されるのは、その小説が映像化に向いてるってこともあるんでしょうが、そもそも以前に映像化されたことのある小説のほうが、1度も映像化されたことのない小説よりも作品としての設計図というか目鼻立ち(ストーリー配分とか)がつけやすいってのもあるんではないかと。司馬遼太郎にしても『国盗り物語』や『関ヶ原』は複数回映像化されている一方で『新史太閤記』『覇王の家』『城塞』なんかは1度も映像化されていませんし。



#11563 
ろんた 2026/01/25 13:16
年末年始の時代劇、歴史劇

「シャム猫ココ」シリーズ、「家政婦は名探偵」シリーズと「木枯し紋次郎」コンプリート。しかし、あまり読めていない。皆川博子に戻りたいんだが……。今読んでいる「シャム猫ココ」を終えたら『クロコダイル路地』を読み始めるか。ああ、タイトルは「時代劇、歴史劇」と書きましたが、「時代劇」ばかりですね(汗)。

>「大富豪同心スペシャル」(NHK-BS,2025/12/14 19:00-19:45 2025/12/21 18:30-19:15)
 シーズン3まで放送された作品のスペシャル。2024年末に90分で放送したものを45分×2本の前後編として再放送。
 江戸一番の札差・三国屋徳右衛門の孫・卯之吉は、剣術と駆けっこ以外、何をやらせても人並み以上の力量を見せるくせに、極端に飽きっぽくて続かない。なにしろ廓通いや芸者遊びにまで飽きてしまうのだ。息子夫婦を早くに亡くした徳右衛門は、そんな卯之吉の将来が心配で仕方がない。そこで一計を案じ、南町奉行所同心・八巻家の株を買い、卯之吉を同心にしてしまう。これなら飽きても辞めるわけにはいかないだろうという訳だ。ところがいざ働き始めると、太鼓持ち・銀八や侠客・荒海の三右衛門、鬼姫こと女剣士・美鈴らに助けられ、三国屋の財力も使って難事件を次々に解決。幕府の屋台骨を揺るがすような陰謀まで打ち破り、老中・甘利備前守や将軍・徳川家政公とも親しくお付き合いするまでになり……。
 基本的にコメディで美鈴さんとのラブコメ展開も楽しい。今回は日本近海に外国船が出没する中、将軍お側取次役に抜擢された卯之吉が、漂着したアメリカ人美女をめぐって薩摩藩と争奪戦を繰り広げる話となってます。
■スタッフ
脚本:小松江里子/制作統括:内藤愼介(NHKエンタープライズ),本木一博(NHK)/プロデューサー:板垣麻衣子(NHKエンタープライズ)/演出:岡野宏信(NHKエンタープライズ)/原作:幡大介「大富豪同心」シリーズ/局系列:NHK/制作:NHKエンタープライズ/制作,著作:NHK/音楽:佐橋俊彦/ED:竹島宏「夢の振り子」(テイチクエンタテインメント)/
■キャスト
八巻卯之吉:中村隼人/溝口美鈴:新川優愛/村田銕三郎:池内博之/銀八:石井正則/由利之丞:浅香航大/梅本源之丞:石黒英雄/沢田彦太郎:小沢仁志/水谷弥五郎:村田雄浩/尾上伸平:千代将太/粽三郎:林家たま平/寅三:越村友一/喜七:武田幸三/荒海ノ三右衛門:渡辺いっけい/高隅外記:黒羽麻璃央/アレイサ:嵐莉菜/半左:きづき/マス:ブレイク・クロフォード/清中将:辻本祐樹/徳川家政:尾上松也/栗ヶ小路中納言:市川猿弥/甘利備前守:松本幸四郎/菊野:稲森いずみ/三国屋徳右衛門:竜雷太/語り:林家正蔵/ほか

>「丹下左膳〜大岡越前外伝〜」(NHK-BS,2025/12/29 19:30-20:59)
 度を越した刀剣の蒐集癖を持つ奥州中村六万石領主・相場大膳亮は、関孫六兼元の遺作である乾雲丸と坤竜丸を欲し、隻眼ながら藩内随一の使い手である腹心の家来・丹下左馬之助に、道場主・小野塚鉄斎から強奪するよう命じる。左馬之介は浪人の道場破りを装って門弟を叩きのめし小野塚鉄斎を殺害するが、鉄斎に右腕を斬り飛ばされ辛うじて乾雲丸を手に逃走する。瀕死の左馬之介を救ったのは、お尋ね者の櫛巻きお藤と鼓の与吉。役人に追われているところを助けられたことがあったのだ。二人は根城にしている五百石取りの不良旗本・鈴川源十郎の屋敷へ左馬之介を運び込んだ。そして奇跡的に一命をとりとめたものの、隻眼隻腕となった左馬之介は、丹下左膳と名を変え身を隠した。そんな左膳と乾雲丸を狙って、金目当ての鈴川源十郎、左膳の口を封じようとする相場藩江戸家老・疋嶋外記と月輪軍之助、鉄斎の娘・弥生、茶屋娘・お艶と通じながら弥生と道場を手に入れようとする師範代・諏訪栄三郎が相争う。さらに老中・松平左近将監の意を受け相場藩の内情を探っていた大岡忠相も、江戸の平安を守るために乗りだしてきて……。
 大膳亮と左馬之介の間には主従の情を超えた、友情ともいえるものがあるという設定。左馬之介が隻眼になったのも大膳亮と関りがある。そこで左馬之介は主君の命という以上の情熱で乾雲丸と坤竜丸を求めるが、この友情が裏切られて丹下左膳として大暴れ。この左膳と大岡忠相がいわば共闘して相場藩はお取り潰しに。左膳を逃がすために捕まった櫛巻きお藤を救うため、左膳は奉行所に火を放ち(笑)、二人で逃走。忠相は追い詰めるものの、この度は許してやると見逃す。続編への布石か。武士道を捨てより人間的に生きるというのは続編の左膳像にかなっている。殺陣は迫力があって見ごたえあり。
■スタッフ
脚本:尾西兼一/制作統括:白石統一郎(C.A.L),板垣麻衣子(NHKエンタープライズ),谷口卓敬(NHK)/プロデューサー:高崎稔千(C.A.L),森井敦(東映京都撮影所)/演出:黛りんたろう/原作:林不忘『丹下左膳 乾雲坤竜の巻』/局系列:NHK/音楽:佐野宏晃/
■キャスト
丹下左膳(左馬之介):森山未來/櫛巻きお藤:黒木華/鼓の与吉:加藤諒/鈴川源十郎:田辺誠一/相場大膳亮:毎熊克哉/諏訪栄三郎:福士誠治/弥生:平祐奈/月輪軍之助:宇梶剛士/疋嶋外記:相島一之/お艶:結城モエ/土生仙之助:てらそままさき/小野塚鉄斎:榎木孝明/関孫六兼元:横内正/松平左近将監:田村亮/大岡忠相:高橋克典/ほか

>「水戸黄門スペシャル」(BS-TBS,2025/12/28 18:00-19:54)
 以前、2シーズン放送されたままだった武田鉄矢版がいきなり復活。そういえば、かつての出演者たちが思い出話を語る特集番組も放送してた。武田鉄矢が黄門様かと思ったんだけど、当時の武田鉄矢、黄門様を始めた頃の東野英治郎より年上だったりして。(「用心棒」の時は50代?)
 ふと思い立ち、水戸光圀は甥である加賀百万石の藩主・前田綱紀を訪ねようと、助さん格さんを共に旅立った。途中、道連れになった武家娘・春江の相談に乗ってやったり、葵の印籠を作らせた輪島では利権を独り占めしようとする悪党を懲らしめたり、いつものように寄り道しながら旅を続けた。ところが、金沢が近づくにつれて不穏な噂が聞こえてくる。なんと綱紀暗殺を狙う動きがあり、その黒幕が柳沢吉保だというのだ。光圀はかつての寵臣・藤井紋太夫を手打ちにせざるを得なかったことを思い出し……。
 藤井紋太夫が出るというのでお手打ちをやるのかと思ったら、回想シーンというか夢の中で登場。前田綱紀が光圀の甥なのは史実(光圀の姉が綱紀の母)。相変わらず敵役は柳沢吉保(笑)。本当は光圀を目の敵にしていたのは綱吉だと思うけど。武田鉄矢版は金八イメージか、うんちく多めで、助さん格さんを指導する感じ。もうちょっと緩いというか生臭いというか、「なんでも困ったことがあったら相談に乗りますよ」とかなんとか、若い娘さんの手を握ったり肩を抱いたりして、助さん格さんや弥七、詩乃(かげろうお銀的なくノ一)に叱られる的なことがあると武田鉄矢っぽいと思うんだけど(笑)。
■スタッフ
脚本:尾西兼一/監督:矢田清已/局系列:TBS/製作著作:C.A.L/
■キャスト
水戸光圀:武田鉄矢/佐々木助三郎:財木琢磨/渥美格之進:荒井敦史/詩乃:篠田麻里子/風車の弥七:津田寛治/柳沢吉保:袴田吉彦/春江:剛力彩芽/嘉平:秋野太作/原田正左衛門:杜澤たいぶん/お千代:今安琴奈/陽蔵:菅原卓磨/青山:若山騎一郎/為次郎:ゴリ/黒木仁左衛門:梨本謙次郎/大滝屋吉助:なべおさみ/荒畑四郎兵衛:本間剛/浅吉:小日向星一/お美津:吉田伶香,今津里梨花(幼少期)/室川:両國宏/小城:園山敬介/谷田:鎌苅健太/塗師:窪田弘和/塗師:浜田隆広/女中:小畠徳子/お嶋:しまずい香奈/お信:美村里江,石川萌々花(幼少期)/安田清兵衛:近藤芳正/竹三:JP/おたえ:水町レイコ/新六:久永寛士/浦野孫右衛門:峰蘭太郎/園田道閑:浅田祐二/長連頼:入江毅/小太:山本道俊/伸吾:新免誠也/甚左:梅原勇輝/徳川頼房:西村匡生/千代松:菊地咲我/永野九十郎:田井克幸/藩士:菅原洋美/前田綱紀:榎木孝明/藤井紋太夫:加藤雅也,山ア一輝(小姓時代)/語り:二又一成/ほか

>「はぐれ鴉」(テレビ大分 2025/07/22 19:00-21:00)
 テレビ大分の開局55周年記念として制作された時代劇。原作も竹田市の町おこしのため書かれたらしい。テレビ大分で放送された後、年末に時代劇専門チャンネルで、年初にBS11で放送された。以後、九州地方の地上波で順次放送されている模様。
 寛文六年、豊後国竹田藩の城代家老・山田嗣之助の屋敷で、義兄にあたる玉田巧佐衛門により、嗣之助以下の一族郎党、当日の来客ら二十六人が惨殺され、屋敷に火をかけられた。生き残ったのは六歳の嗣之助次男・次郎丸のみ。しかし、事件は失火、死者は焼死とされ、巧佐衛門が新たな城代家老となった。そして十四年の月日が流れ、江戸で匿われていた次郎丸が、山川才次郎と名を変え新規召し抱えの剣術指南役として竹田藩に向かっていた。無論、一族の仇・巧佐衛門を討つためだ。だが、道端に散見される一つ目の石像や山中で出会った美女、異常に厳しい関所の取り締まりなど、才次郎は竹田藩に異様なものを感じる。一方、案内役の小津主水からそれとなく聞き出した巧佐衛門の暮らしぶりも奇妙だった。自ら富貴を遠ざけ、新田開発のため百姓らとともに汗を流しており、藩士の間では「はぐれ鴉」とあだ名されているという。十四年前に妻を亡くしてからは独り身で(妻は嗣之助の妹で自身が手にかけたのだが)、家族は一粒種の英里という娘のみ。この娘も「竹田小町」と呼ばれるほどの美貌ながら、過去の剣術指南役を凌ぐほどの腕前だという。巧佐衛門の屋敷を訪れるとその生活は噂通りだったが、英里は山中で会った美女だった。また才次郎と対面した巧佐衛門は、無表情のまま。自分のことを覚えていないのか。藩内の異様さに才次郎は事件の背景を探り始め……。
 時代劇+推理ドラマという恰好ですが、犯人は冒頭で明かされるので"Who Done it"ではなくて"Why done it"もの。見ごたえあるんですけど、個人的にはいまいちのれず。最終的に明かされる藩の秘密とか、でかすぎて守り切れないだろうと思っちゃったんですよね。最初の事件は逆にそこまでする必要ない気がするし。玉田巧佐衛門も立派すぎて人間味が感じられない。もっとダメ人間になっててもいいんじゃないか。でも民百姓のためには尽くすみたいな。ミス・ディレクションもあまり機能していない気がする。
■スタッフ
脚本:松下隆一/監督:山下智彦/原作:赤神諒『はぐれ鴉』(集英社文庫刊)/局系列:FNN/制作著作:メディアプルポ,テレビ大分(TOS)/制作協力:東映京都撮影所/協力:大分県,竹田市,杵築市,国東市,豊後大野市,臼杵市/
■キャスト
山川才次郎:神尾楓珠/玉田巧佐衛門:椎名桔平/英里:山本千尋/篤丸:マギー/三宅宣蔵:正名僕蔵/前浜太治郎:和田聰宏/平兵衛:野添義弘/小津主水:森田甘路/荒木彦十:高岸宏行/山田嗣之助:松角洋平/朽網宗直:マキタスポーツ/由美:財前直見/仲川清勝:高橋英樹/

>「べらぼう」あれこれ
 蔦重が"寛政アベンジャーズ"のリーダというのは、上様を仲間に引っ張り込むという発想で腰を抜かした一同が言いなりになってしまうからですね。(あくまで個人的な印象) 総集編ではカットされていたけど。蔦重を引っ張り込むあたり、定信嫌いな蔦重が断ると、後ろの障子が乱暴に引き開けられ刀の鯉口切った侍が出てくるって、時代劇的なあまりにも時代劇的な展開。あそこで蔦重が「お前様方はご存じあるめぇが、江戸の町には金で悪党の命を縮める連中がおりましてねぇ」とか言い出すと、必殺仕置人になってしまうという。そして町中におびき出した治済を念仏の鉄が……(笑)。あのお話、天保時代のはずだが、その辺は融通無碍なのであった。
 それから定信についてはラスボス設定という訳ではなく、「蔦重栄華乃夢噺」としてドラマを作っていけば、必然的に田沼は味方、定信は敵役になるだろうということですね。一橋治斉は定信と組んで田沼を失脚させ、その後、定信と対立して失脚させるヌエ的な妖怪。ただ蔦重の人生と直接かかわらないので、あまり視聴者を不快にはさせないのでは? そして定信失脚で雲間に光が射したような気持で写楽売り出しにかかる……。って、これじゃあ映画「写楽」だな。
 あとなんだか気になっているのが二点。歌麿(こっちに呼称を統一)が蔦重と出会ったのが冒頭の火事。で、生い立ちが分かってくると、夜鷹の母親が浪人者を引っ張り込んで歌麿に陰間として体を売らせ、火事で(?)家が潰れて下敷きになった母を見捨てて逃げる、ということになるんだけど、吉原には夜鷹も浪人者も陰間もいないんじゃないか? 吉原の話じゃないんならありうるけど、火事の吉原に子供がどこから入ったの? ああ、面倒臭い。そして天明の大飢饉の最中、「米が高いと本を買ってくれなくなる」的な蔦重のセリフがあったと思うんだけど、当時、本を買っていたのは読書階級ぐらいで、庶民は貸本を利用していたんでないかなぁ。ああ、やっぱり面倒臭い。

>「豊臣兄弟!」の書き忘れた話ほか
 藤吉郎と小一郎はともに木下弥右衛門の子。そういう説もあるらしいけど、兄弟の絆というテーマならそっちの方が都合がいいから……と思ったら、第三話で「親の仇」が登場。こういう展開なら父親が同じじゃないと、ということか。「ねね」さんは「おね」じゃなくて「ねね」でした。「どうする家康」でも「ねね」だったそうだけど、近年「ねね」と記した文書が発見されたとか。やっぱり「ねね」の短縮形が「ねぃ」「ね」で接頭語がついて「おね」になったんじゃないかなぁ。根拠は……「ねね」の方が可愛いから(笑)。中村の土豪・坂井様、弱すぎ。野盗の襲撃に全然敵わず、領民を守ることができない。っつ〜か、陣振れがあったはずなのになんで出陣してなかったんだろ。隠居してて直の兄かなんかが出陣していて手薄なのかと思ったら、第二話を見るとそんな感じでもない。領民も被害者っぽく描かれていたけど、第一話では「戦だ、戦だ、ヒャッホ〜イ」となってなかったか。中村の状況をみて、呉座氏の七人の侍批判を思い出してしまった。百姓が弱すぎ。信長が敵の城下を焼き払うというのは戦の常道だけど、住民を殺してしまうのは違和感。野盗の中村襲撃と並んで「戦国のリアル」を見せるためかと思うけど、侵略軍じゃないんだから住民は生かして城下を再建するんじゃないか、目的が尾張統一なら。今川義元が大鶴義丹なのは気づかなかった。最近、「肥満」の方をよく見ているせいか。小一郎と直の「駈落ち」は意外。第二話で退場かと思ってた。そのために野盗が出てくるのかと。そして番宣を見ると「墨俣の一夜城」もやるみたい。お城(天守閣)建てちゃった墨俣への忖度?(笑) 太閤記ネタを色々アレンジして取り込んでるけど、どう料理するのか。

>久米宏の訃報
 わたしもご多分に漏れず「ぴったしカンカン」「ザ・ベストテン」「久米宏のTVスクランブル」「ニュースステーション」と見ておったわけです(「報道ステーション」は現在も続いている後番組ですね。古舘伊知郎の顔が緊張感丸出しなの面白かったなぁ)。でも、ロス疑惑の三浦和義がサイパンで逮捕されて送還先で自殺したのを受けて、不詳宮嶋と一緒にキャッキャッと小躍りせんばかりに放送していたのを見て「なんだ、こいつ?」と思っちゃいまして(多分「久米宏のテレビってヤツは!?」の初回放送)、以後、テレビで見かけるとチャンネルを変え、ラジオで声が聞こえるとダイヤルを回し──とやってたんで、訃報を聞いても何の感慨もない。わたしにとっては、とうに死んでいるも同然の人間になっていたんですな。その功績を認めるにやぶさかでないんですが。ちょっと辛辣だったかな。

>謙信太河
 結局、小説『天と地と』が決定版みたいになってしまっているからでしょうか。まぁ、信長も司馬遼太郎の信長像のアレンジといえばアレンジなんだけど、謙信の場合、アレンジのしようもないというか……。いっそリメイクと開き直ってしまうとか(笑)。『雪花の虎』(東村アキコ/小学館)というマンガはあるんだけど、謙信は女だったという話だしなぁ。マンガを原作にするなら『新九郎、奔る!』を先にやってもらいたいけど。



#11562 
バラージ 2026/01/17 18:37
なんかいろいろ

 ただいま、なんとなく気持ちがブルーになる季節(春夏秋冬の季節ではなく、そういう心のめぐりという意味で)になっております。
 今は特に忙しいってわけではないんですが、数年前に臨時で勤務地と仕事内容が突然変わり、生活のリズムも激変してかなり疲れ果てた時には、僕も徹夜城さんと同じように休みの日にも何もやる気が起きず、歴史やテレビドラマはもちろん、大好きな映画でさえなかなか観る気が起きなかった記憶があります(あんまり記憶がないけど小説──純文学とか読んでたのかな?)。
 今年の大河は去年一昨年と違って超メジャーな時代なので、登場人物が過去に登場した映画やドラマも山ほどあるし特に珍しくもないんでそういう話もあまりしたいとは思わない。『どうする家康』の時は昔読んで目からウロコだった信康切腹事件の真相をとっかかりに、過去の『徳川家康』などの配役と絡めていろいろ書いた記憶ですが、今年『おんな太閤記』と絡めても結局その時と同じ内容になっちゃいそうだし、書き込むことも少なくなりそうな……。
 しかしタイミング的にあまり時間が経たないうちに書いといたほうがいいだろうっていう個人的に思い入れのある話題(けど、歴史との関係は薄く、どっちかっていうと「時代」の話)があったんで、別のもう1つのあまり急ぐ必要のない歴史の話題と合わせて書き込み。


>追悼・久米宏
 また1つ時代が去っていきました。TBSアナ時代の『ぴったしカンカン』『ザ・ベストテン』は本当に面白くて、毎週のようによく観てましたね。フリーになってからの『久米宏のTVスクランブル』も観てたなあ。横山やすしが無茶苦茶でしたねえ(笑)。ちょうど大河ドラマの裏だったのか。1982年10月に始まったとのことだから、観てなかった『峠の群像』の年だ。20:54までの番組だったらしいから『徳川家康』の時も45分に終わったらチャンネル回してたのかも。1985年まで放送したというから2年半しか続かなかったみたいだけど、近現代3部作も観てなかったからやっぱりそっちを観てたんでしょう。『報道ステーション』はあんまり観てなかったんですが、その存在感や影響力は強く感じてました。81歳というのは決して若すぎるということはないにしても、黒柳徹子さんや萩本欽一さんがご存命であることを考えるとやっぱりちょっと早かったのかな。黒柳さんや欽ちゃんがご長命だってこともありますが。ご冥福をお祈りします。

>大河再び
 伊達政宗の生涯をテーマにした新たなNHK大河ドラマの放映を目指す官民組織「伊達政宗公の大河ドラマを誘致する会」がNHK放送センターを訪れ、政宗没後400年に当たる2036年の放映実現を要望したというニュースを読みました。10年後の話かいと思いつつ、そういや今年で『独眼竜政宗』から40年、2036年なら50年になるのか……と年月の経つ早さに感慨。大河史上最高傑作と名高いドラマだっただけに、かえって2度目の大河化が遠のいていた感がありますが、考えてみれば50年も前のテレビドラマを観る層なんて限定されますもんね。新たな若い人たちを見すえてまた作ってくれという要望が出てくるのも、ま、当然っちゃ当然といったところ。
 実はそれ以上に2度目の大河が遠のいているのが上杉謙信。『天と地と』は1969年で総集編も残ってないし、もちろん僕もリアルタイムで観てはいません。『武田信玄』『風林火山』『天地人』などで重要人物として出てきたことはあるけれど、有名人でありながら主人公大河は実に60年近く作られてないことになります。おそらく1つには生涯不犯の謙信を主人公にするとヒロイン役が設定しにくいということがあるんではないでしょうか。やっぱり1年ドラマでヒロイン不在ってのはねえ。謙信主人公ドラマ&映画が『天と地と』ばっかりなのも原作小説が架空ヒロイン「乃美」を設定してくれているやりやすさが一因なんではないだろうか。ところがここへ来て、実は謙信にも妻がいたという新説が出ているとのこと。その説が妥当かどうかは横に置いといて、ドラマとしてはその新説を採用して思いっきり膨らましちゃえば主人公大河の可能性も浮上するかも。



#11561 
バラージ 2026/01/10 15:43
大河ドラマの総集編

 いやぁ、ドラマ『テミスの不確かな法廷』(歴史とは全く無関係)の鳴海唯が予想以上にめっちゃいい。こりゃ彼女の存在を教えてくれた『どうする家康』には足向けて寝られんなあ。


 大河ドラマの総集編って僕はあんまり観ないんですが、数少ない観た経験から言ってもだいたいがそんなもんだと思いますよ。要するに本編のダイジェストで、ナレーションの新録ぐらいはするけど(じゃないと話がつながらない)再構成みたいなことはしないんじゃないかなあ。もともと初期の頃はVHSも無い時代だったから、途中から観始めて最初のほうを見逃してた人のためのものだったんじゃないですかね。まさか全話再放送するわけにもいかないし、観るほうも改めて全話観るのはしんどいでしょうから。今は完全版DVDや配信もあるんでかつてのような必要性は薄いでしょうが、作り方としては昔と変わってないんじゃないかなあ。
 僕は最初に全話観た『おんな太閤記』や『徳川家康』『独眼竜政宗』は総集編を観た記憶がありません(記憶が無いだけで実は観たのかもしれないけど、記憶が無い時点で観た意味が無かったとも言える)。最初に総集編を観たのは本編を最終回しか観てなかった『武田信玄』で、なぜか総集編のほうも最後の第5回だけ観ました。その後、総集編がVHS化されレンタル店に並んだ時に、リアルタイムでは観てなくて本編も完全には残ってない『新・平家物語』『草燃える』、本編はところどころ観た『炎立つ』『花の乱』の総集編VHSをレンタルして観ましたが、全5回の『草燃える』はともかく、全2回の3作品はやっぱりどれも思いっきりダイジェストでしたね(ダイジェスト過ぎて本編とは印象が変わってしまうところもあったような)。久々に全話観た『平清盛』も総集編は観ませんでしたがそれで源平熱がまた再燃し、やはり産まれる前で本編の残ってない『源義経』、リアルタイムだけど観てなかった『義経』と新大型時代劇『武蔵坊弁慶』の総集編DVDをレンタルして観ました。意外にもダイジェスト感が薄かったのが1番古い『源義経』で、前後編2部作の古い映画を観てるような感覚でしたね。ただやはり人名などはいちいち表示されないし、白黒で画質も悪い上に顔も名前も知らない昔の役者がぞろぞろなんでメイン級以外の登場人物は誰が誰やら。でも普通の映画やドラマだってそうなんだし、わかんない人は別にわかんなくてもいい人だと割り切って観ました。全話観た大河でおそらく初めて総集編も観たのがめちゃくちゃハマった『いだてん』でしたが、やっぱり本編全話観たばっかりでダイジェスト観てもなあという感覚になり第1回だけで離脱しました。

 『べらぼう』については、僕は「田沼も定信も権力者なんてみんな“悪”!」という方向性で行ったほうが良かったんじゃないかと思うんですよね。幕府内部の政争にはあまり踏み込まずに後景に退かせて、あくまで蔦重の背景として描くのが良かったんじゃないかと思うんですが、それだと1年ドラマとして持たせるのが難しかったのかもしれません。また以前も書いた通り、蔦重主人公ドラマに田沼再評価論を接続したおかげで蔦重の立ち位置やストーリー展開がかなり苦しくなってしまいました(特に天明の大飢饉や天明の打ちこわしのあたり)。普通に「権力VS庶民」にしたほうが良かったんじゃないかなあ。江戸が舞台である以上、天明の打ちこわしを全く描かないわけにもいかないんだし。田沼再評価論をどうしてもドラマでやりたければ田沼を主人公にするしかないでしょう。
 一方であくまで幕府側のみに目を向ければ、田沼も定信も表舞台で踊っているだけで真の黒幕は一橋治済というのは実はよくある展開のようで、蔦重が出てこない単発時代劇ドラマ『風光る剣 八嶽党秘聞』(原作は藤沢周平『闇の傀儡師』)なんかもそういう展開でした。ただ史実の蔦重と治済にはほとんど関わりがないんで、最後に悪が笑う展開にならないために『べらぼう』では終盤でああいう史実完全無視の超展開が必要だったんでしょう。
 総集編ではどう編集してたかわからないんですが、本編では治済追い落としの首謀者は高丘のタレコミで動いた定信で、蔦重は彼らに誘われたという設定でした(つまりリーダーは定信で、蔦重はあえて言えば参謀的役どころ)。蔦重が彼らを誘って治済追い落としに動くというのは力関係的にさすがに無理がありすぎますからね。逆に定信をラスボスにするなら治済か家斉か寛政の遺老あたりが蔦重を誘う設定になるんでしょうが、前記の通り史実の蔦重と彼らにはなんら接点が無いため両者の接点を作る前フリの展開が必要となるわけでこれは面倒。さらに定信の失脚は蔦重とも出版統制とも関係がない上に中途半端に史実も絡むため、蔦重ドラマとしては史実完全無視の超展開で良かった治済ラスボスパターンよりもかえって描き方が難しいように思います。蔦重とは無関係に定信が失脚したんでは蔦重ドラマとしてはすっきりしませんし、だからこそ幕府の政争は背景にして蔦重とは距離を取ったほうが良かったんではないかと思うんですけど素人考えなのかな。


>耀蔵とか清張とか雷蔵とか
 実は鳥居耀蔵も登場映像作品を書こうか考えたんですが、調べると大半が金さんもので、それ以外も観たものはおろか知ってる作品も少なかったんでやめました。耀蔵が出てきた作品で僕が唯一観たのは映画『駆込み女と駆出し男』 (2015年、演:北村有起哉)ですね。なお僕が観た忠邦悪役金さんもの『江戸を斬るV』(1980年)には耀蔵は出てこなかったようです。
 松本清張の小説といえばなんといっても現代ミステリーや推理小説が圧倒的に多く、時代・歴史小説は比較すれば少数でしょうから映像化作品もそれに比例するってところもあるんじゃないでしょうか。Wikipediaによるとやはり清張原作映画&ドラマのほとんどは推理・ミステリーもので、時代・歴史ものはごく少数のようです。
 市川雷蔵版『眠狂四郎』は言われてみればそんな展開もあったような気もするんですが、水野忠邦の名前が出てきたかどうかの記憶が全く無いんですよね。まあ実際に出てきた(らしい)水野忠成のことすら覚えてないんだから、名前だけ出てきた人のことなんて覚えてるわけないか(笑)。そもそも歴史関係に着目して観てたわけでもないしなあ。

>秀吉周辺ドラマの初回
 『おんな太閤記』は確か第1話冒頭がいきなり桶狭間で、今川義元は出てきた途端に討ち取られる、ほぼモブ役でした。ねねが主人公なんで彼女が出てくるあたりから始める必要があったんでしょう。義元は公家風ではない普通の武将姿だったんで、僕は最初の頃から義元に公家イメージはありませんでしたね。公家風義元を見たのは『徳川家康』の成田三樹夫が最初だったかな?
 『豊臣兄弟』も再放送で冒頭の回収完了。いきなりアニメから始まってちょっと面食らいましたが。ちなみに脚本家によるとこのドラマ、秀吉がのび太くんで秀長がドラえもんだそうです(笑)。あと制作統括のチーフ・プロデューサーは、大河ドラマの制作統括をできるのはたぶん一生に一回のことだと思うので、やるなら自分が一番好きな戦国時代で勝負したいとずっと思っていたとのこと。やっぱりそうなりますよねえ。作るほうだって観るほうとそんなに趣味嗜好が違うわけないんだから。そう考えるとやっぱりマイナーな時代は不利なんだよな。まあこれは仕方がないことだけど。
 ドラマ内容に話を戻すと、改めてもう1回観ても思ったんだけど、秀吉も信長も柴田勝家も今までのドラマ(や映画)とイメージがあんまり変わんないなあ。やっぱり固定化されたイメージを覆すと全体のバランスも変わってきちゃうんで難しいんでしょうね。そんな中でちょっとイメージが違ったのが浜辺美波演じる「ねね」。『おんな太閤記』の「ねね」は秀吉同様農民でしたが、実際にはもっと身分の高い武士階級だったという近年の研究を反映してか、いいとこのお嬢さん風でしたね。まあ近年の研究の反映というよりも、そういう新しい人物造形のほうが面白そうだという作劇上の理由のほうが大きそうですが、浜辺さん特有の茶目っ気のある「ねね」はちょっと魅力的。てか僕の認識が『おんな太閤記』で止まっちゃってるんで、すでにその後の大河(や他のドラマや映画)でイメージ更新されてるのかもしれないけど。また兄弟の妹「あさひ」は成長株の倉沢杏菜。『VRおじさんの初恋』から『ビリオン・スクール』を経て、『光る君へ』に続いて2度目の大河です。『おんな太閤記』では兄弟の母・姉・妹は赤木春恵と長山藍子と泉ピン子……ってまんま後の『渡鬼』じゃねーか!(笑) 秀長の奥さんになる吉岡里帆はいつ頃登場するんだろうか? 架空人物ヒロインの白石聖の展開と関係してくるんでしょうが。しかしこうして見ると戦国時代は美人ばっかりだな。ドラマだから当たり前だけど。



#11560 
ろんた 2026/01/06 17:24
「べらぼう」総集編

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。(まだ松の内)

 さて、"面倒臭い視聴者"の「べらぼう」総集編を見た感想です。「総集編」って本編を再構成するものじゃないのかなぁ。「べらぼう」が特異なのか、大河の総集編ってそういうものなのか、シーンをつなげただけで、5本の冒頭に又吉先生のナビゲーションは入っていたものの、ナレーションの追加もなく字幕もろくに出ず、下手すると誰が誰やら分からない。結果、見たことない人には話が追えず、見ていた人には見る必要がないものになってました。
 ドラマとしては、キャラクターの行動に合理性が見られないのが欠点。それを象徴しているのが冒頭の火事の場面(これ見るの三度目(笑))。前も言いましたが、屋根や窓から炎が吹きあがってるというのは、建物全体に火が回って倒壊寸前。あたり一帯がそんな建物だらけなのに、火の見やぐらで半鐘鳴らして「逃げろ」って叫んでるの異常すぎ。せいぜい逃げ遅れたヤツがいないか見回るぐらいにしとけばいいのに。(そういえば捨吉の家、なんで潰れてたんだろ?) 田沼との初対面の場面も同様で、連れてってくれた和泉屋さんの面目丸つぶれ。しかも「面白い奴」って田沼に目をかけられる的展開もなし。おそらくは蔦重のキャラを立たせることばかりに脚本家の神経がいってたんじゃないか。後半を引っ張った一橋治済にしてもご同様。この人、やり口が回りくどすぎて凝った悪巧みするのが趣味みたいになっている。陰謀論的展開を一身に背負わされたせいか。源内の口封じなんか、有名人ではあるが市井の浪人にすぎないんだから、押し込み強盗を偽装すればいいのに。挙句に手掛かりを残してしまって杜撰すぎ。その後のあれやこれやもご同様。終盤の展開を「パズルのピースがはまっていくような……」と称賛する声もあったようだけど、わたしにはご都合主義にしか見えなかったなぁ。
 ただ、蔦重のど根性成り上がり商人(あきんど)物語的なところは面白かった。「吉原の遊女たちのために……」とか綺麗事を言うのは興ざめだったけど。後半も最近の研究動向なんか無視して、蔦重vs定信にした方が面白かったんじゃないかな。実際、蔦重的には定信は敵だったろう。拷問したりお白州に出て来たりしたのは、寛政アベンジャーズ結成の伏線だったんだろうけど、この辺の展開もわたしに言わせるとご都合主義ってことになるんだが。
 ああ、朝顔姐さん埋葬準備の図はカットされてました。ノイジーマイノリティなんか無視すればいいのに。あそこも髪が結われたまんまなの、おかしいと言えばおかしいとは思うんだけど。髪飾りはおろか、髪も売られてしまうんじゃないか。

>『逃げ上手の若君』
 ここで目にするのは、わたしが新刊が出るたびに書き込んでいるからですね(汗)。ということで、参考までに調べてみました。『逃げ上手の若君』23巻の帯によると500万部突破。一方、「漫画全巻ドットコム」の「歴代発行部数ランキング」によれば、第一位は『ONE PIECE』(〜113/5億1000万部)、以下『ゴルゴ13』(〜219/3億部)、『名探偵コナン』(〜107/2億7000万部)、『ドラゴンボール』(〜42/2億6000万部)、『ナルト NARUTO』(〜72/2億5000万部)、『鬼滅の刃』(〜23/2億2000万部)、『スラムダンク SLAM DUNK』(〜20/1億8500万部)、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(〜201/1億5650万部)、『進撃の巨人』(〜34/1億4000万部)、『美味しんぼ』(品切/1億3500万部)となっている。そして、280位(表示されているうち最下位)の『モンキーターン』『おそ松くん』『サイボーグ009』『機動警察パトレイバー』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』などでも1000万部売れている。あと近年の作品で目を引くのが15位の『呪術回戦』(〜30/1億部)ですか。ちなみに前作の『暗殺教室』(〜21)は2700万部で118位。これらと比べると見劣りするけど、商業的に十分成功していると言えるとは思います。あとはジャンプの掲載順だけど、こちらはチェックしていないので……(汗)。
 ああ、前も触れましたけどNHKの「歴史探偵」では時行と北畠顕家をセットで取り上げて、松井先生にインタビューしたり『逃げ若』のイラストを使ったりしてましたね。

>悪人・水野忠邦
 水野忠邦が悪玉扱いされるのは、鳥居耀蔵の黒幕と設定される場合でしょう。水野忠邦の意を受けて南町奉行となった鳥居耀蔵。忠邦の暴走を危ぶみ現実路線をとる金さんを目の敵にして失脚を画策し……というパターンだったかと。『かげろう絵図』は家斉が病に倒れた後の大御所派と将軍派の暗闘を描くもので、善玉も悪玉もなく両者とも権力の亡者。ラストで水野忠邦は、それまでの態度を一変させ美濃守を権力の座から蹴落とします。(詰所に戻ることも許さずお城から追放、美濃守はショックで這うようにして去る) 大奥ものの側面もあるのでこちらは何度も映像化されていますが、その後の天保の改革を描く『天保図録』は水野、鳥居、本庄茂平次がメインだからか、一度も映像化されず。「松本清張の……」とつけるだけで視聴率が跳ね上がったという清張作品にしては珍しい。雷さまの「眠狂四郎」では、側近を使って狂四郎に仕事をさせようとするんだけど断られるというパターンだったような。だけど勝手に敵方が勘違いして襲ってきて、結果的に事件に巻き込まれる。ということで水野忠邦本人は出てこない。

>「豊臣兄弟!」
 思っていたより早い時期から始まってましたね。確かに桶狭間の戦いを入れないと盛り上がらないでしょうけど。『太閤記』の清洲城城壁修復話を街道整備の話にアレンジして小一郎の手柄にしていたが、あの状況では小一郎は小一郎で信長に仕えて、後々寄騎として藤吉郎の下につけられるって感じになりそう。ああいう才覚を信長なら見逃さないだろう。蜂須賀小六と渡りをつけるのも、墨俣の一夜城のアイデアを出すのも、竹中半兵衛に三顧の礼を尽くすのも、稲葉山城の抜け道を見つけるのも小一郎? その度にイケイケの兄貴に引っ張られて巻き込まれていく弟ということになるか。二人のやり取りはコントじみていて楽しい。藤吉郎の狂気を感じさせる場面ですが、あの当時としては藤吉郎の方が正解かとも思いました。村の若い衆も戦働き(要するに略奪)にためらいないし、小一郎の方が特異なのでは? 冒頭の大根をかっぱらう兄猿と銭を握りしめる弟猿はその辺を象徴しているのかな? 印象に残ったのは、柴田権六勝家(山口馬木也)が恐すぎること。あんな閻魔大王みたいのに問い詰められたらちびって白状しちゃいそう(笑)。不思議に思ったのは、清州城下が塀で囲まれていること。なんか根拠があるんだろうか。織田信雄が城下を三重の堀で囲んだという話は見つけたんだけど(後期清洲城)。

>トランプのやらかし
 麻薬とか石油利権に絡めた論評が多いんだけど、わたしは国内向けに一発花火を打ち上げて求心力を回復しようとしているんじゃないかと思いました。「オレが大統領になれば、あっという間に解決するぜ」といったインフレ、ウクライナ戦争、ガザ侵攻は一向に解決せず、下手すると関税政策も違憲とされかねない。支持率は低落傾向で39%。このままだと、ただでさえ与党が不利な中間選挙で惨敗するのは明らか。──って深読みすぎ? 支持率が42%に回復した、という報道があったけど、誤差の範囲内じゃない? 侵攻自体に対しての賛否は拮抗しているらしいし、トランプの思惑は外れたのかな。麻薬に関わってたんだからやられても仕方がない、という人たちもいるみたいだけど、あまりにもチョロいんじゃないかなぁ?



#11559 
バラージ 2026/01/05 22:44
おとうと太閤記

 今頃ですが明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 大河ドラマ『豊臣兄弟!』第1話はうっかりうたた寝をして最初の15分くらい見逃してしまったので、そこは再放送で回収しようと思います。そこから後を観た限りでは、まさに秀吉ドラマなら秀吉の功績になりそうなところを秀長に移し変えたという感じでした。個人的にはこの題材だとどうしても初めて全話観た大河ドラマ『おんな太閤記』が思い起こされちゃうんですが、秀吉ドラマのいつもの面々がまた新たな若い俳優たちで描かれるのが新鮮でまあまあ面白かったです。ま、これからですかね。個人的にはなんやかんやで代打登板となった白石聖ちゃん演じる架空ヒロインの直がどうなるかちょっと楽しみ。なにしろ架空人物なんで今後どうなるかが全くわからないですから。

 豊臣秀長の登場した映像作品は超有名人の兄秀吉に比べればそれほど多くなく、秀吉の出てきた大河ドラマでも秀長は出てこないというのもよくある話。僕はやはり前記の通り『おんな太閤記』の中村雅俊がなんといっても思い出深いんですが、それ以前の秀長が出てきた大河は『太閤記』(演:冨田浩太郎)まで遡らなければならないようで。それ以後の大河だと『春日局』(演:益富信孝)、『秀吉』(演:高嶋政伸)、『功名が辻』(演:春田純一)、『江』(演:袴田吉彦)、『軍師官兵衛』(演:嘉島典俊)、『真田丸』(演:千葉哲也)、『どうする家康』(演:佐藤隆太)に登場したようですが、『徳川家康』『独眼竜政宗』『信長』『利家とまつ』『天地人』『麒麟がくる』には登場しなかったようです。
 それ以外の秀長が登場した映像作品で歴史映像名画座に掲載されてるのは映画『利休』(演:田村亮)、『清須会議』(演:梶原善)、単発ドラマ『太閤記 サルと呼ばれた男』(演:風間俊介)、『戦国疾風伝 二人の軍師 秀吉に天下を獲らせた男たち』(演:中本賢)といったところ。また未掲載で僕が観た秀長登場作品には単発ドラマ『寧々 おんな太閤記』(2009年、演:福士誠治)、映画『首』(2023年、演:大森南朋)があります。さらに僕も未見の秀長登場作品には映画『出世太閤記』(1938年、演:原健作)、『急襲桶狭間』(1953年、演:小崎正彦)、連ドラ『亭主の好きな柿8年 女房太閤記』(1970年、演:岡田裕介)、『大坂城の女』(1970年、演:永井智雄)、単発ドラマ『千利休 春を待つ雪間草のごとく』(1990年、演:寺田農)、『豊臣秀吉 天下を獲る!』(1995年、演:田中隆三)があるようですが、やっぱり秀吉に比べれば格段に少ないなあ。


>またやっちゃったか
 米国は80年代にもグレナダやパナマに侵攻してましたし、またやったかとも思ってしまうんですが、これを受けて日本を含めた他国がどう反応するかも問題で、これを許したらロシアのウクライナ侵攻も中国の台湾への軍事的圧力も文句言えなくなっちゃいますからね。そういや80年代もソ連がアフガニスタンに侵攻した後の米国のグレナダ侵攻だったよなあ。



#11558 
徹夜城(明日から仕事かと思うと気が重い管理人) 2026/01/04 21:25
今更ですが謹賀新年

 どうも、また管理人のくせに久々に書き込みます。まずは、あけましておめでとうございます。今年もよろしく。
 少しは年末年始に休みがとれたんで、サイトの更新作業の一つもしたいと思ったんですが、なかなか一区切りつくまで行きませんで…去年は本当に更新が滞りましたからねぇ、今年はもう少し計画的にスケジュールを組みたいもんです。

>新大河ドラマ
 さて、今年も新たな大河ドラマとなりまして…ネタ的には「王道」なのでマイナー好みな僕にはあまり興味がわかないところだったんですが、ひとまず第一回は調子よく見させてもらったかな。一応「弟」が主役なので、太閤記ものながら色合いはそこそこ違ってくるかな、と。ある意味後年の秀吉につながる兄貴の怖さも見せましたしね。
 しかし秀長という人はエピソードがこれといって残ってるわけでもなく、中世史家の呉座さんだったかな、結局「秀吉のお手柄のかなりの部分が実は秀長のおかげ」ってな感じにするしかないという予想も見かけました。

>「逃げ若」
 僕は連載ではなく単行本を追いかけて内容をチェックしてます。チビチビ作業してますが、「南北朝列伝」にも反映させようとしてもいます。結構メジャーマイナー含めて南北朝キャラが出てくるんですよねぇ、少年漫画的に造形されてはいますけど、元ネタがないわけでもなく、というのが結構多くて。

 まぁアニメ化までしてますし爆発的ではないけど一定の人気を得てるのは確かでしょう。ただ確かに「便乗」な動きはあまりみられないなぁ。歴史ムック本とか南北朝案内本みたいのは出てた気がしますが、出版側でも南北朝にあまりなじみがないんでしょう。
 僕のサイトでもそうアクセスが増えたってわけでもないですし…一応「列伝」はいろいろ検索でひっかけて来訪される方がいるのは分かってますが。スマホでは見づらいしなぁ。


>新年早々の国際問題
 やるんじゃないか、とは言われてましたが、やっちゃいましたな、トランプさん。「戦争」に比べりゃ小規模で短時間にやってしまった形ですが、同時に「石油利権」を隠しもせずに口にするあたり、分かりやすさが怖いというか。
 ただこの手の行動はアメリカ歴代政権もやってますからねぇ。今度のはパナマ侵攻とイラク戦争の組み合わせ技という感じで「今に始まったことじゃない」のも確か。しかし昨今の情勢のなかでこれをやられると、もう世界的に帝国主義時代へ逆行しちゃうんじゃないかという恐れも感じます。今年一年の嫌な意味での象徴にならなきゃいいんですが。
 




#11557 
バラージ 2025/12/29 22:44
南北朝室町大河の可能性

 徹夜城さんがX(twitter)で南北朝室町大河ドラマの可能性について言及されてました。足利義満大河を望む者の1人として、僕も南北朝室町大河の可能性について考えてみたいと思います。
 まず徹夜城さんが触れられてた世阿弥主人公大河の可能性について。残念ながら真面目に考えるとほとんど可能性は無いでしょうね。世阿弥を主人公にした場合、当然ながら能楽のシーンが必須になってしまいますが、ゴールデンタイムの連続ドラマで能のシーンを大量に流すのはちょっと……。正直言って眠くなってしまいそう。Eテレの能の中継とかならともかく、連ドラで能のシーンが中心になっちゃうってのは普通に考えてまず無いかと。能楽師を主人公とした歴史ものにはアニメ映画『犬王』がありましたが、あれはアニメならではの表現方法を取っており、犬王(道阿弥)と架空人物の琵琶法師の少年をパフォーマーとミュージシャンとして描いたロック・ミュージカル映画で、本当の能のシーンは皆無でしたからねえ。さすがに大河でそれは無理でしょう。
 義満時代の有名人としてはもう1人、一休宗純がいますがこれもちょっとなあ。宗教家を主人公とした映画は結構ありますが、テレビドラマ、ましてや1年放送する連ドラで宗教家主人公はやはり難しそう。連続アニメ『一休さん』はありましたが、あれは宗教色の薄い子供向けアニメでしたし(あと脇役なら『花の乱』に出てきたけど)。
 というわけで、やっぱり義満自身が主人公以外の南北朝室町時代を描いた大河の可能性はかなり低そう。そもそも日本史好きの間でも奈良時代と並んで最も人気・知名度ともに低いマイナーな南北朝室町時代のドラマなら、主人公の人物は歴史にくわしくない人でもある程度知っているメジャーな人が望ましい。これまで主人公になった足利尊氏と日野富子も中学校の歴史の教科書に必ず出てくるような人たちですし。かといって後醍醐天皇や足利義政が主人公というのも考えにくいので、やっぱり義満主人公しか無いかなあ(ちなみに平安や江戸はそれなりに人気がある時代だし、紫式部は有名人)。

 あと余談ですが、『逃げ上手の若君』の人気・知名度ってどの程度のものなんでしょうね? ここまで『週刊少年ジャンプ』で連載が続いてるんだから人気があることは間違いないでしょうが、特に追っかけてるわけではない僕はここでしか名前を目にすることが無いんですよね。『鬼滅の刃』とか『ゴールデンカムイ』とか『キングダム』とか『銀魂』とか『るろうに剣心』とかは特に追っかけてなくても目にすることがあるんですけどね。そもそも他作品の人気に便乗した大河って実はそれほど無くて、21世紀以降では『バガボンド』便乗と思われる『武蔵 MUSASHI』とフジ『大奥』便乗と思われる『篤姫』ぐらいしか思いつきません(『いだてん』は東京オリンピック便乗、『青天を衝け』は新1万円札便乗と言えなくもないが)。やっぱり便乗は難しいんじゃないかなあ。


>大御所時代とか天保の改革の人たちが出てきた映像作品
 蔦屋重三郎が死んだのは幕府政治が寛政の遺老の時代。というわけで(?)寛政の遺老の時代が終わりを告げた後の徳川家斉による大御所時代(厳密には寛政の遺老も大御所時代に含まれるが)、さらにその後の天保の改革の幕閣の人たちが出てきた映像作品の話。今までその時代が大河ドラマの舞台となったことはありませんし、どうせ今後もそのあたりの時代を舞台とした大河ドラマが作られる可能性は著しく低いだろうってことで。
 なお蔦重死後の寛政の遺老の時代に起こった主な出来事としては、伊能忠敬の蝦夷地測量開始(1800年)、本居宣長死去(1801年)、十返舎一九『東海道中膝栗毛』出版(1802年)、レザノフの長崎来航(1804年)、喜多川歌麿死去(1806年)、フェートン号事件(1808年)、間宮林蔵の樺太探検(1809年)、上田秋成死去(1809年)、ゴローニン事件(1811年)、朋誠堂喜三二死去(1813年)、曲亭馬琴『南総里見八犬伝』刊行開始(1814年)、山東京伝死去(1816年)などがあります。

 まず大御所時代の老中である水野忠成。実はこの人は田沼時代に老中だった水野忠友の養子として後を継いだ人です。意次が失脚すると忠友は養子として娘と結婚させていた意次の四男水野忠徳との縁を切ったことは以前書きましたが(#11530)、その後に親戚から養子に取ったのが忠成でした。忠成は若い頃から家斉に仕え、昵懇の仲だったため重用されたとのこと。家斉の腰巾着としてその放漫財政を大いに進めた人ですが、ある意味では能力のある人物だったようです。
 そんな忠成が登場した映像作品のうち僕が観たものには、市川雷蔵主演の映画『眠狂四郎』シリーズがあります。全12作のうち、第2作『眠狂四郎勝負』(1964年、演:南条新太郎)、第3作『眠狂四郎円月斬り』(1964年、演:佐々木孝丸)、第4作『眠狂四郎女妖剣』(1964年、演:玉置一恵)、第6作『眠狂四郎魔性剣』(1965年、演:稲葉義男)とちょくちょく出てきたようなんですが……全然覚えてないなあ。映画板の#1881に書いたように一昨年BS12の放送でまとめて観たんですけどね。まあ1作ごとに役者が違ってますし、たいして重要な役じゃなかったんでしょう。観てない作品は全てテレビドラマで、『大奥』(1983年、フジテレビ、演:根上淳)、『びいどろで候 長崎屋夢日記』(1990年、NHK、演:内藤武敏)、『ニュー・三匹が斬る!』(1994年、テレビ朝日、演:近藤洋介)、『夢暦長崎奉行』(1996年、NHK、演:西岡徳馬)、『隠密八百八町』(2011年、NHK、演:前田吟)といったあたりに出てきたようです。
 そして前記の意次の四男水野忠徳は後の田沼意正なんですが、この人は巡り巡って後に田沼本家を継ぐことになります。もともと意次の後を継いだのは嫡孫(意知の嫡子)の意明で、1787年に家督を継承し1788年に意次が死去しています。しかしこの後、田沼家では当主の早逝が続くことに。まず意明が1796年に24歳で死去。弟の意壱が後を継ぐものの1800年に21歳で死去し、さらに弟の意信が後を継ぐも1803年に22歳で死去して意知の系統は断絶。そこで意次の甥の意致の四男(つまり意信らのハトコ)である意定が後を継ぎますが、これまた1804年に21歳で死去しています。そのため水野家から送り返された後、母方の姓を取って田代玄蕃と名乗っていた意次四男(元水野忠徳)が田沼意正と改名して、末期養子で家督を継いだのです。水野忠成は前記の経緯から意正に負い目があったのか、1817年に寛政の遺老の松平信明が世を去り自らが老中になると家斉に推薦して意正を若年寄に抜擢し、意正は1823年に田沼家の旧領である遠州相良への復帰を許されてます。さらに1825年には家斉の側用人にもなっており、「水の(水野)出て/元の田沼と/なりにけり」という狂歌が流行ったとか。そんなマイナーな意正にもなぜかちゃんと登場した映像作品があり、それがテレビドラマ『幻十郎必殺剣』(2008年、テレビ東京、演:中原丈雄)。やはり悪役回りのようです。
 なお忠成老中期の主な出来事には、小林一茶『おらが春』成立(1819年。刊行は1852年)、大田南畝死去(1823年)、異国船打払令(1825年)、鶴屋南北『東海道四谷怪談』初演(1825年)、一橋治済死去(1827年)、シーボルト事件(1828年)、小林一茶死去(1828年)、松平定信死去(1829年)、鶴屋南北死去(1829年)、葛飾北斎『富嶽三十六景』版行(1831年)、十返舎一九死去(1831年)、歌川広重『東海道五十三次』版行(1833年)、天保の大飢饉の始まり(1833〜1839年)など。

