1990年3月6日

大雨だ。風も強いので、もろに横殴りの雨になった。洒落にならない。やはり私は本当の雨男だったのだ。私達3人はどうしようか‥‥。ジャングルの中にでも逃げ込もうか‥‥。ブタ海岸から、隣の海岸まで草を掻き分け進み、鰻頭岬の反対側の海岸に出た。そして海岸に残っている戦跡、トーチカに入って雨宿りをする。

トーチカといえば戦争中の防御陣地だ。崖に穴を掘り、周りをコンクリートで固めて、その穴に機銃を据え付けたりして、海岸から上陸してくるアメリカ軍を待ち伏せ、そこから機銃掃射したりした所だ。そのトーチカの狭い窓から皆が入った。

窓は極端に狭いので、腹ばいで入るしかない(気をつけないと怪我をする。)。中は、しゃがんで精一杯な程の高さしかない。奥行きが結構あったので、楽に入れたが‥‥。それにしても真っ暗で怖い。

一緒にいた女の子達は、ここが防空壕だと信じているようだが、そんな甘い所ではない。このトーチカの中で死んだ兵士も沢山いるだろうし、目の前の海岸で殺された人も多いだろう。このトーチカも、コンクリート部分が、傷だらけなので、ここに手榴弾でも投げこまれたか、それとも艦砲射撃の弾丸でも飛び込んだかして爆発したのかもしれない。

ここで死んだ人はさぞ無念だったのだろう。普通の死に方ではないから地縛霊となっているかもしれない。あの戦争からまだ40年ちょっとしか経っていないのだ。その血なま臭い、悲劇の場所に我々は今いる。トーチカは小笠原では珍しくないが、どれも不気味でとても中に入ろうなんて思えない。今日は大勢いるから良いが、本当に暗くて不気味。

oga5_3.jpg (21423 バイト)写真は母島のもの



http://www2s.biglobe.ne.jp/~kurume/my_hp.gif (6911 バイト)


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