●三江線
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16時過ぎの三次駅。本日、三江線を通して走る列車は既に無い。外れにある0番線三江線乗り場を眺めると明日が楽しみでワクワクしてくる。100km以上の未乗ローカル線、超閑散区間で本数も少ないし、乗車時間もかかる。新幹線を使っても、東京から最低でも2泊3日はかかるため、なかなか訪れる事が叶わなかったローカル線にいよいよ乗れる。
三江線は広島県「三次」から島根県「江津」まで、江の川に沿って走るローカル線である。陰陽連絡ローカル線はいくつかあるが、そのローカル線に落ちぶれてしまった線もある。かつては夜行急行も走った木次線、そしてこの三江線はその最たるもので、直通列車は3往復しかない。2006年7月の豪雨で38箇所で土砂崩れ、このまま廃止されてしまうと思ったが、奇跡的に翌年に復旧を果たした。しかし、ジャンボタクシーで代替輸送できる程度のローカル線である。次に被災したら果たして復活はあるのだろうか。早く乗らないと・・・。
まだ夜が十分に明けきっていない朝5時過ぎの三次駅。かつて専用ホームだった0番線ではなく、芸備線のホームに1両のディーゼルカーがアイドリングしながら出発を待っていた。まるでバスのような軽快車両である。定員も少なく、ローカル線の厳しさを物語っている。乗客は数名であるが、すべて鉄道愛好者。中には昨日の芸備線で見た顔もあった。5時47分、三次の街を見下ろすように出発した。最初の停車駅「尾関山」を出ると川沿いの人家も稀な景色が続く。
三江線は江の川沿いに充実に走るローカル線である。昨日の芸備線でもそうだったが、随所に25q/h制限があり、列車は急加速、急減速を余儀なくされる。この日の江の川は水量が多く、飲み込まれそうな錯覚を覚える。このような地形に忠実な線路の引き方は古いローカル線でよく見られる。景色は良いのだが、土砂崩れなどの災害に合う確立は高くなってしまう。
朝も明けきった6時39分。口羽駅で39分の長時間停車。列車交換の光景が見られたが、相変わらず人気が無い。乗客数も変化が無い。外を散歩したが、三江線全線開通記念碑以外に見るものもなく、暑い外にいるより、クーラーの利いた車内で仮眠をとっている方が快適であった。列車はここから三江線の最後に開通した区間に入る。
列車の走りっぷりが一変した。トンネルやコンクリート高架橋が目立つ。特に宇都井駅は両側をトンネルに挟まれた高架橋上の駅で、地上から30mの高さにホームがある。餘部橋梁を思い出す。ここまで無理して作った駅であるが、平均乗降客数0名というデータもある。116段の階段を登らないと辿り着けないホームなんて・・・。
浜原駅から再びローカル線っぽい隘路になる。川幅は大分広がり、人家も目立つようになった。しかし、乗客は途中で老婆が一駅だけ利用した以外に変化がない。4つあるボックスシートに鉄道愛好者がそれぞれが収まっている構図である。
終点間際になって、ようやく数人の乗客が乗ってきた。顔見知りらしい。世間話が聞こえてきた。ホームの花壇を手入れする人の姿もあり、人の温かみを感じる事ができた。9時31分、三江線の終点「江津」に到着(列車は山陰線に乗りれて「浜田」まで向かう)。直線距離の倍近くの108kmを4時間近くかけて走ってきた。昔の紀行文を読むと3両編成の席がほぼ埋まって・・・なんてくだりがある。昔はそれなりに利用価値があったのだろうが、マイクロバスでも充分な輸送状況を見て考えるものがあった。
かつての三江線専用ホームは閉鎖されていた | |
ひたすら川沿いを行く。最近の豪雨で川は濁っていた | |
口羽駅で長時間停車だが人気もなかった | |
ローカル線の高架駅宇都井駅 | |
宇都井駅からの景色 | |
しだいに川幅が広くなる | |
列車交換は2回だけ(口羽と浜原) | |
最後まで長閑な景色が続いた |