 忠成が1834年に死去すると代わって老中となったのが遠い親戚の水野忠邦です(なお意正は1836年に死去)。天保の改革で有名な人ですが、まだ家斉は存命で彼が政権運営をリードしてました。1837年に家斉は嫡子家慶に将軍職を譲って大御所となり、名実共に大御所時代に突入。なお、この年には大塩平八郎の乱とモリソン号事件が起こっています。1839年には蛮社の獄が起こり、1841年の大御所家斉の死去によって、ようやく天保の改革が始まりますが、改革はわずか2年で頓挫して失敗に終わりました。
 さて、そんな水野忠邦が登場した映像作品ですが、江戸幕府三大改革の先輩の吉宗と定信が善玉として登場することが多いのに対して、忠邦は悪玉として登場することが圧倒的に多いようです。やっぱり改革が前の2つと違って完全に失敗したからか、もしくは遠山の金さんと対立したことが良くなかったんだろうか? 金さんものではほぼ例外なく悪役として登場してるようで、僕も子供の頃にTBS版金さんドラマ『江戸を斬る』で忠邦が悪役として出てきたのを観て、教科書的三大改革の人というイメージしか無かったんでちょっとびっくりした記憶があります。確か1度失脚した忠邦が復権を狙って暗躍するみたいな話で、演じてる役者も一目で悪役とわかるもろ悪役商会みたいな人でしたね。調べると時期的に『江戸を斬るV』(1980年)かなぁ。演じてたのは安部徹という人のようです。
 その他の僕が観た作品では、まず連ドラ『あばれ八州御用旅』1〜2部(1990〜1991年、テレ東、演:中村梅之助)。このドラマでは珍しく悪役ではなかったらしく、悪人を始末する影の八州となることを主人公に命じる役だったとのこと。でも、ちらっとしか観てなかったからほとんど覚えてないんだよな。それから連ドラ『御家人斬九郎』1部第6話(1995年、フジ、演:西沢利明)にも出てきたらしいんだけど、これも覚えてない。映画『必殺!主水死す』(1996年、演:宝田明)も映画自体が面白くなかったんであんまり覚えてないんですが、定番の悪役だったみたいです。「必殺」シリーズではドラマの『必殺からくり人』(1976年、テレ朝、演:酒井哲)、『必殺スペシャル・秋! 仕事人VSオール江戸警察』(1990年、テレ朝、演:大出俊)にも出てきたらしいけど僕は未見。映画『駆込み女と駆出し男』(2015年、演:中村育二)では特に善玉でも悪役でもないちょい役でした。
 観てない作品の主なものでは、まず鶴田浩二版の眠狂四郎映画『眠狂四郎無頼控』(1956年、演:伊豆肇)、松方弘樹版映画 『眠狂四郎円月殺法』(1969年、演:鈴木瑞穂)、田村正和版単発ドラマ『眠狂四郎 The Final』(2018年、フジ、演:堀内正美)に登場。有名な市川雷蔵版には出てきてません。あらすじを読む限りではやはり善玉とも悪役とも言い切れない人物像のようですね。次いで映画『天保水滸伝』(1958年、演:2代目市川猿之助) 。どっかで聞いたことのあるタイトルだなと調べると任侠同士の抗争を描いた江戸時代の実録小説とのことで何度も映画化されてるらしく、そのうち1958年版にだけなぜか忠邦が出てきたようです。それから松本清張の小説『かげろう絵図』が何度か映像化されており、1959年の映画(演:原聖四郎)、 1983年の単発ドラマ(フジ、演:御木本伸介)、 2016年の単発ドラマ(フジ、演:西田健)にそれぞれ忠邦が出てきたとのこと。さらに東映集団抗争時代劇映画の1本という『十一人の侍』(1967年、演:佐藤慶) にも忠邦が出てきた他、テレビドラマでは『大奥』(1968年、フジ、演:龍崎一郎、御木本伸介)、『天下堂々』(1973年、NHK、演:仲谷昇)、『びいどろで候 長崎屋夢日記』(1990年、NHK、演:宮川洋一)、『よろずや平四郎活人剣』(2007年、テレ東、演:西田健)、『オトコマエ!2』(2009年、NHK、演:勝部演之)、『大江戸事件帖 美味でそうろう』(2015年、BS朝日、演:小野寺昭)、『小吉の女房』『小吉の女房2』(2019&2021年、NHK、演:白井滋郎)といったあたりに忠邦が出てきたようです。

>家斉の奥さんたちが出てきた映像作品
 ついでにこれまた大河ドラマに今後も出てくることはないであろう徳川家斉の妻妾たちが出てきた映画やドラマの話。といっても家斉の妻妾は20人近くいて、とてもじゃないけど全員紹介し切れない。マイナーな人は映画やドラマに出てこないだろうし、そもそもそれ以前に知らない人たちなんでカットして、比較的有名な正室の近衛寔子(広大院)、後継者の家慶を産んだ側室お楽の方、登場作品が最も多いと思われる側室お美代の方の3人に絞ってご紹介。
 出てきた作品といっても彼女たちの性質上ほぼ大奥ものに限られます。1968年のフジテレビ版『大奥』(広大院:伊吹友木子、お楽の方:富永美沙子、お美代の方:稲垣美穂子、家斉:西村晃)。同年の映画『大奥絵巻』(萩乃〈広大院〉:桜町弘子、家斉:田村高廣)。1972年の映画『エロ将軍と二十一人の愛妾』(茂子〈広大院〉:杉本美樹、お楽の方:衣麻遼子、お美代の方:城恵美、家斉:林真一郎)。1980年のフジテレビ『徳川の女たち』(茂子〈広大院〉:仁和令子、左京の局〈お楽の方〉:高林由紀子、家斉:川地民夫)。1988年の映画『徳川の女帝 大奥』(お美代:竹井みどり、お楽:麻生かおり、茂子〈広大院〉:三ツ矢歌子、家斉:成田三樹夫)。2016年のフジテレビ『大奥 第一部 最凶の女』(お美代:沢尻エリカ、家斉:成宮寛貴、寔子:光浦靖子、お楽:浅井江理名)および『同 第二部 悲劇の姉妹』(家斉:成宮寛貴、寔子:光浦靖子)。2023年のNHK男女逆転版『大奥』(家斉:中村蒼、茂姫→広大院:蓮佛美沙子)といったあたり。
 それ以外では松本清張の小説『かげろう絵図』の映像化作品にお美代の方と広大院が出てきており、1959年の映画版(お美代の方:木暮実千代、家斉:柳永二郎)、1983年のフジテレビ版(お美代の方:中島ゆたか、寔子:荒木雅子、家斉:浜田寅彦)、2016年のフジテレビ版(お美代の方:中村優子、家斉:津川雅彦、寔子:白石加代子)といった感じ。
 その他では、寔子が『夢暦長崎奉行』(1996年、NHK、演:小林かおり〈役名は徳川定子〉)、『大江戸捜査網2015』(2015年、テレビ東京、演:小芝風花)に出てきたとのこと。そして登場作品が最も多いのがお美代の方で、残ってるエピソードが多いからかな? 僕が観たものでは市川雷蔵の映画『眠狂四郎』シリーズ第1作『眠狂四郎殺法帖』(1963年)に出てきたらしいんだけど(演:美吉かほる)、うーん、やっぱり覚えてない。その他にも『びいどろで候 長崎屋夢日記』(1990年、NHK、演:南海里)、『幻十郎必殺剣』(2008年、テレ東、演:北原佐和子〈役名はお美津の方〉)などに出てきたそうです。



#11556 
ろんた 2025/12/28 18:42
時代劇の逆襲

 Nスペの新ジャポニズムというシリーズの時代劇編を見ました。「SHOGUN」リメイクの成功、続編の制作決定。以前ちょっと話題に出した「碁盤斬り」がフランスで大ヒット。日本映画を専門に配給している会社があり、あまりヒットしなかった(というより封切館が少なかった)時代劇映画を売り込んでいる。「切腹」の仲代達也、「椿三十郎」の三船敏郎に夢中のアメリカの若手俳優。殺陣を学びに来る人もいるらしい。そして「SHOGUN」の監督の中には太秦のワークショップに参加して時代劇を制作した人もいるとか。海外で注目を集めているのに、日本での製作本数は激減。これはテレビ時代劇がほとんど制作されなくなったからですな。しかし、東映では時代劇の新作「木挽町のあだ討ち」を制作中。時代劇、復活せよ、という内容。
 デューク真田を含め「歴史の再現」とか「基本的な倫理をストレートに描く」みたいな話をしていて、ちょっと持ち上げすぎな気がする。何よりも娯楽としてあったはずで、西部劇や騎士道物語と変わらないと思うんだけど。「木挽町のあだ討ち」に出演する渡辺謙は、若い人に受け入れられなければ駄目だ、という話をしているが、若者が時代劇自体を嫌っているわけではないと思う。なぜなら、アンケート重視の少年マンガ誌でも青年マンガ誌でも、歴史劇ないし時代劇は連載されているから。それに嫌われているなら『ゴールデンカムイ』や『ギングダム』の成功はなかったはず。むしろマンガ作品の実写化に活路があるんじゃないかな。ああ、その前に「製作費が〜」というテレビ局の貧すれば鈍する体質をなんとかしなきゃ(笑)。
 ああ、もう一つ。「木挽町のあだ討ち」の紹介で「歌舞伎座」を連呼してたけど、江戸時代に歌舞伎座はねぇよ(笑)。公式サイトに行ったら「芝居小屋」と正しく認識していたので一安心。
 といいつつ、「水戸黄門」のスペシャルが放送されたりなんかして(BS-TBS)。武田鉄矢版の続きで、キャストはそのまま。武田鉄矢の黄門様は割と生臭い感じがして面白い。藤井紋太夫の名があるので成敗されちゃうんだろうな。それとも吉保ともども改心して許されるのか(笑)。NHK-BSは「丹下左膳」が放送される。年が明けると「おねぇちゃん、あちきと遊ばない?」の「浮浪雲」もある。(<これ、NHKでやるんだぁ) 面倒臭い連中に目をつけられませんように。もう一つ、注目は「はぐれ鴉」。製作が大分テレビで、九州のテレビ局で放送されているらしいが、その他の地域では見らなかったんじゃないか。最近、CSの時代劇チャンネルで、年明けにBS11で放送される。内容は「寛文六年竹田藩で起きた凄惨な事件。ただ一人逃げのびた主人公による復讐劇。誰が敵で、誰が味方なのか。隠し通された秘密が明らかになる…。」とのこと。

>トランプ級戦艦
 う〜ん、これ「トランプ級」と言うんだから、軍所有の武装船舶の総称じゃないですよね。駆逐艦とか巡洋艦に対しての戦艦だとしたら、米海軍は現役で運用してないと思うんだけど。米海軍の主力は空母。トランプさんって大艦巨砲主義なの? そんな気がしないでもないけど。



#11555 
バラージ 2025/12/23 22:40
歴史から離れるほど面白くなるドラマ

 トランプ級戦艦! 自分の名前の戦艦作るって、小学生の男の子みんなが抱く夢ですよね。おじいちゃんになってようやくかなえることができたのかあ(呆)。黄金艦隊ってネーミングもすげえなあ。


 『べらぼう』、ついに最終回を迎えました……が、その直後に観たジャッキー映画『シャドウズ・エッジ』が面白すぎて、書こうと考えてた総論的なことがちょっと頭から飛んじゃってました。なんとか思い出しながらつらつらと……。
 まず前回も書きましたが、やっぱりこのドラマ、史劇というより日曜時代劇だったなと。もっとも最終回は冒頭で(本物の)一橋治済があんな死に方(笑)をした後は案外歴史寄りになって蔦重も版元に戻ってましたが、最後の最後に九郎助稲荷が夢に出てきて……というやっぱり時代劇な展開に(もっとも蔦重の最後の台詞は史実通りのようですが)。なんだかんだで最終回はエピローグ的でラス前の回が物語的には実質的なクライマックスだったというのは、確か『平清盛』の時もそうだったな。

 全体的な感想としては、すでに今年通してちょこちょこ書いてきたわけですが、前半はなかなか面白かったです。蔦屋重三郎が出てきた映画やドラマはこれまでもあったものの、そのほとんどが歌麿や写楽や北斎の脇役ということもあって、その生涯の後半生に限られてました。前半生が舞台となったのはおそらく初めてで、珍しい人物が多数登場したことが面白く感じられたんですよね。またドラマがあまり幕府の動きに首を突っ込まず、あくまで蔦重を物語の中心に置いて江戸の町人文化を描いていたことも良かった。蔦重の描写と幕府の描写の比率が8対2から9対1ぐらいで理想的な配分だったように思います。
 ところが中盤あたりから田沼意次や一橋治済、松平定信など幕府の動向に比重が傾いてくると物語の流れが悪くなっていきます。そこに田沼再評価論を絡めたのも良くなかった。蔦重主人公ドラマと田沼再評価論を接続させた結果、蔦重がやたらと田沼を持ち上げる展開となり、蔦重の立ち位置が難しいものになってしまいました。それが如実に表れたのが天明の大飢饉と天明の打ちこわしの描写で、歴史展開としては当時の為政者だった田沼の政治責任は免れないにも関わらず、一般市民の側である蔦重がかなり無理のある理屈で田沼を評価したり擁護したりするというなんともひねくれた展開に。それでは打ちこわしをした江戸市民のほうが悪いという論理になってしまい、これはマズいと思ったかカウンターパーソンとして流転の人生を歩んだ架空人物の小田新之助(演:井之脇海)と「ふく」(演:小野花梨)夫妻を市民の側を象徴する人物として投入した結果、田沼を過大評価する主人公蔦重を「ふく」が正論で論難する展開が繰り返されるという蔦重ドラマとしてはどうにもおかしな展開になってしまいました。だからといって行きがかり上、蔦重が今さら反省したり改心したりするわけにも行かず、ただただ蔦重が困るだけというなんともすっきりしない展開に。蔦重の打ちこわしへの関わり方もかなり苦しいものにならざるを得ず、このあたりからどうにも面白くなくなって、冒頭や前半を見逃す回が多くなりドラマから脱落しそうになりました。田沼政治や寛政の改革も蔦重に関係あるのは文化政策や出版統制だけなので、蝦夷地政策や尊号事件など蔦重と関わりのない話になると主人公は出てこないし、そのため長々とやるわけにはいかないからおざなりな描写になっちゃうしでなんとも消化不良。これは竜頭蛇尾のドラマという結論になるかなぁと思ってたんですが……。
 なんと最終盤、定信が失脚した後に史実完全無視、というより史実に相当する要素の全く無い完全時代劇に。いやね。確かに一橋治済どうすんだとは思ったんですよ。1年かけて最後に悪が笑うなんて日曜の夜にそんなすっきりしない終わり方どうなんだと。しかも主人公は蔦重なのにと。それがあんな面白い展開になっちゃうとは。そんなわけで僕は歴史家の皆さんとは違って、その史実と関わりのない完全時代劇のほうがずっと面白く、かなり楽しんで観ちゃいました。結局このドラマ、歴史要素が強くなるほどつまらなくなり、歴史から離れて時代劇になるほど面白いというなんとも皮肉な結果になりましたね。やっぱりどんな時代でも史劇として面白くなるってわけじゃないんだな。

 あと、このドラマでもう1つ気になったのは、あんまり蔦重を商人として描けてなかったような気がするんですよね。やっぱり商売をドラマにするのは難しいのかなぁ? でも史劇ではない全くの時代劇には商人主人公ドラマもあるわけだからそういうわけでもないような。横浜流星も最後まで商人ぽく見えなかったな。最初の頃は商人としてはまだ未熟というか、そもそも商人以前だったから別に良かったんですけどね。むしろ流星くんは遠山の金さんとかが似合いそう。江戸っ子役は間違いなくハマってたし、遊び人の金さんもお奉行の遠山さまもどっちもハマりそうに思います。でなきゃ任侠ものとか股旅ものとか……って今どきそういうのは作られないか。
 蔦重というか商人の役だったら阿部サダヲとか似合いそうな気がするんですけどね。流星くんとは年から何からだいぶ違うけれども。でもって山東京伝役には宮藤官九郎を(笑)。2人の掛け合いとかすごくハマって面白そうな気がするんですが。
 話がずれた。ま、とにかく最終的にはというか総合的には去年と同程度には楽しめましたドラマでした。


>名画座修正情報
『写楽』……キャストの葉月里緒「奈」は葉月里緒「菜」が正しいです。ただ、この映画より後に本当に葉月里緒「奈」に改名しちゃうんでややこしいんですが……。



#11554 
ろんた 2025/12/21 20:08
『逃げ上手の若君(23)』(松井優征/ジャンプコミックス)

 相変わらず「シャム猫ココ」シリーズを読んでいるのでネタ切れ(汗)。読んだのは時代劇マンガの『かきすて(2)』(艶々/SPコミックス)ぐらい。ただし作者が成年コミック出身だからか艶笑譚。「"その手は桑名の焼き蛤"の桑名は桑名宿ではなく桑名藩。桑名宿で焼き蛤を頼むと飯盛り女がやってくる」というような話がいっぱいでちょっと話題にしにくい。それでも、段々たまってきたのでご紹介。ますは『逃げ上手の若君(23)』(松井優征/ジャンプコミックス)。

師冬の野心を断ち切るべく、鬼心仏刀を炸裂させた時行。かつての郎党との一騎打ちは壮絶にして静かな終幕へ──。一方、失脚した直義派だったが、直冬らの奮闘で尊氏軍を退け、戦局は打出浜での決戦へ突入! そして、高一族討伐の好機を得た時行たち。混沌極まる大乱戦の行方は──!?(カバー裏より)
 師直以下の高一族の滅亡で一応乱は終結。しかし佐々木道誉は、結果的に高一族が粛清されたことに戦慄する。獲物のウサギが狩り尽くされたら次は猟犬が煮られるって訳だけど、次に煮られるのは当然ながら直義。こうした非情な措置は「神」である尊氏によるものだが、「人」としての尊氏はどう感じているのか。その辺が雫の言う「神としては絶好調だけど、人としては極めて不安定。あと一息ではち切れそう」ということか。そしてそこに雫は勝機を見る。次巻は尊氏VS直義。そして時行は直義に共闘を呼び掛ける。巻末にはエッセイ「『太平記』について」を収録。なぜ嘘・大げさ・まぎらわしいのに『太平記』を尊重するかが語られる。そういえば塩谷判官の話出てこなかったな。少年誌だから?

>『乾と巽─サバイカル戦記─(1)』(安彦良和/アフタヌーンKC)
 すでに完結しているが、なぜか本屋で見かけず買っておらず、ブックオフに在庫があった1巻だけをとりあえず購入。続巻や古代史物はなぜか新品を販売しているので、ゆっくり買い進めるつもり。で、カバー裏から(↓)。
1918年8月。日本はシベリア出兵に乗り出した。帝国陸軍第七師団の砲兵・乾軍曹と、浦塩日報の記者・巽。一兵卒と一新聞記者の目から、ロシアの戦場を駆け抜けた男達の生き様を描く!
「安彦良和、最後の長編連載作品!!」として連載が始まったシベリア出兵もの。一応大状況の説明はあるものの、諸派が入り乱れて混沌としているうえ、主人公が砲兵軍曹と在外邦人向け日本語新聞の記者(要するに下っ端)なので、どうも呑み込みにくい。読み進めるうちに分かってくるのかな。もっともこちらも「沿海州(ウスリー)コサック」だの「サバイカル・コサック」だの聞いても「そんなのいたんだぁ」という不勉強ぶりなので仕方ないか(汗)。

>『シルバーマウンテン(1)(2)』(藤田和日郎/少年サンデーコミックス)
 新作が連載されていたのは知っていたが、単行本が出ていたのには気づかず。(1)は9月、(2)は11月発売だが、この間に価格が改定されているのに驚く。実は異世界で若返った武道の達人二人が無双するお話なので、全然歴史ものでも時代劇でもないんだけど、冒頭の序章が「天狗に攫われた子」。どこかで聞いた話だと思ったら二ページ目には平田篤胤も出てきて、主人公たち(令和の老人だけど武道の達人)を若返らせて異世界(仙境)に飛ばすのが天狗(カラス天狗)なので、とりあえず触れてみました。藤田和日郎といえば「黒博物館」シリーズ(モーニングKC)の方が歴史ものっぽいんだけど、すっかり忘れてたなぁ。

>「長安 賢后伝」(J:COM BS 260ch)
 J:COM BS 260ch、番宣のため「パトラッシュ、ぼくもう疲れたよ。なんだかとっても眠いんだ」をヘビー・ローテーションしてて閉口してたんですが、「あらいぐまラスカル」が始まって助かった(汗)。このアニメも「こいつのせいでアライグマが〜」と最近は評判悪いみたいだけど、実は「アライグマはペットにならない」という話なんだな(笑)。で、新しくヘビー・ローテーションされているのが「長安 賢后伝」。正月(15日)から放送開始。全然知らなかったが既にあちこちで放送されているらしい。とりあえず、あらすじ。(公式サイトより)
盛州・西斉・雍臨の三国が北方で勢力を争う梁の末期。雍臨の郡主・賀蘭茗玉(がらんめいぎょく)は盛州の第九王子・蕭承煦(しょうしょうく)と運命的に出会い恋に落ちる。だが、蕭承煦に王位を継がせるという盛州王の遺言をもみ消して王に即位した第三王子・蕭承睿(しょうしょうえい)が、賀蘭茗玉を見初めて彼女を側妃にと望む。折しも戦場からは蕭承煦の訃報が届き、兄は陰謀で殺されたと訴える第十王子・蕭承軒(しょうしょうけん)を死罪から救うため、賀蘭茗玉は心ならずも蕭承睿に嫁ぐ決心をするが…。
 一応、五代十国と時代設定はされているみたいだけど完全なフィクション。盛州、西斉、雍臨をはじめ、すべてが実在しない。ファンタジーとして鑑賞するが吉か?

>「べらぼう」
 ちゃんと見てないんで、総集編ぐらい見てからにしようと思ってたんですが、47話をチラ見したら"寛政アベンジャーズVS悪の秘密結社ハルサーダ"みたいになってて、リーダーが蔦重。なにが、どうして、そうなった!(笑) 「11月中旬までは時代の空気が再現されていて傑作だったのに……」という歴史評論家氏の記事(「プレジデント」)もあったけど、(いや、ずっと歴史離れしてなかったか?)と第一話冒頭の火事に文句をつけた面倒臭い視聴者は思うのでありました。同じ第一話の田沼と蔦重の対話からして歴史離れじゃなかったか。詳しくはやっぱり総集編を見てから(汗)。

>遊女は生きて吉原を出られなかった
 またこの話をしなきゃならないか。しかも今回は、言い触らしてるのが本郷和人氏。上の歴史評論家氏の記事を確認してたら、大河ドラマを10倍楽しむため「婦人公論」に執筆した記事がYou Tube「婦人公論」公式チャンネルで出てきた。それによると「遊女の平均寿命は22.7歳」「生理が来ればすぐに客を……」「吉原から出られないまま人生を終え……」としている。生理の話は「生理が終われば……」の間違いだと思うけど、他の二つは#11075でやった話ではあるが、やっぱり一言しておきたい。
 当初はまた江戸東京博物館の誤記による犠牲者が……と思ったらさにあらず。本郷氏、「22.7歳」の根拠や「投げ込み寺」について正しく認識しながら、なぜか「22.7歳」を平均寿命として「吉原から出られないまま人生を終え……」としている。例えば在学中に亡くなった高校生を調べ、年齢の平均を出せば15〜18歳になるだろう。だからといって高校生の平均寿命が15〜18歳なわけがない。それと同じ。「吉原から出られないまま人生を終え……」という思い込みから、享年の平均=平均寿命と思い込んでしまったのか。やっぱり、セックスワーカーなんて思いつく限りひどい目に遭っていてほしい、というバイアスがかかったのかなぁ? 大体、本郷氏によれば過去帳に記された遊女は125年間で2000人ほど。その一方、蔦重の時代の「吉原細見」によれば遊女の総数もおよそ2000人。生きて吉原から出られないにしては死亡率が低すぎ(1/125)。その間には安政大地震もあったのに。そう考えれば、相当数の遊女が年季明けで吉原から出ていった、という結論になると思うんだがどうだろう。あっ、念のため言っとくと「吉原の闇」ってヤツを否定しているわけじゃないですからね。
 さらに「歴史人」のHPでも同様の主張を見つける。しかもこちらは死亡率の低さと「吉原から出られないまま人生を終え……」の矛盾に気づいたのか、死者の99%以上をしめる中以下の遊女は細見に掲載されず、過去帳にも載せられていないと主張している。ただし根拠は示さない。この数字を使うと中以下の遊女の使者は……99%:1%=x:2,000人 x=198,000人となる。つまり中以下と中以上の遊女の死者を合算すると、125年間に20万人。年間1600人が死に、閏月とかあるから1年=365日で計算すると、1日に4人以上死んでいることになる。ペストでも流行ってたのか?(笑) やっぱりこれも、セックスワーカーなんて思いつく限りひどい目に遭っていてほしい、というバイアスかなぁ?

>「仮面の忍者 赤影」(テレビ朝日)
 勘違いしていて、わたしの住んでいるあたりは「一部地域」。しかし調べると放送しているのはテレビ朝日と岩手朝日テレビだけ。どうゆうことなんだろう。まぁTVerで見ているわけですが、毎回冒頭のナレーションが「武田家を滅ぼした織田信長の天下統一が目前に迫っていた頃……」。本能寺の変まで数か月しかない。第一回冒頭で松永久秀が登場。せっかく爆死せずにすんだのに、巨大ガマに食べられちゃう。安土に詰めているのは羽柴秀吉と滝川一益。中国地方と関東地方に出張中のはずだが。明智光秀はなぜか出てこない。まあ、こういうドラマで史実との整合性を求めてもしょうがないけど。ただ赤影さんの演技がスカしているのが気になる。「赤影、参上!」とはっきりヒーローらしく発声してもらいたい。人見知りという設定らしいけど。青影は元盗賊。「だいじょーぶ」を使ってコメディリリーフとして機能している。白影はなんと元竹中半兵衛だそうです。凧を使って活躍するのは旧作準拠。



#11553 
バラージ 2025/12/14 11:36
予想以上に時代劇(笑)

 いやぁ、『べらぼう』、さすがにここまで時代劇な展開になるとは予想してませんでしたよ。やっぱり史劇では全然なくて、日曜時代劇だったんだな(笑)。ここに来ての斎藤十郎兵衛登場でまさかのあんな使われ方。写楽、全然関係ねーし(笑)。影が薄かった清水重好も終盤で久しぶりに再登場して、まさかあんな役回りとは。それにしても一橋治済、いくらなんでも悪者にされすぎでちょっと気の毒な気も。治済が悪役回りじゃない作品ってあるのか? その分、徳川家斉がわりとまともな人になってましたね。ま、そうじゃないと物語として収まりが悪いから仕方がない。個人的にはもっと能天気なドスケベぶりを見せてほしかった気もするけど(笑)。主人公の蔦重ももう商売とも文化とも全然関係ない役回りになっちゃったな。そもそも文化人連中、誰も出てこないし(笑)。いやまあ個人的には面白かったですけどね。ここまで史実無視の大河ドラマは『花の乱』以来か。あれもリアルタイムで観てた時はなんじゃこりゃ?でしたが、今観たら面白く感じるかもですね。最終回には北村一輝が本居宣長役で出演とのことで、宣長が出てきた映像作品って他にあるのかと探してみたんですが見つかりませんでした。まあ、いろいろと描きにくい人だもんなあ。


>録画で観た歴史映画
『HOKUSAI』
 葛飾北斎の半生を描いた映画で、2021年の公開時は特に興味がなく見逃したんですが、WOWOWで放送されたんで録画して観てみました。
 柳楽優弥と田中泯のダブル主演で全4章に分けられており、前半2章で柳楽が北斎の青年期・中年期を、後半2章で田中が老年期を演じており、真ん中の壮年期が抜けています。1章は駆け出しの北斎を蔦屋重三郎が見出すあたりから、北斎が絵に開眼して画風を確立し蔦屋に認められるまで。2章は売れっ子となり結婚もした北斎に第一子が誕生するまで。3章は妻が亡くなり娘のお栄や弟子たちと暮らす北斎が中風を患い、旅に出て『富嶽三十六景』を生み出すまで。4章は友人の柳亭種彦が武士でありながら戯作をしたことで誅殺されたこと(表向きは自害)にショックを受けた北斎が最後の絵?を描き上げるまで。
 一つ一つのエピソードはそれなりに面白いんですが、それぞれの話がぶつ切りに並べられてる感じで上手く絡み合っておらず、1本の映画としての流れが悪い。映像の構図や演出などもちょっと古っぽいように感じたし、テンポも妙にゆったりしてて淡々とした作風なので途中からちょっと退屈してきます。役者や美術は良かったんですけどねえ。北斎の史実にわからないところが多かったり、物語的面白味に欠けたためか創作部分がかなり多く、柳亭種彦の話なんてほぼフィクション。写楽は北斎より年下で、道楽で絵を描いていたところ蔦屋に見出された天才青年(少年?)という設定でした。蔦屋や歌麿・写楽・馬琴らが出てきて、『べらぼう』終盤や映画『写楽』とかぶる第1章が1番面白かったかな。全体的にはつまらなくはないが面白くもないといったところ。



#11552 
バラージ 2025/12/07 08:09
二転三転! 南宋ミステリー時代劇

 地元県内に上映館が無いってことでまたまたはるばる隣県まで行って、チャン・イーモウ監督の映画『満江紅/マンジャンホン』を観てまいりました。2023年の映画なんですが、日本では同年の東京国際映画祭で上映された後、今年になってようやく劇場公開された映画です。
 舞台は南宋初期の時代。中国北部を占領した強国・金との戦いで名を馳せた名将・岳飛が和平派の宰相・秦檜に謀殺されてから5年の月日が流れ、南宋と金の和平交渉が行われようとしていた。ところが交渉現場に到着していた金の使者が何者かに暗殺され、さらに使者が持っていた南宋皇帝への密書も無くなっていた。秦檜は事件に巻き込まれた下級兵士と若い武将に、夜が明けるまでの2時間のうちに犯人を見つけ出し密書を奪回するよう命令。失敗したら死あるのみ。2人は早速捜査に乗り出すが、捜査が進むごとに事件の真相も、彼らを含めた登場人物たちの真の思惑も二転三転していく。果たして全ての真相は?……というストーリー。
 「満江紅」というのは岳飛が残したとされる詞とのことで、それが物語の重要な要素となっています。一応歴史を背景としてはいますが、映画のストーリー自体は全くのフィクションで、実在の人物も秦檜しか登場しません。また史実とは微妙に変えていて、実際には岳飛が処刑された年に金との和睦が成立しているし、近年の研究では異論も出ている秦檜や岳飛の人物像についてもあくまで中国人の抱く一般的イメージに沿った描写となっています(日本で言えば忠臣蔵みたいな感じでしょうか?)。「満江紅」も現在では岳飛の作ではないとする説もあるとのこと。まあ史実がどうであろうと、チャン・イーモウ監督にとっては映画として優れているかどうかが全てで、歴史通りの映画なんて──というかいわゆる歴史映画は撮らないでしょうからね。こっちもそんなの期待してないですし。東京国際映画祭で来日した時も、この映画はあくまでフィクションだと言っていたようです。

 ま、それはそれとして、映画はなかなか面白かった。とにかく2時間40分の長さを全く感じさせないのがすごい。多数の人物が登場する群像劇的なミステリーでコメディとシリアスがほどよくミックスされた映画になってますが、その数多くの登場人物たちの命がまるで虫けらのように次々とあっけなく殺されていくところに権力や封建社会の非情さと非人間性が表現されているように感じました。さらにそこにはご都合主義や甘さは存在しないとでもいうかのごとく、まさかこの人は普通の展開なら死なないよね、というような人までもがあっさりと死んでしまう。安易なハッピーエンドは決して描かれない。それでいて最後までエンタメ要素やコミカル風味を失わずに、英雄賛美を謳いながらある種の救いのようなもので締めくくられています。中国ではチャン・イーモウ監督最大のヒット作となったそうですが、そのような忠臣蔵的わかりやすさにその要因の一端があったとの指摘もされているようです。
 トップクレジットの主演俳優シェン・トンはさすがの名演で、顔がムロツヨシにそっくり。確か以前も中国映画の主演俳優にムロさんそっくりの人がいたなと思い出したんですが、そっちは『薬の神じゃない!』のシュー・ジェンという別の人でした。実は写真とかで素顔を見るとどっちもそんなにムロさんに似てないんですけどね。その他の俳優たちも全員が素晴らしい演技派ぶりでしたが、『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』『崖上のスパイ』で主演したチャン・イー以外はさすがに僕も知らなかった人が多い。芸達者な演技派俳優やコメディアンばかりを集結させたと思しきキャストは本国では人気俳優ばかりなんでしょうが、日本人から見るとよく知らない地味な面子なので観客に対するアピールに欠けるのも確かで、それが2時間40分という長さとともに上映館数の少なさに影響した可能性もあるんではなかろうか。主演の1人ながらあくまで2番手の若手イケメン俳優イー・ヤンチェンシーを押し出してるのもそのためでしょう。

 ただ、面白いことは面白かったんですが、このようなどんでん返しが何度も起きストーリーが二転三転するチャン・イーモウの映画はすでに『SHADOW 影武者』『崖上のスパイ』と近年に2作も観ていて、さすがに3度目ともなるとまたかよとも思わなくもありません。
 また近年のチャン・イーモウ映画は、上記2作にしても『ワン・セカンド』にしても本作にしても全部男性が中心の物語になっていることに少々の物足りなさを感じます。チャン・イーモウといえばかつてはコン・リーやチャン・ツィイーやチョウ・ドンユイといった魅力的な新進女優たちを主演に据えた女性映画をもっぱらに撮ってきた人だけに、いかに映画の出来が良かろうとも女優が主軸の映画ではないことに一抹の淋しさを感じてしまうのです。もちろん長年のキャリアの中でチャン・イーモウは絶えず作風を変化させてきた監督だということも承知してはいますが、それでもやはりなお。本作でも映画初出演という妓女役の新進女優ワン・ジアイーが出色の演技を見せていて、さすがは女優発掘王チャン・イーモウと思わせてくれるし、彼女の役どころにチャン・イーモウのロマンチシズムがよく表れてるとも言えるんですが。

 ま、ともかくチャン・イーモウ監督の『堅如磐石(原題)』(2023年)と『第二十条(原題)』(2024年)も早く日本公開していただきたい。あ、どっちも歴史映画ではありません(笑)。


>『べらぼう』の人たちが出てきた映像作品追記
 2008年の映画『宮城野』は、写楽殺しの罪で処刑されようとする女郎の命を賭けた「情」と「業」を描いているとのこと。矢代静一の舞台劇の映画化で、「東洲斎写楽とおぼしき男」を國村隼が演じているそうです。
 また1996年にNHKの金曜時代劇で放送された『夢暦長崎奉行』は遠山金四郎(演:葛山信吾)の父・遠山景晋(演:小林稔侍)を主人公とした連続ドラマとのことで、『べらぼう』とかぶる登場人物が多数登場してるようです。島津重豪(演:神山繁)、曲淵景漸(演:宮尾すすむ)、松平定信(演:渡辺文雄)、松平信明(演:角野卓造)、徳川家斉(演:三浦洋一)、さらに『べらぼう』には名前だけ出てきた茂姫=広大院(演:小林かおり)、『べらぼう』には出てきてない寛政の遺老の牧野忠精(演:塚本信夫)まで登場してる模様。



#11551 
バラージ 2025/11/25 21:15
おお……これはお久しぶりに

 史点更新ご苦労さまでございます。高市首相は就任直後からやや不用意な発言がちょこちょこあり、隙があるというか脇が甘いというかだいじょうぶなのかなと思ったら案の定という感じで。今後も同じようなことをまたしでかすんじゃないかという危惧がぬぐえません。にも関わらず支持率が相変わらず高いままっていうのがなあ。むしろそっちのほうが不安要素で、若い人の支持率が高いそうですが僕は一部のリベラル派が言うほど若者には必ずしも期待してないんですよね。ムッソリーニやヒトラーだって民主的な手続きの中から出てきた人たちで国民の高い支持をある時期までは得ていたんだし、特に若者(や女性)の圧倒的支持を得ていたわけですから……。
 トランプ大統領とニューヨーク市長マムダニは、ついこないだまであんなに罵り合ってたのに、共同会見ではすっかり仲良くなってた(ように見せてた?)のにちょっと笑ってしまいました。当選後の予測でも、ニューヨーク再建のためには協力し合わなければならないから、ある程度関係を修復するだろうと見られてましたが。


>東洲斎写楽が出てきた映像作品
 『べらぼう』、ついに東洲斎写楽のターンに突入。写楽を個人ではなく一種のプロジェクトとして描くというのは、前半から中盤の段階でプロデューサーがすでに言及してましたし、配役が発表されない時点でこういう組み立てになるんだろうなということも予想できてたんで、特に驚きはありません。単純に創作作品として今までとは違う設定で描きたいっていうのもあったんじゃないかな? というわけで、これまでの映像作品に出てきた写楽の話。

 僕が観たのはこれまでもたびたび言及してきた歴史映像名画座にも掲載されてる映画『写楽』のみ。写楽の正体は元大道芸人の「とんぼ」という架空人物という設定で、近年では写楽の正体とする説が有力な斎藤十郎兵衛も登場する(演:日比野克彦)ものの写楽とは別人という設定でした。
 写楽を主人公とした映像作品は意外なことに他にも複数あり、まず1958年の単発ドラマ『写楽の大首』。製作局が大阪テレビとのことで、ローカル局が!?と思ったら、TBS系の東芝日曜劇場の中の1作(第101回)だったそうです。東芝日曜劇場というと僕が物心ついた頃には現代劇ばっかりやってた印象だけど(よく祖母〈父方・母方ともに〉が観てたんで僕も観ることがあったが、向田邦子とかの印象が強い)、時代劇をやってた時もあったんですね。1958年ていったらテレビ黎明期の頃だろうか? 写楽役は岡田英次で、テレビドラマデータベースには「周囲に支えられながら、貧困にめげることなく自分の絵を描き続けた写楽の人生と友情。」「絵師東洲斎写楽と歌舞伎俳優市川高麗蔵(のちの五代目松本幸四郎)の友情を描いたドラマ。」とあります。写楽の正体云々は問題とせず、あくまで写楽は写楽として物語を作っているようですね。確かに正体探しのほうに比重を置いてしまうと物語の幅を狭めてしまう恐れもあり、それはそれで1つの正解ではあるでしょう。
 もう1作が1968年のNHK単発ドラマ『写楽はどこへ行った』。今回調べて初めて知ったんですが、このドラマはなんとDVD化されています。「NHKアーカイブス ドラマ名作選集 第2期 DVD-BOX 全5枚セット」という他の単発ドラマ4作品(うち3作は現代劇)とのBOXセットでNHKスクエアで販売中。Amazonにはバラ売りの単品も掲載されてますがそちらは品切れですね。NHKスクエアの説明によると、「江戸時代の町人文化が生んだ浮世絵。その代表的絵師の一人・写楽の謎に迫る野心的ドラマ。写楽にはあまりにも謎が多い。突如の登場に始って、独創的な役者絵の図柄、そして忽然と絶った消息。のちに「東海道中膝栗毛」をあらわす十返舎一九が写楽の謎を解き明かそうとする趣向を軸に、「能面師ではなかったか」という独自の設定を基に写楽の人物像を浮かび上がらせてゆく。」とのこと。原作は大岡信によるラジオドラマの脚本で、それをテレビドラマ用に改作したものらしい。写楽役は佐藤慶です。

 写楽が脇役として登場する映像作品もいくつかあり、そちらのほうはほとんどが史劇ではなく時代劇で、ネタとしては絶好の人物ということもあり描き方もかなり自由奔放。
 まず1話完結の連ドラ『江戸巷談・花の日本橋』第23話「浮世絵女房」(1971年、フジ)。演じてるのは長門裕之で役名は斎藤十郎兵衛。その妻として「おせい」(演:中村玉緒)という人物が登場するとのこと。映画『歌麿 夢と知りせば』(1977年)では葛飾北斎(演:菅貫太郎)と同一人物という設定で、連ドラ『必殺からくり人 富嶽百景殺し旅』(1978年、テレ朝)でも葛飾北斎(演:小沢栄太郎)と同一人物という設定です。写楽=北斎説か……って真面目な考察ではなく面白さ優先の設定でしょうけどね。同じ「必殺」シリーズでも連ドラ『必殺まっしぐら!』第7話 「相手は徳島剣山の暴力修験者」(1986年、テレ朝)では劇中で〈斎藤十郎兵衛=写楽?〉の表記があるそうで設定が違ってます(演:北見唯一)。ま、「必殺」ですから(笑)。
 連ドラ『びいどろで候 長崎屋夢日記』(1990年、NHK)では役名は写楽斎で、演じてるのはなんと阿木燿子。女性設定の写楽です。連ドラ『あばれ八州御用旅』第1シリーズ第11話 「東洲斉写楽を斬れ!」(1990年、テレ東)ではモロボシ・ダンこと森次晃嗣が演じてますが、なぜか役名は斎藤市兵衛と微妙に違ってます。てか、そんなことよりこのドラマは水野忠邦の時代が舞台らしいから、時代が全然合わないんですが。だから名前も微妙に変えちゃったのかな? 連ドラ『八丁堀の七人』第3シリーズ第3話「写楽殺し! 地獄絵図の女」(2002年、テレ朝。しかしすごいサブタイトルだな・笑)では役名が伊平次という架空人物(演:佐藤仁哉)らしく、斎藤十郎兵衛(演:片岡弘貴)も出てくるもののそっちは偽者という設定みたい。
 そしてようやく史劇に近い映画『HOKUSAI』(2021年)では久々に(?)写楽のままで登場(演:浦上晟周)。少し前にWOWOWで放送され、録画したまま放り出してたんで、そのうち観てみようと思います。

>映画『宝島』
 そのラジオがどういう文脈で語られたかわからないのでなんとも言えませんが、実は僕も観た時に沖縄が舞台の映像作品で沖縄出身の人がメインの役どころに1人もいないのは珍しいなと思っちゃったんですよね。今は沖縄出身の俳優もかなり多く、だいたい1人くらいは沖縄出身の人が入ってることが多いですから。僕も必ずしも地元の役を地元の人が演じなければならないとは思いませんが、「ウチナンチューの気持ちはウチナンチューにしか分からない」ってのも、ま、ある意味究極的には間違いではないでしょうし、大友啓史監督や主演の妻夫木聡も自分がやっていいのかとかなり悩んだとのことで、そういう感覚を持つこと自体はきわめて健全なことだろうと思います。あとクリンゴン星人やバルカン星人は実在しないんだから比較としては不適当だし、皮肉としても成立していないような。



#11550 
ろんた 2025/11/23 10:08
映画「ナイル殺人事件」(2020)

 言わずと知れたアガサ・クリスティの代表作『ナイルに死す』の二度目(?)の映画化。見る番組が無くてあちこち探していたらBSでやってた。前作「オリエント急行殺人事件」で制作が予告されていたのに初見。推理モノだけど1930年代が舞台なので、その辺で一言。
 今回は原作から「愛」というテーマを引っ張り出して映画化。ポアロの過去の悲恋物語を突っ込んでいて(原作シリーズと色々矛盾が出るけど、その辺は武士の情けで突っ込まない)、そのせいで尺が足りなくなったのか、キャラを減らしてニコイチにしたり解決編が駆け足になったりしている。ポアロのイメージが違っているのは前作で慣れてたんでアレコレ言う気はない。夜に放り込んだ死体が船の外輪に引っかかってグルグル……って物理的にありえないけど(夜は停泊しているから外輪に引っかかるはずがない)、その辺は恐怖感の演出ということで目をつぶろう。気になったのは……
(1)メインキャラクター(白人)のいとこがインド人。これまでは白人だったし、この映画でもインド人である必要がない。何がどうしてそうなったかの説明もなく、子供の頃から一緒だった、と写真が出て来るだけ。現代ならそういうこともあるだろうけど、1930年代ですぞ。
(2)「母が恋人との結婚を認めてくれない」と若い友人がポアロに愚痴るんだけど、その恋人というのが黒人娘。1930年代の上流階級のご婦人が、黒人娘と結婚する、と息子に言われたら、そりゃぁ反対するよ、人種差別的に!
(3)大恐慌で没落したというキャラが出てくるんだけど、これが十年以上前ということになっている。大恐慌は1929年。十年以上たってたら第二次大戦始まってるだろ。
(4)解決編で唐突に女性キャラ二人がレズビアンだと暴露される。テーマが「愛」なんでこのエピソードを創作したと思うんだけど、これストーリーと全然絡んでこないから単なるアウティングになってしまってる。
 気になってストーリーが頭に入らないところだけど、ヨーロッパにとっての古き良き時代を再現した1978年版も、デビット・スーシェのポワロが絶品なドラマ版も見ているので、ストーリーは承知しているから大丈夫……って、おい!(笑) (3)は単なる錯誤だと思うけど、(1)(2)(4)は、まぁ、色々と意識高い系に配慮したんでしょうな。それても面白くなるとは限らない。まったく新しいお話としてやればいいのに、といういつもの感想以上のものは出てこないのでありました。

>映画「宝島」の批評をラジオで聞いて色々考えてしまう
 ラジオでたまたま聞いた批評ですが「ウチナンチューの役をヤマトンチューが演じているのは……云々」という話題が出ていました。当事者の役は当事者の役者に演じさせろ、というのは、このところ意識の高い人たちから耳にします。だったらクリンゴン星人やバルカン星人は誰が演じればいいんですかね、と皮肉を言いたくなってしまいます。ちょっと前の「コーダ あいのうた」では、聴覚障碍者の役を当事者が演じていて偉い、みたいなこと言う批評家もいました。いやいや、「宝島」でもそうだけど、キャスティングが映画の評価にどう影響したかを論じるのが批評家ってもんじゃないですかね。関西人の役を関西出身者が演じることが多いような気がしますが、これはセリフ回しが不自然などリアリティの問題で意識の高い低いの問題ではない。映画「国民の創生」には黒人が出演しておらず、全員黒塗りの白人でしたが、十数年後の「風と共に去りぬ」には黒人が出演している。これはアメリカ人の意識が高くなったわけではなく、「国民の創生」が白黒サイレントなのに「風と共に去りぬ」がカラーでトーキ−だからでしょう。あそこに黒塗りの白人が出てきたらコントです。結果、マミー役のハティー・マクダニエルは黒人で初めてオスカーを手にすることになる。ウチナンチューの役をヤマトンチューが演じるのが気にくわない、というのは、ウチナンチューの気持ちはウチナンチューにしか分からない、という分断をもたらしかねないと思うんですけどね。

>「銀色の路(みち)−半田銀山(やま)異聞−」(安彦良和)
 個人的にノーマークだった「ヤングジャンプ」誌を立ち読みして見つけた。安彦さん、喜寿にしてYJ初登場。惹句は「レジェンドが歴史の悪役とされた五代友厚を描く! 軋轢、誤解、障壁を超えて銀山復興への路を拓く。熱さと温かさに満ちたストーリー。」 あらすじ(↓)は「アニメ&ゲーム by ORICON NEWS」より。
1874年(明治7年)5月。福島県の名家の当主であり、半田銀山請負人を務める早田伝之助は銀山の経営難に苦悩していた。かつては繁栄を極めた銀山も今や閉山し、政府から救いの手もない。苦肉の策として、伝之助は薩摩出身の商人・五代友厚に経営を引き渡す決断をする。しかし、身内の百合子をはじめ大きな反発を受ける。波乱の気配を残したまま、ついに五代が福島の地に降り立って…。
 短期集中隔週連載とのことだが、わたしが読んだのが17話。もう「短期」とは言えないけど、構想が膨らんだんだろうか。そのくせ、まだ単行本は出ていない。そして五代友厚についてろくに知らないことに気づく。とりあえず「歴史の悪役」というのは、開拓使官有物払下げ事件で黒田清隆とつるんでゴニョゴニョという話らしい。wikiを読んだだけだけど(汗)。ただ安彦さんの歴史ものって「さぁ、盛り上がってまいりました!」ってところで終了ってことが多い気がするんで、そこが心配。とはいえ、ブックオフで安彦さんの歴史ものを漁ってしまった。まだカートに入れていないけど。

>連ドラ『月影兵庫あばれ旅』(1989年、テレ東、演:芦田伸介)では主人公が信明の甥という設定とのことで
 これは南條範夫の原作(『素浪人月影兵庫』)にある設定のようです。このドラマの二十年ほど前に「素浪人月影兵庫」(主演:近衛十四郎,品川隆二/NET)というドラマがあったんですが、第二シーズンでコメディよりに振ったのが南條の怒りを買い、打ち切りになってしまいます。で、その最終回。エピローグでいきなり松平伊豆守の家来が登場し、殿が先月半ばに亡くなりました、と告げると月影兵庫(近衛十四郎)は、ワシが後を継がねばならん、とそれまで一緒に旅をしてきた焼津の半次(品川隆二)を置き去りに江戸へ旅立ってしまいます(<薄情だなぁ)。まあ、翌週には半次が兵庫と瓜二つの浪人(近衛十四郎)と出会い、「素浪人花山大吉」が始まるわけですけど(笑)。松方弘樹が月影兵庫を演じた「素浪人月影兵庫」(テレビ朝日)もあり。

>伊藤博文が「なぜわしが殺されなければならないのか」とつぶやいていましたが、
『「坊っちゃん」の時代』の何巻だったか。山県有朋をつけ狙っていたアンジュングンが、列車内で山県の側近である伊集院影韶警視に取り押さえられ、伊藤博文暗殺を唆されていました。この物語では伊藤と山県の対立に利用される存在として描かれています。



#11549 
つね 2025/11/20 23:10
アンジュングンハドコダ!

「ハルビン」8月に、やっぱりミニシアターで観ました。

ラスト近くのハルビン駅のセットや狙撃の瞬間はおおむね史実を再現したものだと思われ、やはりそこが見どころでしょうか。でも一瞬だし、上空からの視点になり、分かりにくかったのは残念。
背景説明はほとんどないので、劇中、自身の暗殺の動きを知らされた伊藤博文が「なぜわしが殺されなければならないのか」とつぶやいていましたが、「まったくだ」と思ってしまいます。韓国人には問答無用で日帝の悪の象徴で説明がつくのでしょうか。そういえば、伊藤は「我々はインフラを整備し、李朝時代から生活水準を引き上げるいい統治をしただろうが」みたいなことも言っていましたが、韓国映画でそういうセリフを聞くとは意外でした。
生粋の大日本帝国軍人が片言の日本語を話すのはご愛敬。ですが、敵役の少佐(だったと思う)が、呪文のごとく、あらゆる場面で出てくるたびに「アンジュングンハドコダ!」と叫んでいたのには笑ってしまいました。この少佐、防毒マスクをかぶって、毒ガスで安重根の同志を拷問するけれども、第一次世界大戦前にその装備はないのでは。時代考証に疑問。
とはいえ、あまり難しいことを考えなければ及第点だと思いました。



#11548 
バラージ 2025/11/19 23:38
史劇というよりスパイ・サスペンス

 ニューヨーク市長に当選したゾーラン・マムダニって、インドの映画監督ミーラー・ナーイルが母親だったんですね。あの『サラーム・ボンベイ!』や『カーマ・スートラ 愛の教科書』の人!?とちょっとびっくり。ナーイル監督、現在は結婚して米国在住なのか。
 そして相変わらず熊があちこちに出没中。映画『マタギ』の次に連想したのは週刊少年ジャンプに連載されていた高橋よしひろのマンガ『銀河 ─流れ星 銀─』。こうなりゃ犬たちに犬軍団を結成してもらって熊軍団と対決を……って結構誰もが考えつくネタだな。『銀河』って続編も何本も書かれてるんですねえ。

 さて、今年7月に日本公開されたものの地元には来なかった韓国映画『ハルビン』が、なんともうWOWOWで放送され、配信も同時に開始されたようです。ところがBlu-ray&DVD化は来年2月らしく、そっちは半年後という通常ペース。今後こういう配信と有料チャンネル放送は早めにされるのがスタンダードになるんだろうか?
 伊藤博文を暗殺というか射殺した朝鮮の独立運動家・安重根(アン・ジュングン)を描いた映画で、同じ題材で比較的有名な1979年の北朝鮮映画『安重根 伊藤博文を撃つ』(DVD邦題。VHS邦題は『安重根と伊藤博文』)は僕は未見。その他の安重根が出てくる映画やドラマも観てなくて、これが初めてです。
 うーん、期待してたのとなんか違いましたね。思ったほど史実部分が多くなく、むしろフィクション部分がやたらと多い。公式サイトに載ってる主要キャストの演じる人物で安と伊藤以外の6人のうち実在人物が2人しかおらず、残る4人は架空人物だから安と伊藤を含めた8人のうち半分が架空人物(特別出演のチョン・ウソンが演じてるのも架空人物なのでそれも含めると半分以上が架空人物)。そしてその架空人物の描写が意外に多く、物語でもわりと重要なポジションだったりして、なんだか歴史映画というよりスパイ・サスペンス映画みたいになってしまってます。
 単純に映画としての出来は悪くなく、暗く重苦しい雰囲気の社会派スパイ・サスペンスといった感じ(安重根らは別にスパイではないが、仲間の中に日本側に籠絡された密偵が潜り込んでいるという設定で、そいつをあぶり出すスパイ映画みたいなエピソードが物語で大きな位置を占めている)で、なんとなく中国のチャン・イーモウ監督のスパイ・サスペンス映画『崖上のスパイ』にも似てる。おそらくかなり大規模な予算をかけて海外ロケなどもされていて、日本映画ではあまり見ないような壮大なスケールの大作となっており、韓国映画にももうこんなに差をつけられたかとそこは痛感させられました。
 その分、歴史描写がやや希薄で、あまり歴史にくわしくない人には状況が今ひとつわかりにくいんじゃないだろうか。伊藤博文役のリリー・フランキーは特別出演に近く、そこまで出番は多くないし、抗日映画色もさほど強くありません。リリーさん以外の日本人役は韓国俳優が演じており、聞き取れないほどではないもののイントネーションが外国人のしゃべる日本語だからか、日本語字幕が付けられてます。配給会社はそこだけ付けるのは不自然と思ったのか、なぜかリリーさんの日本語にも字幕が付けられてました(笑)。あと、日本人が安重根を「アン・ジュングン」と言ってるんですが、当時は「あん・じゅうこん」と言っていたはず。ただ途中でそんなことどうでも良くなってくるくらいフィクション部分が多く、たとえ抗日映画色が強かろうとももっと史実に即した史劇映画が観たかったですね。うーん、『安重根 伊藤博文を撃つ』のDVD買おうかな?


