●伊豆急行
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展望席の車窓に海が広がった。車内に感嘆の声があがる。海を向いた客席では携帯やデジカメを海に向ける人もいる。シーズンオフの海ではあったが、行楽客はみな車窓を見入っていた。車窓展望を楽しめるように設計された伊豆急の「リゾート21」。デビューから20年たつが、その設計意図は見事に当たっている。
伊豆急に乗るのは3度目、一度は日光型といわれた車両で運行されていた特急「あまぎ」に乗った。2度目は家族旅行で伊豆へ海水浴に行った際、ハワイアンブルーのオリジナルのローカル車両に乗った。夏ともなれば、修学旅行色の鮮やかな塗装の臨時急行列車も多数運行されていて、伊豆急は大変な賑わいだった。海水浴以上に、すれ違う多種多様な臨時列車に心を奪われていた。いずれも子供時代の話である。
さて、20年前、座席が海を向き、先頭には展望席を設けた「リゾート21」と呼ばれる車両が誕生した。この車両は、観光客を狙って作られた。何より素晴らしいのは普通列車として運行されていた事だ。乗りたい! そう思っていたが、首都圏から近い伊豆という事で再訪が遅れた。また移動手段も鉄道からクルマへと変わってしまった事も影響していた。そして、「リゾート21」編成の引退が決まったと伝えられてきた。
海のシーズン終了を待って伊豆を訪れた。「リゾート21」の運行ダイヤはホームページに載っているので、それに合わせたスケジュールを組んだ。若い女性運転士も珍しくない伊豆急。展望席からキビキビした動作が眺められるのは微笑ましいが、背後からカメラを向けられるのは気になるだろう。ロイヤルボックスという特別車両が外され、車内のウリでもあったイベントBOXも外されていたが、車両は綺麗だったし、輝きは失われていなかった。気になるのは乗客の少なさ、熱海から乗車したが、伊豆急線内に入るとガラガラになってしまった。最低7両編成で組まれている「リゾート21」は供給過多となっていた。
海を向いた席に座って、車窓いっぱいに広がる海を満喫していると、鉄道に乗っているという感覚を忘れる。本当に素晴らしい・・・。この日、途中下車をしながらの復路だったが、いずれも「リゾート21」だった。車窓は本当に素晴らしいのだが、伊東−熱海の混雑区間では乗客は乗り難そうだったし、景色ばかり見ていると多少、疲れを覚えてきたのも事実だった。
JRや東急の通勤型の中古車を短編成で運行しようとしている伊豆急。本当に台所事情が苦しいのだろう。普通列車でもグリーン車を連結。一時期は食堂車まで存在した伊豆急。最大10両編成も走っていた賑やかさはは過去のものなのだろうか。少なくとも、リゾート21が誕生した20年前、伊豆急は新車を導入できるだけの力を持っていた筈だったが・・・。
海が見えてきた | |
伊豆稲取付近の海岸線で | |
先頭車は素晴らしい展望 | |
山側は青色 | |
海側は赤色 | |
夕方の海も情緒がある | |
夕闇迫る海 |