1990年2月27日
南島までの交通手段は船しかない。私達が乗ったのは小さな漁船といった感じの「南星丸」という観光船だ。船長さんは、おじいさんで、出航5分前になったらいきなりラッパを吹き出した。その音は、まさしく旧日本海軍の信号ラッパではないか!(出航5分前のラッパ)。それで、この船長が「海軍あがり」だという事がすぐ判った。
この島は隆起珊瑚礁の島というのが面白い。形を見ても、なんだか、ゴツゴツ尖っていてこの世のものとは思えない世界だ。周りには、大きな岩礁がゴツゴツしていて近寄りがたい。南島は岩礁だらけ、当然、船が横付け出来るような所ではない。唯一の船の入口はサメ池と呼ばれる所から入る。
サメ池は、文字通り、サメが沢山泳いでいる小さな湾である。湾というより池といった感じだ。そのサメ池への入り口は、とても狭く、またゴツゴツした岩礁が沢山ある。普通に見ても、小型ボートでも通るのは難しいのでは?と思うような所だ。まして、今日は海が荒れている。他の南島観光船は、サメ池の手前で引き返してしまった。私も、「南星丸」も引き返すものだと思っていた。
しかし、「南星丸」は果敢にもサメ池に突っ込んでいった。岩礁と岩礁の間は、5mもないように思える。そして、高波だ。船が岩礁に叩きつけられる!!。さすが海軍あがりだ!。波をよんで、突っ込んだ。まるで針の穴に糸を入れるように‥‥。本当に怖かった。
上陸し、岩を登るとそこには扇池が広がる。
「オー!!」
思わず声をあげそうになる。池といってもここは海だ。内陸に扇のような湾が広がっているのだ。その扇の弧の部分が砂浜で、中心の部分が海と繋がっている。今日は、外の海は荒れているが、ここ扇池はほとんど波がなく鏡のように澄んでいる。
水の色はエメラルドブルー!(そんな色あったっけ?)、もしくはハワイアンブルーかトロピカルブルーだ!!。とにかく青いし、澄んでいる。底がよく見えるのだ。また砂浜はオレンジ色をしていて、粒が細かく、まるでパウダーのようだ。そしてゴミなどが混じっていない。本当の砂浜だ。
さてサメ池に潜ってみる。まだ2月というのに国内で海水浴。当然、今年初めてである。水中マスクをして、潜ってみると、その透明度には驚かされる。そして、そこにはゴツゴツした岩と、綺麗な熱帯魚がウジャウジャいる。まるで水族館の水槽に潜ったみたいで感激だった。