>ゲッベルス映画など
 ゲッベルス関連の映画だと、ゲッベルスの秘書を務めたブルンヒルデ・ポムゼルが終戦から69年の沈黙を破り、撮影当時103歳にして初めてインタビューに応じたという2016年のドキュメンタリー映画『ゲッベルスと私』があります。日本では2018年に劇場公開され、DVD化もされてるようですが僕は未見。ちなみに僕がゲッベルスを初めて知ったのはかつて週刊少年ジャンプで連載されていた車田正美のボクシング漫画『リングにかけろ』(当時はゲッペルス表記)。連載時には読んでなくて、中学生の時にコミックスで読みました。ほぼネオナチといった感じのドイツJr.代表の一員としてゲッペルスはヒムラー、ゲーリングと共に登場してますが、あくまで名前だけで史実についての言及は特に無かったんで、後で個人的に調べて知ったんだったかな? その辺の記憶はどうも曖昧。総統と呼ばれるリーダーはスコルピオンという青年でその参謀役の青年がヘルガという名前で、その辺はナチスと関係なし。21世紀になってからの『リングにかけろ2』にもその息子たちが出てきて、だいじょうぶなのか?と思いましたね。
 ナチス・ドイツの反ユダヤ映画『ユダヤ人ジュース』は、僕は今年読んだ『戦争映画を解読せよ! ナチス、大日本帝国、ヒロシマ・ナガサキ』(永田喜嗣、青弓社、2024年)で初めて知りました。『ユダヤ人ジュース』は戦争映画ではないんですが、関連映画としてちょっとだけ触れられてまして。日本では公開されず、おそらく近年になって映画祭か何かで上映されたようですね(DVD化や配信もされてない)。ユダヤ系ドイツ人小説家リオン・フォイヒトワンガーの小説を正反対に改変(改悪?)したもので、すでに亡命していたフォイヒトワンガーは激怒したらしい。同じ小説は1934年にイギリスで原作に忠実に反ユダヤ主義への批判映画として映画化されたらしく、そちらは日本でも『武器なき戦ひ』の邦題で公開されているようです。

>観たい歴史関連映画
 チャン・イーモウ監督の『満紅江/マンジャンホン』、公開館が少ないなあ。今のところ観に行ける範囲で上映されません。チャン・イーモウだってのになぜ? 頼むよ、ほんとマジで。

>やっぱり◯曜時代劇?
 いやぁ、『べらぼう』、終盤になって、いくらなんでもなフィクションをぶち込んできましたね。ようやく歴史なんて蹴っ飛ばせ系の時代劇に戻ってきました(笑)。前も書いたけど、やっぱり問題は一橋治済をどうするかだったんだよな。失脚後の松平定信が蔦重の味方になるというのも予想の範囲内でした。
 さて、今回は曲亭馬琴の結婚話が描かれてましたが、『蔦屋重三郎の時代』(佐藤至子、角川ソフィア文庫)によるとやはり史実とはちょっと話が違ってます。1792年春に馬琴が蔦屋の奉公人になったことは書きましたが、馬琴の『吾仏乃記』には蔦屋の耕書堂に移り住んで1、2年を過ごしたある日こう思ったとのこと。滝沢家は代々武士の家で農家や商家になった者はいない。自分は5男だが不肖の身で町人にまじって暮らしながら、家の通字を名前に受け継いで興邦と称するのは身に過ぎたことだと嘆きつつも考えて、名前を解(とく)、字を瑣吉に改めた。その頃、蔦重は馬琴を、新吉原で茶屋を経営している裕福な叔父・尾張屋某甲の美貌の娘の婿にしようとしたため驚き、自分は貧乏な浪人だが乞盗の娘婿になって父祖を辱めるようなことはしないと不快に思ったが、言葉には出さずに退いて蔦屋を離れる気持ちになったとあるそうです。名を変えても武士の誇りを捨てていなかった馬琴にとって、遊廓内の茶屋の経営者は乞盗──乞食や盗賊の類いであり、そのような人々と関わりたくないと考える馬琴の中には、武士と町人を区別する厳然とした身分意識があったと思われます。翌1793年、馬琴は蔦重の店を辞して元飯田町の山田屋半右衛門の家に寄宿し、山田屋夫妻の媒酌で会田お百と結婚。家守の職を得ましたが、実際の仕事は下家守に勤めさせたそうです。山東京山の『蛛の糸巻』によると、馬琴は蔦屋に3年ほど奉公した後、飯田町仲坂の下駄屋で家主の後家に婿入りし、後に下駄屋をやめて手習いの師匠をする傍らで戯作を執筆したとあるとのこと。

>寛政の遺老の人たちが出てくる映像作品
 松平定信が失脚して寛政の改革が終わり、寛政の遺老の時代へ。そうか。東洲斎写楽の登場より定信の失脚のほうが先だったんだな。なんか映画『写楽』のおかげで定信が老中のうちに写楽が出てきたような気がしてたけど、あの映画は当然ながら写楽の絵が世に出るより前の時代から描かれてますもんね。そんなわけで寛政の遺老の老中たちが出てきた映像作品。そんなマイナーな人たち、映画やドラマには出てこねーだろ、と思ったらちゃんと出てくる作品がそこそこあるというのが江戸時代のこわいところ(笑)。鎌倉や室町じゃ、こうはいかないもんな。
 まず定信の後釜として老中首座になった松平信明。歴史映像名画座掲載作品では連ドラ『菜の花の沖』(演:大和田伸也)にのみ登場してるようです。しかし史劇系の作品はそれくらいで、後は当然ながら時代劇系の作品ばっかり。連ドラ『隠し目付参上』(1976年、TBS、演:三船敏郎)では主人公である隠し目付たちの頭目(演:三船・二役)が信明の異母兄という設定とのこと。また連ドラ『月影兵庫あばれ旅』(1989年、テレ東、演:芦田伸介)では主人公が信明の甥という設定とのことで、なんでまた信明みたいなマイナーな人が主要人物の作品が2つも……。他に単発ドラマ『隠密秘帖』(2011年、NHK、演:二階堂智)にも信明が登場したようです。それから本多忠籌は連ドラ『大江戸風雲伝』(1994年、NHK、演:早坂直家)と、前記『隠密秘帖』(演:谷川昭一朗)に登場。さらに『べらぼう』には出てきてないけど寛政の遺老の1人である牧野忠精はちょこちょこ紹介してる映画『のみとり侍』(2018年、演:松重豊)に登場しています。バカ殿と見せかけて実は……みたいな役でした。『月影兵庫あばれ旅』(演:成田三樹夫)にも登場してるようですね。



#11547 
つね 2025/11/16 04:57
ゲッベルス映画

5月に地元ミニシアターで観ましたが、今となるとあまり記憶に残ってません。
記録映像と映画とのモンタージュは印象には残っているのですが、編集技術や演技力は申し分がないものの、いかんせん本人がそれほど似ていないし(丸顔のゲッベルスはちょっと・・・)、白黒だったり画像が荒かったりする記録映像と、鮮明なカラーの本編とに落差を感じて頭の中で補正する必要がありました。少女が総統に花を渡すシーンの練習なんかは、「そういうことやってるんだ」と思いましたが。
この種のモンタージュで印象に残っているのは「JFK」。対象が60年代で映像技術が上がっているし、大量に残っているのでつぎはぎしやすかったのかもしれません。

『ユダヤ人ジュース』や、『コルベルク』はちょっと興味出ました。特に前者は存在すら知りませんでしたし。

ヒトラーとの関係で言うと、いかにゴマをするか、気にかけてもらうか(誕生日にどんなプレゼントをもらうか)に神経をとがらせていて、個人独裁の歪みを感じさせました。

この種のドイツ映画で記憶に残っているのは「ヒトラーのための虐殺会議」。「ヴァンゼー会議」を再現しており、民族浄化という事実が淡々とした会議で決められているという事実が恐怖を感じさせました。たしかBGMもなかったはず。



#11546 
バラージ 2025/11/15 23:17
重い重い史実

 今年の春先に地元で公開されたものの、どうしようかなと迷ってるうちに見逃してしまった映画『ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男』のDVDレンタルがいつの間にか始まっていたことに気付き、レンタルして観ました。えらく説明的な邦題ですが、原題を直訳すると「総統と誑かし(たぶらかし)」または「総統と惑わす者」というような意味になるようです。
 ナチス・ドイツ政権の宣伝大臣だったヨーゼフ・ゲッベルスの伝記映画で、オーストリア併合直前の1938年から、ヒトラーの自殺を見届けた後にゲッベルスが自殺した1945年までを描いています。冒頭から監督のメッセージや断り書きの字幕がいろいろ出てきて、それが結構長い。それだけゲッベルスやヒトラーやナチス政権を直接描くことにいろいろと慎重になる必要があったんでしょう。入念な史実のリサーチが行われたとのことで、実際の記録映像も大量に交え、ゲッベルスとヒトラーらナチスのプロパガンダが描かれていきます。その一方で性的に奔放で好色だったというゲッベルスの家族関係や私生活も詳細に描かれるのが興味深い。ヒムラーやゲーリングやリッペントロップといった他のナチス・ドイツ高官も登場し、彼らの勢力争いも含めた微妙な関係性なども描かれます。
 とにかく印象に残るのが、よくこれだけ残ってるなあというくらい記録映像が出てくることで、ある意味関心させられると共に戦慄もさせられます。本物のゲッベルスやナチスおよび当時のドイツの所業の映像が、フィクションというか俳優が演技してる本筋のシーンとモンタージュ的に融合されて映画に格段のリアリティを増してるんですよね。なお実際の記録映像には死体や処刑のシーンもあり(ゲッベルス一家の死体のシーンもある)、心臓の弱い人などは視聴に要注意。
 またゲッベルスが主導して製作された悪名高い反ユダヤ主義プロパガンダ映画『ユダヤ人ジュース』や、大戦末期の戦意高揚プロパガンダ映画『コルベルク』の映像なども出てくるのも興味深かったです。高官たちがユダヤ人の“処理”について話すシーンも多いんですが、淡々と事務的な会話が行われるのがなんとも恐ろしい。ドイツ映画らしく娯楽映画的要素は抑えられ、非常に重みを持って描かれる社会派歴史映画でした。やはり映画館で観るべきだったかな。


>『べらぼう』
 ついに松平定信が失脚。少し前の回で定信が将軍家斉に辞職願いを提出し慰留されてましたが、家斉との間に個人的つながりのない定信は何度も辞任願いを提出しては慰留されることによって、その信任を確認する必要があったとのこと。一種の瀬戸際戦術ですが、若年寄など幕府の他の役職の経験も無いまま落下傘的に老中首座となった定信には、老中であり続けるためにそのような手段が必要だったと考えられているようです。彼以前に将軍に重用された幕閣は、柳沢吉保にしても間部詮房や大岡忠光・田沼意次にしても、それぞれ将軍綱吉・家宣(家継)・家重・家重(家治)とは若い頃もしくは幼少の頃から親しく側仕えした仲で強い信任を得ており、それが無い定信はもともと政権基盤が弱く地位が不安定だったと考えられます。
 定信が老中辞任を受理されて実質的には罷免され失脚した理由ははっきりとはわからないようですが、一般的には家斉が父・一橋治済へ大御所の尊号を贈ろうとしたことに、尊号一件(尊号事件。光格天皇が父の典仁親王に上皇の尊号を与えようとしたが定信ら幕府の反対により断念させられた)との関連から反対したため家斉の怒りを買ったとされることが多いようです。もっとも定信罷免後も治済は大御所にはなっていないので、他の幕閣もそれについては定信と同意見だったと思われます。もともと厳格な定信と奔放な家斉の仲はしっくりいっておらず、また家斉が成人に達し親政を志し始めたことが契機とする見方もあるようです。ただ、やはりその後も政務は寛政の遺老と呼ばれる定信の同僚老中だった松平信明や本多忠籌らが行なっており、家斉の親政とはなっていません。当初は良好だった定信と信明・忠籌の関係が悪化していたことは事実のようで、急進的改革を志向する定信と穏健的改革を志向する信明・忠籌の路線対立から、専制的な定信への不満を信明・忠籌が持ち、家斉や治済に働きかけて定信罷免へと動いたとする説もあり、また定信とは違って信明・忠籌は改革よりも自身の地位や自家の家格の上昇が優先だったとする説もあるようです。ただ、いずれにしろ老中首座の定信を罷免するには将軍家斉の同意が無ければ難しく、やはり家斉の意志が最も大きかった可能性が高いでしょう。
 定信のロシア対策や尊号一件も描かれてましたが、蔦重とは直接関係のない事件のため端折り気味でしたね。まあ仕方ないんだけど、出版統制は蔦重にとっては重要なことでも、定信にとっては多数ある政策の中の1つに過ぎません。定信のロシア対策についてはこれまた史実と比べてちょっと首を捻らざるを得ない描写でしたが、くわしくは東洋経済オンラインにある濱田浩一郎氏の「大河「べらぼう」紛争か通商か、ロシア船来航に松平定信が採った「秘策」とは」をどうぞ。尊号一件も江戸に召還された2人の公家・中山愛親と正親町公明は、定信ら幕閣から数日に渡る厳しい訊問を受け、へろへろになって京に帰ったんではなかったっけ?
 ともかく定信が直面した政治課題は、窮乏する武士の救済、農業の復興と都市の飢饉対策、成長する都市経済と物価統制、来航する異国との接触の増加、朝廷との対立といった多岐にわたるもので、その多くは幕末まで続く幕府の政策の雛型となったと現在では考えられているようです。定信本人はもちろんそうは考えていなかったでしょうが、江戸時代の転換点になったというのが現在の定説になりつつあるようですね。

 それから歌麿が書いた有名な『寛政三美人』のモデルたちも登場。その中の1人「難波屋おきた」は溝口健二監督の映画『歌麿をめぐる五人の女』(1946年、演:田中絹代)にも登場してますが、設定や内容は全くのフィクション。
 また『べらぼう』では歌麿をゲイというか両性愛者として描いており、それがまあまあ評判になってるようですが、個人的には今ひとつしっくり来ません。歌麿といえばなんといっても美人画ですが、女性に強い興味がなければあんなに大量の美人画は書かないというか書けないんじゃないかなぁ。だからこそ前記『歌麿をめぐる五人の女』や、木村恵吾監督の『歌麿をめぐる五人の女』(1959年)、実相寺昭雄監督の『歌麿 夢と知りせば』(1977年)、オリジナルビデオ『歌麿おんな秘図』(1995年)などでも「女」が重要なテーマになってるわけで。『べらぼう』もそのあたりはマズいと思ったのか、歌麿が「きよ」(演:藤間爽子)に惚れて結婚し、彼女と死別して半狂乱になるエピソードも入れたりしてましたが、結局また蔦重に秘めた想いを寄せるゲイ路線に戻ってしまい、どうも今ひとつ描写に一貫性がありません。やっぱり歌麿を同性愛者または両性愛者に設定したのは失敗だったんじゃないかなあ。

>これから来るかもしれない歴史映画
 東京国際映画祭で『パレスチナ36』がグランプリを受賞。パレスチナ・イギリス・フランス・デンマーク合作映画で、「1936年の英国委任統治時代のパレスチナを舞台に、パレスチナのアラブ人たちがユダヤ人入植者たちと、英国植民地支配への反発から起こした民族主義的な反乱を描く」とのこと。これはちょっと観てみたい。

>『ソード・アイデンティティー』
 前回書いた「明初」は間違いで正しくは「明末」でした。すいません。倭寇と同時代の話ではなく、かつて倭寇を退けたという「倭寇の日本刀を改良した長刀」を主人公が使ってるってだけの時代劇で、史実とはほとんど関係ないみたいです。



#11545 
ろんた 2025/11/07 22:30
『戦国怪獣記ライゴラ(3)』(志名坂高次,星野泰視,丸山浩/YCコミックス)

 徐々に読書欲が復活。といっても読んだのは「三毛猫ホームズシリーズ」の最新文庫本。その後「シャム猫ココシリーズ」に手を出すが、在庫が出るたびに買っているので(コンプリートまであと二冊)、どれを読んでいたか分からなくなる(汗)。というので読んでいなかったのが確実な"都会編"の残り一冊を読み始めるのでありました。

『ライゴラ(3)』は桶狭間の戦いの続き。謎の男(笑)・木下藤吉郎の策で、要塞化された高台から今川義元が顔を出す。するとそこにライゴラが現れ、今川軍を蹂躙。これに乗じて織田信長は「義元を討て」と下知する。義元は鎧武者数人を貫く大弓でライゴラを攻撃するが通ぜず、かえって怒りを買い、今川軍は壊滅。だがライゴラは織田軍をも襲い信長に迫る。そこに飛び出してきた十郎太が巨大な鉄杭を打ち込む。跳ね返されたものの、ライゴラは動きを止める。しかし直後、ライゴラの呼んだ雷の衝撃で全員気絶。ライゴラは姿を消す。その後、義元は毛利小平太(?)に討たれ、桶狭間の戦いは織田方の勝利に終わる。木下藤吉郎は織田家に仕官。十郎太も信長直属の雷強羅(ライゴラ)討伐隊隊長・木浪獣郎太として信長に仕える。
 十年後、包囲網に苦しむ信長は姉川の戦いに勝利したものの、小木江城を伊勢長島一向一揆に落とされ弟・信興が自害。しかも一揆軍にライゴラが加わっていたという。さらに武田信玄が上洛を開始。浜松城を迂回する武田の動きに、浜名湖の水運を抑えられれば兵糧攻めにあう、と徳川家康は籠城策を放棄し出撃(<この辺新解釈?)。だがそれこそが信玄と本願寺顕如の策だった。背後を突くはずが待ち伏せされ、顕如が呼び寄せたかのようにライゴラまで現れる。壊滅する織田・徳川軍。だがライゴラが最後に放った雷により、林の中に後退していた信玄も倒木の下敷きになり死亡する。その死は三年間秘匿され、物語は長篠の戦へ。
・厳島の戦い、桶狭間の戦いと来たんで、次は河越城の戦いかと思ったら、順当に時代は下る。今後語られることもあるのか?
・五年間、知恵を絞り体を鍛え武器を備えたのに通じなかった、と絶望する十郎太。だが信長は十郎太の攻撃で剥がれ落ちたライゴラの鱗を示し「雷強羅を討つ」と宣言。「(そのために)新しい国、新しい武器、新しい戦い方、ワシはそれを手に入れる!!」という信長に鼓舞される十郎太。つまり信長の後半生はライゴラとの戦いということになるのであった。長篠の戦いの野戦陣地構築、大量の鉄砲、馬防柵もライゴラ対策だったりするらしい。
・千里眼を持つという本願寺顕如。ライゴラを操れると言っているが怪しい。ライゴラの意識を感じ取れる程度か。それにしても雷強羅様なる仏像を作って拝んでいるのは教義的にまずいんじゃないか。本願寺に怒られそう(笑)。

>「丹下左膳 大岡越前外伝」
 その後、キャストと登場人物の紹介が発表されると、原作からかなり改変されているらしいのが明らかに。正義の剣士・諏訪栄三郎は、茶屋娘・お艶と通じながらも道場主の娘・弥生を狙うかなり生臭いヤツに。悪玉の鈴川源十郎がお艶と乾雲丸・坤竜丸を狙う色と欲の二刀流なのは変わらず。原作では栄三郎に好意を寄せる弥生だが、ドラマでは生臭い栄三郎を拒絶して自ら道場を引き継ごうとする。左膳の助勢をする藩の剣術指南役・月輪軍之助が、江戸留守居役・疋嶋外記の配下となって左膳と敵対する……といった具合。もっとも映画化ドラマ化にあたっては、かなりの改変があることが多いらしい。甚だしいのは丹波さんの左膳。左膳は右目と右腕を斬られているんだけど、こんなんじゃ殺陣ができない、と左側にミラーリング(?)されている。

>『新九郎、奔る!(21)』(ゆうきまさみ/ビッグスピリッツコミックスSP)
 なんか10月中に出ていたはずが全然気づかずようやく購入。
 新九郎を訪ねてきた僧・伊玄こと長尾景春の目的は、古河公方&扇谷定正VS山内顕定のどちらにつくか、今川家の去就を確認するためだった。もちろん景春としては、古河公方・扇谷定正方に引っ張り込みたいわけだけど。さらにつると弥太郎(異腹の兄)に荏原から追い出された格好の九郎(掃部助三男)も新九郎を頼ってくる。一方、河内では足利義材と畠山左衛門督政長が正覚寺に籠城。細川軍が攻め立てるが苦戦。だが紀州からの援軍一万が到着すると、めし(洞松院=細川政元の姉)の献策で日和見を決め込んでいた赤松左京大夫がこれを阻むべく参戦。ついに正覚寺は落ち、畠山政長切腹、葉室大納言光忠斬首、義材は京で幽閉。かくして明応の政変は終結するが、超ポジティブな義材は、嵐の夜をついて流刑前に逃亡。ともあれ新御所様=清晃=義遐=義高による茶々丸討伐が始まるかと思いきや、政元と貞宗の、名分がない、という反対で頓挫。それでも弥次郎(新九郎の弟)の裏工作で御内書が発行される。これで一応、名分は整った。茶々丸と国人衆の間がしっくりいってないところに「千鶴姫は駿河で御無事」(=義高様の妹君・千鶴姫は今川家で養育しておりますぞ=千鶴に婿を取って後を継がせるのもありじゃね?)と揺さぶりをかけたり、何人もの有力国人を調略し協力を取り付けたり、出兵に都合のいい興国寺に兵を入れるべく葛山氏に妹・阿茶を嫁がせようとしたり、新九郎は精力的に動き始める。
・大道寺太郎の伊玄こと長尾景春の評が「関東管領絶対殺すマン」(笑)。
・新九郎を頼ってきた九郎(初対面)の感想=(弥太郎はこの人の子だ。ちっくしょ〜〜……)(笑)。
・政長が死ぬというのに逃げられない、とあえて捕まる足利義材。敵将の京兆家内衆・上原元秀に「大将たる者、明日のためにこそお逃げになるべき時がございます」と諭され「……そうか。では次からそうしよう!」と返す。どんだけポジティブなんだ(笑)。あと政元に、夕日に向かって走ろう、と誘って断られるという回想シーンもあり。
・政元と貞宗の反対にもかかわらず御内書が発行されるのは、しくじったら新九郎の暴走にしようと弥次郎が献策したから。こいつも順調に伊勢家の人間になってきた。
・富士遊覧を口実に駿河に連れてきた阿茶に「かような鄙の地のお方に嫁ぐのはいやでございます」「新九郎様から兄らしきことをしてもらったことがありませぬ」「(どうしてもというなら)尼になりまする」と拒絶され、姉・北川殿にも「たとえ妹とはいえ、騙して便利使いするようなことをすれば、身内の信頼もなくすわよ!」と叱られる。齢三十八にして女心のわからない新九郎であった(笑)。
・興国寺に出かけた折、葛山氏尭(うじたか)の娘・初に一目惚れされちゃう新九郎。この人が側室になって三男四男を産むっぽい。それで氏尭の協力を取り付けるのか。葛山氏は堀越公方家の影響下にあって非協力的で、新御所様に叱られるという説もあるみたいだけど。二人の仲立ちを龍王丸がやって、今川から兵を出すことになる?
・興国寺は文字通り寺で、今川義元が移転させて築城という説を採用? 寺に兵を入れて拠点化? 興国寺城跡は愛鷹山の裾野で高台なんだけど(沼津市の史跡で公園化されている)、寺は平地にあるっぽく描かれている……とかいうと面倒臭い奴になってしまうか。
・前巻で触れた酒造の話。江川英竜の先祖が北条家に仕えつつ酒造をやっていて、それが北条家の進物になっていたという話を思い出した。そっちと関係してくるのか?
・カバー裏にあるあらすじが役に立たず、自分で書いたら色々省略しているのに長くなって困る。やっぱり室町時代ってのが複雑怪奇なのが悪いんだな、戦前の欧州情勢みたいに。といいつつ「力の平行四辺形」なんて言葉を思い出したりして。エンゲルスだったか? っつ〜か、その複雑怪奇なのをすらすら読ませてしまう、ゆうきまさみ先生が凄いんだなぁ。

>『真説 豊臣兄弟とその一族』(呉座勇一/幻冬舎新書)
 e-honから「こんな本が出るんで予約しましょう」とメールが来て、リストに入っていた。内容は「出版社・メーカーコメント」から引用。

通説を打破!たった二代で滅びた栄華と衰退の真相農民から大出世を遂げた天下人として知られる豊臣秀吉。しかし、彼とその一族の実像は、驚くほど謎に満ちている。本書は、貧しい百姓出身説の真偽、人たらし神話が生まれた本当の理由、右腕として活躍した秀長の裏の顔、ねねと淀殿の不仲説、秀次事件に隠された真実など、豊臣家にまつわる定説を、最新研究をもとに徹底検証。さらには、朝鮮出兵の誤算、大坂の陣の舞台裏などの歴史的事件の真相にも迫る。豊臣家の知られざる姿を暴きつつ、「なぜ天下を極めた一族が、たった二代で滅んだのか?」という問いに答える1冊。

 当然ながら「豊臣兄弟!」の関連本。そういえば、この間立ち読みした『信長を殺した男〜日輪のデマルカシオン〜』(明智憲三郎,藤堂裕/別冊ヤングチャンピオン)でも、とっくに亡くなっているはずの小一郎秀長を妙にフィーチャーしていたなぁ。

>「ソード・アイデンティティー」
 KINENOTEの「解説」には、なぜか「1604年、明代・中国」と特定されていますね。元はディスクのパッケージかな。大陸との関係改善の直前? この時代で「倭寇」というと秀吉の朝鮮出兵のような気もしちゃうけど。そして一件だけあるレビューのタイトルが「いろんな意味でよくわからない」(笑)。



#11544 
バラージ 2025/11/04 20:44
失われた30年─何かが揺れ、何かが震える

 我が地元では県庁所在地のど真ん中にまで熊が出没しております。今回の熊騒動で子供の頃にテレビ放送で観た映画『マタギ』を思い出しちゃいましたね。あれは面白い映画でした。

 映画『アフター・ザ・クエイク』を観ました。NHKが村上春樹の連作短編集『神の子どもたちはみな踊る』を全4話でドラマ化した『地震のあとで』を2時間に再編集した映画です。
 内容についてはドラマの時にも書いたんで(#11500、#11501、#11502、#11505)細かくは繰り返しませんが、映画はドラマの再編集でありながら再編集感や総集編感が全く無いことに驚きました。最初からオムニバス映画として作られたような非常に自然な作品になっています。おそらく企画当初から映画として公開することも考えていて、映画として不自然な総集編感が無いように脚本も練りに練られて考えられていたんでしょう。映像も昔ならテープとフィルムの違いによる違和感があったかもしれませんが、今はテレビも映画もデジタル撮影のため全く変わりが無く、ドラマの再編集や総集編ではない、あくまで単独の「映画」として観ることができました。ドラマを観た時には原作との違いにやや違和感を感じるところもあったんですが、ドラマというワンクッションを置いたことで、またドラマから時間が経ったことで、原作から離れて1つの独立した映像作品として消化することもできました。
 そして改めて1本の映画として連続して観ることによって、1話ごとに観ていたドラマの時とは異なる印象の作品ともなっています。たびたび出てくる地下鉄には阪神・淡路大震災と同じ年に起こった地下鉄サリン事件の象徴的な意味合いも込められているのではないか? また1995年、2011年、2020年、2025年と時代を連続して観ることによって、何かを失い続けた日本の30年の時代と歴史をリアルな感触として感じることができます。阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件から、東日本大震災、コロナウィルスの世界的流行、そして現在。打ち続く災い。やはりあの30年前は現代日本史の転換点だったのかもしれません。
 役者陣も全員が素晴らしいけれど、個人的にはまさに村上春樹小説世界的ミューズを演じた唐田えりかと北香那の2人、そして鳴海唯の演技と存在感が出色。大友良英の音楽がまた村上春樹の小説世界を絶妙に表現していて素晴らしい。おそらくこれまでの村上春樹の小説の映画化の中でも最も村上春樹小説世界の雰囲気の再現に成功した映画ではないでしょうか。最初にドラマで観た時も良いドラマだと思いましたが、映画になって再び観ると、さらに素晴らしい出来だと思えましたね。
 「クエイク」には「地震」という意味の他にも「揺れる」「震える」という意味もあるようです。主人公たち(岡田将生・鳴海唯・渡辺大知・佐藤浩市)の内面で、あるいは我々の内面で、何かが揺れ、何かが震えた後で、彼らは、あるいは我々は、あるいは世界は、何か変わったのか? あるいは変わるのか? そのような問いかけが含まれたタイトルのようにも思えました。傑作です。


>倭寇関連映画?
 『ソード・アイデンティティー』(原題:倭寇的踪迹、英題:The Sword Identity、2011年)という中国映画を発見。というか邦題はずっと前から知ってたんですが、原題を知らなかったもんで「倭寇」という単語が入ってることに今さら気づきました。とはいえ結論から先に言うと内容は倭寇とほとんど関係ないみたい。原題を直訳すると「倭寇の痕跡」となるようで、舞台は明初の時代、主人公が倭寇の日本刀を改良した長刀を使っており、かつて倭寇を退けたその長刀を世に広めるために戦う、みたいな映画らしい。ただ、そんなストーリーはどうでもいいくらいシュールというか変な映画だとのこと。そもそも英題(&邦題)の「刀のアイデンティティ」って何だよ(笑)。あ、僕は未見です。

>さらに歴史関連映画
 よど号ハイジャック事件を映画化した韓国映画『グッドニュース』がNetflixで配信されたとのこと。事件をそのままリアルに再現するのでなく、様々な脚色を加え、コメディタッチのフィクションとして作ったらしく、ソル・ギョング、ホン・ギョン、リュ・スンボムらが出演する他、日本からも山田孝之、椎名桔平、笠松将らがキャスティングされたそうです。ま、個人的にはNetflix配信じゃ観れんけれども。



#11543 
ろんた 2025/10/26 12:10
姓(シェイ)は丹下、名は左膳(シャゼン)

 前も書いた気がしますがこれは大河内伝次郎の名台詞。NHK−BSで「丹下左膳 大岡越前外伝」が放送されるそうです。"大岡越前外伝"とあるのは、原作がもともと"新版大岡政談"と銘打っているのと、やはりNHK−BSで放送している「大岡越前」とコラボしていて、高橋克典(大岡越前役)も出演するから。左膳役は森山未來。ビジュアルイメージを見ると線が細すぎる感じがするがどうなんだろう。というのも今回の乾雲坤竜編での左膳は徹底した悪役だから。主命とはいえ関の孫六作の乾雲丸、坤竜丸の二刀を奪うべく、町道場に殴りこんで道場主や門人を斬りまくる。高弟・諏訪栄三郎に阻まれて乾雲丸のみを手に逃走するものの、この乾雲丸は坤竜丸と離されると妖気で人を狂わせるという妖刀。おかげで左膳は辻斬りを繰り返し、坤竜丸を手にした栄三郎に加えて大岡越前まで敵にまわすことになる。しかも道場主の娘・弥生まで手に入れようとして……というとんでもないヤツ。しかし、このダークヒーローが当時(昭和2年)の読者の人気を呼び、諏訪栄三郎と鈴川源十郎という主役級の二人を押しのけ、左膳は人を斬って斬って斬りまくったあげくに大海原に消えて生死不明。映画も大ヒット。タイトルも「新版大岡政談 鈴川源十郎の巻」だったのが『丹下左膳 乾雲坤竜の巻』と変更されたのでありました。続編の『こけ猿の巻』『日光の巻』では主人公に据えられて人情味のあるキャラになっているけど。確か2004年の映画(豊川悦司主演)とドラマ(中村獅童主演)は、とっつきやすさからか、この続編の方が原作のはず。っていうか、わたしの持っている光文社文庫版は初版が2004年なので、この映画化ドラマ化を当て込んで出版された模様。さて、今回のドラマの方に話を戻すと、隻眼だった左膳は乾雲丸を奪ったものの道場での戦いで右腕を失い、櫛巻きお藤とつづみの与吉の介抱で命を拾うらしい。辻斬りはやらかすのか? 左膳、栄三郎、源十郎、弥生、お艶、櫛巻きお藤といった複雑な恋のさや当てはどうなる。続編は制作されるのか?

>「キイハンター」
 全然歴史ものでも時代ものでもないんだけど、J:COM BS(BS260ch)で「キイハンター」を見たりしております。なんと白黒。これは知らなかった。当然ながら千葉ちゃん、野際さん以下、みんな若い。でも丹波さんと仲谷さんはあまり印象変わらないな。事務所が霞ヶ関ビルにあったり、ちっちゃいオープンカーだなぁ、と思ったらZじゃないフェアレディーだったり、野球場で人目を忍んで打ち合わせの場面では、巨人対大洋の試合やっててピッチャーが堀内だったり。なんか高度成長期の資料映像を見ている気分(笑)。ほかにも近藤正臣の神津恭介シリーズとか、古谷一行の盲人探偵シリーズとか、藤田まことの京都殺人案内シリーズとか、わたしのツボを突いてくるなぁ、J:COM BS(BS260ch)。

>「殺っちゃえ!! 宇喜多さん」(重野なおき)
 リイド社のHPからCOMIC BORDERというサイトへ移動。初回から数話と単行本未収録分が読めるので、『ビジャの女王』を読んでいたらみつけたマンガ。重野なおきは、ヤングアニマル誌で『信長の忍び(1)〜(23)』(白泉社 (23)=最終巻は10月末日発売)を連載していた人で、戦国関連の作品が多い。作風は四コマ漫画の連作でドラマを見せていくというもの。これも戦国時代の話で、コミック乱ツインズ誌で連載中、単行本はリイド社から2巻まで刊行(以下続巻)。"宇喜田さん"は宇喜田直家のこと。作品紹介では「謀略、謀反、暗殺――。 戦国三大梟雄の一人として知られる最恐の大名・宇喜多直家は、いったいどのようにして生まれたのか。 謀将の生き様を描いた、重野なおきの新シリーズがコミックボーダーに降臨!」となっている。そういえば「愛に燃える戦国の女」(TBS)というドラマでは山城新伍が演じてたな、宇喜多直家。もうひとつ、『信長の忍び』がアニメ化されていたの知らなかった。

>手鎖五十日
 小説版『写楽』でも蔦重は手鎖五十日に処せられてます。五十日目の描写によると──
・正妻さとだけでは手が回らないので、妾みよを呼び寄せた
・さともみよも寝起きの顔を見せないようにしつけられている
・手鎖のせいで着物が着替えられず、風呂も入れない
・下帯だけは、朝夕、みよが替える
・手鎖のせいで手首の皮膚がすりむけ爛れるので、間にみよが懐紙を挟む
・みよは手水についていってふさ楊枝で歯を磨き漱ぎをさせる
・食事はさとが右手、みよが左手の役をして食べさせる
──となっているのですが、これ、無かったことなのかぁ。小説家って油断ならないな(笑)。

>拷問
 時代劇でもお白州に偉い人が来るときは、襖の向こうで聞き耳を立てて覗いたりしているもんですが──。やっぱり蔦重対定信の図式を作りたいのかな? 拷問については、お定め書き通りに運用されているならば、行われる罪が決まっていたそうです。しかも評定所にお伺いを立てなければならなかったとか。こっそりやっていたとしても「わたしが書きました」「わたしが出版しました」「わたしが許可しました」って出版物に書いてある=白状しているも同然の人間には拷問しないでしょう(笑)。これも対立図式を作るためかな。



#11542 
バラージ 2025/10/22 21:24
結局観た戦後沖縄史映画

 いまいち観に行く気が起きないとか言っときながら、映画『宝島』を観てきました。なんか無性に映画館で何か映画を観たくなりまして。たま〜にそういう時があるんですよね。
 大友啓史監督が米軍統治下の戦後沖縄を舞台とした真藤順丈という人の小説を映画化したとのことで、主演は妻夫木聡、共演が広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太。1952年、米軍統治下の沖縄が舞台で、米軍基地から盗んだ物資を住民に配っていた「戦果アギヤー」の青年たちがある夜、米軍に発見されカーチェイスの末に命からがら逃げのびる。散り散りになって逃げた彼らだったが、彼らが憧れていたリーダーがその夜から姿を消す。その後、リーダーの親友は刑事に、弟はヤクザに、恋人は教師になり、それぞれにリーダーの行方を探し続けていた。やがて米軍もリーダーが手に入れたある“モノ”の行方を追って動き出し、彼らは数々の時代を経て、1972年のコザ暴動へ……といったストーリー。
 3時間の映画ですが観てて長くは感じませんでした。もっとも僕はつまらなければ1時間半でも長く感じ、面白ければ4時間でも長く感じない人間なので他の人の当てにはならないと思いますが。正直言って前半は原作を省略したっぽいところと琉球方言のためにちょっと理解しづらいところがあり、これはいまいちかなと思ったんですが、後半になるとようやくエンジンがかかって面白くなりました。まあ後半でも琉球方言がところどころわかりにくくて字幕が欲しかったんですが、映像作品では初めてと思われるコザ暴動のシーンをあれだけのスペクタクルで描いただけでも価値のある映画でしょう。他にも米軍機の小学校墜落事故も宮森小学校事件という実際に1959年に起きた事件らしい。この映画で描かれてる問題は今現在と地続きであり、実はあの頃と何も変わっていないということを思わせてくれる。そんな映画でした。


>SHOW by ショーバイ〜!!(古い)
 『べらぼう』、ついに若き日の曲亭馬琴と葛飾北斎が登場しましたが、馬琴がえらく居丈高な人物になってましたね。さすがに実際の馬琴はあんなに居丈高な人物ではなかったようです。1790年の秋に馬琴が山東京伝を初めて訪ね、弟子入りを申し込み断られたエピソードについては以前書きましたが、京伝の弟の山東京山の随筆『蛛の糸巻』には、馬琴に向かって京伝は「戯作は弟子といっても教えるべきことは1つもありません。だから自分をはじめ、古今の戯作者に1人も師匠はいません」と言ったとあり、また京山が鈴木牧之に送った『鳴蛙秘抄』という文章には「これまで入門を求めてこられた人はたくさんいましたが、師弟の約束をしたことはありません。なぜなら、従来の戯作というものは、師匠として教えるべきものがないので、弟子になって学ぶべき道もないからです」と言ったとあります。弟子入りを断られた馬琴は、「それならば弟子とはお考えにならなくてかまいません。私からは師匠と存じて、親しくさせていただきたいと思います」と言ったとのこと。話し込んだ馬琴が帰っていった後、京伝は京山に「今の男は少しく才気のある者だ。また来たら、居留守を使わずに2階に通しなさい」と言ったそうです。
 馬琴はその年のうちに執筆に取りかかり、翌1791年春には黄表紙『尽用而二分狂言』を和泉屋市兵衛から出版。前年の1790年秋に書き上げて京伝に見せたところ、京伝が和泉屋に推薦して出版されたと馬琴自身が『近世物之本江戸作者部類』に記しているとのこと。京伝は1789年刊行の『黒白水鏡』の挿絵を担当して過料(罰金刑)の処罰を受けたことから戯作をやめたいと悩み、執筆の意欲がわかず和泉屋に新作を渡せなかったため、代わりに馬琴の著作を推薦したと考えられています。
 1791年秋に馬琴は家が洪水の被害にあい住めない状態となって途方に暮れていることを京伝に相談すると、京伝宅にしばらく居候することを勧められ、京伝の内弟子のつもりだった馬琴は喜んで居候することにしたそうです。この年、京伝は洒落本3冊の執筆で手鎖50日の処罰を受けていましたが、それが解けた初冬の頃にはさっそく蔦屋と鶴屋が翌春に発売する草双紙の原稿を求めてきました。懲りない人たちですが、まあ版元は本を売り出さなければつぶれてしまうので当然のことでもあります。京伝はこれまでの付き合いもあり断れなかったものの執筆を始めるには遅い時期で、また謹慎の気持ちがあり執筆意欲も失せていたので、馬琴が代作をしたり京伝の考えた趣向をもとに著作を助けたりして、いくつかの著作を1か月ほどでまとめ、翌1792年春に出版できたとのこと。この年に発売された京伝の『梁山一歩談』『天剛垂楊柳』は中国の『水滸伝』を絵入りでわかりやすく抄録したもので、馬琴によると『天剛垂楊柳』はもともと蔦重のアイデアで京伝に書かせたもののようです。『水滸伝』ならお上に睨まれる心配も無いでしょうし、蔦重も当然ながら店の経営をきちんと考えていたことがわかります。また寛政の改革の影響でもないでしょうが、この頃から和算書・暦書・仏書・文法書・国学書といった「お堅い本」が町人の間でも売れ始め、蔦屋はドラマでも描かれていたように前年からそれらを扱う書物問屋に加入していましたが、これも経営の安定化をはかったものと考えられています。エロ本から赤本へみたいな極端な転向のように見えますが、蔦重のような商売人にとっては「売れる本」という意味では同じもので、別に転向でもなんでもなかったんでしょう。
 同じ1792年春、ドラマにもあったように馬琴は蔦屋の奉公人になります。京山の『蛛の糸巻』によると、京伝を訪ねてきた蔦屋は「このあいだ番頭が使い込みをしたので暇をやり、帳場があいていて店の様子が良くない。見れば居候の男は年恰好も良いし、帳面をつけるだけでいいので雇いたい」と言うと、京伝は「酒は飲まない。読み書きはできる。著作の気もあるし、ちょうどいいでしょう。実直であると確かに請け合うことはできないが、当人に話してみましょう」と答え、蔦屋が帰った後に馬琴に話すと、戯作者になりたくて京伝をうらやんでいた馬琴は喜んで奉公人になったとのこと。
 また、やはりドラマで描かれたように、この年の5月に京伝は書画会を開き、その収益に借入金を加えたものを資金にして、翌1793年春に京橋銀座一丁目に店を開きます。京伝がデザインした紙製の煙草入れやキセルを商う店で大繁盛したとのこと。こうして京伝は念願の家業を得ることになりました。



#11541 
バラージ 2025/10/18 09:23
ついに映画『写楽』の時代に突入

 『べらぼう』、まさかの老中首座・松平定信が直々にお白州に登場(笑)。いや、さすがにあんな偉い人が奉行所のお白州に来ることは実際にはもちろんないでしょうけどね。総理大臣とか最高裁長官がわざわざ裁判所に来ないようなもんで。そもそも定信のような首脳は当然ながら全体的な政策や方針を決定するだけで、個別の案件については奉行所などの下部組織が対処したはず。でもまあ、そうでもしないと蔦重と定信が顔を合わせる機会って無いだろうし、ドラマ的には仕方ないか。あと蔦重が拷問受けたりしてたのもフィクションというか想像というか。まあ受けてないという記録もないんですが、拷問は自白の強要のために行われるはずで、蔦重の場合は自白なんか無くても証拠物品がありますし、たぶん拷問まではされなかったんじゃないかな。ちなみに北町奉行の初鹿野信興は映画『写楽』にも出てきたらしいけど覚えてないなあ(演:石田登星)。

 史実での蔦重および山東京伝への処罰については、曲亭馬琴の『伊波伝毛之記』によると、「公に洒落本が禁じられ、草双紙であっても、博奕や遊里、遊客のことを書き表すことは許されなかった。しかし、耕書堂蔦屋重三郎は利欲に迷って禁を犯し、京伝に勧めて2種の洒落本を書かせ、翌春に出版する際に、袋の表に「教訓読本」と書いて売り出した。(中略)作中の人名は、鎌倉将軍の時代のものにしてあるけれども、実際の内容は、もっぱら現代の遊里の様子を細かく書いたものであった。この2つの作品はよく売れて、版元は多くの利益を得た。」とあり、まあ実際にはそういう本が売れるという誘惑に負けて、御禁制を承知の上でなんとかお上をだまくらかして売り抜けようとしたという、なんつーかその今で言う無修正エロ本みたいな話というかなんというか。まあ、そんなの日曜午後8時のドラマじゃ描けないわなあ。てか袋の表に「教訓読本」と書いて売るって、そんなんどう考えたってバレるだろと思うんですが。実際あっさりバレちゃったんだし。
 さらに『伊波伝毛之記』によると、「寛政3年の夏の頃、例の作品のことで、銀座二丁目京伝こと家主伝左衛門の息子の伝蔵、通油町善右衛門店の重三郎、ならびに地本問屋行事2名を、町奉行所へ召させられ(初鹿野河内守殿の御担当)、禁を犯して洒落本を出版し、かつ、これを「教訓読本」と唱えて、昔の人名を借りて現代の風俗を書き表したことは不埒であるとして、数日お取り調べがあった。一同、売り上げによる利益にこだわり、御下知を忘却した不調法の罪に平伏したので、しばらくあって、それぞれに罰が仰せ付けられた。作者京伝は手鎖、50日で赦免。版元重三郎は財産の半分を没収。地本問屋行事2名は同じ仕事に就くことを禁じた上で追放。『錦之裏』『仕懸文庫』とそれ以前に出版された洒落本も、みな絶版を命じられた。地本問屋行事2名には、蔦屋からひそかに支援金を贈った。蔦屋は太っ腹の男なのでさほど畏まった風ではなかったが、京伝は深く恐れて、それからは謹慎第一の人となった。」とのこと。以後京伝は2度と洒落本を執筆せず、黄表紙はその後も書いたものの遊廓や遊女を題材としたものから作風を大きく転換させています。
 なお蔦重の処罰については、没収されたのは財産の半分ではなく年収の半分だという説もあり、また作者未詳の『山東京伝一代記』では重過料(重い罰金)とあるらしく、そこまで重いものではなかったという説もあるようです。そういえば映画『写楽』では蔦重も手鎖の処罰にされてたような。たぶん絵的にそのほうがわかりやすかったからでしょうね。おかげで僕は『べらぼう』が始まっていろいろ調べるまで、蔦重も手鎖の刑に処されたと思っておりました(笑)。蔦重もまた当然ながらそれまでのような本は出版できないため、商売の方向性を転換させていくことになります。

 それからドラマでは歌麿の妻が病死してましたが、史実では歌麿の妻については一切不明で、そもそも妻がいたかどうかもよくわからないようです。歌麿の妻は映画『歌麿 夢と知りせば』では「お奈津」の名で三田和代が、ドラマ『だましゑ歌麿』では「おりよ」の名で鈴木杏樹が演じたとのことですが、もちろんどっちも内容も含めてまるっきりのフィクション。
 また蔦重が処罰された少し後あたりから歌麿は他の版元で描くことが多くなり、蔦重とは疎遠になっていくらしいんですが、理由は不明で諸説あるようです。処罰された蔦重に付いているのは危険だと考えた、逆に処罰に屈した蔦重に失望した(これはさすがに無理があると思う)、両者の絵画観・芸術観のズレ、また同じ頃から東洲斎写楽の絵が蔦屋から出始めることから、歌麿に去られた蔦重が新たな絵師として写楽を発掘したという説、逆に蔦重が写楽を重用し始めたことに不快感を感じた歌麿が離れたという説もあるようです。映画『写楽』は1番最初の説でしたね。
 なお歌麿が主人公の映像作品がまだありました。1995年のオリジナルビデオ『歌麿おんな秘図』という作品ですが、VHSとLDのみで当然ながらDVD化はされていません。


>定信とか蛮社の獄とか
「「下々のものが御政道に口を出すんじゃない」という人だった」「江戸幕府ってのは大なり小なりそういう傾向があるみたいですけど。」
 ああ、それは松平定信はそういう人だったろうと僕も思います。幕政批判や処士横議を禁じるってそういうことですからね。ただ、その一方で定信はその政策において、民間の知恵も大いに借りていたことも指摘されています。

「『風雲児たち』についてですが、やはりフィクションとして考えるべきだと思います」
 ふーむ、やっぱりそうなんですか。なんとなく史実系なんだかフィクション系なんだかわかりにくい作風だなとは思ったんですが、史実の解説みたいのがちょくちょく入るんでやっぱり史実系なのかなとも思ったんですが。

「蛮社の獄」
 これについては『「蛮社の獄」のすべて』(田中弘之、吉川弘文館、2011年)を読んでいただければ1番話が早いんですが、でもこれ分厚い上に値段もちょっとお高めなんだよな。一般書なんで学術書みたいな高価さではないんですけどね。僕はちょっと立ち読みしたら面白かったんでどうしようかなと迷ったんですが、幸運にも図書館にあったんで借りて読みました。
 それによると蛮社の獄で捕縛された8人(または最終的に処罰された11人)のうち蘭学関係者は渡辺崋山と高野長英のみで、尚歯会の主宰だった遠藤勝助をはじめ他の関係者は誰も処罰されていません。残る捕縛された6人(または処罰された9人)は崋山・長英とも蘭学とも無関係な民間の無人島(小笠原諸島)渡航計画グループでした。では幕府側の蛮社の獄の目的は何だったかというと、それは「緩みつつあった鎖国体制の引き締め」だったというのがその論旨。当時は日本近海で漁民などが捕鯨船などの異国人と接触することが増加しており、1825年には異国船打払令が出されています。蛮社の獄はその延長線上で起こされた事件とのこと。
 崋山と長英は隠れ開国主義者で、モリソン号事件を知った長英は匿名で打払令に遠回しに反対する『戊戌夢物語』を著し、これが世間で流行。崋山も同趣旨の『慎機論』を書きますが、立場上発表を断念しています。一方で当時の民間では無人島ブームが起こっており、上記の無人島渡航計画の提唱者だった住職の順宣・順道父子は林子平の『三国通覧図説』や漂流者の日記などを読んで影響を受けたことから無人島に関心を持ち、現地への渡航という夢を抱くようになったとのこと。この計画は幕府の許可を得た上で実行することになってましたが具体的なことは何一つ決まってなく、無人島に関心のある人々が夢や期待を語りあっていただけだったにも関わらず、鳥居耀蔵に籠絡されて密偵となっていたグループの花井虎一(下級幕臣)が、グループが無人島に勝手に渡航しようとしており、さらに米国まで行こうとしていると報告。調査の結果、順宣らの計画は幕府に許可の願書を提出済みの合法的なものであることが判明しますが、鳥居はこの計画に崋山が関与し、さらに単独で米国に渡ろうとしているという告発状を老中の水野忠邦に提出しました(なお当時は家斉がまだ存命中の大御所時代)。全くのでっち上げでしたが、崋山拘引の直後、水野は「登(崋山)事夢物語一件にてはこれ無く、全く無人島渡海一件の魁首なり」と断言しています。しかし吟味において崋山・長英と無人島グループがお互いのことを全く知らないと証言したことから花井の偽証や鳥居の捏造が明らかになったようですが、崋山宅の家宅捜索によって『慎機論』が発見されたことから容疑を幕政批判と処士横議に切り替えて有罪とされました。
 一方、当初捕縛された無人島グループ6人のうち4人までが吟味中に獄死しており、おそらく拷問で殺されたと推測されています。田中氏はもともと小笠原諸島の研究から蛮社の獄の研究に行き着いた方らしく、この事件においては覚悟の上で開国主義者として活動していた崋山・長英よりも、全くの冤罪で殺された無人島グループの4人こそが最大の被害者だとしてましたね。
 なお悪人代表みたいな鳥居耀蔵も実は単なる蘭学嫌いではなく、多紀安良の蘭学書出版差し止め意見に対して反対するなどしており、蘭学に対しては幕藩体制を揺るがすような幕府にとって有害な部分(政治思想など)は弾圧するが、有益無害な部分(純粋に技術的なものなど)は問題視せず蘭学の実用性をある程度認めていたとのこと。当時の幕臣の一般的な考え方だったようで、忠邦や定信も同様だったと思われます。

>映像作品に出てきた人の追記
 忘れてましたが滝沢馬琴の家族が出てきた映像作品。馬琴の妻のお百は、映画『北斎漫画』(1981年、演:乙羽信子)、ドラマ『びいどろで候 長崎屋夢日記』(1990年、NHK、演:楠トシエ)、映画『八犬伝』(2024年、演:寺島しのぶ)にそれぞれ登場。息子の宗伯はドラマ『びいどろで候 長崎屋夢日記』(1990年、NHK、演:中島陽典)、映画『八犬伝』(2024年、演:磯村勇斗)に、嫁(宗伯の妻)の路もドラマ『びいどろで候 長崎屋夢日記』(1990年、NHK、演:高山典子)、映画『八犬伝』(2024年、演:黒木華)にそれぞれ登場しています。
 また鶴屋南北はドラマ『熱血!周作がゆく』(2000年、テレ朝、演:品川隆二)にも登場したようです。

>南北朝関連本
 先日、ふらっと本屋に寄ったら、町田康の『口訳 太平記 ラブ&ピース』(講談社)という本が出てました。文字通り古典『太平記』を現代語訳、というか町田康流に現代口語訳したもののようです。例えば「どえらいことになりました。主上御謀叛です」「マジか」「マジです」みたいな感じらしい。町田氏はそれ以前に『口訳 古事記』も出してたようで、それに続く古典口訳第2弾みたい。

>追悼・村山富市元首相
 ご長命でしたねえ。首相だったのももう30年も前のことなのか……。阪神・淡路大震災やサリン事件が起こった時の首相でもありますね。村山談話という遺産も残してくれました。ただ今になって思えば自社さ政権は社会党(および新党さきがけ)にトドメを刺す一方で自民党は延命させたとも言えるわけで、皮肉というかなんというか。村山談話もその後の自民党政権が免罪符のように使い続けるなど、自民党に利用され尽くしたとも言えそう。ご冥福をお祈りします。



#11540 
ろんた 2025/10/13 20:31
『逃げ上手の若君(22)』(松井優征/ジャンプコミックス)

『ビジャの女王(8)』(森秀樹/リイド社)が出ているのにやっと気づいて、あちこち探し回って発見。そしたら『逃げ上手の若君(22)』を見つけたので合わせて購入。まだ読書欲は復活せず(汗)。

天下が足利の手に渡り、南北朝の対立は一時の収束を迎える。だが、足利内部では権力闘争が熾烈を極め、業を煮やした師直が直義追放に向け強硬策に打って出る!! 一方、天下から遠のいた時行は、ようやく自らの幸せと向き合い始める。そして、雫、亜也子、魅摩も動き出し正室争いはついに完全決着へ──!?(カバー裏より)
 前巻最終話以来、「インターミッション」が6話続く。このマンガの場合、「インターミッション」は休憩じゃなくて爆走なんで1351年まで時代が進んでしまうのであった。つまり足利内部の不協和音、直義派と師直派の形成、対立、抗争、そして観応の擾乱へ。ところが「インターミッション」の半分ぐらいは時行の嫁選びの話。そっちは大方の予想通り、1対3のハーレムエンド。しかも「みんな平等に 最初は全員で そのあとくじ順で一人ずつ 最後はまた全員で」というハードスケジュール。エロゲーかよ。なんでこんな構成になっているかといえば「少年ジャンプで足利の内紛だけ普通に描いたら連載が持たない!!」(P48)からなのでありました(笑)。本編に戻ってからは甲斐須沢城での高師冬(吹雪)VS上杉憲顕・諏訪頼継の戦い。頼継軍には時行が参加し、機動部隊として本陣に突入。少年マンガらしく一騎討ち展開へ。
・せっかく対面したのに史実通り嫌われてしまう直冬。時行の匂いがついていたから? 尊氏自身は庶子を重用するわけにはいかないなどともっともらしいこと言ってるけど。直義が失脚すると直冬が西国で挙兵。これに尊氏は「おのれ凶徒・直冬……厚遇を忘れて謀反とは畜生の所業!」と叫ぶ。いつ厚遇したよ(笑)。顔を見るたびに変顔していたくせに。
・春日顕国を破るなど関東を制圧した高師冬だが、強権的な支配は支持を得られず、同じ関東執事・上杉憲顕に甲斐須沢城へ追いつめられる。しかし上杉憲顕が支持を得られたのは故斯波家長の遺言(?)のおかげ。やっぱり人知を超えてる(笑)。『ファウンデーションシリーズ』のハリ・セルダンみたい。
・高師冬(吹雪)への尊氏の「洗脳(?)」は死ぬまで解けないということだが、何か反則技で解放される気もしないでもない。どっちにしろ、高師冬はこの戦いで退場だけど。
・気がつけば1351年。X-DAYまで二年しかないではないか。結末どうすんだ。1対3のラブラブ展開までしちゃって史実通り?

