草迷宮 あらすじ
草迷宮 明治41年 1月『草迷宮』(春陽堂)初出
魔所と呼ばれる三浦半島の「大崩れ」には丸い子産石が出る。二つ重ねると子が授かるというこの石を土産物にする茶店の老婆に、しかし子はいない。
かつて土地の若者が明神様の侍女という女から緑色の珠をもらったが、酔って抱きついたために正体を見てしまい、それ以来気が狂っている。女が去って行った方向にある秋谷邸では去年の夏に死人が五つ立て続けに出ていた(二組の母子の産褥死と若主人の自殺)。
諸国行脚の小次郎法師はそんな話を茶店の老婆から聞かされ、邸に回向に赴く。そこには葉越明という青年が逗留していた。明は亡き母の歌った手毬唄を探し求める旅の途中、川に浮かぶ手毬を拾ったことから緑色の珠の女の逸話を聞かされ、この邸にたどり着いたのであった。
だが毎夜、畳が動きランプが廻る怪異に逢い、その顔にはやつれが見えている。明が眠る夜、それを見守る小次郎の前に悪左衛門(人のまばたきする間を世界とする魔物)が登場、続いて明の幼なじみで独り丑待ちの儀式をしたまま姿を消していた菖蒲(明神様の侍女)が現われ、明には内密の仔細を物語る。
手毬は身内の幼い者が粗相で川に流したものだった。女は手毬唄を知っているが、いま会えば道ならぬ恋となって明までも魔物となる恐れがある。いずれ明がある夫人によって恋を知り、あの世の母への思慕から心がふたつに引き裂かれる時、唄は自ずと聞こえるであろう。
女はそう言って手毬をつき、眠る明のもとを去る。
最後に現れる女を菖蒲と限定せずに複数的な女にして母性の原形とする澁澤龍彦の説あり。
佐藤和雄(蟻) / 泉鏡花を読む 1998.08.26