●岳南鉄道
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東海道本線の立派なホームの端に古びた跨線橋と朽ちかけた看板。これが岳南鉄道乗り場だった。窓口で買った切符は硬券、側線にはワムと呼ばれる玩具のような、車長が極端に短い2軸貨車が休んでいる。この貨車、今は無きヤード式貨物輸送時代に活躍した車両で、コンテナ全盛時の今日、あまり見る事が出来ない。ローカル私鉄に乗る度にタイムスリップという言葉を使う事が多いが、ここは本物だった。
やってきた車両は京王「井の頭線」のお古で、懐かしい事は懐かしいが、もっと古い車両を期待していた身にはちょっと残念。起点の吉原は閑散とした感じだったが、2つめの吉原本町が街の中心らしい、ここでは乗降があった。ここから先は工場裏、あるいは工場敷地内を行く。工場内に続く引込み線には、やはり現役老朽貨車が待機しており、貨物輸送が全盛期の鶴見線が脳裏に浮かぶ。これだけトラック全盛時代に、鉄道輸送を行う工場も珍しい。遺構が残る貨物線跡は珍しくないが、ここは現役なのだ。
驚いた。21世紀の現在、こんな景色が残っていたとは・・・。正直言えばそれほど期待していなかった岳南鉄道。一気にその魅力に引き込まれていた。終点岳南江尾まであっという間だった。各駅とも綺麗に整備されていて、花壇が印象的だった。ボーっとしていると新幹線の通過音が響いてきた。ちょっと現在を意識した瞬間。
帰りは、何駅か途中下車して写真を撮ったりした。入れ替え用の小型電気機関車もレトロな感じのもが多く、平日、アクティブに働いている姿を見てみたいと思った次第。この雰囲気、いつまで残す事が出来るのだろうか。
モーダルシフトと言われているが、貨物はトラックかコンテナに移行している。何故、ここが旧態依然としているのか判らないが、いつまでも同じ状態とは限るまい。もし、貨物輸送がトラックに切り替わったりした場合、この鉄道は生き残れるのだろうか。乗客の少なさが気になった(2両編成に私ひとりという状況もあった)。
起点の吉原駅 | |
側線は貨物列車がゴロゴロ | |
古典電気機関車 | |
工場内にも貨車が見える | |
終点岳南江尾 | |
ローカル私鉄 | |
岳南鉄道を代表する景色 |