>『ビジャの女王(8)』(森秀樹/リイド社)
 ついにビジャ城内にモンゴル兵が侵入。その目的が女王オッドだと察したインド墨家ブブは、オッドを地下の歓楽街に避難させる。だが宰相ジファルの密告でモンゴル兵が地下に突入。住人たちと戦闘状態に。ブブと墨蝗(巨大バッタ)も駆けつけ兵は討ち果たすが、オッドを守って墨蝗が命を落とす。墨蝗の遺骸を無造作に大地になげうつブブ。墨家の薄葬だと気づき、オッドは感謝の念を捧げる。一方、二万のモンゴル騎馬隊が到着し、ビジャ側は援軍かと警戒するが、彼らはモンケ・ハーンの直属軍。ハーンの娘クトゥルンを殺害した廉でラジンを拘束し連行する。ビジャ攻撃を続けよ、とのハーンの意に逆らい、副官"名無し"は軍を率いて騎馬隊の後を追い、ラジン奪還の機会をうかがう。一方、ラジンは指揮官をゲルに招き入れ、母の骨壺のふたを開ける。すると中から「精霊ジン」が現れ……。
・ラジンを拘束し連行する騎馬隊指揮官が江頭2:50!(笑)
・「精霊ジン」。光を嫌い普段は壺の中の軽石に宿っている。暗闇で壺のふたを開けると羽虫のような音を立てて飛び出し、人を襲う。ただし、身動きせず物音を立てなければ危害は加えない。う〜ん、なんだこれ。正体は明かされるのか?
・なかなかあらすじでは触れられないけど、この作品世界では冬虫夏草ならぬ冬人夏草なるものが存在する。人の身体からキノコが生えてくるんだけど、これがブブ、ジファル、ラジンの二十年間の因縁に深くかかわっている。
・オッドは左右の目の色が違うという設定だが、単行本のカバーに描かれている姿では右が赤、左が青だったり、逆だったり、目の色が同じだったりしている(笑)。
・ビジャ攻撃の目的は特産の香料の独占とインド侵攻の拠点にするためらしいのだが、だったらこれからも繰り返し攻めて来るんじゃなかろうか。モンケ・ハーンの死(1259)、フレグ・ウルスの建国(1260)、フビライ・ハーンの即位(1264)があるので(現在は1258年という設定)、インド侵攻は中止。香料の平和的交易ということで決着するのだろうか。その場合、ジファルもラジンも殺されちゃうんだろうな。

>松平定信
『未完の名宰相 松平定信』(大場一央、東洋経済新報社)については不注意と、面白おかしく書きすぎましたね。すいません。
 松平定信の評価については、やはり納得できないものがあります。「矛盾に満ちた人格」「公と私を分別する人物」というより「下々のものが御政道に口を出すんじゃない」という人だったような気がするんですよね。まぁ、江戸幕府ってのは大なり小なりそういう傾向があるみたいですけど。
 蛮社の獄の評価についても納得できない。そりゃぁ、キリスト教だったら国禁だからキリスト教ってだけで処罰できるけど、蘭学はそうはいかない。だから言いがかりに近い罪状を並べ立てたわけで、特に「海外渡航」ってのは行き先小笠原ですからね。日本じゃん(笑)。そういえば『風雲児たち 幕末編』では、これをペリーに突っ込まれて幕府側が冷や汗三斗って場面があったなぁ。それを救ったのがフランス語版『三国通覧図説』。しかも光太夫一行の残留組の新蔵が翻訳に加わっているという胸熱展開。
 ついでに『風雲児たち』についてですが、やはりフィクションとして考えるべきだと思います。たまたまインタビューが収録されているので本箱から出してきた『風雲児たち 幕末編(24)』にはこんなエピソードがありました。
 長州藩士となり江戸を引き払うことになった村田蔵六。ヘボン先生に英語を学ぶために横浜に通ってはいたが、市内を出歩くことは無く最後だからと散策に出た。市内の看板も読めるようになり会話に不自由もない。そして港に出ると洋装の西洋婦人を見かける。ああ女性も日本にやって来ているのか、と感慨深く見ていると、その西洋婦人が駆け寄ってきて蔵六を抱きしめキスをしてきた。そしてそのままホテルへ……。
 種明かしをするとこの婦人はイネなのですが、これ明らかにフィクションでしょう。その後、鳩居堂閉鎖までイネが塾頭的なことをしていたのは記録にあるみたいだけど、二人の関係は記録にはないはず。もちろん、蔵六(大村益次郎)の最期を看取ったり、知人有人以上の関係をうかがわせるものはありますけど。こういう話が差しはさまれているので、歴史の再現と考えてしまうのは危険かと。参考文献にあげられている歴史小説の設定が混じっちゃってるところもあるみたいだし(笑)。



#11539 
バラージ 2025/10/11 14:10
編集王?

 ここんとこ何話かの『べらぼう』。蔦重が山東京伝にほとんど恐喝まがいで自分の書かせたい内容の黄表紙を書かせようとしたり、逆に自分の意に沿わない黄表紙を書いたことに激怒したりしてましたが、このあたりも(大枠は別として)史実とはどうにも異なります。てか、それ以前にドラマとしてもあんなヤクザまがいの暴力的な主人公に共感する視聴者がいるのかな? なんというか史実云々以前の問題として、僕個人はここんとこ数話の蔦重には不快感というか嫌悪感すら感じてしまうんですが。

 実際の蔦重は戯作をやめようとする京伝に対して、むしろ泣き落としに近いことをして思いとどまるよう懇願したようです。京伝は挿絵を描いた1789年の『黒白水鏡』が町奉行により絶版とされ、作者の石部琴好という人物は手鎖の後に江戸払いとなり、京伝(画号としての名は北尾政演)も罰金を命じられました。朋誠堂喜三二の『文武二道万石通』、恋川春町の『鸚鵡返文武二道』、唐来参和の『天下一面鏡梅鉢』が絶版にされたのと同じ年ですが、『黒白水鏡』の版元は不明で蔦屋ではないようです。『黒白水鏡』は田沼父子を揶揄した内容で、意次による運上金の取り立てや意知が佐野政言に斬り殺された事件、意次の失脚などがネタにされているとのこと。定信の政敵ですでに失脚した田沼父子であっても、御政道を揶揄するような内容は問題視されたことがわかります。
 京伝はこの処罰に恐れおののき戯作をやめようと考えたようですが、蔦重に懇願されて思いとどまったということが、1791年の京伝の黄表紙『箱入娘面屋人魚』の冒頭にある蔦重の挨拶文に記されているとのこと。それによると京伝は、「今までかりそめに拙い戯作をいたし読者のお目にかけてきましたが、こうした無益なことに時間や筆・紙を費やすことはたわけのいたりであり、とくに去春などは世間で悪い評議を受け、深くこれらを恥じておりまして今年からは決して戯作はいたしません」と蔦重に固く断りを入れてきたが、蔦重としてはそれでは自分の店が急に衰微してしまうため、ぜひ今年だけは書いてほしいと頼んだところ、京伝も長年の付き合いの自分をそのままには捨て置けず決意を曲げて書いてくれたとあるそうです。ちなみに蔦重はこの冒頭の挨拶文で楽屋裏を明かしながら同時に本の宣伝もしてるわけで、蔦重の商魂たくましさが感じられるとも指摘されてますね。また京伝が蔦重から原稿料をもらっていたことも戯作の執筆をやめられなかった理由の1つと考えられています。この頃の京伝は30歳過ぎても無職で親のスネカジリだった(父の岩瀬伝左衛門は家主=地主や家の所有者に代わって土地や家を管理する職業)にもかかわらず、ドラマでも描かれていたように1790年に結婚しており、妻を養う必要がありました。京伝は1785〜86年頃から原稿料をもらっていたとのこと。
 なおドラマでは京伝がいつまでもぶらぶら気ままに暮らしていきたいみたいなことを言ってましたが、実際の京伝はむしろいい歳をして無職の自分に忸怩たる思いがあったようです。京伝の弟の山東京山の随筆『蛛の糸巻』によると、1790年の秋に京伝のもとへ曲亭馬琴が初めて訪ねてきて入門を乞い、弟子は取らないと京伝は断りつつ、いつでも話に来なさいと言ったそうですが、その際に京伝は「草双紙の執筆は、世を渡る家業を持って、その傍らで慰みにするべきものです。今評判を取っている作者は皆そうです」と言ったとのこと。この時点では京伝は上記の通り家業を持っていませんでしたが、それで良いとは思っていなかったことがわかります。
 またドラマでは蔦重が京伝の書いた『心学早染草』(1790年刊、版元は大和田)を定信の意図に乗る“ふんどし担ぎ”だなどと言って京伝に詰め寄ってましたが、これももちろんフィクション。実際に蔦重が『心学早染草』をどう思ったかの記録はないものの、続編である『人間一生胸算用』(1791年刊)、『堪忍袋緒〆善玉』(1793年刊)が蔦屋から出ていることを考えれば悪い印象を持っていたはずはなく、むしろ「先生、こんな面白くて売れる本、ぜひうちから続編を出してくださいよ」という話だったことは間違いないでしょう。以前紹介した『蔦屋重三郎の時代 狂歌・戯作・浮世絵の12人』(佐藤至子、角川ソフィア文庫)を読むと、蔦重という人はほんとに根っからの商人なんだなと思わされるエピソードが多く、売れる本=良い本、売れる絵=良い絵と考えていたんではなかろうか。てか、それこそが商人だという気がする。
 最後に蔦屋と鶴屋が京伝に対して今後はうちらの店だけで書いてくれと依頼してたところ。これは時期はもっと後のようですが実際にあった話です。ただし展開や理由は当然異なり、曲亭馬琴の『伊波伝毛之記』によると寛政年間に京伝と馬琴の黄表紙が大流行したため、蔦屋と鶴屋は相談して2人の原稿料を定めた上で2人が他の版元のために作品を書かないよう依頼。2人もそれを受け入れたが、6〜7年経って2人の作品がさらに流行すると他の版元から文句が出始め、蔦屋・鶴屋もそれに抗することができず広く他の版元にも作品を与えて出版させるようになったとのこと。要するに今で言う作家の囲い込みと専属契約ですな。
 前記『蔦屋重三郎の時代』を読んでると、戯作者や浮世絵師と版元の関係って今で言う小説家やマンガ家と出版社や編集者の関係そのまんまなんですよね。蔦重もまさに出版社長兼編集者(兼書店長)といった感じで、京伝の黄表紙にも執筆を催促する版元として楽屋落ち的にしばしば登場してるらしく、まさに原稿を催促する編集者。やっぱり蔦重は根っからの商売人だったんでしょう。


>読んだ本
 上記にも挙げた『蔦屋重三郎の時代 狂歌・戯作・浮世絵の12人』(佐藤至子、角川ソフィア文庫)を読了。タイトル通り版元の蔦屋重三郎自身と、彼と関係のあった狂歌人の大田南畝(四方赤良)、朱楽菅江、石川雅望(宿屋飯盛)、戯作者の恋川春町、朋誠堂喜三二、山東京伝(北尾政演)、曲亭馬琴、十返舎一九、浮世絵師の北尾重政、葛飾北斎(勝川春朗)、喜多川歌麿の12人の半生が要領よくまとめられて紹介されています。著者は近世文学の研究者とのことで、彼らの人生を過剰に盛り上げたりせずにおさえた筆致で説明してるのが良い。あくまで蔦重と関係した時代の記述に絞られているので、馬琴や一九、北斎らの後半生は省略されています。『べらぼう』ではあまり目立たなかった朱楽菅江と石川雅望(宿屋飯盛)の項は興味深かったですね。文庫で値段や分量がお手頃なのもうれしいところ。

>山師
 そういえば10年ほど前に『風雲児たち』の田沼時代と平賀源内の話題が出たあたりの過去ログで今頃になって気になったところがもう1つありました。正直言ってほんっとうに今さらの話題なんですが、「山師」という言葉について。
 コトバンクにある「デジタル大辞泉」には、「1 鉱脈の発見・鑑定や鉱石の採掘事業を行う人。2 山林の買付けや伐採を請け負う人。3 投機的な事業で大もうけをねらう人。投機師。4 詐欺師。いかさま師。」とあり、山師には確かに「詐欺師」という意味もあるようですが、田沼時代の「山師」とは、3の「投機的な事業で大もうけをねらう人」のことでしょう。同じくコトバンクにある「精選版 日本国語大辞典」には、「B 鉱山の採掘事業を行なう者。また、鉱脈の発見・鑑定などをする人。鉱山業者。山や田地の売買を職業とする人にもいう。金山師(かなやまし)。山主。山元。C (鉱山の採掘事業がきわめて射倖的、場あたり的であるところから転じて)投機的な事業をして金もうけをたくらむ人。山をはる人。やまこかし。」とあり、Bの意味が転じてCの意味になったようです。その後に「D 他人を欺いて利益を得ようと図る人。詐欺師。ペテン師。やまこかし。」とありますが、これはさらにCの意味から転じたもののようです。
 平賀源内は自ら「古今の大山師」と自称していたとのことですが、さすがに「詐欺師」とは自称しないはずで、源内が実際に鉱山事業を行なっていたことを考えれば「鉱脈の発見・鑑定や鉱石の採掘事業を行う人」「鉱山の採掘事業を行なう者。また、鉱脈の発見・鑑定などをする人。鉱山業者」のことでしょう。ただしこの源内の鉱山事業は大失敗に終わっており、世間からは「投機的な事業で大もうけをねらう人」「投機的な事業をして金もうけをたくらむ人」の意味で「山師」と呼ばれていたものと思われます。田沼時代は田沼の政策も相まって、そのような意味での「山師」が跋扈していたと指摘されています。

>中国映画『731』と『南京照相館』
 満州事変のきっかけとなった柳条湖事件が勃発した9月18日に公開された、日本軍の731部隊を題材とした中国映画『731』が何やら話題です。もともとタイトルに引っ掛けて7月31日に公開の予定が、何らかの理由で延期となったあたりからやたら日本でもニュースに取り上げられ出した印象。どうやら内容に問題があるようで、なぜか収容所で花魁道中が行われたり、女性幹部兵士や必勝鉢巻きにふんどし姿の部隊関係者が出てきたりと中国人から見ても荒唐無稽なシーンが多いらしく、酷評されているようなので日本に来る可能性は低そう。それにしてもニュースはテレビもネットも映画による中国の反日感情云々という話題ばかりなんだけど、そもそも731部隊を題材とした映画やドラマはまず日本が作るべきなのにそれが無いということが問題なのでは? 映画『スパイの妻』『湖の女たち』や帝銀事件関連の作品のように間接的、または部分的に取り扱っている作品はあるものの、真正面から主題として取り上げた作品が無いんですよね。
 それ以上に日本映画やドラマで描かれた作品が少ない、というよりほとんど無いのが南京事件。映画『戦争と人間』『未完の対局』などにおいて台詞やナレーションで言及されているのがせいぜいで、直接描いた作品は皆無です(ま、予算規模やロケーションとかの問題もあるんでしょう。作っても赤字になる公算が大きいだろうし)。よってそういう作品は外国映画で観るしかありません。やはり今年中国で南京事件を題材とした映画『南京照相館(直訳=南京写真館)』が公開され大ヒットしたようですが、こちらは『731』に比べると日本のニュースで取り上げたものが少なかったのは、映画としての評価がなかなか高くてツッコミどころが少なかったからか? 出来がいいんなら日本でも公開してほしいもんですが、これまでの例を考えると難しいのかな。てか、まず未だ劇場公開どころかDVDスルーや配信スルーもされてないチャン・イーモウ監督の『金陵十三釵』(2011年)を日本語字幕付きで見せてほしいところです。



#11538 
バラージ 2025/10/04 22:20
松平定信をめぐる二、三の事柄

>「『未完の名宰相 松平定信』(大場一央、東洋経済新報社)。検索すると「時代劇では「ヒール」として描かれがちな、「寛政の改革」を担った老中・松平定信。」というのは出てくるけど、いざHPに行くとこの記述はない。どうも書き換えられたらしく、」

 あれ? 東洋経済STOREのHPには今でもその1文がちゃんとありますよ。1番上の文章を「すべて表示」にすると出てきます。
 「あのドラマ」はまあ『べらぼう』でしょうが、他にも近年のドラマだと昔に比べて悪役が多いのも確かなようで、2015年の『大江戸捜査網2015』も(ネタバレかもしれませんが)田沼が善玉で定信が悪役だと何かで読んだような。最後は定信が隠密同心に斬り殺されちゃうようです(笑)。2017年から始まった『無用庵隠居修行』シリーズは善玉のようですが、BSだし明らかに知名度や影響力は低いでしょう(ま、それを言ったらテレ東の『大江戸捜査網2015』も同じだけど)。2017年の『陽炎の辻 完結編 〜居眠り磐音 江戸双紙〜』、2018年の映画『のみとり侍』はどっちも観たけど定信はどちらかというと善玉で、悪役ではなかったですね。2023年のNHK版男女逆転『大奥』は『べらぼう』と脚本家が同じなんで田沼と定信はだいたい同じような描かれ方(もしくは時代劇的により誇張された描かれ方)だったようです。2024年のフジ『大奥』も定信は必ずしも全面的な善玉ではなかったようで、定信は主人公である五十宮倫子(家治正室)と幼なじみで想いを寄せていたが、家治に奪われたと怨みを抱き復讐しようとしてるみたいな設定だったようで。ヒロイン役?は当然家治で、最初は冷淡だった夫婦仲が徐々に通じ合っていく……という、ま、ベタな話ですな(笑)。ちなみに田沼は徹底的な悪役。
 というわけで悪役ばっかりということは無いにしても、昔に比べれば「ヒール」「悪役」として描かれることも増えた、ぐらいには言えるかも。でもまあ、そういう書き方じゃ煽り文句にはならないか。


>著者の思惑は「おのれ『べらぼう』め、定信公を悪役にしやがって」というもの

 うーん、まあ、こういうのは編集者の煽り文句であって、著者はそこまでは思ってないんじゃないでしょうか。読んでないからわからんけど。


>「寛政の改革で蘭学が弾圧された」についてはイメージですかね。後の蛮社の獄みたいなことはなかったと思うんだけど(積極的に弾圧するほどのことは無かった?)、なにしろ異学の禁をやっちゃってるんで、儒学でも朱子学以外の学派には萎縮効果はあったでしょう。ましてや蘭学ではその効果は大きかったのでは?

 これは別に桝田氏のブログだけではなく(というか桝田氏のブログのほうを後に見つけた)、近年の定信関係の本を書店や図書館でいろいろ読んだ中にも、またネット検索をした中にも、定信が蘭学を弾圧したという記述は見つけられませんでした。むしろ蘭学に対する多大な興味を持っていたという記述が多くの本でされています。寛政異学の禁についても近年の定信関係の本ではいずれでも、あくまで儒学内部の話で儒学以外の蘭学や国学(本居宣長とか)は最初から問題にされていなかったとしており、よって寛政異学の禁で朱子学以外の儒学に萎縮効果はあっても蘭学に萎縮効果があったとは考えにくいのでは? ついでに言うと定信自身は必ずしも朱子学に傾倒してはいなかったようですが、まさに『べらぼう』の主題でもある戯作に代表されるように、定信は自分の個人的な趣味嗜好と幕府としての公的な政策とで全く違った対応を取ることも多く、矛盾に満ちた人格というか、良く言うと公と私を分別する人物だったようです。そこがこの人をわかりにくくしてるとも、複雑な陰影のある人物にしてるとも言えるのかもしれません。
 また蛮社の獄についてはずっと前からたびたび紹介してる『「蛮社の獄」のすべて』(田中弘之、吉川弘文館)によると、これもまたそもそも蘭学への弾圧ではなかったとしています。蛮社の獄の容疑は海外渡航・幕政批判・処士横議で、蘭学への弾圧は行われておらず全くの誤解だとのこと。僕はもともと蛮社の獄にはあんまり興味がなかったんですが、この本がすごく面白かったんでその後この本に対する反論とかされてないかなあと時々チェックしてみるんですが、マイナーな題材だからかそもそも蛮社の獄を取り上げてる本が少ないんですよね。田中氏も『「蛮社の獄」のすべて』の前書きで研究の進展が乏しいと嘆いておられましたが。



>一九とか馬琴とかが出てきた映像作品
 終盤の新たな登場人物の残る2人、戯作者である十返舎一九と滝沢馬琴が出てきた映画やドラマの話。やはり文筆家は画家や音楽家に比べて絵にならないからか、有名人のわりには登場する映像作品はそこまで多くないですね。

 まず十返舎一九は主人公の作品がありません。歴史映像名画座掲載作品では『写楽』にのみ登場しています。演じてる片岡鶴太郎は今年は鳥山石燕に転生。その他の作品は僕はいずれも観てませんが、まず映画『歌麿をめぐる五人の女』(1946年、演:堀正夫)に登場。また映画『弥次喜多道中記』とその続編『弥次喜多道中双六』(いずれも1958年、演:徳川夢声)では弥次さん喜多さんを実在人物として、一九が滑稽本のネタにしようと彼らに金を渡し京に行かせるという展開らしい。あとは単発ドラマ『写楽はどこへ行った』(1968年、NHK、演:露口茂)、連ドラ『江戸巷談・花の日本橋』(1971年、フジ、演:金子信雄)、映画『北斎漫画』(1981年、演:宍戸錠)、連ドラ『熱血!周作がゆく』(2000年、テレ朝、演:辻村ジュサブロー)といったあたりに登場してるようです。

 次に滝沢馬琴。歴史映像名画座掲載作品ではやはり『写楽』にのみ登場(演:高場隆義)。その他で僕が観た登場作品は、まず映画『駆込み女と駆出し男』(2015年、演:山崎努)。うーん、馬琴の記憶が無い。映画自体はまあまあ面白かったんですけどね。水野忠邦時代を舞台とした時代劇映画だったかな。主人公を含めて登場人物はほぼ架空で歴史とはあまり関係がありません。それから去年観た映画『八犬伝』(感想は#11468。演:役所広司)。これが馬琴を主人公とした初の映像作品のようです。
 観てない作品ではやはり北斎絡みが多く、単発ドラマ『わが父北斎』(1970年、TBS、演:3代目中村翫右衛門)、映画『北斎漫画』(1981年、演:西田敏行)、単発『眩(くらら) 北斎の娘』(2017年、NHK、演:野田秀樹)、映画『HOKUSAI』(2021年、演:辻本祐樹)に登場しています。またやはり北斎同様『必殺』シリーズにも出てくるようで、連ドラ『必殺からくり人 富嶽百景殺し旅』(1978年、テレ朝、演:北村英三)、単発『必殺スペシャル・春 勢ぞろい仕事人! 春雨じゃ、悪人退治』(1990年、テレ朝、演:加賀邦男)に出てくるとのこと。その他に連ドラ『びいどろで候 長崎屋夢日記』(1990年、NHK、演:日下武史)にも出てきたようです。

 ついでに、蔦重とは関係がないんで『べらぼう』には出てこないだろうけど、『写楽』には出てきた鶴屋南北(演:六平直政)。『写楽』では、とんぼ=写楽の知り合いで、一念発起して上方に向かうという話だったような。去年観た映画『八犬伝』(演:立川談春)にも出てきましたが、他の登場作品は見つけられませんでした。


>そういや公開してた歴史関連映画
 戦後の米軍統治下の沖縄を舞台とした映画『宝島』が公開中。厳密には歴史映画ではありませんが、劇中ではコザ暴動なども描かれるとのこと。ただ、どうも個人的には『おーい、応為』ともども今ひとつ観に行きたいという気分がわいてこないんですよね。あくまで今なんとなくの気分的なものなんですが。



#11537 
ろんた 2025/10/04 01:07
時代劇の三悪人

 バラージさんご紹介の『未完の名宰相 松平定信』(大場一央、東洋経済新報社)。検索すると「時代劇では「ヒール」として描かれがちな、「寛政の改革」を担った老中・松平定信。」というのは出てくるけど、いざHPに行くとこの記述はない。どうも書き換えられたらしく、紹介や書影の帯には「あのドラマの「悪役」、その「真の姿」とは。」とある。この「あのドラマ」ってのはどう考えても「べらぼう」なんで、著者の思惑は「おのれ『べらぼう』め、定信公を悪役にしやがって」というものなのに、時代劇に詳しくない編集者が間違っちゃったというところでしょうか。実際、定信が悪役になる時代劇ってちょっと思いつかない。『無用庵隠居修行』でも、市井の問題を長谷川平蔵を通じて主人公・日向半兵衛に相談したり、田沼残党への対応に苦慮する良心的政治家。悪役になるのが多いのは、わたしが勝手に「時代劇の三悪人」と呼んでいる柳沢吉保、田沼意次、鳥居耀蔵。柳沢吉保は「水戸黄門」や「忠臣蔵」で、田沼意次は分かりやすい金権政治家として、鳥居耀蔵は「遠山の金さん」関係で悪役になっている。一番びっくりしたのはテレ朝で放送された北王路欣也版「旗本退屈男」かな。退屈男が諸羽流正眼崩しで吉保をぶった斬っちゃうんだもん(笑)。コンビ(?)の荻原重秀はなぜか仮名で斬られなかった(と思う)。ちなみに『だましゑ歌麿』は原作を使い果たしたようですが、『無用庵隠居修行』はオリジナルで制作継続しているようです。水谷豊がノってるのかな?

>椎名高志と歴史劇
 原作『GS美神 極楽大作戦!!(1)〜(39)』で歴史ものっぽいのは、幽霊船と化した帝国海軍の潜水艦を除霊する話。女GSが集まって卑弥呼の霊を呼び出したら女子会になってしまった話。千年に一度、古代の英知が授けられるというのでライバルを蹴落として辿り着いたら卑弥呼が出てきて朝の情報番組の星占いみたいなお告げをされた話。新選組映画が妖怪に食べられちゃう話。(以上はTVアニメになってる) 平安時代に、そして中世ヨーロッパにタイムスリップする話。事務所で働く幽霊・おキヌの江戸時代のエピソードぐらいかな。(「戦が終わって〜拙者たちは生まれた〜」という替え歌には笑った) 卑弥呼以外は実在人物は登場せず。ただ「GSホームズ 極楽大作戦!!」「GSホームズ 極楽大作戦!! 血を吸う探偵」という外伝は、ホームズ・パスティーシュなんでビクトリア朝が舞台。第一作は「赤毛連盟」直後で、魔法と錬金術を極め不老不死となったドクター・カオス(準レギュラー)がホームズの恩師という設定で登場。第二作はライヘンバッハの滝での遭難の半年後で、依頼人がバンパイア・ハーフのピエトロ・ド・ブラドー(やはり準レギュラー)。モリアティー教授と虎狩り大佐も登場。ワトソン君がアフガンでどこに怪我したか問題も解決(笑)。
 その他だと『MISTERジパング(1)〜(8)』という作品があって、椎名高志版『信長公記』『太閤記』になるかと思いきや、謎の新宗教教団とかSF的ギミックが出てくる。最後は12〜13世紀のモンゴルにタイムスリップした日吉(実は双子だった秀吉の片割れ)が元の時代に戻ろうとすると、そこは本能寺の変の現場。信長に押し戻された日吉は信長の指導でチンギス・ハーンになるっぽい(笑)。今気がついたけど、信長に怪しげな新宗教が絡むって「赤影」ですな(笑)。『絶対可憐チルドレン』は超能力ものなので歴史ものとは言えないけど、戦前戦中の「大日本帝国陸軍特務超能部隊」が作品のテーマに関わる。最近終了した『〜異伝・絵本草子〜半妖の夜叉姫』はアニメ「犬夜叉」のスピンオフのコミカライズ。「犬夜叉」は漠然と戦国時代を舞台にしていたように思うけど、本作は桶狭間の戦い以後、武田と徳川が落ち目の今川と小競り合いを繰り返している頃。木下藤吉郎と竹中半兵衛が登場。信長はカメオ的出演。戦国時代なのに瀬戸内海に出る船がいわゆる千石船っぽいのが気になる(巨大な一本マストと巨大な舵)。史料が無いのかな?(<面倒くさい奴)
 う〜ん、思いのほか長々と書いてしまった(汗)。

>『風雲児たち』、田沼意次、松平定信
 前も書いたかと思うんですが、みなもと太郎は田沼意次を悪人だと思ってたようです。(↓)(「連載150回突破記念 みなもと太郎特別インタビュー」 『風雲児たち 幕末編(24)』所収)

田沼意次も、描き出す直前の回までは悪人で描こうと思ってたんだけど……。

田沼意次研究の本を読むと、「これは贈賄と不正にのみ執心した悪人のわけがない」と感じたから、明くる月から急遽善人に切り替えていく(笑)。田沼意次像が変わると、享保という時代の捉え方がまた変わってくるわけで……。松平定信の時代に詠まれた「白河の清きに魚も住みかねて。もとの濁りの田沼恋しき」の狂歌も、その方がずっと辻褄があっていくわけなんだ。

 ということで、田沼の評価は当時の研究動向の反映ではないかと。田沼意次の登場は多分「目黒行人坂大火」(希望コミックス版第六巻第六章/初版昭和五十九年四月二日)だし。また林子平や高山彦九郎を描くのならば定信は当然、敵役。自然に点数は辛くなる。今は当時とは逆に定信の再評価が行われているようですが、田沼意次=重商主義者説同様、こちらにも贔屓の引き倒しな傾向がありそうな……。(田沼が「士農工商の共存共栄を考えていた」ってのも引き倒しだよなぁ) それから、この部分で田沼の出自が語られるんだけど、九代将軍・家重は「アホ」で十代将軍・家治は「オッペケペー」とあんまりなことが描かれている。そしてなぜか家重の「上様語」が理解できるのが意次。大岡忠光はどこ行った?(笑)
 桝田道也のブログは興味深く読みましたが、どうも納得できない部分もあります。みなもと太郎も引用している、隠居した定信のエッセイ『退閑雑記』から「実はそんなに蘭学をディスっていません」「西洋に一目置いています」「松平定信は蘭学に興味ありまくりのひとでした」としているんだけど、わたしの印象では無視、無関心、現役時代と違い無視できなくなったので「医学や天文学や本草学の面では(蛮学の)利が少なくはない」と記しているように思えました。また江戸の水害について、先見の明があったなら印旛沼の工事を中止して川の浚渫をすべきだった、というんだけど、それ結果論じゃないか? あと「外国を紹介するような本は禁止!」なのに有力大名の推薦文がある大槻玄沢の『蘭学階梯』などが出版されている、との指摘だけど、「それはこれらの書物が献上書として出版されており」「おそらく書店には回さなかったと思われるが」といった記述は無視しちゃってる。ああ「寛政五年に司馬江漢が『地球全図略説』を出版しています」とあるけど、その年に定信は失脚しちゃってるんだよな。
 ついでに「寛政の改革で蘭学が弾圧された」についてはイメージですかね。後の蛮社の獄みたいなことはなかったと思うんだけど(積極的に弾圧するほどのことは無かった?)、なにしろ異学の禁をやっちゃってるんで、儒学でも朱子学以外の学派には萎縮効果はあったでしょう。ましてや蘭学ではその効果は大きかったのでは?

>『支那論』(内藤湘南/文春学藝ライブラリー/2013.10)
 これだけじゃなんなんで、むか〜し読んだ本の感想。タイトルと著者、そして帯の「100年前のベストセラー/近代日本最高の中国論」から通時的に中国を論じた本だと思い込んで、平積みになっているのを立ち読みもせずに購入。家で読み始めて時局講演集だったんで盛大にずっこける。いや、だって、臨時政府と袁世凱とどっちが勝つか、みたいな話を百年後に読まされても……(汗)。ただまぁ、すべてを歴史から発想し現状を分析する内藤湘南の思考が知られてよかった。しかし時代的制約か、帝国主義への見方が甘い。辛亥革命時の「支那論」と10年後の「新支那論」が収録されていて、両者の違いも興味深い。



#11536 
バラージ 2025/10/03 10:29
訂正

 チャン・イーモウ監督の映画のタイトルは正しくは『満江紅/マンジャンホン』でした。



#11535 
バラージ 2025/10/02 22:20
『風雲児たち』はもう古い?

 大河ドラマ『べらぼう』に絡んでマンガ『風雲児たち』の話題がちょっと出たんで、そういえばだいぶ以前にも『風雲児たち』と田沼意次や松平定信の話題が出たことがあったなと過去ログを探して読んでみたんですが、その10年ほど前の書き込みで今頃になってどうにも気になるところがありました。皆さんの投稿で再三に渡って松平定信が蘭学を弾圧したと出てくるんですが、よくよく考えると僕は定信が蘭学を弾圧したという認識が無かったんですよね。『風雲児たち』の田沼と定信のあたりは読んだ記憶があるんですが、そこまで熱心な読者ではなかったからか、そのあたりの記憶があまり無かったんだと思われます。ただ、それにしても教科書やその他の本やマンガなどでも定信が蘭学を弾圧したという話を読んだ記憶が無い。もっとも逆に弾圧しなかったという認識も無かったので、皆さんの投稿を読んだ当時は、そうか、そうなのか、と何となくスルーしちゃったんですが、改めて疑問がわき実際にどうなのか?と調べてみました。すると、どうも少なくとも現在の研究では定信が蘭学を弾圧したという事実はないようで、むしろ定信は個人的レベルでは逆に蘭学に多大な興味を抱いていたということが明らかになっているようです。
 僕が『風雲児たち』を読んだのはおそらく80年代後半から90年代前半だったと思うので、今から30年以上も前のことになります(連載は1979年から1997年とのこと)。果たして執筆当時の歴史学の研究では定信が蘭学を弾圧したとされていたのか今となってはもう僕にはよくわかりませんが、30年もあればその間に歴史学も研究が進展したり新たな事実の発見や新たな史料の解釈が行われて過去の学説が否定されていてもおかしくはないし、また実際そういうものも多いでしょう。『風雲児たち』は基本的には創作系(フィクション系)の作品ではなく、石ノ森章太郎『マンガ日本の歴史』や児童向け学習マンガのような史実系の作品だと思うので、その面白さは別としてやはり時代の流れと共に内容が古くなってしまうところがあるのは仕方がないと思います。問題はギャグ満載という作風も相まって読む側もこのマンガは史実系の作品であって、もはや古くなっている部分も含まれているという意識が希薄になりがちなところにもあるのではないかと。実際、ギャグそのものは史実ではなく創作(フィクション)なので、ある意味創作も含まれた作品とも言え、やや史実か創作かが判別しづらい作風とも言えます。
 もう1つの理由は、やはり田沼と定信のあたりはみなもと太郎氏の好き嫌いが強く出過ぎてしまったんではないだろうかということ。史実系の作品なのでさすがに創作やフィクションは入れてないだろうと思うんですが、当時はおそらく田沼再評価が歴史研究のトレンドだったであろうこともあって、その中で田沼に有利な学説と定信に不利な学説ばかりを集めてしまったという可能性はあると思います。あるいは歴史研究の学説というより、みなもと氏自身の見解というか誤解も含まれているんではなかろうか。もっと言えば、みなもと氏の田沼好きと定信嫌いが露骨に出てしまったんではなかろうかと。実は最近いろいろネットを探してたら、桝田道也というマンガ家の方のブログを見つけまして。桝田氏は『風雲児たち』の大ファンだそうですが、紹介記事を書いている中で「ファクトチェック」と称して、その後に研究がすすんで明らかになった事実や単純な間違いについて記述しています。決して批判が目的ではないと書いておられますが、松平定信については「みなもと太郎先生のやらかし――松平定信への強い偏見――」「『風雲児たち』の松平定信観はちょっとバイアスが強すぎるのでありまして、まあなかなか、いろいろ問題があります。」と書いており、非常にファクトチェックが多い。やはり『風雲児たち』のこのあたりの記述についてはかなりの偏りがあり、全面的に信用するのは避けたほうが良さそうに思われます。創作系(フィクション系)の作品であればそのような嗜好も、ま、フィクションだから、で済みますが、史実系の作品であまりに好き嫌いが強く出てしまうのは(いかにそれが作品の魅力や面白さにつながっているとしても)、やはりちょっと問題があるような気がしますね。


>葛飾父娘の出てきた映像作品
 『べらぼう』、終盤の新たな登場人物として十返舎一九・葛飾北斎・滝沢馬琴役の俳優が発表されました。ようやく映画『写楽』の時代に突入か。今月には映画『おーい、応為』も公開されるということで、今回はその中から北斎とその娘の葛飾応為が出てきた映画やドラマの話。
 歴史映像名画座掲載の作品では『写楽』に北斎が登場するのみ。北斎が若い頃なんで応為は当然登場せず。その他に僕が観たものでは、まず1996年の映画『必殺!主水死す』(北斎役:鈴木清順、応為役:美保純)。うーん、出てたっけ? タイトル通り中村主水を演じる藤田まことの一旦は最後の『必殺』シリーズ出演作になった作品ですが、劇場公開時に観たけどあんまり面白くなくて内容をほとんど覚えてないんだよな。次いで連ドラ『八丁堀の七人』第3部(2002年、テレ朝、北斎役:高橋昌也、応為役:石野真子)。これはそもそも観たか観てないかわからないパターン。テレビ時代劇ってよっぽどのことがない限り毎週は観てなかったし、これも第1部しか観てなかったかも。そして去年観た映画『八犬伝』(北斎役:内野聖陽、応為役:永瀬未留)。感想は#11468に書きましたが、応為の出番はほんの一瞬だけ。女優さんの名前は公式サイトや映画情報サイトにも無く、いろいろ探して女優さんの事務所の公式サイトで見つけました。
 次に観てない映像作品。北斎・応為が主人公のものが結構多く、まず1970年の単発ドラマ『わが父北斎』(TBS、北斎役:三国連太郎、応為役:岡田茉莉子)。えらく豪華な配役ですが、さすがにもうテープは残ってないでしょう。次いで1981年の映画『北斎漫画』(北斎役:緒形拳、応為役:田中裕子)。徹夜城さんはご覧になられたそうで。次に1986年の単発ドラマ『お栄ちゃんの浮世絵日記 応為坦坦録』(TBS、応為役:美加里、北斎役:鈴木清順)。原作小説は山本昌代が文藝賞を受賞したデビュー作で、演出は今関あきよしとのこと。映画情報サイトにも掲載されてるんだけど、劇場公開もされたのかな? お次は時代がぐっと今に近くなって、2017年の単発ドラマ『眩(くらら) 北斎の娘』(NHK、応為役:宮崎あおい、北斎役:長塚京三)。これはわりと有名な作品ですね。原作は朝井まかて。さらに2021年の映画『HOKUSAI』(北斎役:柳楽優弥〈青年時代〉、田中泯〈老年時代〉、城桧吏〈少年時代〉、応為役:河原れん)。応為役の河原れんは映画の企画・脚本もしており、本業は小説家・脚本家とのこと。北斎の少年時代役の城桧吏は『べらぼう』に徳川家斉役で出演中。そして10月公開の映画『おーい、応為』では応為役が長澤まさみ、北斎役が永瀬正敏です。しかしこうやって見ると、北斎を主人公とした作品と応為を主人公とした作品が半々ぐらいなんだな。やっぱり応為という女性絵師が珍しくて興味深いんでしょうね。なお『眩 北斎の娘』『HOKUSAI』『おーい、応為』には北斎の妻(応為の母)も出てくるようです。それぞれ役名は「小兎(こと)」「コト」「こと」で、演じてるのは余貴美子、瀧本美織、寺島しのぶ。
 その他の映像作品では北斎のみが登場したものが多く、単発ドラマ『写楽はどこへ行った』(1968年、NHK、演:山崎努)、連ドラ『天下堂々』(1973年、NHK、演:三代目中村翫右衛門、ゲスト出演)、連ドラ『痛快!河内山宗俊』(1975年、フジ、演:佐々木孝丸、ゲスト出演)、映画『歌麿 夢と知りせば』(1977年、演:菅貫太郎)など。また『必殺』シリーズにはなぜか父娘そろって頻繁に登場しており、上にも挙げた映画『主水死す』の他に連ドラ『必殺からくり人 富嶽百景殺し旅』(1978年、テレ朝、北斎役:小沢栄太郎、応為役:吉田日出子)、連ドラ『必殺まっしぐら!』(1986年、テレ朝、北斎役:阿木五郎)、単発『必殺スペシャル・新春 大奥、春日野局の秘密』(1989年、テレ朝、北斎役:東野英治郎、応為役:黒木香)に登場してるとのこと。役どころはそのたびに違い、特に一貫性はないようです。近年の作品では単発シリーズ『だましゑ歌麿』(2009〜2014年、テレ朝、演:原田龍二)、単発『大江戸捜査網2015』(2015年、テレ東、演:永井大)、単発『広重ぶるう』(2024年、NHK、北斎役:長塚京三、応為役:中島ひろ子)に登場してるようです。

>DVDで観た歴史関連映画
『インドシナ激戦史1954 要塞ディエン・ビエン』
 フランス植民地ベトナムの独立戦争であるインドシナ戦争で最も激戦となったディエン・ビエン・フーの戦いを背景とした2004年のベトナム映画。ベトナム戦争を舞台とした『ベトナム激戦史1967 攻防ケサン基地』(映画板#1230)と同時期に発売・レンタルされたんですが、そっちが今ひとつだったんで借りそびれてるうちにレンタル店からは撤去され、その後ブックオフで中古DVDを500円で買いました。無駄遣いだなぁ。原題を直訳すると「ディエン・ビエンの思い出」となるようで、この手の戦争映画DVDにありがちな誇大広告的邦題とパッケージですが、それはまぁあらかじめ予想してたんで別に構いません(『ベトナム激戦史』も郵便配達兵が主人公の地味な映画だった)。
 若いベトナム兵と投降して捕虜となったフランス兵の友情やベトナム女性看護兵をめぐる三角関係を軸に、インドシナ戦争最大の激戦となったディエン・ビエン・フーの戦いを描いていく映画で、ベトナム軍全面協力らしく一応派手なドンパチもあるものの、本筋はあくまでドラマ部分。映画は(製作当時の)現在から始まり、主人公らの回想という形でインドシナ戦争に入っていくんですが、話がちょいちょい現在に戻り戦争と直接は関係のないエピソードも挿入されます。これが意外に面白い。主人公と看護兵が後に結婚したことが現在シーンの序盤で早々に触れられるんですが、2人の孫娘役を看護兵役の女優が二役で演じています。個人的にはどっちかというと現在(当時の)のベトナムが描かれるところのほうが興味深かったし、エピローグはパリでロケもされていてベトナム映画にしてはなかなかお金がかかった映画でした。戦争シーンももちろん金のかかった大作になっており、本物の戦車やちょいチープなCGの戦闘機や空挺部隊も出てくるんですが、むしろ失われた者たちへの鎮魂といった雰囲気の作風で、フランス側も主人公の1人だけあって悪者には描かれていません。ベトナムは映画産業があまり盛んではないからか、80年代後半から90年代前半頃の中華圏映画や韓国映画のような雰囲気でなんだかちょっと懐かしかったですね。意外な拾い物の1本でなかなか面白かったです。あとフランス語の台詞が、吹替や字幕ではなく全部女性の声の同時通訳みたいなのになってるのが、へぇ〜、ベトナム映画ってこうなんだと興味深かった。

>公開予定歴史関連映画
 チャン・イーモウ監督の『満紅江/マンジャンホン』が11月公開というニュースが。またえらく急だなあ。公式サイトにもまだ劇場情報がないけど、地元まで来るんだろうか? さすがにチャン・イーモウの映画は今まで東京より多少遅れることはあっても、あらかた来てはいるんですが。
 映画は一応歴史に関係してまして、南宋の時代が舞台。名将・岳飛が死んで4年後、宰相・秦檜によって強国・金との間に和平が成立しようとしていたところ、和平交渉の前夜に金の使者が何者かによって暗殺され、南宋皇帝に渡るはずだった密書も無くなっていた。事件に巻き込まれた南宋の若い武将と下級兵士に、秦檜は夜が明けるまでの2時間の間に犯人を見つけるよう命令。調査を進めるうちに2人の思惑や、背後に潜む陰謀が明らかになっていく……というようなストーリーらしい。岳飛の遺詩に着想を得た作品とのこと。なにしろチャン・イーモウなので歴史映画ではなく、あくまで歴史を背景としたフィクションの時代劇映画のようですが、まあ、こっちもチャン・イーモウに求めてるのはいわゆる歴史映画ではないんでね。非常に楽しみです。



#11534 
バラージ 2025/09/27 07:43
追記

 なお寛政元年(1789年)には土山宗次郎と誰袖をモデルとした山東京伝の黄表紙『奇事中洲話(きじもなかずわ)』が蔦屋から出ているとのこと。ドラマでは蔦重と誰袖が昔からの知り合いという設定でしたが、史実では蔦重と誰袖は何の関係もありません。おそらく土山の横領事件と誰袖身請けの話は江戸の巷でも噂の的で、今で言う絶好の週刊誌ネタ、ワイドショーネタだったことでしょう。商売人蔦重はこのネタは売れると考えて、あることないこと混ぜ込んだフィクションの本に仕立て上げて売り出したんでしょうね。スキャンダリズム、イエロージャーナリズムですな(笑)。



#11533 
バラージ 2025/09/26 21:26
噂の真相

 あれ? 『べらぼう』、松平定信の蝦夷地政策が史実とは正反対なんですけど……。確か定信は蝦夷地を未開発のまま無価値にしておいたほうがロシアの進出を抑制できると考えていたのでは? それに対して同じ老中の本多忠籌が蝦夷地を直轄化して開発しロシアの進出に対抗すべしという考えじゃなかったかな?……と思ったら、10年ほど前に定信自筆の「蝦夷惣論」という史料から、定信は忠籌と共に蝦夷地直轄案を唱えたが反対派が多かったため断念したという見解が出されているようです。ただ、どっちにしろあんな風に御三家や一橋治済にいちいち相談したりはしなかったと思う。
 田沼意次の蝦夷地政策については、以前紹介した呉座勇一氏がアゴラ言論プラットフォームに書いている「ラピダスは田沼意次の夢を見るか?」にくわしいですが、あくまで幕府の財政再建という視点で蝦夷地政策とロシア関係を考えており、国防や外交という視点は欠落していたようです。一方、定信は蝦夷地へと南下する大国ロシアにどう対応するかという深刻かつ現実的な問題を的確に認識していたと考えられ、そのような観点から蝦夷地政策が立てられていたと考えるべきでしょう。確か以前読んだ『「蛮社の獄」のすべて』(田中弘之、吉川弘文館)でも、定信が一時意次を刺し殺そうとまで考えたのは私怨に基づくとは到底考えられず、異国と無警戒に接触しようとする意次の政策を放置しては幕府が倒壊に導かれるという危機感からだったのではないかと推測していた記憶。実際、意次を刺し殺そうと考えたという告白は定信自身が公的文書に書いていることですから、僕も私怨が理由だったとは考えにくいと思います。

 以下やや蛇足。定信関係を検索したら近日発売の『未完の名宰相 松平定信』(大場一央、東洋経済新報社)という本がありました。著者の大場氏は歴史学者ではなく中国思想・日本思想研究者だそうですがそれはともかくとして、内容の説明文に「時代劇では「ヒール」として描かれがちな、「寛政の改革」を担った老中・松平定信。」という一文があったのが目に入りました。いや、確かに最近は『べらぼう』みたいに悪役回りのことも多いけど、そんなに悪役ばっかりということもないのでは? つい先日BS朝日で新作が放送されてた『無用庵隠居修行』シリーズ(原作は海老沢泰久)でも杉本哲太演じる定信は水谷豊演じる主人公に理解のある人物のようですし。ちなみにこの『無用庵隠居修行』、水谷豊主演で共演が岸部一徳という『だましゑ歌麿』(原作は高橋克彦)と同じ布陣の『相棒』コンビですが、いつの間にかもう9作目にまでなってるんですね。『だましゑ歌麿』のほうは4作で終わっちゃったようですが原作を使い果たしたのか? そっちの定信役は梅沢富美男なんで悪役回りかも(笑)。
 さらに追記ですが、アゴラ言論プラットフォームに呉座氏の新たな投稿「天明の打ちこわしはなぜ起きたのか:江戸のインフレを考える」が掲載されてます。また新たに見つけた呉座氏の田沼関係記事では、公研の「田沼意次は積極財政派か」というのもありました。

 そして本筋の蔦重関係。朋誠堂喜三二の『文武二道万石通』、恋川春町の『鸚鵡返文武二道』、唐来参和の『天下一面鏡梅鉢』が幕府に問題視されて絶版処分になったのは事実ですが、おそらく定信や幕府は作者まで処分することは考えていなかったのではないかと思われます。
 先日『蔦屋重三郎の時代 狂歌・戯作・浮世絵の12人』(佐藤至子、角川文庫)という本をたまたま立ち読みしたら面白かったんで買ったんですが、それによるとまず朋誠堂喜三二については水野為長の随筆『よしの冊子』の寛政元年(1789年)3月条に、天明8年(1788年)に喜三二が『文武二道万石通』で時事的な事を作品にしたので藩から万が一お咎めがあってはただでは済まないと国元(秋田)への異動を命じられたという「噂」が書かれており、また4月条には定信のことを作品に書いたことが定信の知るところとなったため藩が国元への異動を申し付けたという「噂」が記されているとのこと。ところが実際には『文武二道万石通』を書いたことで喜三二が表立って咎められた事実はないようで、当時の喜三二は御判物(所領目録)の確認と再交付という藩の大仕事の中心にいて、天明8年3月上旬に職務完遂、9月に褒美として帷子と銀子などを拝領し、10月には足痛のため駕籠の使用を許されているとのこと。一方で『文武二道万石通』は再刻版において登場人物から定信らを連想させる記号を削るなどしており、咎めを受けることを避ける自主規制バージョンが出版されているそうです。それでも結局は絶版処分となったんですが、やはり喜三二自身に処分は及んでいません。その後、喜三二は黄表紙界からは退いていますが、これは絶版処分を受けての自主的なものでしょう。
 唐来参和については同書には書かれていませんが、ネットなどで調べるとやはり参和自身は処分されておらず、自主的に2年ほど執筆をやめていただけです。
 そして恋川春町ですが、『よしの冊子』寛政元年正月の記事に『鸚鵡返文武二道』は実は春町の主君の松平信義が書いたものを春町名義にしたのだという「噂」が流れていたことが記されているそうです。また『近世物之本江戸作者部類』には寛政元年当時の「世間の噂」として、春町は『鸚鵡返文武二道』のことで定信から呼び出されたが病に伏せっていたため参上せず7月7日に亡くなったとあり、春町の家である倉橋家の「由緒&#24183;勤書下書」には4月に病を理由に御役御免を願い、退役後の7月7日に病死したとあるとのこと。自害したという同時代の史料はないようで、近現代になってからの歴史研究者による前後の状況からの推測のようです。しかし春町が定信に呼び出されたというのはあくまで「噂」で、喜三二や参和が咎めを受けていないのに春町だけが咎めを受けるとは考えにくいし、そもそも老中首座の定信が藩の重職にあったとはいえわずか120石の春町を直々に呼び出すというのも不自然で、これもまたただの「噂」にすぎず事実ではないと思われます。そうなれば自害する理由も無くなりますし、そもそもいくら定信から呼び出されたからといってそれだけでいきなり自害するのも唐突にすぎるでしょう。春町はたまたまその頃に病となり病死したという偶然が重なって、それが「噂」を呼んだものと考えられ、やはり幕府や定信は諸本を絶版処分にはしても、その作者まで処分することは考えていなかったと言っていいと思われます。

