二階席のドラマ


神宮球場に東京六大学野球を観に行った

本日の試合は第一試合が東大vs立大
第二試合が法大vs明大の計二試合

早速入場券を購入し球場に進入する

以前に学生券というものを間違って購入し
応援団によって私と何の接点もない明大席に連れて行かれ
強制的に起立して応援させられた
という苦い経験があるため
自由に観戦できる特別内野券というのを購入し
特別内野席という席に座って観戦することにした

ちなみに特別内野席の「特別」にはとくに意味はない
大学野球においては内野席は特別内野席と特別指定席があるのみである

球場に入ると三塁側の東大側席に陣取った

一回の裏いきなり立大が先制点をあげる

今日もまた東大は負けるのかとややがっかりしつつ観戦していると
二階席がなにやら騒がしいのに気づいた

よく見ると二階席の最前列で数人がこの試合を実況中継している



実況しているといってもカメラもなく
ただ座ってテープレコーダーにむかって実況している
実況の練習をしているのである

しかもひときわ声の大きいスーツ姿の人は
立大が点を入れると隣の数人に向かって
一段と大きな声で、かつ笑顔で威圧的に叫ぶのであった

私はこれを実況対決だと断定した

スーツの彼が立大側で残りの人々が東大側だと判断した

私の関心は一瞬にして野球から彼らに移った

試合の方も立大が1回裏に一挙6点をいれ
勝負がほぼ決まったので早速二階席に向かい
こっそり実況練習の人々に近づく

最前列に3人組と単独の人がいる
先ほどの威嚇行為からその3人と1人はライバルなのだと思っていた
しかしその4人は仲間だったことが判明した
試合のあいまに楽しそうに談笑していたのである

しかし下からは見えなかったのだが
やや後方の席にもう一人の実況練習者が存在した




最前列左端と中央は仲間
右端やや後方の柱のそばに例の彼

最前列の人々がテープレコーダー等を駆使している中
彼は丸腰である
ノートに細かくメモしつつ実況をしている

しかもなんとなくネチネチ声でやや痛々しい

立大が1アウトランナー三塁で犠牲フライで一点を追加した際
「一点追加しました!なおも・・・・」と
2アウトランナーなしなのに「なおも・・・」
と言ってつまってしまうところなど実況も初々しい

七回の攻撃には「ラッキーセブンの攻撃です」と言う
「ラッキーセブン」というフレーズがなんとなく似合う

実況は体力勝負なのであろう
試合の合間にリポビタンDを摂取する

しかも時間をおいて要所要所で3回に分けて飲む


第一回リポビタンD摂取


第二回


第三回

そのリポビタンDの持ち方に
熟練した技術が覗える

ところで試合の方なのだが
立大の上重(2年PL学園出身)が実は完全試合ペース
立大7−0東大で九回表東大の攻撃
しかもあと一人までにこぎつけていた

彼の実況もやや興奮気味で声が裏返る
「あと一人です!あと一人です!」と人差し指を激しく振りつつ実況


興奮を抑えるためお茶を摂取しかつ口内湿潤を図る

そして上重は最後の打者を三振に仕留めて見事完全試合達成


完全試合達成の瞬間


上重(歓喜)拡大図

彼の興奮も頂点に達し
何をいっているのかよくわからない



しばらくすると落ち着いたのか
言っていることがわかるようになった

「上重おめでとう!1年半辛い事があったでしょう」
「私からもささやかながらおめでとうと言わせていただきます」
など試合後もひとりで熱く実況している

一通りしゃべると満足いったのか
帰宅準備にとりかかる



意外に大荷物である
彼のこの試合にかける意気込みが伝わってくる

帰り際さきほどの最前列に座っていた四人組とあいさつをかわしていた
同業者としてお互い励ましあっていた

試合後ベンチ裏通路に行くと
上重や上野(4年ドラフト候補)へのインタビューや写真撮影のため
ファンやマスコミが殺到している

私もデジカメを携帯しとりあえず殺到してみる

するとさきほどの彼も殺到していた
よくみるとスーツの下に白いトレーナーを装着している



実況中は着ていなかったはずだ
この日は急に寒くなった
それを予測してのトレーナー持参
彼は常連に違いない

殺到してみたもののマスコミ関係が選手を取り巻いたため
選手はほとんど見ることができなかった

その後法大vs明大戦を観て神宮球場を後にした

次週も東京六大学野球は行われる
優勝のかかった早慶戦での彼の実況に期待である

今後東京六大学野球を観に行く機会があれば
ぜひ二階席にも注目してもらいたい




もどろうか