●芸備線(急行みよし)
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ブルルンとエンジンが唸り、ゆっくり加速を始めた老朽ディーゼルカー。固定の4人ボックスに身を埋めボンヤリ景色を眺めているとスピーカーから機械式オルゴールの擦り切れたような音が流れてきた。曲はアルプスの牧場・・・。80年代までのローカル急行の旅を思い出させる。しかし、今は2006年、このような急行列車が残っている事は奇跡だと思った。
備後落合から三次まで乗車した普通列車は綺麗なレイルバスタイプのディーゼルカーだった。旅情が無いとか、色々言われているが、車両も新しく、それなりに快適だった。その普通列車から乗り継いだのが急行「みよし」。老朽化しみすぼらしい姿は40年以上前の姿のままであった。なにゆえ、このような哀れな姿で優等列車の運用に就いているのだろうか・・・。1961年から製造された急行型気動車を使用した急行列車はついにこの「みよし」だけになっていた。
急行「みよし」は2両編成、ローカル普通列車と何も変わらない。車内は多少、手を入れられてはいるが1960年代のままである。これで急行料金を徴収するとは・・・。気ままな旅人はノスタルジーに浸れるが、三次といえば工業団地。ビジネス需要もある筈なのだが、これでは並走するバスに乗客が流れても文句は言えまい。
盆地の単調な景色の中を、単調な速度でディーゼルカーは快走する。リズミカルにホッピングするコイルバネから伝わる乗り心地は、お世辞にも良いとは言えないが、揺りかごのような作用があるのか眠くなってくる。志和口を15:50分に出ると、次は終点の広島、35分のノンストップ運転である。車両はボロだが、優等列車らしい雰囲気は健在であった。4往復のこの急行列車がいつまで走れるのか判らないが、最後の日まで健闘して欲しいものだ。
最後部 | |
最前部 | |
ボックスシートから眺める盆地 | |
車窓には川が寄り添う | |
「急行」、「みよし」のサボが優等列車を示す |