 最後にそれより少し前に戯作から手を引いた大田南畝についても触れておきます。南畝が戯作から手を引いたのは田沼が失脚した後ではありますが、定信が老中になるよりは前の御三家・御三卿と旧田沼派が押し問答してる時期なので定信とはあまり関係がありません。南畝が戯作から手を引いたのは彼のパトロンでもあった土山宗次郎が天明6年(1786年)に公金横領が発覚して逃亡した事件が原因です。
 幕府旗本の土山は仕事のできる人だったようで田沼に重用され蝦夷地政策にも深く関わりましたが、一方で高禄でもないのに南畝らを引き連れて吉原で豪遊し、遊女の誰袖を1200両という法外な金額で身請けするなど派手な生活を繰り広げました。おそらくその頃から当局にマークされていたと思われますが、田沼のお気に入りだったんで手出しができなかったんでしょう。田沼の失脚でようやく遠慮することなく逮捕ということになったんでしょうが、土山もそれを察知していち早く逃亡したものと思われます。土山は交流のあった平秩東作に匿われて潜伏していましたが結局発見され捕縛されています。なお土山の公金横領は500両で誰袖の身請けに使った1200両と計算が合いません。諸方面から賄賂をたんまりもらってたとも思われますが、他にも発覚してない公金横領の余罪があった可能性もあります。
 土山以上の微禄で、彼の援助で吉原に出入りしたり遊女を身請けしたりしてた南畝は、自分も公金横領の共犯と疑われるんじゃないかと震え上がって、当時編纂した狂歌集から平秩東作の狂歌を削除し、さらに翌年6月に定信が老中になると時流の変化も敏感に感じ取って狂歌仲間との交流も絶ってしまいます(土山は12月に斬首)。南畝が有名な狂歌「世の中に/蚊ほどうるさき/ものはなし/ぶんぶといひて/夜もねられず」の作者と疑われるシーンがドラマにもありましたが、現在ではこの狂歌は南畝の作ではないことが論証されているとのことで、当時の南畝としては甚だ迷惑な「噂」だったことでしょう。

 喜三二も春町も南畝もあくまで武士であり、戯作や狂歌は趣味、もっと言えば遊び(=戯れ)、さらに悪く言えば暇つぶしであり、それで本業を失うなど本末転倒な話だったでしょう。彼らは武士だけあって政治権力の時流の変化を敏感に嗅ぎ取り、ためらうことなく遊びのほうを捨てたものと思われます。そもそも戯作や狂歌によって収入(原稿料)を得ていたわけでもありません。一方で蔦屋などの版元は今で言う出版社兼書店のようなもので、それを生業として生計を立てていました。蔦重は出版社長兼編集者兼書店店長のようなものであくまで商売人であり、そこに彼らの考え方や意識のすれ違いがあったものと思われ、ドル箱作家を多数失った蔦重は新たな金脈を求める必要に迫られていきます。

 なお『べらぼう』の終わらせ方については、蔦重はなんといっても主人公ですし痛み分けのような形にはしないんじゃないかなぁ。定信の失脚のほうが蔦重の死より先ですし、あくまで蔦重が何らかの形で勝利したという展開にするのでは? あるいは史実における失脚後の定信が文化の守護者的になったことを利用して、定信も蔦重の信奉者になった的な展開とか……って、ここまでの定信の描写を見ると微妙な気もしますが。
 むしろ問題なのは、Yahoo記事でも見かけましたがここまで全ての黒幕的に描かれてる一橋治済をどうするかってことのほうのような。この人、この後死ぬまで特に挫折的なエピソードがないんですよねえ。


>読んだ本
 『二十四史 『史記』に始まる中国の正史』(岡本隆司、中公新書)を読了。『史記』から始まり『明史』までの中国の正史・二十四史の成立過程と史書としての性質を解説した、いわば「二十四史の歴史」を描いた本です。『史記』や『三国志』など個別に一書を扱った本はありますが、二十四史まとめてというのは、ましてやそれを新書でというのはうれしいところ。成立過程に重きを置いているので、『漢書』の次は『三国志』で、『後漢書』はその次。成立の遅い『晋書』はずっと後というように成立順に取り上げているのも良い。『後漢書』くらいまでは多少の知識はあったものの、その次の『宋書』より後の二十四史についてはほとんど知らなかったので非常に興味深かったですね。二十四史より後の『新元史』や『清史稿』、中華民国(台湾)版と中華人民共和国版という2種類の『清史』なども取り上げられており、内容的にはちょっと難解な部分もありましたがなかなか面白かったです。

>漫画版『写楽』
 小説版の存在をそもそも知らなかったんで、ましてやそのコミカライズがあったなんてことは全く知らず。『写楽』、そんなメディアミックスみたいなことしてたんですねえ。ちっとも気づかんかった。

>『GS美神 極楽大作戦!!』
 週刊少年サンデー連載時によく読んでましたが、アニメ化もされてたんですね。これまたちっとも知らなかった。原作マンガに歴史ネタが出てきた記憶もないんだけど、覚えてないだけで出てきたことがあったのかな?(そこまでのめり込んで読んでたマンガではないので……)



#11532 
ろんた 2025/09/21 12:34
また買ってしまった……(汗)

 手に入りっこない、と思っていた漫画版『写楽』(皆川博子,大竹直子/小池書院)。ブックオフから入荷のお知らせがあって買ってしまう。ネットのレビューを見ると、上下に定式幕風の帯、白地にタイトル、そして隈取りという装丁のせいで、ハードカバーの小説だと勘違いして買ってしまった人が結構いるらしい(笑)。
 内容的には、蔦重の死にとんぼが立ち会うなどアレンジはあるものの、小説準拠で斎藤十郎兵衛は登場しない。ただラストは映画のエピソードを取り込んでいて、とんぼと花里の道行きがある。うまくいった風に終わってるけど。そしてエンディングで、<世界三大肖像画家=レンブラント、ベラスケス、写楽>説が出てくるのはご愛敬。
 読んでいてなんだか気になるのはBL臭(笑)。とんぼと蔦重、喜多川歌麿、十返舎一九、佐五郎(馬琴)、勝川春朗(北斎)、五代目市川団十郎、俵蔵(南北)との関係でプンプンする。美形に描かれているキャラが多いせいか、と思ったら、絵師の方はそっち方面でも活躍されているらしい。ああ、念のため言っておきますが、ポルノ的描写はありません(汗)。
「元禄蝶々伝」という短編も収録。「写楽」と同じく角川書店の「ミステリーDX増刊 歴史ロマンDX」に掲載されたものでオリジナル。垣間見た花魁の艶姿に憧れた不器量な娘が進んで身売り。客がなかなかつかなかったが、義挙を前に堀部安兵衛に連れられて吉原にやってきた大石主税の相方にたまたまなる。浪士らが本懐を遂げると、それが評判になって売れっ子になるという忠臣蔵外伝(?)。「蝶々」というのは主人公の源氏名「胡蝶」に由来すると思われる。

以下は家に転がっていたDVDの話。いや、本読んでないんですよ(汗)。

>映画「征服への道」(Captain from Casile 1948)
 昔、テレ東で午後に放送していた(確か珍しく前後編だった)ものを録画、さらにVHSからDVD化したもの。今の「午後ロー」とは放送時間がちょっと違っていた記憶。
 貴族の子息ペドロ・デ・バルガスは、異端審問官ディエゴ・ダ・シルヴァの下から逃亡した奴隷を匿い、ディエゴとトラブルになる。やがて一家はディエゴに身に覚えのない疑いをかけられ離散、婚約者も奪われてしまう。進退窮まったペドロはコルテスの軍に身を投じメキシコへ。アステカ王国との戦闘で名をあげるが、そこにキューバ総督の指揮下に入ったディエゴが、増援部隊を率いて現れる……。主役が海洋冒険ものなどで活躍したタイロン・パワー。ということで世界観が古い。異端審問官が全編通しての悪役というのはいいとしても、コルテスを英雄視しているところでアウト!(笑) アステカの神像を大砲でバラバラにしちゃったりする。

>「GS美神 極楽大作戦!!」(小学館=旭通=東映動画/1994)
 1993〜1994年にかけてニチアサで放送されていたアニメの劇場版。とはいえ上映は放映終了後。どうも「らんま1/2」の併映として制作されたらしく、劇場版としては上映時間が短い(60分)。一応、歴史ものかなぁ?
 オカルト事案全般を扱うGS(コーストスイーパー=除霊師、退魔師)。その中でも美神玲子は美貌と実力でトップランクと目されながら、金への執着の強さで悪評も高かった。そんな美神の事務所に「明智光秀」と名乗る鎧武者の亡霊が現れ、最悪最恐の吸血鬼ノスフェラトゥの復活阻止を依頼する。16世紀、ヨーロッパから追放されたノスフェラトゥは日本に現れ、織田信長を殺して入れ替わったのだという。信長による数々の残虐行為は実はノスフェラトゥの仕業であり、本能寺の変は退魔師であった光秀による、ノスフェラトゥ退治だったのだ。だが、大幅にノスフェラトゥの力を削いだもののとどめはさせず、400年の時を経て復活の時が迫っている。精霊石でできた槍(時価450億円)という超高額の報酬に目がくらみ、美神は引き受けるのだが……というお話。レギュラーキャラ総登場で、そのうち青野武は明智光秀も演じる。見どころは納谷吾郎が怪演する名古屋弁の織田信長(笑)と東京都庁を変化させた安土城。森蘭丸(古川登志夫)も魔物として登場。

>「べらぼう」
 なんだか蔦重vs松平定信という展開にして、蔦重は死に、定信は失脚するという痛み分け(?)で年末に向かう気が。で、現代のメディア状況と蔦重を重ね合わせるナレ、そこに「終」の文字がドドーン(笑)──と予想するけど違うかな。

>「仮面の忍者 赤影」
「赤影参上!」「だいじょ〜ぶ」「あ〜かかげどの〜!」ってことで旧作は見たことあるんですな、再放送だと思うけど。(映画は見てない。さすがにカバエワとか出て来るとか聞くと白けてしまう) 登場するのは、旧作では羽柴秀吉じゃなくて木下藤吉郎で(YouTubeで確認するとOPのナレーションで「豊臣秀吉がまだ木下藤吉郎だった頃……」とある)、なんか微妙な改変があるのかな。あらすじは「織田信長の天下統一が目前に迫った頃……」ということで年代を特定していないが、とりあえず元亀三年以降ということか。また「忍びとして影に生きる青年(佐藤大樹)が、やがて《仮面の忍者 赤影》として立ち上がる物語が幕を開ける。」ということで、EP0的なところから始まるのかもしれない。放送予定の時間帯は現在もドラマを放送しているんで、うちは「一部地域」にならずにすみそう。



#11531 
バラージ 2025/09/14 23:00
わずか5年前

 今年に入って、『この夏の星を見る』(映画板#1946)、『サンセット・サンライズ』(映画板#1933)などコロナ禍を舞台とした映画を観る機会があったんですが、映画板での感想にも書いたけど映画を観て、あー、こういうことあったあったとなることが結構多いんですよね。たった5年前なのに、あんな大変な事態だったのに結構忘れちゃってる。これはなにも僕に限ったことではないようで、映画出演者のインタビューなどでも同じことを言っている俳優さんが結構います。そういう意味でもあの頃を舞台とした映画やドラマはまさに今こそ作られるべきなんでしょう。


>♪ビジネスマーン、ビジネスマーン(古いネタだなぁ)
 うちの家族は政治の話ばっかりになってきちゃってつまんなくなったと『べらぼう』から脱落しかかってます。僕も正直そこはドラマとしてはちょっとどうなんだろうと疑問あり。年初のほうで言った通り文化と政治が8対2から9対1ぐらいがちょうど良かったと思うんですよね。僕もその頃のほうが単純にドラマとして面白かったし。
 それにしても相変わらず松平定信の矮小化が著しいなあ。定信が『文武二道万石通』を自分を応援してるものと勘違いするなんてあり得ないでしょう。田沼を風刺すると見せかけて実際は定信を風刺する内容だという設定もかなり無理のある話で、実際には今は社会風刺の本がウケるという商売上の判断が大きかったはず。そういう意味では蔦屋重三郎はどこまでも商売人で、反骨だ何だと持ち上げるのは少々疑問ですね。定信からは、たかが黄表紙、一時の流行ですぐ忘れ去られるだろうとお目こぼしを受けてただけで、それが予想外の大ヒットとなったため蔦屋側もあわてて内容に修正を加えたものの、定信は全てお見通しだったようです。なお画は史実では歌麿の弟子の喜多川行磨。歌麿はすでにこの頃弟子を複数持ってたようですが、ドラマでは相変わらず駆け出しの画家みたいに見えますね。

>蔦屋、再び
 『べらぼう』の登場人物が出てきたその他の映画やドラマについて何度か書いてきましたが、そもそも主人公の蔦屋重三郎が出てきた作品が年頭の#11481で紹介した、映画『歌麿をめぐる五人の女』(1946年)、『歌麿 夢と知りせば』(1977年)、『北斎漫画』(1981年)、『HOKUSAI』(2021年)、ドラマ『だましゑ歌麿』T〜W(2009年〜2014年)、ろんたさんが#11527でご紹介の『大江戸捜査網2015』(2015年)の他にもいろいろあったようです。おそらくはもっぱら脇役ばかりでしょうが、映画『人形佐七捕物帖 浮世風呂の死美人』(1958年、演:石川冷)、ドラマ『写楽はどこへ行った』(1968年、NHK、演:山形勲)、『わが父北斎』(1970年、TBS、演:高橋昌也)、『浮世絵女ねずみ小僧』第1部(1971年、フジ、演:松本克平)、『江戸巷談・花の日本橋』(1971年、フジ、演:安井昌二)、『大奥』(1983年、フジ、役名は鶴屋重三郎、演:粟津則雄)、『橋の上の霜』(1986年、NHK、演:山田吾一)といった作品に蔦屋重三郎が登場するようです。
 ついでに紹介済みの『べらぼう』のその他の登場人物が出てきた映像作品で後で知ったものを追記。松平定信の義母(父・田安宗武の正室)の宝蓮院は映画『大江戸風雲絵巻 天の眼』(1957年、演:夏川静江)に、三浦庄司はドラマ『紫頭巾』(1972年、東京12チャンネル、演:外山高士)、『闇を斬れ』(1981年、フジテレビ、演:小林昭二)に、杉田玄白はドラマ『翔んでる!平賀源内』(1989年、TBS、演:竹脇無我)にそれぞれ登場したとのこと。
 それからこちらは未紹介の登場人物の登場作品の紹介。老中の松平康福は映画『大江戸風雲絵巻 天の眼』(1957年、演:藤間林太郎)、『紫頭巾』(1958年、演:堀正夫)に、同じく老中の水野忠友は映画『大江戸風雲絵巻 天の眼』(1957年、演:野沢英一)、『続大奥(秘)物語』(1967年、演:堀正夫)、ドラマ『翔んでる!平賀源内』(1989年、TBS、演:石濱朗)、『無用庵隠居修行6』(2022年、BS朝日、演:山下禎啓)に登場したとのこと。共演?してる人が結構いますね。

>どスケベ将軍の出てきた映像作品
 ついに本役が登場した大河ドラマ初登場の江戸幕府11代将軍徳川家斉。寛政の改革で多少持ち直した幕府財政を、田沼時代を上回る放漫財政で大いに傾けた将軍ですが、そんなことよりも17人以上の妻妾と53人の子供を作った性豪将軍としてのほうが有名かな。松平定信は房事(SEX)はほどほどにすべきみたいなことを書いてるそうですが、古代中国でも房事のやり過ぎは寿命を縮めるみたいな考えがあったはず。しかし家斉は当時としては結構長生きしたんで、まあ結局そういうのは人それぞれなんでしょう。そんな家斉が出てきた映画やドラマを見てみるとやっぱりほぼ時代劇ばかりで史劇はほとんどありません。よって当然ながら歴史映像名画座掲載の作品にも登場作は無し。
 僕が観てた作品では、ドラマ『大江戸捜査網』の第3部(1973〜1984年、東京12チャンネル、演:下塚誠・鹿島信哉)に出てきたらしいんだけど記憶になし。『必殺仕事人V 旋風編』『同 風雲竜虎編』(1986年・1987年、テレ朝、演:佐竹明夫)や『必殺スペシャル・新春 大奥、春日野局の秘密』(1989年、テレ朝、演:加賀邦男)にも出てきたらしいけど、この辺の必殺シリーズは観たんだか観てないんだか記憶が曖昧。『御家人斬九郎』第1部(1995年、フジ、演:田村高廣)にも出てきたらしいんだけど、これも記憶にないなあ。まあ個人的にはテレビ時代劇って毎週観てたわけではないんで……。
 観てない作品だと、家斉が出てくる松本清張の時代小説『かげろう絵図』(未読)が何度か映画化・ドラマ化されていて、1959年の大映映画(演:柳永二郎。監督は衣笠貞之助、主演は市川雷蔵)、1983年の単発ドラマ(フジ、演:浜田寅彦)、2016年の単発ドラマ(フジ、演:津川雅彦)に登場してるようです。大奥ものも徳川将軍はもれなく登場する作品と言って良く、1968年版『大奥』(フジ)では西村晃が家斉を演じたとのこと。個人的に2代目水戸黄門のイメージが強いんでなんか違和感。1983年版『大奥』(フジ)では丹波哲郎とのことで、こちらはイメージにぴったり(こら)。2016年の『大奥 第一部 最凶の女』『第二部 悲劇の姉妹』(フジ)では成宮寛貴といきなりイケメンになっちゃいましたが、これは家斉の側室お美代(専行院)が第一部の主人公だから(第二部の主人公は架空の女性でやはり家斉が相手役)。2023年のNHK版男女逆転『大奥』では中村蒼とこれまたイケメン。家族の付き合いでチラッと観てたけど、そういやここで逆転してた男女がなぜか一時もとに戻ったんだよな。飛び飛びに観てたし真剣に観てなかったんで、なんでかはわかんないけど。2024年の『大奥』(フジ)では鈴木福。福くんも大人になりました。
 さらにその他ではドラマ『天下御免」(1971年、NHK、演:植田浩敏)とその続編『びいどろで候 長崎屋夢日記』(1990年、NHK、演:細川俊之)。『闇の傀儡師』(1982年、フジ、演:岡本崇)、『夢暦長崎奉行』(1996年、NHK、演:三浦洋一)、映画『雷桜』(2010年、演:坂東三津五郎)、ドラマ『咲くやこの花』(2010年、NHK、演:寺泉憲)、『大江戸捜査網2015』(2015年、テレ東、演:小澤亮太)、『小吉の女房』『小吉の女房2』(2019・2021年、NHK、演:いわすとおる)といったあたりに登場したようです。妻子のいっぱいいた性豪将軍として有名だからか1970年代あたりのポルノ時代劇映画にもしばしば登場したようで、その他にも登場作品は山ほどあるようですがきりがないんで省略。

>歴史関連?民放特撮時代劇ドラマ
 はるか昔の1967年に実写ドラマ化された横山光輝のマンガ『仮面の忍者 赤影』が、なんと10月からテレ朝で深夜にまた実写ドラマ化されるとのこと。監督は三池崇史で、主演の赤影役は佐藤大樹(EXILE / FANTASTICS)。青影役が木村慧人(FANTASTICS)、白影役が加藤諒、滝川一益役が忍成修吾、羽柴秀吉役が柄本時生とのこと。2001年にも『RED SHADOW 赤影』として実写映画化されてますが、確か観た友人が酷評してた記憶。僕はいずれも未見で原作も未読です。



#11530 
バラージ 2025/09/08 21:31
贔屓の引き倒し

 いやぁ、『べらぼう』。予想してたこととはいえ田沼よいしょと定信叩きにも程がありますな。呉座勇一によると「現在の歴史学界では、田沼の評価に対する揺り戻しが起こっており、田沼の政策の限界・問題点が指摘されている。田沼は、その斬新な政策を理解できない守旧派に足を引っ張られたから失脚したとは必ずしも言えない。田沼自身の政策に欠陥があり、改革が挫折したからこそ、失脚したのである。」とのこと(WEB歴史街道「田沼意次は悲劇の改革者と言えるのか? 経済政策で加速した「利権政治の横行」」)。呉座氏はアゴラ言論プラットフォームでも、「江戸幕府の物価対策B:田沼意次は「反緊縮」か?」「ラピダスは田沼意次の夢を見るか?」「田沼意次の汚職は冤罪か?」「田沼政治はいつ始まったか?」など田沼に関する論考をいくつか投稿していて、それらを読むとなかなか参考になります。その他にも『べらぼう』絡みの投稿として、「平賀源内は「山師」だった」「平賀源内と杉田玄白の明暗はどこで分かれたか」「『赤蝦夷風説考』の著者、工藤平助とは何者か?」「『赤蝦夷風説考』はどのようにして執筆されたか」などの論考が書かれており、それらも面白く読みました。
 なお、一般的には将軍家治が危篤に陥り後ろ盾が無くなったことが意次の命取りとなったとされてますが、逆に家治が危篤だったことは意次にはラッキーだったとする説もあるようです。江戸幕府では老中が失政の責任で解任される例がしばしばあり、意次の失脚も彼の政策が行き詰まった政治責任によるものであって、家治が健在なら解任というもっと厳しい処分が取られたはずであり、それが(少なくとも当初は)依願退職という穏便な措置となったのは家治が危篤だったことが幸いしたとする説です。
 またドラマでは描かれませんでしたが、意次が辞任した途端に田沼派だった幕閣らが速攻で意次との縁を切っています。勝手掛老中の水野忠友(演:小松和重)は養子とした上で娘と結婚させていた意次の四男忠徳(後の田沼意正)を義絶して田沼家に送り返し、老中首座の松平康福(演:相島一之)も意次との絶縁を幕府に届け出た上、意知の妻だった亡き娘を改葬しています。意次に取り立てられて奥医師になっていた千賀道隆も意次との絶縁を幕府に届け出、意次の三女を妻とした奏者番・西尾忠移と四女を妻とした若年寄・井伊直朗も死別した妻を改めて離縁したとのこと。意次はまだ病という名目で依願退職しただけなのにあっという間に孤立無援になってしまいました。田沼派だった彼らは意次の失脚に巻き込まれることを恐れたんでしょう。意次の失脚の理由が失政である以上、依願退職だけで済むわけがなく、案の定3カ月後には領地のうち2万石の没収、大坂の蔵屋敷と神田橋の上屋敷の返上、そして謹慎という追罰が下されます。その一方で幕閣は、御三家と一橋治済が推す定信の老中就任には強く抵抗しました。御三家と治済は旧田沼派の幕閣の処分も求めており、また定信の厳しい政治姿勢を考えるとおそらく自分たちの処分も免れないことが明らかだったからでしょう。土壇場になってから田沼との縁を切ったところで、彼らがもともと田沼派だったことは明白であり、そんなごまかしは効かなかったのは当然だと思われます。
 そのような膠着状態の政治空白の中で起こったのが天明の打ちこわしで、意次の政策の失敗と失脚およびその余波である政局の混乱の中で、幕府が天明の大飢饉に有効な手立てを打てなかったことが江戸市民の怒りを買ったということでしょう。一時、江戸の街が無政府状態に陥ったことは幕府や将軍家斉の父である治済にとっても衝撃で、当然ながら幕閣の責任問題となります。まず家斉に打ちこわしの真相を伝えなかった旧田沼派で当時飛ぶ鳥を落とす勢いと言われた将軍側近である御側御用取次の横田準松が、別の情報源から打ちこわしの実情を聞かされた家斉の怒りを買い解任されます。その他の旧田沼派の老中ら幕閣も一掃され、ここにようやく定信の老中就任の道が開かれました。杉田玄白は「もし今回の騒動がなければ、御政道が改まることはなかっただろう」と書いているとのことで、定信自身もかつてない幕府政治の危機を十分に認識し、いかに失墜した幕府の権威を回復していくか、社会不安の根底にある都市や農村の諸問題を解決していくかに取り組んでいくことになります。


>足利YOSHIKI
 森田健作!(笑) ますます足利義材(義尹・義稙)のイメージからは遠ざかるなあ。個人的には森田健作なんてやめてくれよ、おい、と思っちゃうんですけど。ちなみに義稙は確かにもう1回将軍になりますが、でも結局また没落しちゃうんですよね。『陰徳太平記』によると、2度目の没落後に義稙が逃れた淡路において、「たぞやこの/鳴門の沖に御所めくは/泊り定めぬ/流れ公方か」という狂歌が貼り出されたとのこと。また『塵塚物語』には、義稙評として「御こころ正直にして、やさしき御むまれつきなり」とあるそうで、生涯に渡って苦労人だった義稙は将軍には珍しく民の生活にも心を寄せていたとの逸話があるらしい。なおNHK大河ドラマ『花の乱』では大沢たかおが、『毛利元就』では田口トモロヲが、BS時代劇『塚原卜伝』では本田博太郎が演じていて、なんだかだんだん怪優度が上がっているような(笑)。♪Forever Dream&#12316;。

>読んだ本
 陳舜臣の小説『曹操残夢 魏の曹一族』(中公文庫)を読了。去年読んだ『曹操 魏の曹一族』の続編で、曹操死後の魏の曹一族を描いた作品です。『曹操』があんまり面白くなかったんで読みそびれていたんですが、こちらはなかなか面白かったですね。三国時代のあまり有名じゃない時代と舞台なのが良かったのかな。明確な主人公はいない小説ですが、最初から3分の2ぐらいまでは曹植が事実上の主人公格と言ってよく、あとがきを読んだら陳氏は曹植の詩の大ファンらしい。曹植の死は諸葛亮と同年ですが、その後はさすがにダイジェスト気味になり、やや駆け足で終わっています。まあ明帝曹叡死後の曹魏は司馬氏に乗っ取られていく一方なので、やっぱり曹一族を主人公には描きにくいんでしょう。架空人物も前作に比べると出番が抑えられ、『秘本三国志』程度にとどまっているのも良かった。調べるとこれが陳舜臣の小説としての遺作となったようですね。

>三国志スパイドラマ
 NHK-BSで9月11日から『三国志外伝 愛と悲しみのスパイ 風起隴西』(原題:風起隴西)という中国ドラマの日本語吹替放送が始まります。もともとは『風起隴西 SPY of Three Kingdoms』という邦題でDVD化およびテレビ放送がされてたんですが、またNHKはなんちゅー邦題を(苦笑)。内容は文字通りスパイ(密偵)たちの活躍を描く三国志裏面史もので、主人公ら登場人物の半分以上は架空人物のようです。オリジナルは全24話ですがNHKではまたも全17話の短縮版で放送。原作は『三国志 Secret of Three Kingdoms(三国志 秘密の皇帝)』や『長安二十四時』の原作者でもある馬伯庸の小説とのことで、『風起隴西 三国密偵伝』の邦題でハヤカワから邦訳も出てるようです。



#11529 
ろんた 2025/08/31 15:56
近況報告

 大作読みすぎの後遺症か、いまだに『少年十字軍』(皆川博子/ポプラ文庫)も『クロコダイル路地』(皆川博子/講談社文庫)も手つかず。相変わらず「シャム猫ココ」シリーズを読んでいて、入荷があると注文。さらには赤川次郎の「夫は泥棒、妻は刑事」シリーズ(徳間文庫)だの「三毛猫ホームズ」シリーズ(カッパノベルス,光文社文庫,角川文庫)の最新刊を買う。そればかりでなく「家政婦は名探偵」シリーズ(創元推理文庫)も買い漁るのであった(笑)。「家政婦は名探偵」シリーズはビクトリア朝が舞台なので、ここで話をしてもいいかなと思ったりして。人が良すぎて難事件を押し付けられるロンドン警視庁のウィザースプーン警部補だが、推理能力は人並み以下。そこで家政婦ジェフリーズ夫人以下の使用人たちが探偵団を結成してご主人様のために一肌脱ぐ……というユーモアミステリーなのでやりませんけど。

>「シミュレーション」BPOへ提訴
 個人的にはかなり気を使っていた印象。名前を変えているし、ドラマ後のドキュメンタリー部分では、実際の総力戦研究所所長・飯村穣中将はこうでした、と解説もしている。もっとも飯村豊氏にしてみれば、資料を提供したり色々協力してやったのになんだ、となったのかもしれない。もっと「このドラマは史実をもとにしたフィクションである」と強調すればよかったのかな。東條や開戦派からの圧力に抗する飯村という描き方もあったと思うけど、それだと総力戦研究所というテーマからずれちゃう。ネットでは「ドラマを本当だと思う人が出てきたらどうする」という意見もあるようだが、そこまで責任は持てないよ。

>足利義材
 ゆうきまさみ先生の中で足利義材は「青春の巨匠」(=森田健作)ということになっているようです(笑)。逆境続きな人生、底抜けポジティブでなければ心が折れちゃうということでしょうか。最後は将軍として復権するし。



#11528 
バラージ 2025/08/27 20:34
まーた陰謀論かよ

 天明の打ちこわしまで一橋治済の陰謀にされてしまった。しかも治済自身がいつもの変装家臣ともども変装して打ちこわしを煽るって、んなアホな! 『鎌倉殿の13人』で生田斗真が演じてた源仲章が史実の学者御家人から大陰謀家にされた時にも、はあ?と思ったんでなんか嫌な予感はしてたんだけど、役者のイメージ先行なんじゃねーの? 幕府のお膝元である江戸での打ちこわしは幕府の権威失墜につながるもので、ひいては将軍家斉にも傷がつくんだから、父である治済がそんなことするわけないよなあ。むしろ治済や松平定信も江戸での打ちこわしには非常に強い危機感を抱いたはずです。
 『べらぼう』での治済の描写については、どっちかっていうと『風雲児たち』よりも同じ森下佳子脚本で一昨年NHKで放送された男女逆転版『大奥』の影響が強いような気も。あちらも原作マンガがありますし。まあ、そっちの原作が『風雲児たち』の影響を受けたっていう可能性も無いではありませんが。そもそも一橋治済は創作作品に出てくると(出てくるのがほぼ時代劇ということもあり)だいたい陰謀家に描かれるようで、僕が昔観たNHK単発ドラマ『風光る剣 八嶽党秘聞』(原作は藤沢周平『闇の傀儡師』)でもそんな感じでした。
 史実の治済については、Yahooニュースにもあった濱田浩一郎氏のプレジデントオンラインの記事「史実とは様子が違う…「べらぼう」で生田斗真が演じる一橋治済は本当に「江戸城の怪物」だったのか」を読んでも、そこまでの影響力は持ってなかったようですね。考えてみれば幕末に13代将軍徳川家定の後継をめぐって親藩・外様の大名たちが一橋慶喜を推した際にも幕閣の譜代大名が推す紀州慶福(家茂)に決まっており、慶喜と親藩外様大名(うち1人は慶喜の父の水戸斉昭)はそろって大老の井伊直弼に粛清されています(安政の大獄)。この一事を見ても親藩大名の影響力はそれほど強くなかったことは間違いないでしょう。


>『べらぼう』では描かれなかった幕閣の動き
 あくまで蔦屋重三郎が主人公だから当然ですが、幕府の動きなど政治史的な部分についてはわりと省略気味。もちろんドラマとしての面白さが優先なんで文句があるわけではないんですが、省略された幕閣の人事などについてちょっと書きたくなったんでその話。
 まず1779年に石坂浩二が演じていた老中首座の松平武元が死去。ドラマでは意次と対立気味でしたが史実では特に対立はしておらず、むしろ協力関係にあったようです。それと武元がえらく爺さんになってましたが、実際には意次より5歳上なだけでした。晩年は病がちだったらしく、たびたび辞職願を出してたそうですが、そのたびに将軍家治から慰留され、結局在職のまま亡くなってます。もちろん暗殺なんてされてません(笑)。
 次に老中首座になったのはドラマではいつも武元の隣にいて影の薄かった松平輝高(演:松下哲)。武元の死後は意次が幕政を主導したものの、輝高は(武元同様に)意次の先任老中であり首座となるのは順当な人事でした。この輝高老中首座時代の1781年に起こったのが絹一揆(または上州絹一揆)ですが、ドラマでは全く触れられず。幕府が上野・武蔵両国10カ所に絹糸貫目改所(幕府が街道往来の荷物の重量を検査するために置いた役所)を設置し、織物や糸の取引のたびに改料(改所が検査・鑑定を行う際に徴収した手数料や税金)を徴収しようとした政策に反対した一揆で、参加村落は西上州一帯に広がり支配領域を越えて結集した広域闘争の1つとのこと。改所撤廃を訴願する一方、上野国小幡・吉井・藤岡・新町・倉賀野などで同改所設置を画策した豪商農宅を打ちこわし、さらに一揆勢は改所設置に最終的な許可を与えた輝高の高崎城下へと押し寄せ、高崎藩は鎮圧のために発砲して死者を出す事態となりました。その後も打ちこわしは散発的に展開するものの、幕府が改所設置を取り消したことで終息したとのこと。意次の主導する幕府は株仲間を公認してそこから冥加金(税金)を徴収する政策を取ってましたが、田沼政治のそのような「大山師」的政策が失敗に終わったものの1つと考えられているようです。輝高は自らの失政も絡んだ領国での大一揆にショックを受けたのか気鬱の病となり、辞職を願い出たものの将軍家治に慰留され、結局その年のうちに在任のまま死去……ってまたそのパターンかよ。ドラマでは絹一揆自体が描かれなかったこともあって、輝高はいつの間にかいなくなってしまったようです。まあ『べらぼう』は江戸の話なんで江戸以外のことはほとんど描かれてないからなあ。天明の大飢饉もあんまり触れられてないし。ちなみにこの絹一揆を題材として高橋直樹が『絹の筵旗 爆裂・正義なき上州一揆』(祥伝社、1999年)という小説を書いてますが、やはり題材がマイナーすぎたのか文庫化に至らず絶版になったみたい。Amazonや読書メーターにも感想が1件も書かれてないんだもんなあ。
 その次に老中首座となったのはやはり意次の先任老中で相島一之が演じている松平康福。ところが意次はそれまで老中首座が兼任するのが慣例だった勝手掛(財政担当)に水野忠友(演:小松和重)を強く推薦。現在も出演中の2人ですね。以前書いた通り康福は娘を意次の嫡男意知の妻としており、また忠友は意次の四男を養子として娘と結婚させ水野忠徳(後の田沼意正)と名乗らせるなど、2人とも意次と姻戚関係を結んだ田沼派でした。意知が暗殺された1784年には井伊直幸が大老に就任。大老というと直幸の孫の直弼のように非常時に老中より上の大権を握ったみたいなイメージがありますが、実際には名誉職に近いことも多かったようで、直幸は意次に賄賂を贈って大老になれたなどという噂が流れたとのこと。政権運営にも参加したようですがドラマには出てこないのでした。

>『べらぼう』の人が出てきた映像作品
 大田南畝は1997年から2001年までTBSで放送された連ドラ『南町奉行事件帖 怒れ!求馬』シリーズにも大田蜀山人の名で登場したようです(演:植木等)。このドラマ、確か『水戸黄門』とかの時間帯に放送されてた原田龍二主演のドラマで、家族が観てたんだったかで僕も付き合いで時々観たような記憶がありますが、大田蜀山人というか植木等の記憶は全然ないなあ。ま、あんまり真剣に観てなかったし。配役を見てもわかるように当時視聴率が右肩下がりだった時代劇の人気復活のため、やや若い人向けを狙った時代劇だったような記憶ですが、当然ながら復活にはならなかったものの、多少の延命ぐらいにはなったのかな?

>ドラマ『シミュレーション』
 僕は観てないんですが、何やら劇中の描写について事実と違うと登場人物の孫から訴えられたようですね。訴えたのはドラマでは國村隼が演じていた総力戦研究所所長・板倉大道のモデルとなった総力戦研究所初代所長・飯村穣中将の孫で元フランス大使の飯村豊氏とのこと。放送倫理・番組向上機構(BPO)へ申し立てる意向だそうで。やっぱり近現代史が舞台になるとこういうことが起きやすいのかな。さすがに織田信長や徳川家康の子孫が事実と違うと訴える可能性は低いでしょうし。
 ドラマの内容については観ていないのであまり言えないんですが、実は当時の国民には戦争支持の空気が強かったのに戦後は東条ら一部の陸軍軍人と指導者層(支配者層)に責任を押し付けて、国民(と昭和天皇や海軍)は騙された被害者の位置に置かれて免責されたってのは事実だと思うんです。また国内のリベラル派知識人ばかりでなくGHQや中国共産党政府もそれを支持したため、国民の責任がうやむやになったというのも確かでしょう。ただ、だからといって国民の戦争責任を追及した結果、逆に東条らの責任が減免されてしまうというのはちょっと違うんじゃないかと思うんです(そういや未見の映画『聯合艦隊司令長官山本五十六』なんかも近年の歴史学では追及されている山本の戦争責任が等閑視されてるっぽい)。臨床心理学者の河合隼雄が指摘してましたが、日本はドイツのヒトラーのような明確な指導者を欠いたまま皆でなんとなく戦争に突入してしまったのであり、その「皆」には陸海軍軍人も政治家も官僚も天皇も報道機関も文筆家も芸術家も宗教家も、そして国民もその全てが含まれるはず。だから東条を減免することなく国民の戦争責任も追及するという態度が必要なんではないかと思うんですが、そのような「一億総懺悔」みたいな態度は結局戦争責任の所在を曖昧にしてしまうのも事実で、非常に難しい問題だとも感じます。

>超ポジティブな足利義材
 うーん、個人的に足利義材(義尹、義稙)にはそんなイメージあんまりないんだけどなあ。子供の頃から近江で亡命生活だったわけで、結構鬱屈した青春というか、生涯に渡って逆境人生だったんではないだろうか?

>『三国志 秘密の皇帝』
 東京のローカル局?TOKYO MXで9月5日から放送が始まるとのこと。初の地上波放送ですね。NHK-BSのような短縮版吹替放送ではなく、完全版の54話バージョン字幕版のようです。邦題も正式にこちらに改題なのか? まあ「Secret of Three Kingdoms」ってサブタイトルはちょっとわかりにくかったもんなあ。

>観てない歴史映画
 そういや思い出したけど、春先に地元でも公開されたドイツ映画『ゲッベルス』は見逃しました。DVD化されたら観ようと思います。それから夏公開の韓国映画『ハルビン』はやはり地元では公開されず。こちらもDVD化されたら観ようと思います。



#11527 
ろんた 2025/08/26 00:59
「大江戸捜査網2015〜隠密同心、悪を斬る!」

『少年十字軍』(皆川博子/ポプラ文庫)は手つかず。それどころか『海賊女王(上)(下)』(皆川博子/光文社)を購入してしまう。文庫本を探していたんだけど見つからずに単行本。エリザベス一世のアイルランド支配に抗ったグラニュエル・オマリーの物語──ということで、すっごく面白そうなのだ。でも500ページ×3の後遺症か、読む気にならず。『クロコダイル路地』(皆川博子/講談社文庫)もあるし。ということで、読んでいるのは「シャム猫ココ」シリーズなのでありました。

 さてタイトルのやつはドラマなわけですが、バラージさんの書き込みで「確かに隠密同心のボスって松平定信だったなぁ」とネットを彷徨っているうちに見つけてしまった。全然覚えてなかったけどテレ東の新春ワイド時代劇(2015/01/02 18:00-23:10)で、田沼の没落、松平定信の権力掌握、定信と一橋治済の対立を背景に大江戸捜査網の結成と隠密同心の活躍を描く──という感じのEP0もの? ほぼ「べらぼう」と同時代ということで、平賀源内(小林稔侍)、春朗=葛飾北斎(永井大)、松平定信(加藤雅也)、田沼意次(瑳川哲朗)、一橋治済(西村雅彦)、蔦屋重三郎(山田純大)、近衛寔子(小芝風花)、田沼意知(高知東生)、佐野善左衛門(佐野圭亮)、島津重豪(伊吹吾郎)、徳川家斉(小澤亮太)と実在人物が多く登場してしかも多くかぶってる。平賀源内はもう死んでるはずだけど、意次の国元で匿われていたという設定(意次の娘・早苗(波瑠)の教育係)。春朗=葛飾北斎は田沼の密偵で、そのせいで引っ越しが多かったということになっているらしい。小芝風花はこちらでは家斉の正室。高知東生の謹慎というか引退(現在は復帰)はこの年。再放送の機会が無いのはそのせい? 里見浩太朗(内藤勘解由)、瑳川哲朗(田沼意次)、かたせ梨乃(御中掾E松島)、山口いづみ(お栄)と旧シリーズのレギュラーも出演。

 ああ、「写楽」の松平定信、春画を見て鼻の下伸ばしてた気がするなぁ(笑)。

>NHK+で「シミュレーション」視聴
 完全に忘れていたのを徹夜城さんの書き込みで気づき視聴。何だかスパイものっぽい味付けが意味不明。「弟を戦場に送りたくなければ日本勝利のシナリオを書け」とかあるのかと思っちゃった。緊迫感を出そうという演出か? 東条英機を同情的に描き、その分ワリを食ったのが板倉大道(国村隼)? 史実はこうです、とドラマ後に種明かししてたけど。まあ、天皇の命で戦争回避に動くというのは分かるとしても、数か月前にそんな急ハンドル切ったら転覆しちゃいそう。首相拝命前に東条が何を考えどう動いていたのか全然描かれないんだもんなぁ。同情できる部分だけ拾い集めてるのか? 「空気」「空気」と連呼していたのにも違和感。そういう意味で「空気」を使ったのって、山本七平じゃなかったか?(それ以前にあったのかな?) そして、その「空気」を醸成した一人が他ならぬ東条ではなかったか? 人々の「空気」に責任転嫁しているように見えてしまい、どうも素直に受け取れないドラマでした。

>土生良樹『神本利男とマレーのハリマオ マレーシアに独立の種をまいた日本人』(展転社、1996年)
 ネットのレビューなど見ると、ハリマオについては1/3ほど。神本はどうも城ヶ崎少佐(山崎努)のモデルらしいんだけど、F機関や拓大人脈についての記述がメインのようです(土生良樹も神本利男も拓大OB)。大東亜共栄圏の理想を掲げて肯定的評価をしているみたい。マラリアに罹患して治療のため帰国する途中、乗っていた潜水艦が撃沈されたとこのこと。F機関長・藤原岩市中佐もほぼ同時にマラリアに罹患したけど別便なのでこちらは生き残った。この二人がマラリアになっているところ見ると、ハリマオがマラリアになったのもそう不思議じゃないということか。



#11526 
ひで 2025/08/20 11:25
お久しぶりです

此方に伺うのも何時以来か(べらぼうは楽しく見ております、はい)。
最近、鄭成功と鄭氏台湾を扱った小説が出ていたのでなんとなく。
飯島和一「南海王国記」小学館

おひまでしたらぜひ



#11525 
徹夜城(生存報告しとかないとと思うほど更新作業をしてない管理人) 2025/08/18 20:44
べらぼうなシミュレーション

 「べらぼう」、楽しく見てますが、愛読者としてはどうしても、みなもと太郎「風雲児たち」と重ねて見てしまうのですよね。田沼や源内の描き方もそうだし、何かと一橋の陰謀にするとことか、脚本の方も呼んでるんじゃないかと思わせるところがいくつかあります。
 ただ、主人公の蔦屋周辺と幕府政争とがなかなかかみ合わせにくいなぁという感想は持ってます。両方あるから楽しんで観てる、ってのも事実ですけど。これから松平定信時代に入り、蔦屋がその弾圧にあうということで絡みが多くはなってくるでしょう。

 今年のNHKの終戦ドラマ「シミュレーション」も見ごたえがありました。これ、原作が猪瀬直樹のノンフィクションで、僕も斜め読みくらいはした覚えがあります。調べると1991年にもフジテレビでドラマにしてたそうで。
 今度のドラマは、史実と比較すると創作部分も多い。特に主人公まわりの設定はそれ必要だったかな、と思うところもありました。
 「総力戦研究所」に集められた若手エリートたち(実際にその後「本職」についた人もいる)が日米戦争をシミュレートして、ほぼ正確にその帰結を予測してしまう。それが本物の内閣にも報告されるけど、東條英機は「あくまで机上の議論であって、本物の戦争はそうはいかない。日露戦争だって勝てそうにもなかったけど勝った」とドラマ中でいうセリフはほとんどそのまま実際の発言のようで。
 ただこのドラマは終盤になると東條を単純には悪役にせず、報告の内容をそれなりに気にし、また昭和天皇の開戦回避の意向も受けてある段階までは交渉努力をし、陸軍内の突き上げもあって苦悩する、という描き方になってました。結局あの段階で大きな妥協をして開戦回避してしまうと、陸軍はもちろん国民世論が許してくれそうにないという「空気」に押し流されてしまった、という感じに描いていて、これはこのところの太平洋戦争開戦関係作品の傾向であるなと思いました。



#11524 
バラージ 2025/08/14 23:24
That's陰謀論

 最近個人的にいろいろありまして、少々気分が落ち込んでおります……。

 うーん『べらぼう』、いくらなんでも何でもかんでも一橋治済の陰謀にし過ぎなんじゃないかなあ。田沼意知の葬列に庶民から石が投げられたのも、佐野政言が世直し大明神と呼ばれたのも、全部治済が影で世を操っちゃってたみたいな話になっちゃってて、それじゃそれこそ陰謀論ですよ。
 あと誰袖が意知といい仲という設定になったおかげで、史実において横領した大金で誰袖を身請けした土山宗次郎の影が薄くなってしまった(笑)。ちなみに史実では意知には正室がおり、相島一之が演じている松平康福の娘だそうです。
 ドラマの設定上、蔦重が田沼びいきなのも仕方がないけど、史実では意次失脚後に佐野政言の意知殺害をネタにして揶揄した黄表紙『黒白水鏡』(石部琴好・作、山東京伝・画)や洒落本『時代世話二挺鼓』(山東京伝・作、喜多川行麿〈歌麿の門人〉・画)を出版してるらしいんですけどねえ(そしてそれが松平定信ににらまれた)。史実の蔦重にすれば田沼も定信も雲の上の偉い人で風刺の対象でしかなかったというか、個人の嗜好というより世間のウケ=売上が何より大事だったってことなんでしょう。ある種のポピュリズムというかなんというか。


>松平定信が出てきた映像作品
 『べらぼう』、ついに松平定信の本役が登場。演じてる井上祐貴という俳優さんは僕は申し訳ないけど全然知らない人なんですが、今のところはまあまあという感じですかね(でも小さな声で言うと、個人的には渡辺謙にタメを張れるクラスの俳優に演じてほしかった)。
 定信は田沼意次同様に時代劇の登場作品がやたらと多く、その中から代表的なものに絞ってご紹介。

 歴史映像名画座に掲載されている作品では、映画『おろしや国酔夢譚』『写楽』、単発ドラマ『四千万歩の男 伊能忠敬』に登場しています。また連ドラ『鬼平犯科帳』では1998年の第8部の最終回スペシャルに登場したとのこと(演:17代目 市村羽左衛門)。僕が観たのは何度か書いてる通り『写楽』だけ。確か序盤と終盤の2シーンのみ登場の特別出演状態で、終盤のシーンでは写楽の絵を前に折り目正しく正座しながら、ひれ伏す大田南畝に向かって自らの改革が挫折したことに対する反省の弁を述べた後、ガラッと変わってべらんめえ口調になりあぐらをかいて、写楽の正体が実は素人だと看破するという描写だった記憶。観てた当時はなんで定信にそこまでわかるんだと思ったけど、後に芸術眼も長けた人物だったと知りましたね。

 その他の僕が観た作品では、連ドラ『大江戸捜査網』にゲスト的に出てきたらしいんだけど僕は観た記憶がありません。まあドラマ自体が子供の頃の放送でしかも系列局が無い状態での遅れ放送だったし、それもあってしょっちゅう観てたわけではなく時々観たって程度でしたからね。僕が観てたのは第3部だったようですが、演じたのは永井秀明と黒川弥太郎という俳優だったようです。1979年には『隠密同心 大江戸捜査網』のタイトルで映画化もされたらしく、これは知らなかった。定信役は三船敏郎だったとのこと。また田沼の時にも触れた1981年の連ドラ『闇を斬れ』では沖雅也が定信を演じてたとのことですが、これも記憶にありません。
 記憶にある作品としてはやはり以前触れた1997年のNHK正月時代劇『風光る剣 八嶽党秘聞』(演:神田正輝)、2008年のフジテレビ単発ドラマ『剣客商売スペシャル 春の嵐』(演:福士誠治)、2017年のNHK正月時代劇『陽炎の辻 完結編 〜居眠り磐音 江戸双紙〜』(演:工藤阿須加)、2018年の映画『のみとり侍』(演:三浦貴大)といったところで、いずれも老獪な田沼意次に対して義憤を抱く、やや潔癖すぎる青年というような人物像だったように記憶しています。

 観てない作品だと、1977年の映画『歌麿 夢と知りせば』(演:仲谷昇)、1982年のフジテレビ単発ドラマ『闇の傀儡師』(演:石橋蓮司)、1983年のTBS単発ドラマ『栄花物語』(演:村井国夫)、1994年のNHK連ドラ『大江戸風雲伝』(演:阿部寛)、2013〜2014年のテレ朝単発ドラマシリーズ『だましゑ歌麿』III〜IV(梅沢富美男)、2017〜2024年のBS朝日単発ドラマシリーズ『無用庵隠居修行』1〜8(演:杉本哲太)、2023年のNHK連ドラ男女逆転版『大奥』(演:安達祐実)、2024年のフジテレビ連ドラ『大奥』(演:宮舘涼太)といったあたりに登場してるようです。

>その他の人たちが出てきた映像作品
 原田泰造が演じてる三浦庄司は、他にもドラマ『栄花物語』(演:芦屋雁之助)、『大江戸風雲伝』(演:小林克也)に登場したようです。
 また1946年の溝口健二監督の映画『歌麿をめぐる五人の女』には多賀袖太夫という花魁が出てきたらしく、これを誰袖と同一人物と見る向きもあるみたい。ただし史実の誰袖とはまるで違う展開なんで単に名前を借りただけの可能性もありますが、そもそもこの映画の歌麿の話がほとんどフィクションみたいだしなあ。

>未見映画
『ロンゲスト・ブリッジ』(原題:八百壮士)……1976年の台湾映画。第二次上海事変における四行倉庫の戦いで四行倉庫の守備に当たった国民革命軍第88師団第524連隊を描いた作品とのこと。若き日のブリジット・リンがアジア太平洋映画祭で最優秀主演女優賞を受賞しています。日本ではVHSスルーでDVD化や配信はされていません。VHSには1981年の作品とあるようですがこれは誤り。
 同じ題材の映画は事変の翌1938年に早くも中華民国によって映画化されており(『八百壮士(原題)』、日本未公開)、また2020年には中国(中華人民共和国)でも映画化(原題『八佰』)。日本でも『エイト・ハンドレッド 戦場の英雄たち』の邦題で2021年に大阪アジアン映画祭2021で上映された後、劇場でも一般公開予定でしたがコロナの流行により公開が延期されたままDVD化や配信もされず現在に至っています。

>ろんたさん
 おお、映画『写楽』のDVDを購入されたんですね。僕はそれなりに面白かったけど、わざわざ中古DVDを買うほどでもないよなというぐらいの作品でして。内容のご確認ありがとうございました。やっぱりそうでしたか。真田広之主演の時代劇映画は他にもいっぱいありますし、海外展開まではどうかなぁ?
 そして映画『ハリマオ』もご覧になられましたか。評価についてはKINENOTEばかりでなく、allcinema、Yahoo映画、映画.com、filmarksなどのいずれでも低いので、やはり世間的にはウケてないんでしょう。なお脚本の井沢満が『英雄伝説 Harimao』(角川文庫、1989年)という原作小説?ノベライズ?も書いているようです。
 中野不二男『マレーの虎 ハリマオ伝説』(文春文庫版)と、山本節『ハリマオ マレーの虎、六十年後の真実』はいずれも所持しています。1985年の朝日新聞記事は中野版書籍でも紹介されてましたし、山本版書籍では映画『ハリマオ』についても触れられてました。中野不二男氏はノンフィクション作家、科学・技術ジャーナリストとのことで、『カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットはなぜ死んだか』(文藝春秋、1984年。文春文庫、1991年。第11回日本ノンフィクション賞)などという本も書いているものの、その他は『レーザー・メス 神の指先』(新潮社、1989年。新潮文庫、1992年。第21回大宅壮一ノンフィクション賞)など科学・技術系の著書のほうが多いようです。山本節氏は神話学者とのことで、そのような視点から『神話の海 ハリマオ・禅智内供の鼻・消えた新妻』(大修館書店、1994年)という本も書いている他、『月刊しにか』の1995年1月号〜3月号あたりに「ハリマオの真実」という短期集中連載をしてたのも読んだことがあります。うーん、懐かしい。それにしても山本氏(2011年死去)、Wikipediaを読むと新しい歴史教科書をつくる会の会員だったんですね。『神話の海』や『ハリマオ』を読んでもそんなに右寄りっぽくは感じなかったのでちょっと意外。ハリマオに関する本には、土生良樹『神本利男とマレーのハリマオ マレーシアに独立の種をまいた日本人』(展転社、1996年)というものもあるようですが、出版社が出版社だけにちょっと敬遠しております。



