夜叉ヶ池 あらすじ
夜叉ヶ池 大正 2年 3月「演劇倶楽部」初出、大正 5年10月『由縁文庫』(春陽堂)所収
不思議な物語を集める旅に出た華族萩原晃が越前琴弾谷の鐘守となって足掛け三年たつ。
昔、行力によって龍神を夜叉ヶ池に封じ込め大水を終息させた時、人間との誓いを龍神に思い出させるために、村では昼夜三度だけ鐘を鳴らさなければならなくなっていた。この掟をひとり守っていた前の鐘守が死んだため晃が百合という娘とともに鐘を撞いていたのだった。
村はいま旱が続き、死人が出るほどであった。たまたま夜叉ヶ池を見に訪れた親友の文学士山沢学円と晃が再会した日の夜、百合を雨乞いの生け贄にしようと村の有力者をはじめ村人が押しかけ、晃に村からの退去を促す。
双方あい争ううちに百合と晃は自害し、鐘を撞く誓いがついに破られる。池の主の白雪姫は白山の千蛇ヶ池の恋人のもとへ飛び立たんとして、百合の健気さに思いとどまっていたが、今こそ自由に天翔け、ために村里は人々とともに大水の底に沈む。白雪は百合とおなじく、かつて生け贄の身となって池に沈んだ娘であった。
「僕、そのものが一条の物語になった」という晃の台詞が印象的。
佐藤和雄(蟻) / 泉鏡花を読む 1998.09.02