化鳥 あらすじ  


化鳥 明治30年4月「新著月刊」初出、明治42年4月『柳筥』(春陽堂)所収

 豪邸の奥方として裕福な暮らしをしていた頃、母はある日猿回しの老人と会った。老人は世間の冷たさを恨み、猿を土手に残して去る。猿も同然の人々だから同じ仲間である猿を餓えさせることはあるまいと。その時母の胎内にいたのが、語り手の少年廉である。

 そして今、零落して父もなく、橋の通行人からあがる橋銭で母と子二人かろうじて暮らしている。母は猿回しの老人と同じ思考法を廉に伝授する。世間の人間はみな禽獣と変わらぬ「畜生め」なのだという、母と老人と廉しか知らぬ「ありがたい」教えである。

 ある時猿をからかっていた廉が川に落ちる。廉を助けてくれたのは羽の生えた美しい姉さんだと母はいう。どうやらその人だけは畜生ではないらしい。

 もういちどその人に会いたくて探しに行った梅林の中で、廉は自分が鳥になりそうな気がして叫び声をあげる。その時抱きしめてくれたのは、心配して廉を探しに来た母だった。姉さんに会うためにまた溺れてみようか、でもまあいい、母様がいらっしゃるから、母様がいらっしゃったから。


 鏡花初の口語体小説が「化鳥」である。

 佐藤和雄(蟻) / 泉鏡花を読む 1998.09.15