#11523 
ろんた 2025/08/06 22:59
『開かせていただき光栄です』三部作

 500ページ×3をなんとか読了。ああ、作品の舞台を17世紀とか書いてしまいましたが、下を読んでもらえばわかる通り、18世紀です。なんで間違えたのか、お恥ずかしい。

>『開かせていただき光栄です──DILATED TO MEET YOU──』(皆川博子/ハヤカワ文庫JA)
 1770年、ロンドン。医者といえば内科医であり外科医は蔑まれ、治療といえば古典的な医学書が頼り。そんな現状に飽き足らず、聖ジョージ病院外科医ダニエル・バートンは、人体の構造を極めるべく私的に解剖教室を開き、五人の弟子("容姿端麗"エドワード・ターナー、"天才素描画家"ナイジェル・ハート、"饒舌"クラレンス・スプナー、"肥満体"ベンジャミン・ビーミス、"骨皮"アルバート・ウッド)の指導にあたっていた。だが、人々にとって解剖は遺体を切り刻む罰当たりな行為であり、献体という制度も習慣ない。結局、違法ではあるが、墓あばきから遺体を買い取るしかなかった。そこに犯罪捜査犯人逮捕係(ボウ・ストリート・ランナーズ)が急襲する。その朝に購入した妊娠六か月の女の遺体が、准男爵チャールズ・ラフヘッド卿の令嬢エレインだったらしく、事件化されたのだ。間一髪、暖炉の裏に遺体を隠して事なきを得たが、再び解剖にかかろうとしたところ、今度は盲目の治安判事ジョン・フィールディング卿とその姪である助手アン=シャーリー・モアに踏み込まれる。万事休す……しかし遺体はエレイン嬢ではなく四肢を切断された少年にすり替わっていた。さらに顔を潰された中年男の遺体まで暖炉から見つかり、フィールディング卿は解剖後にエレイン嬢の遺体を返還することを条件に、解剖教室の面々に捜査協力させる。やがてエドワードとナイジェルの証言から、少年は詩人になろうとロンドンに出てきたネイサン・カレンと判明するが……。
 外科医ダニエル先生は架空の人物だが、ジョン・ハンターというモデルがいる。逆にフィールディング卿はフィクションっぽいキャラだが、実在の人物。『トム・ジョーンズ』の作者で、やはり治安判事であったヘンリーの実弟。兄弟そろってイギリスの司法制度の確立に尽力した。なにしろスコットランド・ヤードすら存在せず、告発が無ければ犯罪自体無かったことになる時代。しかも司法手続きに要する費用は告発者の負担なので、貧乏人は泣き寝入り。虚実ないまぜに進行する物語に圧倒的リアリティを与えているのが、ネイサンが彷徨うロンドンの貧民街の描写。煤煙に薄汚れた外壁、落ちると病気になっちゃうテムズ川、真昼間でも強盗、殺人が頻発し、うっかりすると貴賓まで被害に遭う。加えて未決囚が放り込まれる劣悪な獄房(ニューゲイト)、死臭が漂う解剖教室(冷蔵冷凍設備がないんだから仕方ない)。推理小説としては手掛かりは明示されるけどその意味がつかめず、解決編で唖然とさせられる。アンソニー・ホロヴィッツだと手掛かりと分からせずに目の前に転がすんだけど。探偵役は盲目の治安判事ジョン・フィールディング卿のように思われるが、実は"容姿端麗"エドワード、"天才素描画家"ナイジェルだったりする。

>『アルモニカ・ディアボリカ』(皆川博子/ハヤカワ文庫JA)
 1775年。5年前の事件は関係者の人生に少なからぬ影響を与えていた。盲目の治安判事ジョン・フィールディング卿とその姪である助手アン=シャーリー・モアは優秀な部下を失った。エドワードとナイジェルが出奔し、ダニエル先生は解剖教室を閉鎖。残る三人の弟子たちは、フィールディング卿が公費で発行することになった犯罪情報誌『ヒュー・アンド・クライ』の編集部で働くことになった。そんな中、勲爵士ラルフ・ジャガーズが身元不明の屍体の情報を求める広告の掲載を依頼してくる。ジャガーズは、逓信大臣フランシス・ダッシュウッド卿の従弟でウェスト・ウィカムの管理人をしているという。その彼の言うには、天使が空に舞っていた、という奇妙な噂が広がり、真偽を確かめているうちに閉鎖された白亜の坑道からその屍体を発見したのだという。しかも、その胸には<ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニカ・ディアボリカ>と記されていた。謎めいた文章に危険なものを感じた一同は、まず事件の詳細を調べようと現地へ向かうが……。
 前作同様、虚実ないまぜのうちに物語は進行。ダッシュウッド卿、国王ジョージ三世、ロンドン市長ジョン・ウィルクス、ベンジャミン・フランクリンなど実在人物が登場。ダッシュウッド卿が創設した妖しげで冒涜的な「ヘルファイア・クラブ」も実在。即位前のジョージ三世も出入りしていたという。「アルモニカ」も実在するが、ネタバレになるから説明しない。wikiに載ってたりするし(汗)。そして物語にリアリティを与えるのが、意外にも物語の主舞台の一つになる精神病院の描写。本作でも裏の探偵役は"容姿端麗"エドワードだったりするが、その辺は読んでのお楽しみ。

>『インタヴュー・ウィズ・プリズナー』(皆川博子/ハヤカワ文庫JA)
 1775年。『アルモニカ……』事件の結果、"容姿端麗"エドワードと"饒舌"クラレンスは志願兵としてアメリカ植民地に向かい、事件の関係者四人をベンジャミン・。フランクリンのもとへ送り届けることになった。だが植民地の情勢は急変、正規軍と大陸軍の間で戦闘が勃発する(アメリカ独立革命)。そんな中、「ニューヨーク・ニューズレター」紙の記者ロデリック(ロディ)・フェアマンは、新聞の大スポンサーであるウィルソン家の三男モーリスから奇妙な依頼を受ける。モーリスの友人であり、モホークの母を持つアシュリー・アーデンの手記を、彼を殺した犯人に読ませろ、というのだ。その殺人犯はエドワード・ターナー。ロディとしては犯人に懺悔させるためだと思ったのだが、読み終えたエドは、アシュリーと行動をともにしていた間に起こった数々の事件について検討し始め……。
『アルモニカ……』の結末で植民地に旅立ったターナーが、いきなり未決囚(しかも殺人の)として登場し面食らう。そして皆川博子の術中にはまってしまう。以後、獄舎でのターナーとロディとのやりとり、アシュリーの手記、クラレンスの語りが「調査」と「犯行」と題されほぼ交互に展開される。背景はアメリカ独立革命。モホークの「邦」と植民地の境を定めた英国、協定を無視するであろう大陸側、どちらも信用できないと静観を決めるモホーク。(「モホーク」は自称ではないが、読みやすさ優先) この構図の中で物語は進行。冒険小説であり、本格推理小説であり、歴史小説。ベンジャミン・フランクリンもちょっとだけ登場。もちろん、モホークのその後にも目は届いていて、物語のラスト近く、ジョージ・ワシントンの現地司令官への指令書が引用されている。曰く「直接の目標は彼らの集落を徹底的に破壊し、年齢・性別にかかわらず、できるだけ多くの捕虜を取ることである。かれらの畑にある穀物を破壊し、今後も栽培できなくすることが重要である。……彼らの集落を完全に破壊する前に、和平の申し出はどのようであれ聞き入れるべきではない。……」。こいつの肖像、紙幣に使っていいのかなぁ、と思ってしまう。

 皆川博子には『クロコダイル路地』(講談社文庫)という作品があり、前半はフランス革命期のパリ、後半は産業革命期のロンドンが舞台。そして”バートンズ”(ダニエル・バートン先生の弟子たち)も登場するという。ブックオフから「旦那、旦那、入荷しましたぜ」と誘いがあって買ってしまった。後から気がついたけど、頁数が1027という、ハードカバーで二分冊なのを合本した超大作なのであった。どうしよう。とりあえず『少年十字軍』(ポプラ文庫)を読んでから。

>『新九郎、奔る(20)』(ゆうきまさみ/BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
 事態は明応の政変へ。近江攻めの成功に気を良くした足利義材は、河内攻めに取りかかる。その後は越前の朝倉攻め。畠山と斯波、両家の力を強めて幕府権力を充実させようというのだが、将軍親征ということで表向きはやる気満々の諸将も、内情は火の車でうんざり。超ポジティブな義材はそれに気づかず、だったら側近が上手いことやるもんだが、美濃以来の近臣・葉室光忠は義材の鼻息をうかがうばかり。義材に見切りをつけた新九郎は「見事、清晃殿を将軍の座に御就けした暁には──伊豆で何が起きても見て見ぬフリをしていただきたい」と貞宗に言い残して駿河に下り、伊豆討ち入り計画に没頭。貞宗と政元は、ついにゴッドマザー・日野富子の了承を得て、清晃を担ぎ上げ足利義材、葉室忠光の関係者を全員捕縛。その手回しの良さ、どこぞの国の元大統領とは大違いであります。動揺した諸将は「細川政元の真意を問い質す」などと称して京都へ向かい、シレッと清晃(義遐)のもとへ出仕。見捨てられた義材だが、「次からはもっと上手くやろう!!」とやっぱり超ポジティブ(笑)。そして、この政変の報せを駿河で受け取った新九郎のもとを、伊玄と名乗る僧が訪ねてくる。その俗名が”長尾景春”なのであった。
・伊勢盛頼(従兄)に売却した東荏原の代金の一部(750貫文中の150貫文)を土倉を通じて受け取る新九郎。伊豆や駿河での酒造りについて協力を打診される。興国寺城の近くに酒造メーカーがあるんだけど関係あるのか? しかし、この会社は文化元年創業なのであった。
・ぬいが第二子(氏時)を出産。加えて荏原に帰した者のうち、冷や飯食いとなった次男三男四男組が転がり込んでくる。重圧に”ずうううん”となる新九郎。出戻り組は駿河へ。さらに身の置き所の無くなった人たちが正鎮入道を頼ってくる。富士下方の土地改良でもさせるのか、伊豆討ち入りの主力か。
・大道寺太郎を情勢調査、調略に現在の沼津市内浦に派遣。その際、盛定スクリーン使用(笑)。伊豆討ち入りはwikiとかだと清水湊−西伊豆−堀越御所のルートだが、これだと数日かかって奇襲にならないんじゃないか。興国寺城−内浦−堀越御所だと山越えしても一日コース。こっちの方がありそうだと思うんだけど。とはいえ興国寺城が出てこないなぁ。
・代官を務める焼津周辺から伊豆半島を望む新九郎。しかし……でかすぎないか、伊豆半島? まるで湖の対岸みたい。
・赤松を味方に引っ張り込もうと姉・洞松院を政略結婚に使う細川政元。しかしこの姉、(いやな女だな〜〜っ)と政元がこぼすほど頭が切れ、政元の思惑などお見通し。自らを「醜女」とし顔の下半分をマスク(?)で隠しているけど、天然痘の痕だろうか。

>『修羅の刻 陸奥圓明流外伝(23)』(川原正敏/月刊少年マガジンKC)
 安倍晴明編は時を遡って陸奥庚の父(?)・桃李の話。野見宿禰の技を継ぐ一族を求めてさまよううち、頭角を現しつつあった陰陽師・安倍晴明と出会う。野見宿禰の一族はいないが、當麻蹴速の一族なら知っている、という晴明に連れられて當麻の館を訪ね、「化け物」と戦うことになる……。晴明の亡妻・綾が當麻一族。まだ八歳だけど、晴明の娘が桃李の妻になる話かな? あと、陸奥圓明流の歴史、千年越えちゃってるんだけど……まっ、いいか(笑)。10月まで四か月連続刊行とのこと。

>買ってしまった……
 なんかブックオフのポイントが1800ぐらいになっていて、そんなに買っていないぞ、と頭をひねると、なんかポイントプレゼントにあたったとの連絡があった気が……。ということで、これ使うと半額だな、と「写楽」を買ってしまったのでありました。でも「シャム猫ココ」シリーズ(リリアン・J・ブラウン/ハヤカワ文庫HM)を在庫分だけ一緒に買ってしまったので、たいして節約にはなっていないのであった。
 さて「写楽」ですが、今村昌平あたりに撮らせたら、もっと猥雑でアナーキーでリアルになったと思うんだが、それはともかく。とんぼは十郎兵衛と呼ばれてない気がする。エンディングクレジットも「とんぼ 真田広之」とだけの表示。斎藤十郎兵衛(日比野克彦)は、舞台袖でのスケッチを蔦重に、使い物にならない、と酷評されて可哀そう。蔦重は何度か倒れる描写あり。小説との違いは、斎藤十郎兵衛の存在と、とんぼと花里の駈落ちぐらいか? そして、「デューク真田主演!」と宣伝すれば今からでも海外展開できる気もするが、どうだろう?
 門付の一座が住んでる長屋、広すぎ(笑)。三軒長屋? 鉄蔵が住んでる向かいの部屋は九尺二間の棟割長屋なのに。あと、とんぼは片足が不自由なんだけど、すたすた歩いてるカットがあったような。遠景の江戸はCG。よくできていたけど、一ヵ所だけ合成が気になった。冒頭の松平定信の礼服、大紋(五位)なんだけど正しくは直垂(四位以上)、という話がネットにあった。老中だと従四位下侍従だから狩衣だという説もあってよく分からないけど、わたしには江戸城に天守閣(?)があったのが気になった。(<めんどくさい奴)

>「ハリマオ」を見る
 というより、バラージさんの書き込みを見て録画してたのを思い出した(汗)。印象としては「故郷喪失者が、新たなアイデンティティ(マレー人、ムスリム)を獲得するが、日本人であることに執着して滅ぶ悲喜劇」というところ。特に喜劇的表現で陣内孝則ははまっている。博多弁も使えるし。うろ覚えだけど「ザ・商社」の上杉二郎(演:山崎努/江坂アメリカ社長)を連想してしまった。和田勉、こういうの好きなのかな。KINENOTEの評価が低いのは、昔のテレビドラマを見た世代が多いから? そんなに悪くないと思うけど、結果として悲劇にもならず喜劇にも痛快冒険ものにもなっていない、中ぶらりんな印象。むしろマレー独立闘争的部分を強調した方が良かったんじゃないかな。それだと「アラビアのロレンス」になっちゃうか。
 ジャングルから始まるオープニングは印象的。ただ、その後のお祈りでなんか喜劇感。父との確執、帰国してからの違和感、徴兵検査での騒ぎなどは、日本に馴染めないことの強調でしょう。丁種としたのは、身長176pの陣内孝則を丙種合格にはできなかったのかも(笑)。千鶴子の生首は見せない方が良かった。マネキン感強すぎ。竹下景子さんの愛人はメロドラマ要素をぶっこんできた印象だけど、ストーリーとうまく絡んでない。実は華僑でしたってのも唐突すぎ。山崎努はメフィストフェレス的人物を怪演。ただ、ズボンははいてもらいたい(笑)。ハリマオへの思い入れみたいなのが描かれないので、最後のエピソードはとってつけた感。ハリマオを殺す理由も「?」。そんなん、情報統制でどうにもできるだろ。
 ハリマオの実像については、「波止場通信」というHPのコラムで、「ハリマオ伝説」『マレーの虎 ハリマオ伝説』(中野不二男/新潮社版1988年.文春文庫1994年)と『ハリマオ マレーの虎、六十年後の真実』(山本節/大修館書店/2002年)が紹介されてます。この二冊のハリマオ像はかなり違うみたい。また、ハリマオを取り上げた朝日新聞の記事(1985/04/11夕刊)がメコンプラザというHPにある(「なぜか人気『ハリマオ』 大東亜の英雄 虚像と実像 襲撃や脱走、頭領に ナゾ多い盗賊団”活躍”」)。これを読むと、F機関の人たち、ハリマオの存在を矮小化したがってるみたい。

>右も左もなかったりして……
 参政党は自民党右派を食い、国民民主は立憲民主を食った印象。あとは支持者の生活に寄り添わず、妙なイデオロギーを振り回してた連中が退潮しましたな。原点を忘れるな。陰謀論を信じちゃってる人は右も左も関係なし。左というかリベラルで有名なのは、原口一博衆議院議員(立憲民主党/元総務相)。この人、反ワクチンでもあって、コロナ禍が民主党政権時でなくてよかった。この人たち、事実から出発せずに思い込みから出発し、その周りをグルグル回っていて、また思い込みに帰ってる。だから批判を受け付けず、反論できなくなっても同じことを繰り返す。多分、思い込みを否定されると自我が崩壊してしまうんだろう。ニセ科学信者と同様。とはいえ、反ワクチンを批判していた医者が「外国人に参政権はないんだから政治に口出すな」とか言い出したこともあるから油断できない。それ言論の自由の否定だよ。給付金にしろ減税にしろ、インフレ局面で可処分所得増やしたらインフレが激しくなると思うんだが、そういう話、誰もしないのはなぜ? 財源の心配ばかりしてやがる。財源なんて、財政の所得再分配機能を復活させて、直接税の累進性を強めればいいじゃねぇか、という政党があったら熱烈に押すんだが……(笑)。トランプが雇用統計の悪化を不正操作だと騒いでるのもなんだかなぁ。雇用が悪化したら、FRBに金利を下げさせる圧力になるだろうに。こいつも何考えてるか分からない。昔からだけど。ああ、とりとめのない愚痴ばかり。



#11522 
バラージ 2025/07/19 19:37
久々に観たらそんなに悪くなかった映画

 WOWOWで放送された1989年の日本映画『ハリマオ』を録画したものを観終わったんでその感想。

 戦前にイギリス領マレー半島で盗賊として活動し、戦中はマレー半島に侵攻する日本軍に協力したハリマオ(マレー語で“虎”)こと谷豊を題材とした和田勉監督、陣内孝則主演の映画で、確か僕は90年代にレンタルビデオで観ましたが出来はあんまり良くなかったような記憶。しかし昔からハリマオに興味があった身としては、DVD化もされてないし録画しとくかってことで今頃になって再び観たというわけです。
 約30年ぶりに観てみたら、意外にも記憶してたほどには悪い出来ではなかったですね。まあ観てるこっちのハードルが下がってたのかもしれないけど、良作というわけではないにしても駄作というほどでもなく、それなりに面白く観れたのも事実。僕がこういう要素を入れてほしい、こういうシーンを描いてほしいと思ってたようなところがほぼ余す所なく入っているし、終盤のシンガポール華僑虐殺なんて描いた映像作品はこれくらいなんじゃないでしょうか。また、なんといってもフィリピン・ロケの産物であるスケールの大きな舞台や風景が素晴らしい。いやぁバブル時代の映画ですな。初見の時にはミスキャストのように感じた陣内孝則もこれはこれでありのように思えました。ちなみにこの映画もキネノートのあらすじは実際の映画のストーリーとはちょっと違ってますね。キネノートのあらすじは松竹の作品データベースのSTORYとも違っていて、どっちかっていうと松竹のほうが実際の映画に近いかな。
 史実と違うところも当然ながらいくつかあって、谷豊が徴兵検査で実際には丙種合格(予備役編入)だったものを丙種より下の丁種合格(兵役免除)にしています(ちなみに戦中の戦意高揚映画『マライの虎』ではそもそも徴兵検査の描写がありません。英雄が不名誉な丙種合格では困るからでしょう)。また異母妹が不良華僑に殺害された頃には谷は徴兵検査を終えて日本で就職しており、2年後に家族が帰国した時に初めてその事実を知って単身マレーに戻ったんですが、映画では徴兵検査後すぐにマレーに戻り殺害現場に居合わせたりもしています(これは『マライの虎』もいっしょで、そもそも谷は日本に帰国していない)。映画的な劇的さを狙ったものなんでしょうね。谷豊を含むマレー人たちがみんな英語でしゃべってるのも、まあ仕方がない(マレー人を演じてるのはアジア系米国人俳優のジェームズ・パックス以外はロケ現地のフィリピン人俳優のようです)。
 事実と違うところで意図がよくわからないのは、満州事変直後に病死したはずの父親がなぜかずっと生きていて、豊の戦死公報を妻(母親)といっしょに受け取っちゃってるところ(『マライの虎』では父親はすでに死んだ設定で最初から出てきませんが、そっちのほうが実は事実に近い)。観ていてもあまり意味のある改変のようには思えず、なんでわざわざそんな設定にしたのかよくわからない。父親を演じる川谷拓三もお得意のチンピラヤクザみたいな人物に演じており、その怪演ぶりには違和感を感じます。逆に母親役の大谷直子は今ひとつ影が薄いんだよな。怪演と言えば谷豊を籠絡する日本軍諜報機関J機関長の城ヶ崎小佐(F機関長の藤原岩市小佐と、実際に谷と接触した機関員とを掛け合わせた人物だと思われる)を演じる山崎努がかなり誇張した戯画的な人物を怪演しており、これもやり過ぎとしか思えない。谷豊以外の登場人物はほぼ全て仮名か架空の人物になっており(そこも『マライの虎』と同じ)、むしろ自由に物語を創作するために仮名(架空の人物)にしちゃったんではなかろうか。朝ドラ方式とでも言いますか。
 また序盤から川谷と愛人役の竹下景子の生々しい濡れ場を見せられるのも戸惑いますし(竹下さんの巨乳が拝めます)、他にも徴兵検査での肛門検査とかイスラム教の割礼とか妙に下のネタが多いのもどうかと思う。
 とはいえ、いろいろ文句も言いましたが、自分でも意外なほどそれなりに楽しめたのも確か。少なくとも『マライの虎』に比べればよほど良かった。村上春樹がエッセイか何かで書いてましたが、2回目のほうが面白い作品はいい作品だとのこと。まあ、これもまた村上さんが書いてたけど、また観たいと思うこと自体がなかなか無いことでしょうけどね。ま、とりあえずもう1度観て良かったです。


>『べらぼう』
 ついに佐野政言が田沼意知を殺害。しかしどうもこのあたりの描写はあんまり上手くなかったというか、なんで佐野がそういう凶行に及んだのか今ひとつ説得力が感じられず、どうにもわかりにくかった気がします。史実での佐野政言による田沼意知殺害の理由は史料によって諸説あるようですがいずれも信憑性は低く、実際の理由は不明のようです。しかしドラマなどの創作作品では伝奇ものや時代もので背景や脇道として描かれるだけならともかく、歴史もので重要エピソードとして描かれるとなると理由不明では描きにくく、信憑性は低くとも俗説を導入しなければならなくなるのも仕方がない(この辺は浅野内匠頭と吉良上野介の事件なんかもいっしょで)。しかしドラマで描かれた俗説は田沼悪人説を前提としたものなので、田沼を名君として描くとなると何らかのアレンジを施さざるを得ず、そこが上手くいかず今ひとつ不自然な話になっていたように思います。
 なお佐野政言(佐野善左衛門)が登場した他の映像作品には、映画『武士道残酷物語』(1963年、国一太郎)、『歌麿 夢と知りせば』(1977年、田村亮)、単発ドラマ『栄花物語』(1983年、TBS、船戸順)、連ドラ『大江戸風雲伝』(1994年、NHK、渡浩行)、単発ドラマ『陽炎の辻 完結編 〜居眠り磐音 江戸双紙〜』(2017年、NHK、山崎銀之丞)などがあります。僕が観たのは『陽炎の辻 完結編』のみ。

>参政の反対なのだ
 ついに日本にも右派ポピュリズムの波が来たのか……。これは結構危険だなぁ……。そんな参政党ですが、こないだ読んだネット記事によると右派ポピュリズムのご多分に漏れず?ディープステートがどーたらこーたらなどといった陰謀論を唱えてる側面もあるんだとか。右派ポピュリズムと陰謀論てほんと親和性があるんですねえ。



#11521 
ろんた 2025/07/12 12:27
『逃げ上手の若君(21)』(松井優征/ジャンプコミックス)

『角栄に花束を』を立ち読み。アイドル的というかお稚児さん的なキャラがずっと出てたんだけど、これが大平正芳だと判明。「あ〜〜う〜〜」と唸ってしまう(<古すぎ)。そういえば岸の私邸を目つきの悪い男が訪ねてくるんだけど、これが「読売の渡辺」。「白さも白し富士の白雪(禅譲だぁ? 甘っちょろいこと言ってんじゃねぇぞ、ば〜〜か!の意)」という岸の伝言を大野伴睦に渡す役。

『逃げ上手の若君(21)』はカバー裏あらすじから。
香坂高宗の提案で再び信濃へ戻った時行は、ついに小笠原貞宗との最後の戦いに挑む! 信濃最強と謳われる小笠原軍を前に、保科、四宮、祢津らの援軍も加わり、少数ながら善戦する時行軍。だが、わずかに勝利の兆しが見え始めたその時、三千騎を率いる土岐頼遠が参戦するとの急報が入り──? 迫る絶体絶命の危機、敵であり師である貞宗との因縁決着の行方は──!?(カバー裏より)
 雫、亜也子、魅魔でラブコメ展開するのかと思いきや、早々に大徳王寺城の戦いに突入。この戦い自体、実在が疑われているけど、一応、個々の戦闘では勝利したものの兵の損耗を考慮して退去、の方向。小笠原貞宗は以後、時行と関わらないので、この戦いで退場(第186話「小笠原貞宗1340」)。土岐頼遠の参戦はフィクションかな? こいつも「院? 犬か? 犬なら犬追物だ!」の一件で退場(第187話「インターミッション1339〜1342」)。牛ごと牛車を放り投げ、大木に引っ掛けるってほとんど怪獣。ああ、第187話には後醍醐天皇の死を転げ回って悲しむ足利尊氏という「おまゆう」案件も(笑)。で、どうも尊氏の中の人外の者は「統治」に興味がなさそうで、それが観応の擾乱につながるという流れ。ちょっと展開早くない? この続編では時行の結婚問題が!? 高師直のやらかしも語られるのか?

>『戦国怪獣記ライゴラ(1)(2)』(志名坂高次,星野泰視,丸山浩/ヤングチャンピオンコミックス)
 以前は立ち読み程度だったのであらためて紹介。しかし、(2)は3月に出ていたのに全然気づかなかった。
時は戦国時代。毛利元就VS陶晴賢の厳島合戦。剣での成り上がりを夢見る男・十郎太は、陶の軍勢の一人として戦場を駆けていた。毛利元就の策を看破した陶晴賢。奇襲合戦に決着がつかんとした時、巨大なる生物が海より現れた。突如戦場に君臨した"それ"は、毛利と陶の侍たちを次々と殺害し始める。毛利元就が、陶晴賢が、そして十郎太が直面するのは巨大すぎる力と恐怖。誰も見たことのない戦いが始まった────!! ((1)カバー裏より)
厳島合戦で出現した謎の巨獣による悪夢のような惨劇から五年。復讐を誓う十郎太が熱田の賭場で出会ったのは──織田信長!! 織田信長、今川義元、豊臣秀吉、徳川家康──そして十郎太。英傑が集う時、再び獣は現れる。誰も見たことのない、"桶狭間の戦い"が始まる!! ((2)カバー裏より)
 話のパターンとしては、奇襲失敗>怪獣ライゴラ大暴れ>敵が壊滅、という感じ。(1)は厳島の戦い。夜陰の嵐に乗じて厳島に上陸した毛利元就軍(4千)。宮尾城を囲む陶晴賢軍(2万)に奇襲をかけるはずだったが、その動きを察知した陶軍は逆に毛利軍を包囲殲滅しようとする。絶望する毛利元就。だがその時、巨大な落雷とともに現れた異様な巨獣ライゴラ(雷強羅)によって陶軍は壊滅。一城の主を夢見て陶軍に加わっていた十郎太は、同じ村の仲間を惨殺され復讐を誓う。(2)は桶狭間の戦い。信長はライゴラの足跡に導かれるように桶狭間山に到達したが、そこは義元により要塞化されていた。信長を救ったのは、伏兵を装った謎の男(笑)・木下藤吉郎の策。動揺した義元が下山したところでライゴラ登場、次巻に続く。十郎太、強い武器とライゴラを求めて日本中を旅して桶狭間にも登場するけど、かないそうもないなぁ。鉄砲も通らない気がする。「戦国自衛隊」が出てこないと無理じゃないか?(笑) 雑誌掲載分は長篠の戦。先に三方原の戦いがあり、信玄がライゴラにヤられた模様。

>wikiが正解?
 KINENOTEは「キネマ旬報」の紹介記事から作っているかもしれませんね。その元ネタは配給会社の広報資料。映画検索サイトはこれらを引用しているので、完全に内容が一致している(笑)。批評となると関係者試写会で見ていると思いますが。さて、これらと異なった記述を探すと、なんとwiki。それによると、とんぼ=十郎兵衛=東洲斎写楽=真田広之。そして斉藤十郎兵衛=日比野克彦。つまり両者は別人だが、通説は名前の一致で混同しているという話なのか。キャストで十郎兵衛を斉藤十郎兵衛と表記したり、斉藤十郎兵衛=日比野克彦を伏せてるということは、松竹の広報も承知の上でやっている? 馬琴や北斎の名前の違いは、映画の方が幼名を使ってるみたいですね。特に北斎はこの時期、次々と画号を変えていて面倒くさいことになるからでしょう。放送があるとしたらNHK−BSかな。「べらぼう」に写楽が登場するあたりでやりそうな気がする。松竹東急改めJ:COM BSでは無いか?

>『室町少年倶楽部』
 山田風太郎はかなり読んでいたつもりだったけど、なぜかこれと『室町お伽草紙』は読んでいない。河出で再刊されていたみたいだけど、気がつかなかった。でも河出の『室町少年倶楽部』は『婆沙羅』と一緒になっているので、購入をちょっとためらう。ということでBOOK-OFFを漁るのでありました。



#11520 
バラージ 2025/07/09 19:36
書き忘れてた

>嘉吉の乱、禁闕の変、長禄の変
 このあたりの時代を舞台とした作品は珍しいと言えば珍しいけど意外にまあまああったりもするんですが、やはりどっちかというと史劇的なものよりは伝奇的なもののほうが多いような印象です。大河ドラマ『花の乱』も伝奇的な要素の強いドラマでしたが、確か嘉吉の乱の義教暗殺シーンを回想的に入れていた他、禁闕の変も描かれているという非常に珍しい映像作品でした。後に日野富子と入れ替わる椿が住む椿の庄に日野有光が逃げ込んで、山名持豊(後の宗全)が引き渡しを要求するという史実とは異なる展開だったような。長禄の変については描かれたかどうかわかりませんが、時代的には描かれていても良さそうです。
 小説では後南朝を題材とした安部龍太郎の伝奇小説『彷徨える帝』や、山田風太郎の短編伝奇小説「室町の大予言」(『室町少年倶楽部』収録)が嘉吉の乱を描いてました。『彷徨える帝』は将軍義教の時代から永享の乱・結城合戦・永享大和の乱を経て嘉吉の乱、そして嘉吉の徳政一揆がクライマックス。またマンガだと坂口尚の『あっかんべェ一休』にも嘉吉の乱の義教暗殺シーンがありましたね。嘉吉の乱に比べると禁闕の変・長禄の変を描いたものは少なく、チラッと読んだだけですが永井路子の歴史小説『銀の館』で描かれていたような記憶。



#11519 
バラージ 2025/07/04 21:09
化政文化ドラマ&映画

 そういや昔、子供の頃に『写楽』っていう大人向けの写真雑誌があったような……と思って調べたら、「写楽」と書いて「しゃがく」と読むらしい。出版されてたのは1980年から1985年までのわずか6年間で、小学館から発売されていたとのこと。


>奥さん登場
 『べらぼう』、蔦屋重三郎の妻となった「てい」さんが登場。橋本愛さん、好演ですね。史実の重三郎の妻については“いた”ということぐらいしかわからないらしいんで(名前も不明)、ほぼ全編フィクションで描かれることになりますが、それでいいんじゃないかな。重三郎が主人公である以上、妻を描かないわけにもいかないでしょうしね。重三郎の妻はこれまでの登場例も少なく、1968年のNHK単発ドラマ『写楽はどこへ行った』に「お春」(演:岸田今日子)の名で、2021年の映画『HOKUSAI』にトヨ(演:魏涼子)の名で、それぞれ登場したぐらいのようです。
 また新たなキャスティング発表で松平定信の本役も発表。やはり最後まで心くんではなかったか。ただ本役の俳優さん、全然知らない人なんだよなあ。まぁ僕が知らないだけなのかもしれませんが。

>映画『写楽』
 おお、徹夜城さんがすでに先に書き込まれていた。素早い。『写楽』に滝沢馬琴が1シーンだけ出てきたのは僕も記憶にあります。そういやキネノートには馬琴の名前が「倉蔵(瀧澤馬琴)」、葛飾北斎の名前が「鉄蔵(葛飾北齋)」となっていて、こちらも小説版とは名前が違ってますね。
 『写楽』は僕も劇場公開時(1995年)以来観ていないんで記憶が曖昧で確信を持って言えないんですが、確か「とんぼ」とは別人として斎藤十郎兵衛がちょい役で出てきた記憶があるんですよね。他の有名人と違って全然知らない人だったから誰これ?となったんだったような。その一方で「とんぼ」が斎藤十郎兵衛だったかどうかの記憶はなく、こちらは何とも言えません。確かにキネノートでは真田広之の役名を「とんぼ(齋藤十郎兵衛/東洲齋寫樂)」としてるし、あらすじでも「稲荷町役者・十郎兵衛」としているんですが、こういうの(『キネマ旬報』からの転載と思われる)って映画を観て書いてるんではなく、事前に配布された資料をもとに書いてるんじゃないかと思われますし、劇中で言及されてたかどうかとはまた別のようにも思うんですよね(まぁ逆に言うと劇中では触れられてない裏設定という可能性もありますが)。
 他のサイトを見てみると、松竹の作品データベースにあるSTORYはキネノートと全く同じ。これはおそらくやはり松竹から提供された資料をもとにキネマ旬報のデータ情報が書かれたということなんではないかなあ。BS-TBSの番組情報では「主演のとんぼに真田広之」とある一方で、WOWOWの番組情報では「写楽の正体を元歌舞伎役者の齋藤十郎兵衛とし」「元役者のとんぼこと十郎兵衛」と記されています。あるいは真田広之が序盤で早々に「とんぼ」になっちゃうんで、2代目の斎藤十郎兵衛として別の人が出てきたのかなあ? U-NEXTで配信がされてるようなんで加入して観てみれば一発で解決するんですが、わざわざそのためだけに加入するのもねえ。そもそも僕は他のサイトも含めて配信には全く加入してないし。
 そこで個人ブログなどで感想を書いてる人のものを読んでみることに。意外に情報が記されてるかもしれませんし、1回観てるんで個人的にはネタバレも何もない。すると見つけた7件のブログのうち真田広之=とんぼとは別人として斎藤十郎兵衛が出てきたことに触れてる人が2人いました。「とんぼ」とは別人の斎藤十郎兵衛を演じてたのはイラストレーターの日比野克彦とのこと。一方で「とんぼ」に関しては、別人の斎藤十郎兵衛に言及してる上記のお2人は「とんぼ切りが得意な1人の稲荷町役者」「歌舞伎の舞台で端役を務めていた若者」と十郎兵衛とは記していない一方で、十郎兵衛または斎藤十郎兵衛としてる人も3人おり、さらに1人が「歌舞伎の裏方で梯子を支える男たちの一人」としてやはり十郎兵衛とは記しておらず、1人は特に何とも言及していません。うーむ、やっぱりわからん。どっかで放送してくれんかな(こればっかり・笑)。
 ちなみにそれらのブログを読んでわかりましたが、手鎖刑を受けた蔦屋を見限った歌麿が鞍替えするのが鶴屋だったようです。また終盤では蔦屋はやはり病に倒れていたらしい。確かにいきなり葬式じゃ変ですもんね。あと調べてて知ったんですが、フランキー堺は『写楽道行』という小説も書いていたとのこと。ただし普通の時代小説ではなく、現代人の精神がタイムスリップして写楽の中に入り写楽の人生を追体験しちゃうというSFチックな小説らしい。



#11518 
徹夜城(今年も恒例行事をなんとかしようと奮闘する管理人) 2025/07/03 21:39
映画「写楽」の斉藤十郎兵衛

>ろんたさん
 ご紹介を読んで、KINENOTEの写楽のあらすじ、見てきました。う〜〜〜ん…僕が記憶している内容と「斎藤十郎兵衛」の件がずいぶん違うような…真田広之が演じた主人公、つまり写楽は「とんぼ」というあだ名で呼ばれるだけで、斎藤なにがしという名前にはなってなかった気がします。
 映画のなかで写楽の正体を聞かれたフランキー堺の蔦重が、「能役者をしていた斎藤十郎兵衛というのがいて…」と説明するシーンはあったはずですが、それは劇中では写楽の正体を知られまいとごまかして話してる演出だったと思います。つまり今は通説となっている写楽の正体について、映画ではそれとは異なる話にしてるので辻褄合わせをしているって感じでした。
 映画をもう一回ちゃんと見てみないと断言できないんですが…このKINENOTEの文章は書き手が何か間違えて書いている可能性も感じます。ほかの映画でもなかったわけではないですし。

 ついでに蔦重が出てきた映画では新藤兼人監督の「北斎漫画」もありまして、こちらは写楽は出てこず北斎(緒形拳)と馬琴(西田敏行)の関係がメイン。奇人変人の北斎を、馬琴が蔦重に紹介してやる展開でした。
 「写楽」でも馬琴は1シーンだけ出ていて、確か一九から「水滸伝ばっか読んでるから売れないんだ」とかからかわれていたような。



#11517 
ろんた 2025/07/02 01:03
『妖櫻記(上)(下)』(皆川博子/河出文庫)

『妖櫻記(上)(下)』読了。これで日本を舞台にした歴史もの、時代ものはお終い(その後購入したものもあるけど)。17世紀のロンドンを舞台にした『開かせていただき光栄です──DILATED TO MEET YOU──』『アルモニカ・ディアボリカ』、アメリカ独立革命を舞台にした『インタヴュー・ウィズ・プリズナー』に取りかかります。でもこの三部作、文庫で500ページずつあるんだよな(汗)。とりあえず『妖櫻記(上)(下)』カバー裏のあらすじから。

時は動乱と呪法邪法に満ちた室町時代。赤松満祐が将軍義教を暗殺して挙兵し、満祐の側室野分がもう一人の側室玉琴を惨殺した夜から、死者生者入り乱れ運命が動き出す。南朝の血を引く少年阿麻丸は神器奪還の戦いに巻き込まれ、玉琴の怨念は生き傀儡と化して野分と娘・桜姫に迫る! 著者畢生の傑作伝奇小説。(上巻カバー裏)
阿麻丸と桜姫は京に近江に流転、野分は長い眠りにつき、玉琴の遺児清玄は立川流修法のために桜姫の髑髏を求める。一同が離合集散する中、後南朝の二人の宮と神器を狙う赤松の遺臣により、吉野の御所に戦火が上がる。応仁の大乱の足音が迫る時代を舞台に絢爛に繰り広げられる夢幻奇譚、いよいよ終幕へ。解説=東雅夫(下巻カバー裏)
 (1)「嘉吉の乱」、(2)「禁闕の変」、(3)「長禄の変」を背景にした伝奇小説。(1)はもちろん、赤松満祐が六代将軍・足利義教を殺害し叛乱を起こした事件、(2)は後南朝一派が禁裏を襲撃して玉璽を奪った事件、(3)は赤松の遺臣が後南朝の根拠地を襲撃して玉璽を奪還した事件。(1)は赤松、後南朝、山名、細川が組んでのものだったが、史実通り山名と細川は幕府方につき赤松は滅びる。(2)は赤松残党(その中には満祐もいる)と後南朝が組んでの騒乱、(3)は満祐亡き後、お家再興を狙う赤松旧臣の裏切り──とただでさえ錯綜した話に、さらに真言立川流の呪詛が絡む……ということで、分かりやすくお話を説明するのは断念。上下二巻で1000ページぐらいあるし(汗)。解説の東雅夫は花田清輝、澁澤龍彦の影響を指摘、また巻末の「作者口上」には"その(=山東京伝の読本の)一つ、『桜姫全伝曙草紙』の登場人物を、後南朝の史実の世界に強引にひきずりこみ、物語の坩堝で一つに熔かすということを、こころみたのです。"とある。ところがこの作品の例言で山東京伝、友人の拝田泥牛が買ってきた作者不詳の書物に手を加えたものだ、と言っているけど、現代の研究ではこの種本は実在し、大江分坡の『勧善桜姫伝』だと判明しているという。二重三重に油断がならないのであります。

>『女北斎大罪記(2)』(末太シノ/ヤンマガKC)
急死した葛飾北斎に成り代わり絵師として仕事をこなす栄のもとに現れたのは「北斎漫画」の支援者・牧墨僊。彼が告げたのは「北斎漫画」打ち切りの危機の報だった──! 売り上げ増進のため栄は人前で大達磨を描き上げる宣伝案に乗ることに。力試しとしてまずは弟の姿に変装し江戸一番の花街・吉原へ向かう! 眩しく暗い遊女たちの世界で栄が見たものとは──。(カバー裏)
 彫師の留吉に北斎とのわずかな筆致の違いに気づかれ、とっさに北斎は取材旅行中だから代作したと誤魔化す栄。ところが一難去ってまた一難。「北斎漫画」を企画した牧墨僊が名古屋からやって来る。続き物の宿命で、巻を重ねるごとに売り上げは落ちてしまう。そこで末広がりの八巻発売に合わせて再来年、120畳大の実演描画というイベントを企画しているというのだ。北斎は死んだし、女の栄が描くわけにもいかない。もちろん、断るわけにもいかない。そこで栄は男装して北斎を演じようと考え、手始めに北斎の息子・川村太吉郎に扮して吉原に繰り出す。ここで「吉原格子先之図」の着想を得るのだが、前途多難であります。

>『写楽』
 KINENOTEのキャストを見ると、真田広之−とんぼ(齋藤十郎兵衛,東洲齋冩樂)となっていて、映画は写楽=齋藤十郎兵衛のようです。あらすじでも、とんぼの本名を十郎兵衛としています。(小説は本名の設定なし) ただ、稲荷町の役者に「齋藤」などと御大層な名字がついいるのは「?」。通説だと阿波蜂須賀家お抱えの能役者だから名字帯刀が許されていても不思議じゃないけど。ひょっとしてとんぼこと十郎兵衛と齋藤十郎兵衛は別人なのか。花里という花魁は小説にも登場するけど二人の関係はかなり淡いもので、映画のような劇的展開は無し。とんぼが筆を折るのは、写楽の真価を知る蔦重が寝たきりになって、番頭に流行の役者絵の模倣を強いられるから。(あっ、ネタバレしちゃった(汗))



#11516 
バラージ 2025/06/22 08:15
訂正

 『ルパン三世』のハリマオが出てくるやつのサブタイトルは『ハリマオの財宝を追え!!』でした。すいません。

>近過去映画
 先日、名乗り出た上で亡くなった桐島聡を題材とする映画が2本も作られました。足立正生監督の『逃走』と高橋伴明監督の『桐島です』でいかにもなお二人ですが、やっぱり創作意欲を掻き立てる題材なんですかねえ。



#11515 
バラージ 2025/06/21 18:20
中国時代劇映画吹替話

 チェン・カイコー監督の『PROMISE プロミス』は今だに未見なんですよね。これまたどうもいまいち食指が動きません。1つには聞こえてくる評判があんまりよろしくないってのもありますが、もう1つ個人的に中華圏映画を観る理由の1つとして中華圏の俳優が観たいってのもありまして。この映画、主演が日本の真田広之と韓国のチャン・ドンゴン、香港のセシリア・チャンにニコラス・ツェーと非中国俳優ばっかりってのが、なんで?と不思議だったんですよね。まあヒロインのセシリアと敵役のニコラスは中華圏の人ではありますが、メインは真田広之とチャン・ドンゴンでしょうし、残る1人のメイン俳優で1番脇役のリウ・イエだけが中国の俳優です。で、吹替ですが、これだけ普通話非ネイティブの俳優ばかりだから吹替だらけだろうと百度百科を見ると、やはり5人全員が吹替のようです。真田さんは中国語を徹底マスターして吹替なしで演じたとのことですが、やっぱりネイティブレベルまではいかなかったんじゃないかなあ。まあ観てないんで何とも言えないんですが、あるいは現地上映版は吹替で、日本に輸入されたものは真田さん本人の声のバージョンなのかも。ちなみにリウ・イエは吉林省長春市出身とのことなので、やはり普通話ネイティブではないものと思われます。舞台はあくまでファンタジー世界なのでそこまで普通話ネイティブにはこだわらないかとも思ったんですが、そういうわけでもないようです。
 その他の歴史映像名画座掲載映画で、一発で吹替とわかったのが香港のメイベル・チャン監督の『宋家の三姉妹』。香港のマギー・チャンは非常に特徴的なハスキーボイスなので吹替だとすぐわかってしまいます。女性声優にはああいうハスキーボイスの人はいなさそうですし、逆に高いアニメ声みたいな人が多いんですよね。このあたり、どこの国でも同じなのかも。またマレーシア華僑のミシェール・ヨーも吹替。『ポリス・ストーリー3』や『グリーン・デスティニー』の時とはやはり声が違いました。『グリーン・デスティニー』は国際合作ではあるものの主は台湾だと思われ、そのため普通話縛りがなかったものと思われます(『PROMISE』や『宋家の三姉妹』も国際合作だが中国が主と思われる)。中国のビビアン・ウーは本人の声のような気がしましたが、彼女は上海出身なのでやはり普通話ネイティブじゃないはず。実際、ドラマ『如懿伝』では吹替でしたし。百度百科は配音(吹替)が空白なのでこのあたりは不明。
 一方で何度も観てる『さらば、わが愛 覇王別姫』のレスリー・チャンは本人の声としか思えない。あまり気にしたことなかったけど、よくよく考えたらレスリーは香港だから普通話ネイティブではないはず。これも国際合作だから普通話縛りがなかったんだろうか? それとも近現代ものだから? チャン・フォンイーとコン・リーは普通話ネイティブの人なので、彼らを含めて普通話ネイティブの人で固めたと思われる次の『始皇帝暗殺』にも吹替はいなかったと思います。
 チャン・イーモウ監督の『HERO』はどうだったかな。トニー・レオンとマギー・チャンは吹替だったかな?(ドニー・イェンはそもそも台詞がなかったはず) あまり記憶にありません。百度百科にも記載はないし。『LOVERS』も同様で、普通話ネイティブのチャン・ツィイーはともかく、アンディ・ラウと台湾の金城武は吹替だったんだろうか? 実は女優は吹替がわかりやすいんですが、男優はわかりにくいというか声が大きく変わるわけではないようであまり気にならないんですよね。DVD持ってるから観直せばわかるんですが。『王妃の紋章』もなあ、チョウ・ユンファとか吹替だっけ? このあたりも百度百科に記載がないんだよな。吹替じゃなかったのか、それともわからない(吹替かどうかわからないというより吹替声優が誰かわからない)だけなのか?
 その他は『項羽と劉邦 その愛と興亡』は香港のロザムンド・クワンとベトナム華僑のレイ・ロイは吹替だったかもしれないけど記憶になく、百度百科にも記載なし。『ヘブン・アンド・アース 天地英雄』は中井貴一が間違いなく吹替だっただろうけど百度百科には記載なし。チアン・ウェンとヴィッキー・チャオは普通話ネイティブ。『女帝 エンペラー』は百度百科によると香港のダニエル・ウーが吹替だったようです。チャン・ツィイー、グオ・ヨウ、ジョウ・シュンは普通話ネイティブ。『ウォーロード 男たちの誓い』は百度百科によると金城武が吹替とのことですが、アンディ・ラウは吹替じゃないのかな? 記憶ははっきりしないんだけど。『レッドクリフ』は百度百科にはリン・チーリンが吹替とありますが、中村獅童の吹替には記載なし。呉はトニー・レオンが香港、リン・チーリンとチャン・チェンが台湾、ヴィッキー・チャオが中国で中村獅童が日本と多国籍状態になってますが、地域性を出すためにあえてそうしたのかなとも思ってたんだけど違うのかな? 中村獅童を除けばトニーもチャン・チェンもヴィッキーもなんとなく本人の声だったような気もするんですが。蜀は金城武だけが台湾で、他は中国。金城くんは北京語(台湾国語)・台湾語・広東語・日本語・英語の5か国語を話せる才人ですが、やっぱり本人の声だったような気が。アンディ・ラウ主演の『三国志』も百度百科によると吹替ですね。ただ、この映画は監督のダニエル・リーも主演のアンディもサモ・ハンもマギーQ(ヨーロッパ系とアジア系ミックスの米国人だが中国系ではない)も香港勢でほぼ香港映画だから、中国大陸で公開した時の吹替なのかも。『孫文の義士団』は百度百科の配音に記載されてるのが逆に中国俳優の広東語吹替のようで、あくまで香港映画という扱い? 近現代ものだから? 『ラスト・ソルジャー』は百度百科によると台湾のワン・リーホンが吹替。中国で活動してる韓国俳優のユ・スンジュンは吹替じゃないのか? 『1911』は百度百科ではジャッキーと台湾のウィンストン・チャオが吹替。『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』は日本人俳優が吹替。確か染谷将太も中国語を吹替なしで演じたらしいけど、やっぱりネイティブには至らなかったんでしょう。『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』は百度百科に記載がありませんが、みんな本人の声だったように聞こえましたね。日本人側は日本語だし(笑)。チウ・マンチェクは香港映画で活動してるけどもともとはスカウトされて中国の黒竜江省ハルビン市から来た人。個人的お気に入り中国女優レジーナ・ワンは南方の湖南省益陽市出身ですが、よほど語学センスがあるのか普通話ネイティブが要求される時代劇でも本人の声のことが多いですね。『三国志 Secret of Three Kingdoms(三国志 秘密の皇帝)』やファンタジードラマ『海上牧雲記』でも本人の声でした。


>ダヤン・ハーンをめぐる話
 白鵬がダヤン・ハーンの子孫というニュースは僕もネット記事か何かで読んで驚きました。まあ、この手の子孫話は子々孫々語り継がれるうちに尾ヒレが付いてることもありますし、どこまで本当のことかはちょっとわかりませんが。
 Wikipediaを読むとマンドゥフイ・ハトゥン(マンドハイ)についてはモンゴル年代記においてダヤン・ハーン擁立の立役者として称賛されてきた一方で、同時代の漢文史料では彼女の存在について全く言及されていないため、マンドゥフイがダヤン・ハーン擁立に果たした役割は実際には限られたもの、あるいはそもそもマンドゥフイに関わる説話の多くが創作だという説もあるそうで。モンゴル年代記でマンドゥフイの業績が誇張された要因として、年代記の作者たちがハーンを傀儡とし権力を握ったイスマイルらを故意におとしめ、マンドゥフイの業績を特筆することでハーンの権威を損なわないよう配慮したのではないかという説があるとのことです。この辺、僕は全くくわしくないのでよくわかりませんが。

>『写楽』小説版
 そんなのがあったんですねえ。存在自体全然知らなかった。映画ではフランキー蔦重は卒中の発作どころか病の描写がそもそも無く、死ぬシーンも無くてラストいきなり葬式だったような。観たのが昔なんではっきりとは覚えていませんが。それから『べらぼう』に写楽が出てきてから触れようと思ってたけど、映画ではとんぼ=写楽とは別人として斎藤十郎兵衛がちょろっと出てきてたような記憶があります。写楽研究家でもあるフランキー堺は写楽=十郎兵衛説には否定的だったと何かで読んだような記憶あり。あと映画で葉月里緒菜が演じたヒロイン花魁は小説では出てこないのかな?

>映画『マライの虎』
 マレー人役や中国人(華僑)役だけでなくイギリス人役も一部は日本人が演じたという情報がありますね。あと、もともと子供(少国民)向けの映画として作られたらしいんで字幕は避けたんじゃないでしょうか。『シンガポール総攻撃』という映画の現地ロケ副産物として製作されたそうですが、『シンガポール〜』はフィルムが失われてしまったのに対して、こちらは残ってるということはこっちのほうがウケたのかな? そういやハリマオはアニメ『ルパン三世』のスペシャルにも出てきてましたね。『ハリマオの黄金伝説』とかっていうやつ。僕はチラッとだけ観ましたが。

>追悼ジェームス三木
 最初に知ったのはやっぱり『独眼竜政宗』の脚本を担当した時だったかなあ。それとも朝ドラの『澪つくし』だったかな?(ドラマ自体は観てなかったけど) とにかくお名前が変わってたんですぐ印象に残ったと思います。『八代将軍吉宗』は観てなかったけど、『葵 徳川三代』も面白かった。ご冥福をお祈りします。



#11514 
ろんた 2025/06/20 07:54
『花闇』(皆川博子/河出文庫)

 皆川博子×9。『花闇』『写楽』『乱世玉響』を読んだけど、『死の泉』(ハヤカワ文庫)と『少女外道』(文春文庫)を買ってしまったので未読は変わらず。とりあえず読んだ分だけご紹介。

絶世の美貌と才気、そして妖艶極まる頽廃美で絶大な人気を博した女形、三代目澤村田之助。江戸から東京へと世情が揺れ動く中、不治の病に侵され四肢を失いながらも舞台に立ち続けた、壮絶なる人生とは──。こよなく淫蕩、こよなく凛呼、こよなく高慢。稀代の役者の芸への執念を流麗に描き上げた傑作長篇。解説=千街晶之(カバー裏より)
 主人公は田之助ではなく市川三すじという中通り(名題、相中に次ぐ階層、下立役の上)。安政地震後、ある理由で河原崎権十郎(後の権之助、市川團十郎)から澤村由次郎(後の澤村田之助)のもとへ移り、いつしか由次郎−田之助に魅了されていく。手の届かないものへの崇拝と愛情、そして憎悪。だが田之助の芸も人気も頂点を迎える中、その足に激痛が走る。脱疽により四肢を切断しつつも舞台に上がりつづける執念。己の芸に対する矜持。だが権之助らから引退を強要される。それでも上方で興行を行うが、大衆の残酷な好奇の眼にさらされ、やがて狂死する。その一部始終を見届ける三すじ。田之助に魅せられ絵姿に定着させる月岡芳年。そして「ある理由」の真相が明らかになったとき、もう一人の男の一途な思いが明らかになる。この辺を推理小説仕立てととっている向きもあるが、いささか理解が浅いんじゃないかなぁ。田之助は頽廃的で猥雑で淫蕩な江戸歌舞伎の象徴的存在として描かれる。田之助がヘボンの執刀で右足を切断したのが慶応3(1867)年、幕府瓦解の年。死を迎える明治11(1878)年には近代的劇場となった新富座のこけら落としがある。その場に相中として、匕首をしのばせて臨んだ三すじは愕然とする。それは彼の慣れ親しんだ「江戸の芝居」ではなく、"善悪邪正の節正しく""温和平旦のこと"を演じる「東京の芝居」だった。客席にも江戸の見物衆の姿は無く、内外の貴顕ばかり。それは河原崎権十郎改め市川團十郎の目指すところであり、明治政府の望むものでもあった。序章と終章。越後で三すじは澤村田之助を騙る旅の一座と出会うが、これは新時代の歌舞伎が取りこぼしたものが、旅役者たちに受け継がれていくことを示すのか。

>『写楽』(皆川博子/角川文庫)
寛政5年、江戸。人気絵師・歌麿に去られ、血眼で新しい才能を探す蔦屋重三郎は、ふと目にした絵に驚愕する。斬新な魅力と力強さに溢れた役者絵……描いた者は、元稲荷町役者の”とんぼ”と名乗る男だった。蔦屋が考えた雅号は、<江戸の男の心意気>を表す、東洲斎写楽──歌麿の最大のライバルと言われ、型破りな名作を次々世に送り出し、忽然と姿を消した写楽。その魂を削る凄まじい生きざまと業を描きあげた、心震える物語。(カバー裏より)
 筋斗(とんぼ=歌舞伎の立ち回り等で行われる宙返りなどのこと)を得意とし、それがあだ名となった<稲荷町>役者(最下層の歌舞伎役者=下立役)。成田屋(五代目市川団十郎)から立ち回りの相手に指名されるほどだったが、舞台上の事故で引退し門付けに身をやつす。山東京伝、喜多川歌麿を抱え、江戸の出版界を牛耳る蔦屋重三郎。寛政の改革で手鎖五十日、身上半減の処分を受けたうえ卒中で倒れ、歌麿に見限られる。この二人の人生が交錯して写楽が生まれ、姿を消していく──という話。写楽の正体という歴史ミステリー的なところには足を踏み入れず、わずか十か月に数々の役者絵を発表し無名の闇に消えた人物を独自に造形していく。脇を固めるのは山東京伝、喜多川歌麿、十返舎一九、佐五郎(後の曲亭馬琴)、勝川春朗(後の葛飾北斎)、五代目市川団十郎、俵蔵(後の鶴屋南北)等々。
 篠田正浩が『みだら英泉』を読んで皆川博子にシナリオを依頼。その第一稿から篠田正浩、フランキー堺、片倉美登が決定稿を作成し映画化。小説は自らのシナリオ第一稿から執筆されているので、原作ではなくノベライズでもない。「2001年宇宙の旅」の映画と小説の関係に近いか。大竹直子によるコミカライズもあり(ASUKA COMICS DX/角川書店,のち小池書店)。蔦重が卒中の発作を繰り返すのはフィクション? 確か死因は脚気のはず。後半の展開は映画と違うようで、歌麿はそれほど重要な役割を与えられていない。

>『乱世玉響 蓮如と女たち』(皆川博子/春陽文庫)
室町時代中期、やさしく宗旨を説くことで幅広い民衆の帰依を得て強大な浄土真宗の基盤を作り上げた、中興の祖・蓮如。彼は八十五歳で没するまでに五人の妻をめとり、二十七人の子をもうけたという。その娘のひとり・万寿は、お上人様の子と周囲にかしずかれながらも疎外感と空虚さを抱えていたが、避難先の堅田で湖賊の娘・乙女と出会い、少しずつ変化してゆく。度重なる他宗からの攻撃、戦乱、そして父・蓮如に翻弄されつつ、万寿はみずからの生きる道を模索してゆく。少女たちの透明なまなざしを通して蓮如とその時代を描く時代長篇。(カバー裏より)
 テーマは父と娘の確執。父に反発しつつも父の掌から抜け出せない娘。乙女も蓮如の落胤であることが暗示され、二人は父に手痛いしっぺ返しを行うが、父は己の野望に子供たちを利用していく。それでも己の道を切り開いていこうとする娘……という話。皆川博子と父・塩谷信男医学博士の関係が投影されていることが、「初刊本あとがき」「巻末エッセイ 大人は、子供にとっての宿命である」からうかがえる。塩谷博士は、正心調息法(宇宙エネルギーを体内に取り込むことで健康や願望実現を目的とする呼吸法)を提唱した人物。医学博士ながらオカルトな人なのはうかがえるが、皆川博子によると、シャーマニズムを国家の理想と考え、霊媒をわが家に招き交霊会を開きご託宣を受けていたという。そして"己の言動は正しいという信念に燃え立った無邪気な父親への一方的な闘いが、私の、物語を描く原動力になっている。"(「巻末エッセイ」)、"これからも、おそらく、"少女"は、私の主題でありつづけることでしょう。"(「初刊本あとがき」)と語っている。

>「白雪姫」
 唐突に「修羅雪姫」という映画を思い出したりなんかして。原作は小池一夫+上村一夫、梶芽衣子版が二本、釈由美子版が一本。テレビドラマや舞台もあり。タイトルをもじってるだけで中身は関係ないけど、英語タイトルは"Lady Snowblood"。
 実写版「白雪姫」についていえば、ポリコレをぶち込んで改変という「リトル・マーメイド」と同種の問題に加え、ヒロインのレイチェル・ゼグラーがアニメ版を批判しちゃったこともあるんでしょう。これに対して、白雪姫的な生き方も尊重すべきで、それができないのはフェミニズムではないという批判も出てきてグチャグチャに。そもそもアニメ版「白雪姫」ってポリコレと相性悪いんだから「混ぜるな危険」なの分からなかったのかなぁ。「鏡よ、鏡よ、鏡さん……」からしてルッキズムだし(笑)。あと、気を失ってる女の子にキスするのは性暴力って話もあったけど、王子様は白雪姫が死んだと思ってるわけで、いくら可愛いからって死体にキスするのは……ネクロフィリアじゃねぇか!(笑) 「白雪姫」をモチーフに新しい物語を作っていれば炎上しなかったと思うんだけどな。(バラージさんのあげている諸作はそういったものだと推察) 「バービー」って完全なポリコレ映画だけど騒ぎにはなってないし。

>『人魚姫』ってなんですか? 『リトル・マーメイド』のことですか?
 e-honの児童書を見た範囲ですが、『人魚姫』と『リトル・マーメイド』は別の話ということになっているようです。おそらく両者を混ぜるとディズニーが突撃してくるんでしょう(笑)。まぁ、買い与える方が混同して「なんでこんな悲しい話なのぉ」と子供にショックを与えるってのはありそうです。それでも、こういう(↑)若い衆が大量発生している気がする。『人魚姫』、"絶滅危惧種"になっちゃったのかなぁ。

>「ハリマオ」
 YouTubeで「マライの虎(ハリマオ)」(歌:東海林太郎)を聞きました。確かにサビがそのまんま。ドラマ版は映画から20年も経ってないんでオマージュってことで(笑)。戦前版映画もYouTubeで見たけど、異母妹とかもっと残酷に殺されてるはず。検閲に引っかかるんだろうか。イギリス人が拙い日本語を使ってるのに違和感。英語禁止だからかなぁ。現地の民謡だか歌謡でマレー人が歌い踊ってるのは興味深かったけど、あれは現地ロケの成果かな?
 それにしてもハリマオ、「支那にゃ四億の民が待つ」的な部分が刺激されるのか、アジア版アラビアのロレンスという見方なのか、エンタメ界では度々取り上げられているのは興味深い。わたしが持ってるのは『翡翠峡奇譚(1)(2)』(広江礼威/小学館)。古代アステカの太陽神ククルカン(美少女(笑))を巡ってナチ親衛隊のオカルト部門と機械化人間部門、大日本帝国の特務機関、アメリカの情報機関が抗争を繰り広げる話。ハリマオ、丙種合格なのに背が高いのはご愛敬。

>戦争映画
 ベトナム戦争を扱ったアメリカ映画と日本の戦争映画の変遷が、なんか似ている気がしています。(1)自国市民、兵士の被害感情に訴える>(2)戦争、戦場の実体を描写>(3)エンタメ化 という感じ? (1)は「帰郷」「ディア・ハンター」、(2)は「地獄の黙示録」以降かな。原作は古典文学だけど。(3)は「ランボー2」以降? 第一作は(1)だろうな。ああ、ジョン・ウェインの「グリーン・ベレー」ってのもあったなぁ。最後、ベトナム人の少年に「僕たちは君たちのために戦っているんだよ」と語るラストシーン、笑ってしまった。
 そういえば、「激動の昭和史 沖縄決戦」が放送されますな。(NHK-BS 06/22(日) PM02:00-) 「米艦艇のため海の色が見えない」「船が七分に、海が三分! 船が七分に海が三分だ!」で有名な映画。(もちろんそれだけじゃないけど)

>『ROCAコンプリート』(いしいひさいち/徳間書店)
「いしいひさいち」の名が目に入ったので書いてしまいます。自費出版された『ROCA:吉川ロカ ストーリーライブ』『花の雨が降る』『金色に光る海−ROCA短編集』に描き下ろしを加えたもの。ヘナチョコ女子高生・吉川(きっかわ)ロカが、港の運搬業者の娘にして年上の危険な同級生・柴島(くにしま)美乃らに応援されて、ファド歌手を目指す話。ファドとはポルトガルの国民歌謡で「宿命」を意味する。\1,800と高価だが、それだけの価値はある。いや、最終話「おやすみセニョリタ」だけでお釣りがくる、と言っておこう。



#11513 
徹夜城(また忙しくなってきてしまった管理人) 2025/06/15 21:21
アダムが耕しイブが紡ぎし時、誰が王であったか?

 アメリカ陸軍の記念日に合わせて、というよりトランプ大統領ご本人の誕生日に合わせての軍事パレード実施に対し、全米各地で「王はいらぬ(No KIng!)」と抗議デモが起きているそうですが、いっそ歴史上有名な上記の言葉をやってみてはなどと思ったりして。まぁそれにしてもトランプ氏はもはや王よりも始末が悪い存在(それも全世界的に)になっております。
 余談ですが、「アダムが耕し〜」の言葉を防犯意識から夫婦間の合言葉にする、というネタがいしいひさいちさんのマンガにありましたが、元ネタ分かった人がどれほどいたのか。


>どっかの知事の正成ばなし
 僕がネットで間接的に聞いた話では、斎藤知事、正成について「規制勢力により『悪党』と呼ばれた」と紹介し、明らかに自らに重ねようとしてたそうで。「楠公精神」かよ、というツッコミも見かけましたが(笑)、それはそれとして、正成を単純に当時言われた「悪党」なのかについては最近はあまり大きく言われない気もします。祖父か父とおぼしき「楠入道」が悪党活動をしてるらしいですが、正成自身について「悪党」呼ばわりが出てくるのは挙兵以後のことみたいですしね。最近は北条配下の御内人説が強いようで、歴史小説なんかでもそういう描かれ方が目につくようになりました。


>墨攻
 これはまた懐かしいタイトルを。劇場で見たっきり見てないような(BSだったかで放送したのの録画はどっかにあるはず)。
 特に驚くのは韓国の名優アン=ソンギが敵方将軍役で出ていることですが、当時のパンフレットなどによると撮影時は中国語セリフを覚えるのではなく「似た発音の出鱈目韓国語」を発音し、吹き替えで口が合うという仕掛けにしていたそうです。
 真田広之がチェン=カイコーの中国ファンタジー映画「プロミス」に出たときは、本人の希望で中国語を徹底マスターして吹き替えなしで演じたそうです。この方、英語圏でもそれをやってますし語学センスもいいんだろうな。


>相撲ネタがこんなところにつながる
 さっきXで書いてたネタですが、元白鵬が日本相撲界を去って自ら会社を立ち上げ、その名前に「ダヤン」と入れた。そう、モンゴル再統一の英雄ダヤン・ハーンにちなんだんですね。しかもご当人もダヤン・ハーンの子孫という話があるとかで。
 ダヤン・ハーンというと、僕はまず映画「マンドハイ」での登場が印象的…というより、それ以外で出てきた例を知りませんが。主役ではないけどカッコよかったです。ラストシーンもばっちり決めるのは彼の台詞でした。
 銀河英雄伝説にも地名でダヤン・ハーンがありましたね。



#11512 
バラージ 2025/06/14 23:01
100年前から

 トランプとマスクが喧嘩別れ。まあ全然驚かないですけどね。第1次トランプ政権の時のことを考えれば容易に予想できたことで。さらにトランプはカリフォルニア州のデモの一部の暴徒化に州兵を投入し、海兵隊までも投入することを検討してるとか。本当にやれやれですね。
 そしてついにイスラエルの奇襲攻撃でイランとイスラエルが戦争状態に突入。ネタニヤフはやりたい放題だな。いったいどうなってしまうんだろう。

 そんな中、少し前にドキュメンタリー映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』を観てきました。イスラエルによる占領と破壊の続くパレスチナ自治区ヨルダン川西岸に住み、理不尽な現状を映像で世界に向けて発信するパレスチナ人ジャーナリストの青年と、同じくイスラエルによる占領に反対し、パレスチナ人ジャーナリスト青年と協力してヨルダン川西岸で取材し映像を発信するイスラエル人ジャーナリストの青年。2人が2023年10月までの4年間に渡り、イスラエル軍や入植者の暴力による破壊活動を命がけで記録したドキュメンタリー映画です。監督は彼ら2人に加えてパレスチナ人とイスラエル人が1人ずつ、計4人となっています。
 今やテレビでもしょっちゅう流れるようになったパレスチナの映像ですが、そのほとんどはハマスを壊滅させるためにイスラエル軍が侵攻したガザの惨状です。一方、映画で映し出されるのはイスラエルを挟んでガザの反対側にあるヨルダン川西岸のそれ以前の様子。イスラエル人入植者とイスラエル軍によってパレスチナ人の家屋や小学校までもがブルドーザーで破壊され、井戸がコンクリートで埋められ、住居も土地も奪われて追い立てられていくパレスチナ人。イスラエル軍や入植者に銃で撃たれて死んだり半身不随になる者もいます。そのような理不尽で非道なイスラエル軍と入植者の行為を、2人はスマホやハンディカメラで接写して臨場感あふれる命がけの映像を撮っていきます。そのようなひどいことの連続がパレスチナの日常であり、イスラエル建国と数度の中東戦争以来数十年、いや建国以前からユダヤ人の移住はあったんだから100年近くに渡って続いてきたとも言えます。もっとも迫害が激しくなったのは60年代から80年代らしいんで、そこからは40年から60年でやっぱり数十年。思えば90年代にはPLOのアラファト議長とイスラエルのラビン首相の間で和平の動きがあり、ほのかに希望の見えた時期もありましたが、今となっては遥か夢の彼方となってしまいました。それにしてもパレスチナ自治区ヨルダン川西岸でのイスラエル軍およびイスラエル人入植者の行為を見ていると、満洲国における関東軍と満洲開拓移民もおそらくはこうだったんだろうなあと連想させられました。そういう意味では日本人にとっても決して他人事ではないと思わされます。
 そして、この映画で意外にもそれ以上に印象深いのは、そのような過酷な映像の合間に映し出される2人の青年の会話と交流のシーン。共に撮影を続ける2人が語り合うパレスチナとイスラエルの未来についての対話や、2人の若者の間に生まれる友情が静かに胸を打ちます。パレスチナとかイスラエルとかではなく同年代の若者の、1人の人間と1人の人間の関係こそが未来を形作っていくのではないか? そういうほのかな希望が宿る、そんな映画でした。
 撮影は2023年10月で終わったことが示されますが、エピローグとしてガザとイスラエルの紛争が再び勃発したこと、ヨルダン川西岸でも事態はますますひどくなっていることが触れられます。この映画のパレスチナ人監督の1人がイスラエル軍に拘束されたというニュースが流れたことも記憶に新しい(後に解放)。映画の中でパレスチナ人ジャーナリストの青年がイスラエル人ジャーナリストの青年に「焦りすぎだ。数十年の問題が1日で解決はしない」と言うシーンがありますが、解決にはまだ多くの歳月が必要なのかもしれません。


>録画で観た歴史映画
『墨攻』
 中華圏映画好きな僕ですが、この映画はなんとなく気乗りがせず今まで観てこなかったんですよね。それでも少し前にWOWOWで放送されたんで録画しといたものを先日ようやく視聴しました。原作は小説・マンガ共に未読です。とにかく最初から最後までずっと戦争みたいな映画で、もう少しそれ以外の部分もあって良かったんでは? もちろん戦い以外の話も少しはあるものの、それもあくまで戦争の中での話です。主演は香港のアンディ・ラウで、敵将が韓国のアン・ソンギ、ヒロインは中国のファン・ビンビン、梁王が中国のワン・チーウェン、その息子が韓国のチェ・シウォン、弓矢の達人が台湾のウー・チーロン(ニッキー・ウー)とえらく多国籍体制ですが、いくらアン・ソンギが名優とはいえ中国人の役を韓国俳優にさせる意味もあまり感じられませんでした。また監督・脚本が香港の人のためかなんとなく香港映画っぽいところもあり、ヒロイン役が女武将で他に女っ気がない映画なんでそれ自体はいいんだけど、なんで女武将になったかの説明ぐらいはあってほしい。また捕虜となった趙軍の兵士になぜかアフリカ系(黒人)の人がいたりしたのも???でした。偵察に出たアンディとファン・ビンビンが趙軍に見つかって逃げるくだりで夜のシーンだったはずがいつの間にか昼になってる演出ミスもありましたね。それでもスペクタクル合戦時代劇としてそこそこ楽しめる映画ではあったんですが、善い人がみんな不幸な末路をたどり、愚人が最後に笑うというあまりに苦い終り方をするのはどうにもすっきりしません。
 吹替については韓国の2人だけでなく、主要人物のほとんどが吹替のようです。観てて、あれ? アンディの声が本人と違うな、と思って百度百科を見てみたらやはりそうでした。その時に、そういえば中国の時代劇では基本的に中国人役は普通話が原則で、普通話ネイティブじゃない人は吹替になるんだったと思い出しました。なので香港のアンディだけでなく、台湾のウー・チーロンも吹替でしょう。さらに中国のファン・ビンビンもなんとなく吹替っぽいように感じたんですが、百度百科によるとやはり彼女も吹替。ファン・ビンビンは山東省出身なので彼女の普通話はおそらく山東省訛りがあってネイティブではなかったんでしょう(彼女がブレイクし始めた頃の作品ですし)。そういうのも中国映画&ドラマではあるある。というわけで主要人物で本人の声なのはワン・チーウェンだけのようです。まぁ香港映画も90年代前半ぐらいまでは別の理由で全員吹替でしたから、アンディやウー・チーロンも吹替には慣れっこだったでしょう。

>『べらぼう』
 喜多川歌麿と別人設定になった北川豊章がなんと志水燕十に改名。いやあ、自由だなあ。それとも何かそういう説でもあるのか? さらには誰袖が田沼意知の間者になろうとしたり、意知が蔦重を蝦夷地調査に誘ったりと幕閣まで巻き込んだかなりやりたい放題のフィクションに。やっぱりこのドラマ、史劇じゃなく時代劇だな。ま、個人的には特に思い入れのある時代じゃないんで面白けりゃ別にいいやとなっちゃうんですが。

>頼朝小説
 先日、たまたま他の探しものをしていて、秋山香乃の『頼朝 陰の如く雷霆の如し』という長編小説の存在を知りました。どうやら去年に出版されていたようです。静岡新聞社というローカルなところから出版されてたようなので、それで目に触れなかったのかな? 秋山香乃さんはよくお名前を見かける方なのでもう少し待てば文庫化されるだろうから、それから買おうかな。実は去年に咲村観の『源頼朝』(1986年、講談社文庫)という長編小説の存在を知り、古本を購入しつつ今だに積ん読状態なんですよね。

>大河ドラマ+時代劇 登場人物配役事典
 こちらの話ではありませんが、上記サイトの更新がすっかり止まってるような気がするんですが何かあったんでしょうか? X(Twitter)も新たなツイートがないようですし。



#11511 
バラージ 2025/06/03 23:06
ジャッキーと歴史は相性が悪い

 斎藤兵庫県知事の問題を精力的に取り上げている『報道特集』を先日観ていたら、神戸市で7年ぶりに開催されたという「楠公武者行列」というお祭り?で大将の楠木正成役を斎藤知事が務めたという映像が流れ、思わず苦笑してしまいました……。

 ジャッキー・チェンの映画『A LEGEND 伝説』を観ました。またまた僕の地方では1か月以上遅れての公開です。映画板とどっちに書くか迷ったんですが、一応歴史ネタが入ってるんでこちらで。
 『THE MYTH 神話』『カンフー・ヨガ』の姉妹編で、輪廻転生を題材にして現在と紀元前の前漢の時代を舞台とした合戦&アクション映画。ストーリーは新疆ウイグル自治区で発掘作業をしていたジャッキー演じる考古学者が不思議な夢を見るところから始まります。夢の中で彼は匈奴と戦う前漢の将軍・霍去病の部下である若き武将で、考古学の若い発掘助手にそっくりの同僚武将と共に対匈奴の最前線で戦っていた。そこへ父と弟を殺して権力を握った匈奴の悪王から逃れてきた匈奴の美女が現れ……。夢から覚めた考古学者は、夢に出てきた翡翠の装飾品が発掘した装飾品と同じもので、また助手も全く同じ夢を見ていたことから、古代の謎の解明の鍵を握るものではないかと考え……というようなお話。
 この映画、実はあんまり期待してなかったんですよね。本国じゃ大コケしたそうだし、特にAIで作った若い頃のジャッキーの顔を他人の体(というか顔面以外)にハメ込んだAIジャッキーが大不評という噂が流れてましたんで。実際に観たらやはりAIジャッキーがどうにも不自然。いま問題になってるDeep Fakeそのもので、出てくる度にすごい違和感です。前漢パートは全てAIジャッキーで、しかも前漢パートが予想以上に多く、というか多すぎて実に半分以上の6割〜7割ぐらいが前漢パート。そういうわけで今回は歴史板のほうに書いたんです。ま、霍去病の匈奴戦という以上には史実と関係ないんですけどね。実在人物は霍去病だけだし、描写も自由奔放で史実は特に考慮されていません。まあジャッキー映画であくまで娯楽映画なんだから当然か。前2作では古代パートもありつつ、あくまで現在パートが主だったんですが。そんなわけで映画は当然ながらAIジャッキーの出番が本物のジャッキーよりもむしろ多く、AIジャッキーが出てくる度に、なんだこれ?何見せられてるんだ?感がぬぐえない(思えば予告編ではAIジャッキーを巧妙にカットしてあった)。正直、前漢パートになる度に、早く現在パートに戻らねえかなと思ってしまいました。
 じゃあ、つまらなくて退屈したのかというとそういうわけでもなく、AIジャッキーを抜きにして単純に娯楽アクション映画として観ると結構面白かったのも事実。前漢パートはとにかくものすごいスケールで、どんだけ馬がいるんだってくらいの大騎馬戦が展開されます。CGも含まれてるんだろうけどこっちの技術は高いのかそうは見えないな〜と思ったら、なんと実際に1万頭以上の馬と1300人以上の遊牧民が動員され、半年間訓練したとのこと(ただし馬がコケるシーンとかは明らかにCGでした。ご時世ですな)。ヒロイン役のグーリーナーザーも走る馬の上に立って弓矢を射るという離れ業アクションを見せてくれますが、撮影前は馬に乗れないどころか恐怖心を抱いていたというからすごい。ロケ地の雄大な自然風景も素晴らしく美しい。ただ、その中心にいるのがAIジャッキーだからなあ。グーリーナーザーは結局本物のジャッキーと映画の中で1度も共演しなかったわけで、なんか観ててモヤモヤした気持ちになってしまう。どうもこの『神話』に始まるシリーズといい、『1911』や『ドラゴン・ブレイド』といい、ジャッキーは歴史系の映画とは相性が悪いような。
 一方の現在パートはいつものジャッキーといった感じで、やっぱりこっちのほうが落ち着いて観ていられます。アクションは昔に比べて遥かに小ぶりだしスタントやワイヤーも使ってるでしょうが、70歳超えたジャッキーが昔ながらのアクションを見せてくれるだけで楽しい。若い助手役のチャン・イーシン(レイ)がコメディパートで笑わせてくれるし、もう1人の助手役を演じる女優ポン・シャオランの往年のマギー・チャン的なキャピキャピ女子ぶりも可愛い。個人的には前漢パートのウイグル美女グーリーナーザーより彼女のほうが好み。しかしまあ中国にはいくらでも美人女優がいるもんですな。
 全体的には面白いことは面白いんだけど、問題はその中心にいるのがAIジャッキーだということで、評価が難しい作品です。まぁ面白いことは面白くて、観て損はない映画でしたが。


>『べらぼう』の登場人物
 前回今回は新キャラとして大田南畝、島津重豪、工藤平助、松前道広といった珍しい人たちが登場。大田南畝はその他の映像作品では1995年の映画『写楽』で終盤にゲストキャラ的に登場(演:竹中直人)。すでに寛政の改革で狂歌を捨てた後で、退任する老中松平定信の前にかしこまってひれ伏してました。他に1959年の新東宝映画『雷電』『続 雷電』に大田蜀山人の名で登場してるようです(演:沼田曜一)。ちなみに雷電というのは江戸時代のお相撲さんの大関・雷電為右衛門。島津重豪は2001年の映画『伊能忠敬 子午線の夢』(演:丹波哲郎)に、工藤平助は歴史映像名画座にも掲載されてる単発ドラマ『風雲児たち〜蘭学革命(れぼりゅうし)篇〜』(演:阿南健治)にそれぞれ登場したとのこと。松前道広は他に登場した映像作品はありませんが、クナシリ・メナシの戦いの時の藩主だと知って、ああ、そういえば船戸与一の小説『蝦夷地別件』に出てきた殿様はこの人だったのかと。

>未見映画
 その『伊能忠敬 子午線の夢』についてソフト化も配信もされてないと以前書きましたが、Amazonprimeで配信が開始されたようです。

>南北朝室町小説
 #10788で紹介した南北朝室町時代を舞台とした安部龍太郎の初期短編集『バサラ将軍』が朝日時代小説文庫より復刊されたようです。小説家デビュー前の地方公務員時代に地元の役所の文芸誌に寄稿した短編「矢口の渡」が新たに追加で初収録されているとのこと。

>『人魚姫』と『リトル・マーメイド』
 どっちかっていうと映画板に書くネタですが、話の流れ的にこっちで。前回『白雪姫』の話で「ディズニーアニメだって原典からだいぶ改変されてる」と書きましたが、僕はその他のディズニーアニメもほとんど観たことがなくて知らなかったんだけど、先日とあるネット記事を読んだら同じくディズニー実写版がアニメファンから攻撃を受けたディズニー映画の『リトル・マーメイド』でも、そもそもアニメ版において原典の『人魚姫』からびっくりの改変がされているとのこと。
 ここからはネタバレですが、それはなんと物語のラスト。アンデルセンの原作では人魚姫が最後は泡になって消えるという切なく悲しい結末を迎えますが、『リトル・マーメイド』は原作を改変して人魚姫と王子様が結ばれるというハッピーエンドにしちゃったらしい。その話を知ってひっくり返りましたよ。『人魚姫』の根本を変えちゃうような改変じゃん。それに比べたら実写版の人魚姫が有色人種になる改変なんて全然たいした問題じゃないよなあ。ひょっとしてある世代から下の人たちは『人魚姫』ってハッピーエンドの話だと認識しちゃってるんだろうか? だとしたらそっちのほうが大問題だと思うんですが……。



#11510 
バラージ 2025/05/23 19:36
戦争映画の歴史の本

 『戦争映画を解読せよ! ナチス、大日本帝国、ヒロシマ・ナガサキ』(永田喜嗣、青弓社)を読了しました。第一次世界大戦に前後して登場した戦争映画の歴史と、その多様な機能や各時代で果たした役割といった側面から、今後の戦争映画とそれを製作し享受する我々に課せられた課題を考えていくという学究的戦争映画本です。
 第一次大戦中の各国の戦意高揚映画から、その反動で戦間期に起こった反戦映画、ナチスの勃興と日中戦争から再び大戦が起こるとまたも各国が戦意高揚のプロパガンダ映画をこぞって作り、そして戦後に作られたナチス・ドイツの戦争犯罪を告発する映画、大日本帝国の戦争犯罪を告発する外国映画、戦勝国の戦争犯罪を告発する映画、自国の戦争加害を描かない日本映画の問題点など、多岐に渡る戦争映画の複雑な諸相を描き出した労作です。
 とにかく紹介される戦争映画が非常に多く、今まで名前すら知らなかったような映画も多い。特に第一次大戦期やナチス台頭期、第二次大戦期のドイツや米国のプロパガンダ映画、戦後のドイツや米国の反戦映画などには知らなかったものも多く、知的好奇心をかきたてられました。巻末には「二十世紀戦争映画カタログ」も掲載されていて、本文以外にも様々な戦争映画が紹介されています。著者は韓国映画については多くを観ていないとのことで取り上げておらず、もっぱら欧米映画・日本映画・中華圏映画に限られており、また一部に邦題ではなく原題直訳の映画があるのかネットで検索しても出てこない作品もありますが、非常に面白かったです。少々値は張るもののこれはおすすめ。


>『べらぼう』な女たち
 新たに将軍家治の側室として推薦された鶴子という女性が死んだ正室・五十宮倫子女王の親戚で、倫子の面影があると紹介された時に一瞬、小芝風花が再登場するのかと思ってしまった(笑)。去年のフジ『大奥』とごちゃまぜになってるな。史実の鶴子ってどんな人なんだろ?と思って調べたら、家治の妻妾は倫子の他にはお知保の方とお品の方しかいないようで、鶴子は架空人物のようです。
 お品の方はお知保の方が嫡男家基を産んだのと同年の1762年に次男貞次郎を産んだとのことですが、貞次郎は生後3か月で死去。お品の方は1778年に世を去りましたが、家基が急死したのが翌1779年なので『べらぼう』でもわりと生存してたはずなんだけど出てきませんでしたね。フジ『大奥』では西野七瀬が演じてたとのこと。
 そして、お知保の方の自殺未遂狂言。そんな話聞いたこともないし、いかにも創作っぽいなあと思ったら、やっぱり創作だったようで。なんか『大奥』みたいだなと思ったら、そういや脚本家はNHK版男女逆転『大奥』の人だった(笑)。

>♪ハリマオ〜、ハリマオ〜
 『快傑ハリマオ』は僕もテレビの懐かしテレビ映像番組みたいなのでちょろっと流れたのを観た記憶があり、主題歌もその時にサビの部分を聴いたんですが、ずっと後になって戦前戦中に実在したハリマオこと谷豊を題材とした戦意高揚映画『マライの虎』を激安DVDで観たら主題歌がそっくりで驚きました。サビの「♪ハリマオ〜、ハリマオ〜」というところが全く同じ歌詞とメロディーなんですよね(それ以外の部分はさすがに違うっぽいが)。『マライの虎』の主題歌は「作詞:島田磐哉、作曲:鈴木哲夫」(歌は東海林太郎)、『快傑ハリマオ』の主題歌は「作詞: 加藤省吾、作曲: 小川寛興」となってるけど、正直パクリなんじゃねーのかと。1989年版の映画『ハリマオ』ではさすがにそのメロディーの歌は出てこなかったような記憶ですが。
 『マライの虎』『ハリマオ』共に実在の谷豊を題材とした実録ものですが、出てくる実在の人物はほぼ谷豊=ハリマオだけで、あとはほとんど全て架空の人物となっており、どちらもかなりフィクションが含まれてます。『マライの虎』は当然ながら戦意高揚的なプロパガンダ要素が多いんですが、意外なことに『ハリマオ』よりも『マライの虎』のほうが事実に忠実な部分もあり、谷豊の家族関連などプロパガンダ的な部分と関係ないところでは『マライの虎』のほうが事実に即している部分もあったりします。

>いろんな実写映画版『白雪姫』
 僕は『白雪姫』の映画化作品はアニメ・実写を問わず1本も観てないんですが、『白雪姫』のトンデモ実写映画は以前から結構作られてる印象があり、なんで今回のディズニー実写版『白雪姫』に限ってこんなに騒がれるのかちょっと不思議。結局のところ今回のは昔話『白雪姫』の実写版ではなく、ディズニーのアニメ映画『白雪姫』のリブートだから「オリジナルと違う!」と騒がれてるだけなんじゃねーのかと(そもそもディズニーアニメ『白雪姫』だって原典からだいぶ改変されてるわけで)。まあ評判を見るとディズニーアニメのリブートという点を除いても出来は良くないようですけどね。でも、それだって過去の実写版『白雪姫』でも同じだったんじゃないのかと。ちなみに日本で劇場公開された主な実写版『白雪姫』映画には以下のものがあります。

『グリム・ブラザーズ スノーホワイト』(1997年)……allcinemaの解説によると「グリム兄弟が発表した「白雪姫」を忠実に映画化。ディスニー・アニメで知られる子供向けの物語とは一線を画し、グリム童話本来のグロテスクで残酷性を帯びた世界を描く」、KINENOTEの解説によると「誰もが知っているグリム兄弟の名作童話「白雪姫」を、1812年に発表された原典に忠実に、その残酷さと狂気の世界を再現したファンタジー・ホラー」とのことなんだけど、あらすじを読むと別にそれほど原典に忠実でもなく、かなりオリジナル要素が強いようです。継母の王妃役がシガーニー・ウィーバーで、彼女がほとんど主演のような映画らしい。
『白雪姫と鏡の女王』(2012年)……allcinemaの解説によると「有名なグリム童話の『白雪姫』を、(中略)コミカルかつカラフルに描いたファンタジー・コメディ」、KINENOTEの解説によると「グリム童話『白雪姫』を現代風にアレンジしたファンタジー」とのこと。こちらの継母王妃はジュリア・ロバーツで、やっぱりハリウッドの格付け的にトップクレジットになってるようですが、主人公はあくまで白雪姫らしい。でもロバーツがやはり怪演してるみたいでオリジナル要素がやたら強く、白雪姫は戦うヒロインでなおかつコメディ映画のようです。
『スノーホワイト』(2012年)……allcinemaの解説によると「有名なグリム童話“白雪姫”を、戦うヒロインの物語として大胆にアレンジして甦らせたファンタジー・アドベンチャー大作」、KINENOTEの解説によると「グリム童話「白雪姫」をモチーフに、悪に立ち向かい、タフに進化していくヒロインの姿を描くアクション・アドベンチャー」とのこと。こちらはさらに白雪姫が戦うヒロインで、なんとレジスタンスを組織して女王に戦いを挑むアクション路線らしい。女王役はシャーリーズ・セロンで、白雪姫役は若手を抜擢して王妃(女王)役は著名なベテランというのが定番なのか。上記作品と競作となりましたが、こちらが圧勝したとのこと。
『スノーホワイト 氷の王国』(2016年)……allcinemaの解説によると「“白雪姫”の物語を大胆にアレンジしたファンタジー・アクション「スノーホワイト」の続編」、KINENOTEの解説によると「グリム童話『白雪姫』に大胆なアレンジを加えて映画化したアクション・アドベンチャー「スノーホワイト」の続編」……とのことなんだけど製作のゴタゴタにより白雪姫が出てこない続編というより前日譚のスピンオフみたいな作品になっちゃったらしい(原題は『The Huntsman: Winter's War』)。というかそもそも童話の『白雪姫』に続編なんてねえだろ。
『白雪姫 あなたが知らないグリム童話』(2019年)……allcinemaの解説によると「“白雪姫”をモチーフに贈る大人向けのエロティック・サスペンス」、KINENOTEの解説によると「グリム童話『白雪姫』をモチーフにしたエロティックスリラー」とのことで、あくまで『白雪姫』のストーリーをモチーフにして現代を舞台とした現代劇です。上記作品は全て米国映画でしたが、これはフランス・ベルギー合作映画と聞くとなんだかそれっぽい。



#11509 
ろんた 2025/05/17 11:11
『ラージャ(1)〜(3)』(印南航太/ヤンマガKC/講談社)

 古代インドの国盗り物語。完結したとのことなので『女北斎大罪記(1)』、『逃げ上手の若君(20)』と一緒に購入。そして結局、『東方見聞録』(平凡社ライブラリー版)と『赤毛のアン』(新潮文庫新装版)も購入。皆川博子×9は今のところ読んだのは『みだら英泉』のみ。しかし『写楽』(皆川博子/角川文庫)を買ったので、未読は減らず。ということであらすじ(↓)

 古代北インドに割拠する16の大国は300年近く興亡を繰り返しつつも、いまだ統一の機運は見られなかった。だがBC326年、最有力のマガダ国(ナンダ朝)に仕える王族専属教師カウティリヤは、教え子であり親友でもある王子パバタの即位を見届けると、"唯一王"となって生まれなどに左右されない"新しい世界"をつくる、という野望を胸に諸国遍歴の旅に出る。そしてガンダーラ国のタキシラ大学総長ナジーム、山賊の頭チャンドラグプタ、港市クロカラの商業ギルドの長ザムラン、海賊"四海を駆く鶏"首領バヌプリヤらの同志を得て、グジャラート国を制圧する。そんな中、新王パバタがアシュバメーダ(馬の犠牲祭)を行うことが明らかになる。駿馬を放ち、一年間野を駆け巡らせた後、犠牲獣として殺し、王家や国家の繁栄を祈願する──ただし、犠牲獣の駆け巡った土地は祭の主催者のものとなる。これは周辺諸国に対する宣戦布告も同然だった。パバタの意図をはかりかねるカウティリアだったが、マガダ国を倒す絶好の機会と考え……。
 さらに戦いは続く──といった感じで完結。打ち切り……かな?(汗) マッチョがトゲトゲの吹き出しで叫ぶ、という基本的にヤンキーマンガのノリ。カウティリアが"唯一王"を目指す動機は、王の証(左右の瞳が違う)を持つこと(大それた野心を抱くな、と母親に片目を潰される)と、文字を教えたシュードラの子を死なせたこと。これ、カウティリアがチャンドラグプタ(シュードラ出身との説あり)を教育したという話を取り込んでる? カウティリアとパバタとの間にも色々エピソードがありそうだけど、語られないまま。チャンドラグプタはアレクサンダー大王やセレウコスとの出会いから"唯一王"を目指すんだけど、これは伏線として用意していた話だろうな。ヴァルナ(階級制度)廃止を二人が目指すのは、史実のマウリア朝(チャンドラグプタとカウティリアの国)が奴隷を禁止しているので(監修の東大名誉教授水島司「インド統一への船出」二巻に収録)、古代インドに現代的観念を持ち込んでいるわけではない。豪商ザムランが仏教徒なのは面白いが(「南無三」と唱えると「オーマイブッダ」とルビがふられる(笑))、奴隷を扱ってるのはちょっと疑問。ひと盛り上がり欲しかったんだろうけど。このザムランと海賊を仲間にするのは、水島氏によると陸のインドと海のインドを統合するという野望を示すという。アシュバメーダという祭祀が行われていたのは事実だけど、それはもっと昔の後期ヴェーダ時代(前1000〜前600年)。アーリア人が牧畜から農耕に、インダス川流域からガンジス川流域に移動しつつあった頃なので、領域国家は形成されてなかったんじゃないか? それにしてもこのマンガ、続いてたらチャンドラグプタとカウティリアの関係をどう調整したろう。マンガの中では完全にカウティリアの方が首領っぽいんだよな。
 ああ、そう言えば「バラモン」というのは「婆羅門」のことで、これは「ブラーフマナ」の音写。つまり日本でしか通じないのであった。知らなんだ。オピウム(英)>阿片(中)>アヘンみたいなもんか。あとヴァルナというのはカースト(葡)(英)制度のことで、インドでの呼び方。意味は「色」で、アーリア系と先住民の肌の色の違いが語源。後期ヴェーダ時代には交雑が進み、肌の色の違いは無くなっていたらしいけど、本作ではバラモン・クシャトリアは白、それ以外は黒と描き分けられている。そして登場人物がインドではなく「バーラタ」という自称を使っているのも面白い。

>『女北斎大罪記(1)』(末太シノ/ヤンマガKC/講談社)
葛飾北斎の娘、栄は父譲りの天才的な画才と見たものをそのまま描き出す超絶した記憶力を持つ女絵師。しかしある日、葛飾北斎が屋根から転落して死んでしまう。遺された血染めの原稿を前に、栄は自分が父の遺した傑作『北斎漫画』を描き上げると決意する。それが罪深き修羅の道であると知りながら――。(カバー裏より)
 千年先も残る国の宝=『北斎漫画』を完成させるため、女である自らが絵師として生きるため、お栄は北斎として筆を執る。だが、次から次へと難題が降りかかり、北斎に私淑していた英泉に助けられ、四苦八苦しながら切り抜けていく、という話。(1)で早速、曲亭馬琴が登場し「挿絵を描け」とピンチに陥る。さらに彫師の小僧さんが線の違いに気づく。そして二巻では打ち切りの危機? 後世への影響を考えれば『北斎漫画』が北斎の代表作のひとつなのは間違いないけど、同時代の評価はどうだったろう? 絵手本でしょ? というのは野暮なツッコミか。もうひとつ野暮なツッコミをすれば、芸事の世界では結構女性はいたように思うけど。お栄自身も後には応為として作品を発表しているし。物語中の『北斎漫画』は第2編なので、事件は文化12(1815)年のこと。全15編刊行予定としているが、北斎自身は10編まで出すつもりでいたらしい(文政2(1819)年刊行)。確かに15編出てはいるけど、それは明治11(1878)年のこと。北斎の死(嘉永2(1849)年)の後も刊行されている。ひょっとして『北斎漫画』完結(第10編)までは隠し通して、それ以後は画力で版元をねじ伏せて北斎に本当になり替わるという話になるのか? 『富岳三十六景』もあるし、そんなに長く騙せないだろう。応為には北斎の代作説や共作説もあるし。しかし、兄弟姉妹を省略したのはまあいいとして、この後(?)、お栄は結婚するんだが、どうすんだ? 北斎に戻るために離縁するのか?

>『逃げ上手の若君(20)』(松井優征/ジャンプコミックス/集英社)
師直との決戦に敗れ、南朝の本拠地・吉野へと逃げ落ちた時行。顕家の遺した上奏文を携え後醍醐天皇に物申すも、その怒りを買い、死罪の危機に!? そして相次ぐ敗戦を挽回すべく、顕家の父・親房は大船団を結成し東国制圧を目指す! しかし、時行達が出航してほどなく、魅魔の神力による激烈な嵐が襲い掛かり──!?(カバー裏より)
 まずは石津の戦いの敗戦処理。負け戦なので恩賞は無し──では済まないので報奨金、宝物、官位、諱などが与えられる。ただし時行に与えられたのは遊軍たるべしという綸旨。この綸旨、かなり手が込んだ創作。後醍醐天皇、いい人っぽく出てきたが騙されないぞ(笑)。そして新田義貞討死。『太平記』ベースながら「既成概念が無いだけに本質が見えていた」「脳が壊れるとバーサーカーモードに移行」と盛っている。ここで一コマだけ登場する「犬獅子」、『太平記』にも出てきて(23-1畑六郎左衛門の事)、一部では日本最初の軍用犬と言われてるワンちゃん。このマンガ、本当に油断できない(笑)。次はこの巻のメインイベント=伊勢出航。直後の嵐は、佐々木道誉の娘・魅魔の仕業。神力が尊氏の涎で限界以上に強化されていて、雫=ミシャクジさまも対抗するのがやっと。だが時行、道誉の手から魅魔を奪うとプロポーズ。ショックで魅魔は気絶して神力を失い、雫は人間になってしまう(笑)。切り札を失った道誉は撤退。このくだりで時行を守った結城宗広が討死。臨終の様子はやはり『太平記』ベースながら10倍ぐらいに盛っている。この臨終から逆算して殺人鬼キャラを作った? 時行は宗義親王とともに遠州の海岸に漂着、井伊(行直?)が救援に。このオッサン、暑苦しくて頑固で意固地で「直虎」の井伊家の連中を思い出しちゃう。宗良親王と井伊谷に向かうかと思いきや、諏訪神党の香坂高宗に誘われて、伊豆での休息後に信州へ。腰を落ち着けたのが伊那郡大河原城? これで諏訪頼継と共闘かと思えば、小笠原貞宗に借りができたので表立っては動けない? ということで、大徳王寺城の戦いに至る記録に残っていないエピソードが語られるのか。その後も武蔵野合戦まで随分間が開くんだが。

>『みだら英泉』(皆川博子/河出文庫)
文化文政時代、ただひたすらに「己だけの女」を求めて、美人画に枕絵に絵筆をふるう浮世絵師・渓斎英泉。お津賀、おたま、おりよ、三人の妹の「生」をも搦めとった果てに見出したのは──。爛熟の江戸を舞台に、絵師の凄まじいまでの業と妹たちの情念が濃艶に花開く。解説=門賀美央子(カバー裏より)
 タイトルに「みだら」とあるのは四渓淫乱斎と号して枕絵に手を染めていたからか(枕絵をやってない浮世絵画家はいないけど(笑))、美人画の修行と称して岡場所に入り浸りだったからか。英泉の枕絵、美人画は現代風に言うとデッサンがなってなかった。それが「婀娜で自堕落で哀しい女の描出」として人気に火がつき、ついには馬琴から『八犬伝』の挿絵に指名される。英泉の中のデモーニッシュな何かを形にした触媒は、三人の腹違いの妹、そして越前屋長次郎(青林堂、為永春水)、歌川国芳、葛飾北斎、葛飾応為(お栄)らとの関わり。解説の門賀美央子氏はここに、直木賞受賞以来、作者の意に反し人情もの時代劇という同工異曲の依頼ばかり来た状況を読み込んでいる。ただし英泉は三人の妹たちへの罪悪感からか、急速に浮世絵に対する情熱を失い、女郎屋の経営に手を出すなど迷走、ついには読本作者に転向する。これが幸いして天保の改革の弾圧を免れ、間もなく労咳で亡くなる。三人の妹は実在し『女北斎大罪記』にも一コマだけ出てくるが、詳細は不明でその辺は創作。前に触れた『百日紅』(杉浦日向子)には登場しない。

>時代劇禁止令
 時代劇が禁止されたというより、封建的徳目の称揚禁止、チャンバラ禁止、敵討ち禁止、偶像破壊が実情に近いみたい。わたしが見た中では「狐の呉れた赤ん坊」(監督,脚本:丸根賛太郎/主演:阪東妻三郎/大映/1945)というのがあります。剣劇スター阪妻が大井川の川越し人足を演じ、狐の子だと思って赤ん坊を拾って育てたら、お家騒動に巻き込まれたお大名の若様で……という話。ほかにもアラカンの「むっつり右門」も推理ものということでOKだったみたい。黒澤の「虎の尾を踏む男たち」(1945)は封建的徳目ってとこで引っかかったのかな。あれ? 「羅生門」(1950)はチャンバラあったような……。日本刀じゃなくて太刀だからOK? 平安時代の話だから? ただ、時代劇が作りにくくなったのは確か。チャンバラ禁止だとアクションシーン無くなっちゃうし。おかげで千恵蔵御大の多羅尾伴内や金田一耕助が見られるわけですが(笑)。

>『赤毛のアン』
 このシリーズは長篇9作、外伝的短編集2作という太河物語なんですが、全部が映像化されたことはないみたいですね。最後のテレビドラマはNHKでも放送された「アンという名の少女」でしょうか。見てなかったんだけど、wikiを見ると、他人のふんどしでポリコレ相撲、あげくに爆死、という作品のようで……。最近もありましたよね、"Snow White"なのにヒロインの肌が浅黒いヤツ。
 アニメ「アン・シャーリー」の方はメイン・ビジュアルに原作原理主義者が「アンはピンクの服は着ない」「ダイアナの瞳は青じゃなくて黒」というクレームを入れてるとのこと。ダイアナの瞳については、アニメのことがよくわかってなくて微笑ましい。黒い髪に黒い瞳だと画面が地味で暗くなるじゃないか!(笑) アンの服については深刻。アンが、ピンクの服を着ない、と言ってるのはアボンリーに来たばかりの頃。しかもそれは自分の赤毛に対するコンプレックスから。そしてメインビジュアルはどう見てもハイティーン以上。つまりピンクの服を着ているのは、成長したアンが自分を肯定的に受け入れているってこと。クレーマーは『赤毛のアン』を読んではいても理解できておらず、アニメ制作者の方がより深く作品を理解しているのですな、当たり前だけど。

>「オスマン帝国」
 録画してせっせとCMカットしてダビングしてそのまま。やっぱ見ないとだめだなぁ(汗)。邦題は大奥ものっぽさを出してちょっとでも女性視聴者を稼ごうとしたんでしょうか。昔は「ハーレム」とか「大奥」とかいうと、男性が変な期待を持って見たらしいですが。ここで突然、モーツァルトの「後宮よりの逃走」もトルコの話だなと思い出したりなんかして。しかしこのドラマ、日本風に言うと二時間ドラマ(シーズン最終話は三時間ドラマ)を毎週放送し、シーズン間のお休みは三か月。どんな撮影スケジュールじゃ。しかもwikiによると、スレイマン一世の扱いについてエルドワン首相(当時)やオスマン家(!)から抗議されたとか。「この物語は史実をもとにしたフィクションである」ってエクスキューズはそれでつけられたのか。

>「ハリマオ」
 なぜか三橋美智也のドラマ版主題歌が脳内で流れてしまう。見たことないのに。「懐かしの〜」な番組で見たんだろうか。映画は和田勉が監督やったのは知っていたけど、KINENOTEによると実録物。なんか冒険活劇っぽい宣伝してなかったかなぁ? 遠い昔のことなんでよく覚えてないけど。あらすじ読んだ限りでは都合よく利用されすぎな感じがするけど、手練れの情報将校にかかれば一般人なんかそんなもんなのかな。



#11508 
バラージ 2025/05/15 19:34
時代映画 後編 アラウンド1990

 去年買ったまま積ん読状態だった『戦争映画を解読せよ!』(永田喜嗣・著、青弓社)という本を読み出したらこれがすごく面白い。読み終わったら感想を書こうと思います。

 今回は「時代を描いた映画」の後編、1980年代後半から1990年代前半のアラウンド1990編です。1980年代後半というとまさに世がバブル景気となって浮かれまくってた時代。まあ個人的には地方の学生だったんであんまり実感はないんですが。
 この頃に飛ぶ鳥を落とす勢いだった日本経済を象徴するような映画が、ロン・ハワード監督、マイケル・キートン主演の1986年の米国映画『ガン・ホー』。当時の日米貿易摩擦をネタにしたコメディ映画で、米国に進出した日本の自動車メーカーの海外赴任社員と現地人労働者のイザコザを描いた作品です。“ジャパン・アズ・ナンバーワン”と呼ばれ、ジャパン・バッシングが起こっていた時代……と書くと、我々はずいぶん遠くまで来てしまったんだなぁ……。日本でも1987年の映画『私をスキーに連れてって』でホイチョイ・ムービーが幕を開け、1988年にはトレンディドラマの元祖とも言われる『君の瞳をタイホする!』が放送されるなど、バブル時代を象徴するような作品が次々に登場。
 一方、文学界では1988年に吉本ばななが『キッチン』でデビューし、翌1989年に森田芳光監督によって映画化されますが、映画はまさかの大コケ。森田監督は1986年に広告代理店を舞台とした怪作『そろばんずく』を、1989年にはその名もずばり『愛と平成の色男』を公開してますが、これらも当たらず。80年代前半は『の・ようなもの』『家族ゲーム』『ときめきに死す』、薬師丸ひろ子主演『メイン・テーマ』、夏目漱石原作『それから』など話題作を連発した森田監督ですが、80年代後半に入るとバブルの波に上手く乗れず、1992年の藤子・F・不二雄原作『未来の想い出』を最後に監督業を一時休止します。復活はパソコン通信を題材とした1996年の優れた恋愛映画『(ハル)』まで待たなければなりませんでした。
 森田芳光とは対照的にバブル時代と上手く波長が合ったのが、若い頃によくつるんでたちょっと後輩の金子修介(自主映画出身の森田が日活でロマンポルノを撮った時に日活の金子が助監督に付いたのがきっかけとのこと)。1989年の中山美穂と宮沢りえ主演『どっちにするの。』、1990年の斉藤由貴主演『香港パラダイス』、1991年の織田裕二主演『就職戦線異状なし』など、アイドル的な実力派若手俳優による軽いノリのコメディでバブル時代の空気を切り取ることに成功しています。そんな金子監督も萩尾望都の『トーマの心臓』を翻案した1988年の『1999年の夏休み』や、大島弓子原作による1994年の『毎日が夏休み』といったマンガの映画化作品では、軽いノリの映画とはちょっと異なるウェルメイドな佳作をものにしています。
 1993年には当時日本企業が進出し現地でいろいろと問題になっていた東南アジアを舞台とした滝田洋二郎監督のコメディ映画『僕らはみんな生きている』が公開。以後この東南アジア舞台コメディ映画シリーズは、1994年の金子修介監督『卒業旅行 ニホンから来ました』、同年の再び滝田監督による『熱帯楽園倶楽部』と続きます。また1993年には当時普及し始めたポケットベルをキーアイテムとしたテレビドラマ『ポケベルが鳴らなくて』が放送。企画・原案の秋元康は、ポケベルは今は流行ってるけど近い将来絶対無くなるから、これを使ったドラマを時代の証言として残しておくべきと考えたと後に言ってますね。
 しかしもちろんそんな華やかなバブル時代のある意味軽佻浮薄な“軽チャー”路線に乗った映画やドラマばかりではなく、その影というか、いつの時代も変わらぬ人生や青春の暗い翳りを描いた映画も当然ながらありました。その1本が市川準監督の1987年のデビュー作『BU・SU』。富田靖子が主演するその暗い翳りを帯びた青春映画は1987年のキネマ旬報ベスト・テンで日本映画第8位、さらに読者選出では第2位に選ばれました。映画.comの『BU・SU』の項目にある公開当時のポスターを見ると、映画会社が必死に明るい映画に見せかけようとしてるのが今となってはちょっと笑えます。公開前は暗い映画じゃウケないと思われてたんだろうなあ。後のVHSでは映画の内容を的確に表したデザインに改められました。さらに市川監督は吉本ばななの1989年の小説『TUGUMI』を、『つぐみ』のタイトルで1990年に映画化。こちらも1990年のキネマ旬報ベスト・テンで日本映画第9位、読者選出第5位に選ばれてます。『BU・SU』『つぐみ』共に読者選出のほうが順位が高く、バブルの時代でもこの暗い翳りを帯びた青春映画が映画ファンの強い支持を得ていたことがわかります。『つぐみ』で主演した牧瀬里穂は、相米慎二監督による同年の主演デビュー作『東京上空いらっしゃいませ』と『つぐみ』の2本でその年の各映画賞を総ナメにしました。市川監督は他にも大人を描いた1988年の『会社物語』や1993年の『病院で死ぬということ』、子供を描いた1989年の『ノーライフキング』、小津安二郎を強く意識したと形容される1995年の『東京兄妹』などといった決して明るくない傑作映画群を送り出しています。
 ちなみに今回紹介した映画で僕が観たのは『そろばんずく』『未来の想い出』『香港パラダイス』『就職戦線異状なし』『1999年の夏休み』『毎日が夏休み』『卒業旅行 ニホンから来ました』『熱帯楽園倶楽部』『BU・SU』『つぐみ』『会社物語』『病院で死ぬということ』『ノーライフキング』『東京兄妹』といったところ。前回紹介した1980年代後半から1990年代前半ではドラマ『積木くずし』と映画『風の歌を聴け』『家族ゲーム』『永遠の1/2(にぶんのいち)』を、さらに今回紹介した80年代前半の『の・ようなもの』『ときめきに死す』『メイン・テーマ』『それから』、90年代後半の『(ハル)』も観てますね。
 さて、そんなこんなのバブル景気も90年代初めには弾け、しばらくは漂ったその余韻も1995年の阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件で消え去ります。“軽チャー”路線やトレンディドラマの時代も終わりを告げ、時代はまた新たなフェイズに入っていくのでした。おしまい。


>歌麿が出てきた映像作品
 ありゃ、唐丸くんは歌麿だったか(あ、『べらぼう』の話です)。てっきり写楽になると思ってたんだけど。てことはこのドラマでは写楽はもっと軽い扱いで、あんまり重要なキャラじゃないのかな? それともまさかの写楽=歌麿説? てか北川豊章って誰?と調べたら史実では歌麿の最初の名前で、後に喜多川歌麿に改名したんだとか。それをドラマでは別人にしちゃったということか(一応、歌麿と豊章を別人とする説もあるようですが)。前も書いたけど、歌麿は蔦屋の3〜4歳ぐらい下なんで、唐丸くんだと年齢が合わないんですよね(だから写楽だと思った)。その辺の整合性を取るためなのかな? いやフィクションにフィクションを重ねてるんだから整合性も何もないか(笑)。ここまでフィクション満載だと写楽=歌麿説にする可能性もありそうな気がしてきた。やっぱり史劇じゃなく時代劇だなぁ。

 さて、有名な「ポッピンを吹く女」の初期作品がちょうど発見されて今話題の喜多川歌麿は、有名人だけあって映像作品への登場も結構多い人物です。画家は文筆家に比べて映像として“絵”になるってことも大きいんでしょう。主人公の作品としてはまず既に紹介した溝口健二監督による松竹映画『歌麿をめぐる五人の女』(1946年、演:坂東簑助〈6代目〉)があります。もっとも以前も書いた通り歌麿は主人公というよりも狂言回しに近く、どっちかというと主人公は「五人の女」のほうで、しかもうち4人は架空人物(残る1人も名前ぐらいしかわからない人)なのでやはりこれも史劇ではなく時代劇のようです。タイトルが同じだけという紛らわしい大映映画『歌麿をめぐる五人の女』(1959年、演:長谷川一夫)も史劇ではなく時代劇みたい。実相寺昭雄監督の映画『歌麿 夢と知りせば』(1977年、演:岸田森)は歌麿以外にも実在人物が多数登場するようですが、あらすじを見るとこれまたやはり史劇ではなく時代劇のようですね。高橋克彦原作による単発ドラマで4作目まで作られた『だましゑ歌麿(〜IV)』シリーズ(2009〜2014年、テレ朝、演:水谷豊)もやはり時代劇(なお原作では歌麿が主役ではなく、架空人物が主人公のようです)。以前も書いたと思いますが、あくまで作品によって歴史に名を残した芸術家や文化人は、武士や貴族や政治家や軍人などと違ってその生涯が必ずしも劇的ではなく、史実をそのまま物語にしても面白いとは限らないんですよね。歌麿の場合がまさにそれで、そのためどうしてもフィクション満載の時代劇になっちゃうんでしょう。
 それから歌麿が主人公以外で登場する作品には、東洲斎写楽が主人公の単発ドラマ『写楽はどこへ行った』(1968年、NHK、演:木村功)、映画『写楽』(1995年、演:佐野史郎)、葛飾北斎が主人公の映画『北斎漫画』(1981年、演:愛川欽也)、『HOKUSAI』(2021年、演:玉木宏)があります。以前も書いたように僕は『写楽』のみ観てますが、この映画の歌麿は手鎖刑を受けた蔦屋の下を離れて他の版元に鞍替えするも、蔦屋が新たに売り出した写楽の才能に脅威を感じ、写楽の正体を探って追い落とそうとするというやや悪役回りの人物でした。

>『オスマン帝国外伝 愛と欲望のハレム』追記
 DVD化はシーズン1のみで終わりましたが、配信は全話されています。やはり今は配信の時代か。

>またまたドラマを映画化
 NHKドラマ『地震のあとで』に新たなシーンを加えて再編集した映画『アフター・ザ・クエイク』が10月に公開されるとのこと。まともにつないだら3時間になっちゃうからだいぶ編集されるだろうけど、これは来たらちょっと観に行きたい。ただタイトルがわかりにくい英語になっちゃったのはちょっとイヤかな。



#11507 
バラージ 2025/05/06 21:24
時代映画 前編 アラウンド1980

 前にも1度書いたんですが、1970年代後半から1990年代前半の日本を舞台とした歴史映画やドラマがなかなか無いという話。そもそも時代が今と近すぎるためもあってか「歴史映画(ドラマ)」としては作りづらいという面もあると思われ、あまり数が多くありません。というか非常に少ない。そこで先日、録画してあった『世界サブカルチャー史』日本編(1960〜90年代)を観て思ったんですが、いわゆる同時代的な映画やドラマも、歴史映画ではなく一種の「時代を描いた映画」として考えてもいいのではないか、というよりむしろそういう映画のほうがいわゆる歴史映画よりもその時代をよく映し出しているんではないかと思うようになりました。
 そんなわけで1970年代後半から1990年代前半の日本を舞台とした、そういう「時代映画」のお話。

 まず1970年代。一般的には60年代の学生運動が挫折した後の時代と言われるようですが、1970年のよど号ハイジャック、1971〜72年の山岳ベース事件とあさま山荘事件、さらに学生運動ではありませんが1974〜75年の東アジア反日武装戦線による連続企業爆破事件など、70年代前半は60年代末に挫折した学生運動が過激化し、また内ゲバに向かう崩壊期とも言えるでしょう。そういう意味ては、むしろ60年代後半と70年代前半、70年代後半と80年代前半という組み合わせ─いわば1970年前後のアラウンド1970と、1980年前後のアラウンド1980という視点もあっていいように思われます。それは1980年代についても同様で、よく80年代はバブルの時代だと言われますが実はバブル景気が始まったのは80年代後半になってから。バブル崩壊が90年代初めで、それでも90年代前半はまだまだバブルの余韻が漂っていた記憶があり、その筋目がはっきりと変わったのが1995年の阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件だったことを考えると、やはり80年代後半と90年代前半のアラウンド1990という視点で見ることも必要なんではないかと。
 そういうことを大前提として踏まえた上で70年代に起きた重要な事件・事象を見てみると、そもそも映画化・ドラマ化がされてないものも多い。70年代の大事件であるオイルショックやロッキード事件などがその代表で、まぁオイルショックなんかはその性質からしてそれだけを主題とした映画・ドラマは作られないでしょうしね。他にもカンカンとランランの来日によるパンダブームとか、スペースインベーダーゲームの流行なんてのもそれだけを主題とした映画・ドラマは作られにくい。80年代の大事件・事象も同様で、山口百恵の引退、ホテルニュージャパン火災、東京ディズニーランドのオープン、マハラジャなどディスコブーム、写真週刊誌全盛、つくば万博、バブル経済、朝日新聞阪神支局襲撃事件(赤報隊事件)、リクルート事件など様々なものがありましたが、やはりいずれも映画化・ドラマ化がされてないか、そもそも主題とした映画・ドラマが作りにくい題材です。

 70年代後半で何か社会的な題材を描いた映画はないかと調べるうちに、この頃から校内暴力や家庭内暴力といった事象が問題となり始めたことを知り、そういえば子供の頃にそういうニュースか何かをテレビで観たことがあるような……と思い出しました。校内暴力を描いた映画としては1976年の『暴力教室』という映画があり、松田優作演じる暴力教師とこれが映画デビューの舘ひろし率いるクールス演じる不良生徒たちが対決するアクション映画とのこと。その同時上映だったのが柳町光男監督による関東最大の暴走族BLACK EMPERORのドキュメンタリー映画『ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR』。また青少年の非行を描いた映画には木下惠介監督による1980年の『父よ母よ!』という作品があり、斎藤茂男の『ルポルタージュ 父よ母よ!』が原作とのことですが、1950年代には日本を代表する巨匠だった木下監督もこの頃はあまり話題作に恵まれず地味な存在になっていたようです。青少年の非行を描いた作品というと個人的には1983年のテレビドラマ『積木くずし』のほうがリアルタイムで観ていて印象的。俳優・穂積隆信が自身の娘の非行を描いた体験記が原作ですが、ドラマは実話をベースにしたフィクションで娘役の高部知子が主演、穂積隆信に該当する父役が前田吟、母役が小川眞由美、カウンセラー役が古谷一行という陣容でした。同年には映画化もされましたが、こちらはドラマとはつながりのない別作品として作られたとのことで、製作直前に高部がスキャンダルで降板し、主演は渡辺典子に交代しています(その他の配役は総入れ替え)。
 しかしこういう映画を並べると、アラウンド1980がえらく暗い時代に見えてしまうなあ。もちろんそんなことはなく、アラウンド1970という過激な時代が終わりを告げたこの時代はそれなりに明るいというか平和な時代でもありました。70年代はシラケ世代とも言われますが、その象徴の映画とも言われるのが見延典子の1978年の小説を映画化した1979年の映画『もう頬づえはつかない』。主演は桃井かおりで、共演が奥田瑛二と森本レオ。この頃に純文学も新たな世代交代が起こり、1976年には村上龍が『限りなく透明に近いブルー』(1979年に村上自身の監督で映画化)で、1979年には村上春樹が『風の歌を聴け』(1981年に大森一樹監督により映画化)でデビューし、W村上の時代が始まります。また1980年には田中康夫が『なんとなく、クリスタル』(1981年に映画化)で、1984年には佐藤正午が『永遠の1/2(にぶんのいち)』(1987年に根岸吉太郎監督により映画化)でデビュー。また「家族の崩壊」というテーマを含んでいると言われる森田芳光監督の新世代日本映画『家族ゲーム』が公開されたのは1983年。松田優作が主演で、同年には長渕剛主演のドラマ版も作られてます(この頃の長渕は肉体改造前)。本間洋平の原作小説は1981年に出版されてますが、この人はほとんど一発屋に近いようで、原作のほうを覚えている人はほとんどいないでしょう。
 というわけで次回後編、1980年代後半から1990年代前半のアラウンド1990編へと続く。


>『オスマン帝国外伝 愛と欲望のハレム』
 まあ邦題問題はね〜、永遠の問題ですから(笑)。おそらく放送局(最初はCSのチャンネル銀河)にとってはトルコのドラマなんて、かなりの“賭け”だったと思うんですよ。海外ドラマといえば欧米・中華圏・韓国がほぼ全てと言って良く、トルコのドラマなんて当たるか当たんないかわかんなかったわけですし、当初はとりあえずシーズン1全48話(オリジナル24話を分割)のみ放送する予定で、予想外に好評だったためシーズン2、3、最後の4まで放送されたわけで、あまりウケなければシーズン1で打ち切りだったはず(ま、こんな超絶長いドラマ、最初っから全部放送する予定だったわけはないよなあ)。ちなみに放送から1年後にはシーズン1のDVD化もされましたが(レンタル店にもあった)、こちらは売れ行きが芳しくなかったようでシーズン1のみで終わっています。
 現在のこの手の海外時代劇(史劇含む)ドラマの主力視聴者層はおそらく中高年女性でしょうから、そういう層が興味惹かれる邦題にするのは必須だったんでしょうね。オスマン帝国なんて知らないし聞いたこともないというような人にも興味を持ってもらう邦題にするのはおそらくマストだったことでしょう。それでもなぜ「外伝」なのか?という謎は残りますが、あるいは「これは正統派歴史ドラマではなく、女たちの愛憎劇を描いた大奥ドラマですよ」という印象を与えたかったのかも。正統派歴史ドラマって実は視聴者の間口を狭めてしまいますし、それよりは間口の広い娯楽時代劇に見せたかったのかもしれません。観れば面白いにしても、まずはそれ以前に観てみようと思ってもらわなければ仕方がないわけですし、逆に正統派史劇ファンはどんな邦題だろうとどうせ観るわけで(笑)。
 それにしても全400話弱(本国オリジナル版で1話1時間半〜2時間半の全139話)というのは驚異的な長さ。インドの歴史テレビドラマ『ポロス 古代インド英雄伝』なんかも全300話弱とのことで、これは地域文化的な傾向なのかな? 現在の欧米や日本ではまずあり得ない放送形態ですし、中国や韓国でもここまで長いものは今ではほとんど無いのでは? もっとも『オスマン帝国外伝』も『ポロス』も本国でも4〜5シーズンに分けて2〜4年掛かりで放送したようで、やっぱりこれだけの長話をぶっ続けで放送するのはしんどかったんでしょう。そう考えると日本で言えば昔の『水戸黄門』みたいな感じなのか?

>配信映画&ドラマ
 WOWOWの6月の放送予定を見たら、なんと1989年の映画『ハリマオ』の放送予定が。え!? DVD化もされてないのに放送されるの!?と思って調べたら、いつの間にかU-NEXTで配信されてたんすね。昔レンタルビデオで観たけど出来はあんまり良くなかった記憶がありますが、ハリマオ好きとしては録画しとくかな。
 ひょっとして他の未DVD化歴史映画でも配信開始されたものがあるのかなと調べてみると、1986年の西ドイツ映画『ローザ・ルクセンブルク』(1987年日本公開)もAmazonprimeとU-NEXTでいつの間にか配信されてたようで。やはり昔レンタルビデオで観ましたが、こちらはなかなか面白い映画でした。それから国広富之と森繁久彌が高橋是清を演じた1979年のTBS単発ドラマ『熱い嵐』もいつの間にやらU-NEXTで配信されてるようです。これは放送時に森繁のシーンだけチラッと観たような記憶。ビデオ化もされてないんで貴重かも。



#11506 
徹夜城(GWはあまり関係ないお仕事をしてる管理人) 2025/05/01 21:57
「オスマン帝国」見終えました。

ゴールデンウィーク突入ですが、皆様、お元気でいらっしゃいますか。こちらはここんとこ少し暇がとれたので久々にサイト内あちこち補修作業なんぞやっておりますが、基本祝日も仕事をやってるので…


さて、表題の話ですが、
トルコの大河歴史ドラマ「オスマン帝国外伝・愛と欲望のハレム」全話をついに見終えました!日本放送版は全392話だったか、NHK大河ドラマ8年分くらいあるわけで(笑)。まぁ正直なところもう少し短くもできるような気はしましたが、毎回毎回多くの登場人物があっちゃこっちゃを舞台に同時並行でドラマを演じてそれがコロコロと場面転換し、一回分の内容でもそれほど話が進んでないな、と思うところもありました。
 ただとにかく金はかかってますし、俳優も重厚、シナリオもとにかく飽きさせない作り(少々細かい事件を起こしすぎでもありますが)、歴史ドラマ好きとしても大満足の内容でありました。

 これねー、まず言いたいのは、「この邦題つけたやつ、ちょっと顔出せ」です(笑)。
 これ、「外伝」なんてとんでもない話で、中身はオスマン帝国最盛期を現出したスレイマン一世(大帝)の豪華絢爛たる一代記ですよ。そりゃまぁ彼を中心とした宮廷劇であり、ハレム(後宮)もののお約束を散りばめた内容でもありますけど、「外伝」はないだろ、と。領土拡大の大合戦も結構やってますし、ハプスブルクのカール五世やローマ教皇、フランス王やペルシャ王など周辺国の君主たちもちょこちょこ登場します。
 この邦題つけた人は「後宮もの」を前面に押し出すのが売り込み的に正解と思ったのではありましょうが、400話近くもかけて「外伝」じゃ作り手に失礼だろうと。


 このドラマ、基本的に史実をベースにすすみますが、結構大胆なフィクションも混ぜて盛り上げたりもするんですよね。それでも登場人物の大半は実在人物であり、このドラマをある程度見てからスレイマン時代を扱った書籍とか読むと「ああ、ほんとにこういう人がいたわけね」と楽しくなりましたし、彼らが生活した、あるいはゆかりの建築物なんかまだまだ残ってるようでして、写真を見てドラマと現実がごっちゃになった不思議な感情も抱きました。




#11505 
バラージ 2025/04/30 20:52
30年後の今

 風邪をひいて咳がひどく少々寝込んでおりました。風邪はほぼ治ったんですが、ずっと寝てたら今度はなんだか腰が痛くなり……やれやれ。

 『地震のあとで』最終話「続・かえるくん、東京を救う」は、原作「かえるくん、東京を救う」の30年後である今現在を舞台としたオリジナルの続編。うーん、今回のは今ひとつというか、やっぱり村上春樹の原作そのものではないからなあ。それでいて村上春樹作品の筋運びや雰囲気を再現というか踏襲しようとしてますが、どうもそれも上手くいってないような。また続編であるがゆえに、原作を読んだ前提でないとわかりにくいところもあったように思います。悪くはないドラマではあるのかもしれないけど、個人的にはどうも引っかかるところが多かったですね。まあ、もともと原作が実写化の難しい小説ではあるとも思うけど。あと、個人的には「かえるくん」の声って森山周一郎みたいなダンディーでシブい中年男性の声を勝手にイメージしてたから、のん(能年玲奈)のような女性の声にちょっと違和感がありました。まあ、これは僕の勝手な思い込みですけど。
 原作『神の子どもたちはみな踊る』は6編の短編からなる連作短編集で、4番目の「タイランド」と最後の6番目「蜂蜜パイ」は今回映像化されませんでした(「かえるくん─」が5番目)。「タイランド」は全編タイが舞台で主人公とタイ人の男性が終始英語で会話する物語なんで映像化が難しかったんでしょう。「蜂蜜パイ」は1編だけちょっと毛色の変わったというか非日常要素のない話なんですが、45分に収まらないからという理由のようです。「トニー滝谷」を映画化した市川準監督が、他に映画化候補として考えていた作品でもあります。
 なお原作では6編全てが1995年2月、つまり1月の阪神・淡路大震災と3月の地下鉄サリン事件の間に起こった話です。


>『世界サブカルチャー史 欲望の系譜』日本編
 シーズン3の日本編が3月だったか4月だったかに地上波深夜で再放送されてたんで録画しといたのをようやく視聴終了。うーん、それなりに面白かったけど、やっぱりアメリカ編に比べるとそこまででもなかったかな。特に80〜90年代編にはちょっとした違和感も感じましたね。

>『歌麿をめぐる五人の女』
 溝口健二による1946年版松竹映画(脚本は依田義賢)は邦枝完二という人の小説が原作とのことで、歌麿は狂言回しに近く、主人公は「五人の女」のほうでしかも実在の人物ではないんで史劇ではなく時代劇のようです。しかし1946年というとまだGHQ占領下で時代劇禁止令が出てたんじゃなかったっけ? それともダメなのはサムライものだけだったのかな? 木村恵吾監督・脚本の1959年版大映映画もあることは知ってましたが、同じ原作の最映画化か溝口版のリメイクだろうと思ってたらタイトルが同じだけで全然別物だったんですね。紛らわしい。てか、よく問題にならなかったな。まあ、僕はどっちも観てないんですが。
 ちなみに土日の昼のテレビ放送番組は昔も今も地方によって違うはず。僕の県では昔は民放がTBS系列と日テレ系列だけだったんで、フジ・テレ朝・テレ東系列の番組をよく放送してました。テレ東系列は今も無いのでよく放送しています。映画も今考えるとフジ・テレ朝・テレ東系列のテレビロードショーで放送されたと思われる洋画を昼や深夜によく放送してましたね。もちろんその頃は子供だったんで系列局という考え方が無く、今思えばの話なんですが。

>『赤毛のアン』
 アニメは観てなくて原作も読んでないんだけど、本場カナダの実写映画は劇場公開時に観ました。なかなか面白かったような記憶。主演のミーガン・フォローズが可愛かった。前後編のテレビ映画として1986年に製作されたものを短縮再編集したものが1989年に日本で劇場公開されたとのことで、後に完全版も1994年に劇場公開されたそうですがそっちは未見。続編『続・赤毛のアン アンの青春』(1988年製作。1990年日本公開。完全版1998年日本公開)も短縮再編集版のみ劇場で観ましたが、さらなる続編『赤毛のアン アンの結婚』(2000年製作。2002年日本公開。完全版はソフト化のみ)は未見です。なお実写版には2015年から作られた新作もあるようです。

>宮崎アニメのヒロイン
 僕は宮崎アニメ、特に初期の宮崎アニメのヒロインが苦手だったんですよね。作品自体の面白さは認めつつも、『ルパン三世 カリオストロの城』のクラリスや『風の谷のナウシカ』のナウシカがどうしても受け付けなかった記憶があり、そこが今ひとつ宮崎ファンにならなかった理由でもあります。『天空の城ラピュタ』のシータや『となりのトトロ』のサツキは問題なかったんですが、彼女らは女性というより子供ですし。



#11504 
ろんた 2025/04/26 12:15
「週刊ポスト」(2025 Apr.4.18/25)

 長篇の後半です。
「水谷豊が語る『傷だらけの天使』」という記事にひかれて久方ぶりに「週刊ポスト」を購入。「週刊現代」は止めたみたいだけど、相変わらず目次みたいな表紙。岸田森の仮通夜でショーケンと抱き合って泣いた、という話にジーン。「傷だらけの天使」の続編というか後日譚の話はショーケン追悼ムックの話と違ってる。
 なんか永井豪が「柳生裸真剣」という連載をしていて驚く。しかも第百五十刀(回)で単行本が7集まで出ている。「あの柳生十兵衛は「女」だった! 徳川3代目将軍・家光の剣術指南役にして、伝説の剣豪。 柳生十兵衛が「女」だったら――壮大なヒストリカル・イフのもとに繰り広げられる、巨匠・永井豪の最新作。」(小学館HP第1集紹介)とのこと。そういや『ハレンチ学園』に十兵衛(柳生みつ子)って出てきたな、とジジイは懐かしく思い出すのでした。
 さて「週刊ポスト」といえば「逆説の日本史」(第1450回)。テーマは尼港事件。テキストは『ニコラエフスクの日本人虐殺−1920年、尼港事件の真実』(アナトーリー・グートマン著 長勢了治訳 勉誠出版刊)。黒地に白抜きで"歴史学者の「怠慢」をカバーした在野の歴史家による「労作」を読む"とでっかい見出し。加えて"あらためて強調しておくが、日本の左翼歴史学者の「共産国家の悪は暴きたくない」という欲望は、これほど強いのである。"などいつもの井沢節が頻出。さらに訳者も"本書は戦後、日本人が忘れた(忘れさせられた)尼港事件を生き商人の生々しい証言からよみがえらせる第一級の「歴史ドキュメンタリー」である。"(訳者まえがき)と主張。しかしねぇ、その後の引用には"グートマンが基礎資料としたのは尼港事件直後にロシアでつくられた「調査委員会」が三か月間(1920年7月〜9月)現地調査してまとめた報告書である。"(同上)とあるんだけど、この「ロシア」って「ボリシェヴィキ」じゃね? そしてこの報告書にもとづいて赤色パルチザンの指導者を処刑しているわけで、この事件を研究することはボリシェヴィキが公明正大だと強調することになると思うけど。実際、家に転がっている通史の類を見ると、『日本の歴史(22) 政党政治と天皇』(伊藤之雄/講談社学術文庫)には記述がないものの(年表には載っている)、これは政党政治の勃興と衰退、天皇の政治関与が主題だからだと思われ、『世界の歴史(26) 世界大戦と現代文化の開幕』(木村靖二,柴宜弘,長沼秀世/中央公論社)にはロシア革命−内戦−干渉戦争との関係で記述あり。『日本の歴史(23) 大正デモクラシー』(今井清/中公文庫)と『日本の百年5 成金天下』(今井清一/ちくま学芸文庫)は一節を尼港事件にあてて詳述している。つまり、こと尼港事件に関しては「怠慢」とか「忘れさせられた」という指摘は当たらないのでは? ちなみに滅茶苦茶胸糞悪い赤色テロルを大量に収録している『共産主義黒書<ソ連篇>』(ステファノ・クルトワ+ニコラ・ヴェルト/外川継男訳/ちくま学芸文庫)には記述はない(略年表には国際政治欄に記載あり)。こうなると、尼港事件(だけ?)で「調査報告書」が作られたのはなぜか疑問がわくけど、国際問題になったからだろうか?
 さて井沢氏は、このテキストをもとに事件の具体的経過をまとめていくわけですが、読み進めると「?」なところが出てくる。"ロシア人は信長以前の足軽のような後進性をもつ"(大意)、"朝鮮人、中国人は儒教的偏見から日本人を蔑視していた"(大意)というのです。え〜〜っ、著者のグートマン(1889-1950)はユダヤ系ロシア人ジャーナリスト。それがこんなこと書きますかねぇ。この疑問が正しいのはその後に井沢氏が引用した著者の序文で明らか。そこにはそんなこと書いてなくて、後進性とか儒教的偏見は井沢氏の見解なんですな。ある著作の紹介をしていてシームレスに自己の見解を述べるって駄目じゃね? ちなみに引用したのは末尾に「半未開の異民族である朝鮮人と中国人」とあるからだと思われる。わざわざ傍点ふってるし。
 こうなると井沢氏がまとめた「事件の具体的経過」も怪しくなる。テキストと対照できれば一番なんだけど、手元にないものはしょうがない。それに高いし(汗)。でも、ここで『日本の百年5 成金天下』が頼りになる。これ、史料集的な側面もあって、豊富に引用があるのですよ。尼港事件についても日本側の見解である『尼港三月事件の顛末』(陸海軍省)やソ連側の見解を反映しているであろう『日本の軍国主義II』(井上清)などを引用して詳述している。すると驚くことに、井沢氏の「事件の具体的経過」って『尼港三月事件の顛末』とそっくり。テキストはボリシェヴィキの調査報告書をもとにしている。井沢氏はそのテキストから「事件の具体的経過」を述べている。なのに「事件の具体的経過」が日本側の見解にそっくり。なぜでしょう? この疑問形はちょっと意地悪か。
 最後に日本側の見解とボリシェヴィキ側の見解の相違について。第一に日本側がパルチザンと結んだ休戦協定は三回目の交渉で成立したもの。それ以前に日本側はパルチザンの軍使を二人殺している。しかも二人目の軍使の殺し方が残虐。そして第二に、休戦協定を破ったのが日本側であること。折しも(三月)革命記念日の前夜、油断しきっていたパルチザンは首領トリアピーチンも負傷するなどかなりの被害を出している。ではどちらが正しいのか。この疑問に答えるように『日本の百年5 成金天下』は後年の後藤新平とソ連使節ヨッフェとの国交回復の下交渉におけるエピソードを記しています。後藤が尼港事件の賠償を要求すると、ヨッフェはソ連側の見解を述べ、この問題を第三国の国際法学者による仲裁裁判にかけようと提案。すると後藤は要求を引っ込めてしまう。
 う〜ん、以前は連載一回分に一個「?」なところがあった程度で、これほどじゃなかったけどなぁ。もう次号も出てるんだけど、そっちはパルチザンの残虐行為篇。多分テキストを引用しているんだろうけど、ノリノリ。それを調べたのがボルシェヴィキなんだけどね。

>子供の頃にうっかり見てしまった映画(別に変な扉が開いたわけではない)
「べらぼう」関連でバラージさんが触れていた「歌麿をめぐる五人の女」。脳内フィルモグラフィーから抜け落ちていたんでKINENOTEで調べてみると、溝口作品以外に大映制作、長谷川一夫主演の同名タイトルが出てくる。あらすじや登場人物を見ても同じような違うような。溝口作品は原作付きだが、大映作品の方は表記なし。キャラの名も違う。ただ子供の頃に見た「腰元たちが腰巻一つで池に飛び込み、男がそれを覗いてスケッチする」という変な時代劇、これだ。カラーだし、あらすじにも書いてある。わたしが子供の頃って"土日の昼間は誰もテレビなんか見てやしない""番組作る予算はつけられないから映画でも流しておけ"という感じだったんですよ。おかげで全盛期の東映時代劇とか「兵隊やくざ」「陸軍中野学校」「眠狂四郎」とか見てしまってる。う〜ん、教育上よろしくない(笑)。そういえば「ペティコート作戦」という太平洋戦争を舞台にしたお色気コメディ(?)も見ていたことが最近分かった。ブレイク・エドワーズ監督、ケーリー・グラントとトニー・カーチス出演。どうやらゴールデンで何回か流した末の使い回しだったみたい。

>時代劇、歴史ものアニメ
・「一心太助」(BSフジ)
 杉良太郎主演。一心太助は実在したとかしないとか、モデルがいるとかいないとか、諸説あるらしい。まあ、時代劇の登場人物なんか実在していてもフィクションまみれだからどっちでもいいが(笑)。東映時代劇だと錦ちゃんの当たり役で五本作られてる。ただし家光との二役。杉さまは苦手なんだけど大久保彦左衛門=志村喬、徳川家光=中尾彬(すげぇ若い)が気になる。
・「服部半蔵 影の軍団」(BS松竹東急)
 シリーズ第一作。千葉真一が柳生十兵衛と並ぶ当たり役である服部半蔵を演じる。半蔵は父が改易された経緯もあって権力から距離をとり、市井で湯屋の主として暮らしていたが、徳川家綱が幼くして将軍となると、伊賀衆を敵視する甲賀衆により幕府内部の権力争いに巻き込まれる。そこで自衛のため、解散していた伊賀衆を糾合し「影の軍団」を結成する。保科正之(山村聰)と近く、酒井忠清(金子信雄)とは敵対。あっ、II以降は服部半蔵じゃないじゃないか。松竹が放送事業から撤退するらしく、BS松竹東急が六月いっぱいで終了するんで、どこまで放送されるのかな。
・「マルコポーロの冒険」
 NHKで放送が始まった1979年作品。第1回と最終回を除き失われていたものを、素材を収集して復元。2月から3月にかけて月−金で二本ずつBS−4Kで放送されたものを総合テレビ・毎土・05:10〜放送。もちろんモチーフは『東方見聞録』。CVはマルコ・ポーロ=富山敬、NA=小池朝雄。OP、ED、挿入歌を小椋佳が担当。現地の実写映像も交えていて豪華。今度は『東方見聞録』を買ってしまいそう(汗)。
・「アン・シャーリー」
 もちろん『赤毛のアン』のアニメ化。名作劇場版(高畑勲監督)から45年ぶりぐらい? 途中から宮崎駿が「カリオストロの城」で抜けて、「すまん。オレはアンが嫌いだった」と置手紙したのは有名な話。確かにアンは宮崎キャラじゃないな(笑)。使用しているのが村岡花子訳/村岡美枝改訂補訳/新潮文庫なので、ダイアナは「心の友」じゃなくて「腹心の友」。この表現、どうも馴染めない。名作劇場版より展開が早くて(全24回)、第四回でダイアナに酒を飲ませてしまう。歴史ものではないけど、150年ほど前のカナダの片田舎(プリンス・エドワード島)の生活がうかがえて面白い。アンが提灯袖(puff sleeve パフスリーブ)に憧れて、マリラがにべもなく拒否するのは、ヴィクトリア朝時代と新時代の対立? アンたちが学校に小さい黒板とチョークを持って通ってるの、ノートや鉛筆が全然普及してなかったからだろう。もうちょっと後だけど、東欧の移民や第一次大戦で徴兵されたアメリカの若者のIQが低かったのも、このせいみたい。ただし、アンとギルバートは大卒。確か村の大人が立会演説会に出かけるエピソードとかあって、マシューやマリラにも支持政党があった気がする。ああ、わたしが読んだのは新潮文庫版(村岡花子訳)だけど、抄訳みたい。全訳の現行版を読むか。



#11503 
ろんた 2025/04/26 12:12
『三大陸周遊記抄』読了

『グルメアンナイト』と比べて前半部分(インド入国まで)については書き込んでるんで、波乱万丈の後半部分のご紹介。
 スルタンに拝謁し法官として働くが、このスルタンがヤバい奴(笑)。どれくらいヤバいかというと「現王ムハンマド・イブン・トゥグルックは何人にもまして人に物を与えることを好むとともに、もっとも他の血を流すことが好きである。王宮の門からは、絶えずこの王によって富をあたえられた貧窮者が出ていくかと思えば、王によって命を断たれた者の屍も運び出されている。寛大で勇敢、しかも残虐凶暴の君主である。」「インドのスルターンは……謙遜、公平であり、貧者をあわれみ、底なしの太っ肚を示しながら、人の血を流すことが何より好きである。」「この王は小さな誤りを大罪かのごとくにして罰し、学識者であれ、正しい者であれ、貴いものであれ、毫も容赦しなかった。」(『三大陸周遊記抄』「黄金と死の都」)という感じ。この王はインド史の方ではトゥグルク朝のムハンマド・ビン・トゥグルク。父王を建物の崩落事故に見せかけて殺したとされ、数々の施策を行うも(その一部はイブン・バットゥータも記している)、後世「天才か狂人か」「不運な理想家か血に飢えた暴君か」と言われる。そのせいで叛乱が絶えなかったとか。イブン・バットゥータも借金の肩代わりをしてもらったり莫大な報酬や恩賞を与えられる一方、知人に連座して処刑されそうになり、なんとか逃れると引退。それでも何度目かの御召を断りきれずに応ずると、元への答礼の使者にされてしまう。
 莫大な返礼品を携え中国に向かうが、この旅がご難続き。異教徒の反乱討伐に巻き込まれ、贈物の管理者が死亡、自分も捕虜となり殺されかける。代わりの管理者らを待って出航すると、嵐で難破し管理者らがまた死亡、贈物はすべて海の底に。女奴隷や私物を乗せていた船も行方知れず。王に報告して今後の指示を仰ぐところだが、処罰を恐れてムスリムの地方領主のもとを転々とし、またジハードに巻き込まれる。しかも女奴隷や私物はジャワに流れ着き現地で山分けされてしまったという(最もお気に入りの女奴隷は死亡)。そこで女王が統治するモルディブに向かい、法官として仕え四人の妻を娶る。これで有力者の縁戚となったため政争に巻き込まれ、義兄にあたる(デリーで娶った妻の姉の夫)マアバル王の兵を使ってクーデターを目論むも王の死で頓挫。結局、妻四人息子一人と別れて中国に旅立つ。
 この中国への旅については日付が記されず、航海日数も妙に間延びし、航路もはっきりしない。また、犬のような口元をした男たちと美女たちの住むバラフナカール国(所在不明)の話とか、船乗りがルッフ(アラビアン・ナイトにも登場する巨大な鳥。ロック、ルフとも)を見たと騒ぐ話(家島彦一氏は巨大竜巻の見間違いと推測している)が出てきてファンタジーめく。中国(元)についての記述はおおむね正確で諸記録と一致するが、皇帝と従弟が争って皇帝が敗死した内乱はイブン・バットゥータの訪問より17年前だと分かっている。ということで研究者の間では中国に行っていない説が有力。確かに使節団が壊滅してるんだから、中国へ行く意味ないんだよな(笑)。元ネタはデリーでの法官時代に接した情報、あるいは元の使節団からの情報ではないかとのこと。しかし一方では、そんな嘘つく必要あるのかという疑問が残る。イブン・バットゥータか編纂者であるイブン・ジュザイイのウケ狙い?(笑) あと、カーンの宮廷で見たという幻術が、『サスケ』(白土三平)に出てきたのと同じだった。これが元ネタか。インドにもあるらしい。
 内乱に巻き込まれるのを恐れて中国を出発、インドには戻ったが、スルタンの怒りが恐ろしくて(?)アラビアに脱出。だが、そこではペスト禍の最中。ダマスカスで最初の妻が生んだ男の子は既に死亡。父も亡くなり母だけが在世。メッカ巡礼後(四度目)、懐かしき故郷を目指すが、母は到着前に亡くなる。ジハードに参加しようとアンダルシヤに渡るが、既に情勢は覆らないと悟ったのか、一帯を見聞して帰還。その後、スーダーン(黒人の国 サハラ砂漠の奥地、チャード湖、ニジェル河畔方面)を目指して出発。サハラ砂漠の西部を縦断して往復する。ここでは食人種の話が出てくる。白人(非黒人?)の肉は熟してないから毒らしい。スーダーンの王スライマーンのもとを訪ねて来た食人種、贈り物として与えられた侍女を食べちゃって、その血を顔や手に塗って礼を言いに来たという(「おいしゅうございました」ってこと?)。なんでも胸と手の平の肉が一番上等だとか。これ、怖がるべきか笑うべきかどっちだろう。
 かくしてイブン・バットゥータの旅から旅への生活は終わり、亡くなるまで故国の法官として過ごす。こんな生活ができたのって、もちろん彼が代々の法官の家の出身(要するにエリート)ということもあるけど、やはりパックス・モンゴリカとイスラム世界という「世界システム」があったからかな。百年たってもチンギス・ハンの評判は悪いが。パックス・モンゴリカは基本的に素早い情報伝達と軍事行動、そして交易のため交通網を整備。イスラム世界は推奨されたメッカ巡礼のため有力者も庶民も権力者も巡礼を保護し(なんとなくお接待っぽい(笑))、それが盛んな交易につながり国が富み、旅も容易になる。例えばダマスクスの慈善団体(ワクフ)、そしてアルトリアのフィトヤーン(青年同胞団)。後者は町や村には必ずあり、ある町ではイブン・バットゥータ一行の世話をどちらかするかで二つの同胞団の間で刃傷沙汰になりそうになっている(笑)。さらに西のウルスはイスラム化しつつあった。『周遊記抄』には失敗したハンが退位させられるエピソードがあるけど。またおそらく知識人のネットワークもあったのではないか。イブン・バットゥータは高名な学者、宗教家を訪ね歩いて世話になっているが、これは行く先々で紹介状を書いてもらっているんだろう。また、インドに着いたイブン・バットゥータのもとにダマスクスの妻の実家から子供が生まれた旨の報せが来て、40ディナールを送っている。意外と通信網や送金システムが機能している(担い手は隊商?)。もちろん今日の旅行のイメージで考えてはならないので、略奪を事とする部族がいたり、海賊に身ぐるみはがされたり、ジハードに巻き込まれて捕虜になり殺されそうになったり、案内人は報酬だけとって置き去りにしたり、客を殺して荷物を奪おうとしたり、客死した巡礼の遺産をガメる太守も登場する。だから、隊商や巡礼者のツアー(?)に加えてもらっているんで、現代のような一人旅は無理。柄杓一つで伊勢参りという訳にはいかない。
 もう一つ、イブン・バットゥータはキプチャク草原のブルガールとズルマ(闇黒)の国との交易について興味深い記録を残している。それがまるっきり沈黙交易。実例を読んだのは初めだった。

>『天幕のジャードゥーガル(5)』(トマトスープ/BONITA COMICS/秋田書店)
 なんとアニメがテレ朝系で放送されるとのこと(制作:サイエンスSARU)。深夜アニメだろうが、日程が発表されてないから冬アニメか、来年の春アニメかな。ということであらすじ。下のはカバー裏のやつが、前巻の展開しか書いていないので自分で書いてみました(汗)。
 通信、軍事、交易のネットワークと結節点たる都市の構築を進めるオゴテイ大カアンとボラクチン大カトゥン。だが最有力の側近イルケ将軍の醜聞が発覚する。妻の一人と息子イルチダイが密通、内々に処理すべく解放奴隷アルグンを息子への刺客としたが失敗、露見したのだ。処分を誤ればオゴテイの威信にも関わる。さらにオイラト族の間で、オゴテイに娘達が召し上げられる、という噂が広まる。そしてドレゲネとファーティマはその噂に、トルイを殺したオゴテイとボラクチンがトルイ家と近いオイラト族を処罰しようとしている(トルイの妻ソルコクタニ・ベキはオイラト族出身)、という尾ひれをつけて広める。オイラト族を反オゴテイ派に仕立て上げようというのだ。噂は真剣に対処すれば真実味が増す。かといって放置するわけにはいかない。オゴテイとボラクチンは、噂の出所に気づき、二つの案件を同時に処理することとする。イルケとイルチダイは不問に付す一方、噂を広めたオイラト族には<この一年間に結婚、婚約した娘のうち見目麗しい者を召し上げ、将軍や官人らに下げ渡す>と厳罰をもって臨み、大カアンの温情と峻厳さを同時に示したのだ。これは、我らと一緒にお前たちもオイラト族に恨まれろ、というボラクチンの反撃でもあった。だがドレゲネとファーティマは、オイラト族の娘たちに心を痛めつつも、当初の目論見が実現したことで改めて「魔女」となろうと決意する。二年後(1235年)、オゴテイとボラクチンは、カラコルム建設と南宋・高麗・キプチャク草原への侵攻を開始し、第三皇子クチュを最重要の南宋攻略総司令官に指名することで、事実上、後継者とした。だがクチュはボラクチンに不審を抱き、ドレゲネとファーティマに接近する。これをボラクチンに漏らし、両者の対立を煽るドレゲネとファーティマ。だがその矢先、クチュが陣中で没し……。
 拡大と繁栄の道を歩むモンゴル帝国。その一方で続くオゴテイ+ボラクチンとドレゲネ+ファーティマの静かなる戦い。「さあ、盛り上がってまいりました!」という感じですが、長ったらしいうえにあちこち張られている伏線や後に重要人物となる人々に触れてない、ダメあらすじで分かりますかね(汗)。今回気になるのは、ボラクチンとクチュの確執。即位後のグユクとドレゲネ+ファーティマの関係を暗示しているような気がするんだがどうだろう。ここで簡単に将来のVIPを書いておくと、アルグン=第四代ペルシャ総督、コルグス=第三代ペルシャ総督、チンカイ&カダク=ドレゲネとファーティマの政敵? グユク政権の重臣、そして第5巻の表紙のモゲ(オゴテイ第四妃)は、ボラクチン亡き後、オゴテイの宮廷を支える。ちなみに連載しているSouffle(スーフル)のコラム「もっと!天幕のジャードゥーガル」(谷川春菜)によると、本作は研究者レベルの知識がちりばめられているそうな。トマトスープ氏、恐るべし。

 これ以降も長くなるんで、とりあえず前半の終わりとします。



#11502 
バラージ 2025/04/23 22:44
神の不在

 『地震のあとで』第3話は単行本の表題作でもある「神の子どもたちはみな踊る」。
 舞台は2020年のコロナ禍が始まった頃に変えられています。同じくコロナ禍を舞台とした映画『サンセット・サンライズ』を観た時にも思ったんですが、たった5年前のことなのに結構あの頃のことを忘れちゃってるんですよね。映画やドラマで観て、ああ、そういやコロナ禍の時はこうだったとリアル感を持って思い出すんだよな。
 今回のドラマで原作より強く感じた要素は「神の不在」。原作は村上春樹がサリン事件の被害者を取材した『アンダーグラウンド』、オウム信者を取材した『約束された場所で』の後に書かれたものですが、原作の新興宗教はどっちかっていうと、ものみの塔なんかに近い雰囲気だった記憶。逆に原作の最後に出てくる作品の肝とも言うべき(と個人的には思う)「隠れ近親相姦的感情」は無くなってましたね。他の性描写もカットされていて、やはりテレビでは難しかったか?
 主人公が乗った電車がカーブでウネウネする車内から見た絵が次の回の「みみずくん」を連想させて印象的。僕も現実に中から電車ウネウネをマジマジと見たことがあり、何か生理的に気持ちいいような悪いような妙にリアルなような非リアルのような質感を感じたことがあるんで、ああ、自分以外にもそう感じる人はいるんだと思っちゃいました。それから木竜麻生の役は原作には無いオリジナルだからもっと意味のある役かと思いきやそうでもなくてちょっと肩透かし。あと子役の子がドラマ『からかい上手の高木さん』の主演の子でした。
 ちなみに短編「神の子どもたちはみな踊る」は2008年に米国でも映画化されてるんですが、そちらはもっと大幅に原作から改変されていて、やはり「隠れ近親相姦的感情」は無くなってました。舞台が米国に変わるとほとんど別物といった印象で、映画として面白くはなかったな。


>平賀源内死去
 『べらぼう』、前回書いた徳川家基の暗殺(史実では病死?)に始まって、松平武元の暗殺(史実では病死)、そして平賀源内の死まで、本来無関係な出来事を連ねて壮大なフィクションをぶち込んできましたねえ。やっぱりこのドラマ、史劇ではなく時代劇だよな。以前も書いたように平賀源内の死は史実に則ると、やれやれ、なんでまたそんなことに……という“有名人の転落”みたいな悲惨な話になってしまうんで、そのまま描くわけにはいかなかったんでしょう。物語としては非常によく出来てましたが。
 そして1971年のNHK時代劇『天下御免』に源内役で主演してた俳優の山口崇さんも死去。ニュースでもそこには触れられてましたが、やはりと言うべきか真っ先に書かれてたのは『大岡越前』の将軍吉宗と『タイムショック』の司会というところでしたね。ご冥福をお祈りします。

 それから『べらぼう』には杉田玄白もちょこっと出てきてました。有名人のわりには映像作品に出てくるのは珍しい人で、他には『天下御免』(演:坂本九)と歴史映像名画座に掲載されてる『風雲児たち 〜蘭学革命(れぼりゅうし)篇〜』ぐらいみたい。

>これから来る歴史映画
 葛飾北斎の娘の葛飾応為を主人公とした映画『おーい、応為』が10月に公開とのこと。主演は長澤まさみ。応為を主人公とした映像作品だと2017年のNHKドラマ『眩(くらら) 〜北斎の娘〜』(主演:宮アあおい)がありましたが、僕はそっちは未見。



#11501 
バラージ 2025/04/16 22:16
遠く離れてそばにいて

 『地震のあとで』第2話「アイロンのある風景」を観ました。実は原作の中でも1番好きな短編なんですよね。
 以前も書いた通り原作『神の子どもたちはみな踊る』は1995年の阪神・淡路大震災を背景とした連作短編集ですが、ドラマは舞台を1995年から2025年現在までに渡る設定に置き換えるとのことで、この第2話は2011年1月から3月11日未明までが舞台となっています。なぜ舞台を東日本大震災以後ではなく直前にしたのかちょっと疑問だったんですが、最後のシーンでなるほどと胸が震えましたね。「何かの“あと”」は「何かの“まえ”」でもある。プロデューサーがインタビューでそう言ってましたが、なるほどそういうことかと。物語の展開は原作とさほど変わらないにもかかわらず、時代を変えることによって場面の意味合いがここまで変わるのかと思わされました。
 それにしても夜の海辺で焚き火をする闇夜のシーンが延々続くドラマというのもすごい。まるで映画のようです。それぞれがかつて居たところから遠く離れ、茨城の鹿島灘で邂逅する2つの空虚な魂。そしてそのような存在をもすっぽりと飲み込んでゆくかもしれぬ何かの予感。やはりこの第2話もすごく良かった。
 そしてやっぱり鳴海唯はいいなあ。堤真一に引けを取らない演技を見せてくれて、今後がますます楽しみです。


>『べらぼう』
 前回で蔦重と序盤のヒロイン瀬川の物語が完結して一区切りということなのか、今回は珍しく幕府パートに比重が置かれてました。将軍になれなかった影薄後継者の家基がついに18歳で急死し、田沼意次に疑いがかかる展開でしたが、一応史実に則りつつもかなりアレンジしてたようですね。
 ドラマでは家基が鷹狩りの最中に死んじゃってましたが、実際には江戸城へ戻る途中に休憩してた寺で発病し、そのまま城に担ぎ込まれて3日後に死んでいるとのこと。家基はそれ以前に病気の予兆もなく鷹狩りの最中まで元気モリモリだったそうで、そのため家基の急死は怪しいとする説もあるみたい。『続三王外記』では、鷹狩に随行した医師を意次が推薦していたとして、家基が意次に毒殺された可能性を示唆しているとのこと。ただし『続三王外記』は信頼性の低い史料と見なされているようで事実とは考えにくいんですが、そういう歴史学的なこととは関係なく時代小説や時代劇では意次が家基を暗殺する、または暗殺しようとするという話が多いみたい。藤沢周平原作の『闇の傀儡師』(1982年、フジ)および『風光る剣 八嶽党秘聞』(1997年、NHK)や、佐伯泰英原作の『陽炎の辻3 〜居眠り磐音 江戸双紙〜』(2009年、NHK)なんかがそのパターン。
 またドラマでは田安治察急死の時に続いて一橋治済の暗殺関与がほのめかされてましたが、これも小説やドラマじゃよくあるパターンで、上記『闇の傀儡師』『風光る剣』やNHK版男女逆転『大奥』(2023年)では治済が黒幕的キングメーカーとして暗躍しています。ただなあ、これも家基が死んだおかげで息子の家斉が将軍になれたことから、よくある「1番得したやつが犯人」理論だけが根拠のような。それから40年以上後のシーボルトは『日本交通貿易史』に、家基は献上されたペルシャ馬に乗っている時に馬が暴れたため落馬し、その後に亡くなったと書いてるそうですが、これもなあ。なにしろ40年以上も後の記述なんだし。
 ちなみにドラマの手袋の毒云々というのはもちろんフィクションですが、家基の爪を噛む癖はこれの前フリだったんですね。上手い話を考えつくもんだな。

>これから来る歴史映画
 伊藤博文を暗殺した安重根(アン・ジュングン)を描く最新韓国映画『ハルビン』が7月に日本公開されるというニュースが出ました。主演はヒョンビンで、伊藤博文役はリリー・フランキーとのこと。これは観たいけど地元まで来るかな?
 それからドイツ・スロバキア合作映画『ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男』が現在公開中。地元にはこれから来る予定ですが、これも観たい。ゲッベルスは有名人のわりに主人公になったのは初めてか?



Sat Jul 18 14:56:17 2026
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